帰国からはや1ヶ月が過ぎようとしているけれど
ラオス北部を旅した余韻が、いまだ濃厚に残っている。
3年半という長期間のブランクが効いたのか
あるいは、それほどまでに今回の旅が印象深いものだったのか。
理由は定かでないが、ほぼ月刊ペースだった国内旅行とはケタ違いのトキメキに
お金と身体が続く限り海外への旅を楽しもうと、堅く心に誓うのだった。
そんなふうに"ラオスの余韻"を引きずっていたおかげか
旅行期間中も帰国後も、それなりの冊数を読んでいたはずなのに
ガツン!と心の扉に一撃を喰らわしてくれる作品には出逢えなかった気がする。
とりあえず、今月中に読んだ書籍(文庫&新書)は以下のとおり。
2023.10
★★『蓮の露 花暦 居酒屋ぜんや』坂井季久子
★『江戸彩り見立て帖 粋な色 野暮な色』坂井希久子
★『薫香のカナピウム』上田早夕里 ★『時砂の王』小川一水
★『世界一周飲み歩き』イシコ ★『聡乃学習』小林聡美
★『地球はグラスのふちを回る』開高健 ★『元素図鑑』中井泉
★★『タイムトラベル 世界あちこち旅日記』益田ミリ
★★『脳のなかの幽霊』V・S・ラマチャンドラン/サンドラ・ブレイクスリー
〔コミックス〕(※は再読以上)
★『天国大魔境』石黒正数 ①-⑨(⑦まで※)
結果、《今月揺さぶられた本ランキング》は
※旅先で読めば相乗効果で面白さが倍増するかもしれない。
そう期待して、ラオスへ持って行った『薫香のカナピウム』『時砂の王』。
しかし現地のナマ体験が強烈過ぎ、逆に小説の虚構性が鼻についてしまった。
内容自体は2冊とも十二分に楽しめたので、完全に当方の作戦ミス。
残念無念である。
結果的に今月の第一席になったのは、SFやファンタジーではなく
様々な家庭環境のもとで、世代の異なる主人公たちが懸命に生きる姿に
珍しくも、熱く激しい共感を抱いてしまった。
「伊良部シリーズ」の新作も出たことだし
サイコロ次第ではあるが、可能な限り著者の作品を追っていきたい。
【小説以外】
①『脳のなかの幽霊』V・S・ラマチャンドラン/サンドラ・ブレイクスリー
※これまた同様の理由で、旅先読書は空振りに終始。
皮肉にも帰国後読んだ『タイムトラベル 世界あちこち旅日記』益田ミリの方が
個人的な体験と重なる箇所も多く、回想旅行を楽しめた。
※そんなわけで、今月最も印象に残る小説外の一冊は『脳のなかの幽霊』か。
今や古典に近い、脳科学にまつわる、いわゆる"名著"。
一般大衆を想定して書かれたものだが、決して読みやすくはない。
というか、本書のすべてを理解するのは正直厳しい。
なのでここは、グレッグ・イーガンの小説を開いたときと同じように
『わかるところだけ読んで理解する』方式を採用しよう。
ぶっちゃけ、一度読んで頭に入らない箇所はサクッと飛ばして
"思考の釣り針"が引っかかった所だけを読み解いて、楽しんでいくのだ。
大丈夫、そんなテキトーな読み方でも充分面白い。
それどころか、後半に行くほど面白さ&興味深さが膨れ上がる。
最初のところだけ読んで「難しいなぁ、やーめた」と投げ出してしまうのが
なによりも、MOTTAINAI。
ここは〈斜め読み上等)と割り切って、思う存分拾い読んでいこう。
物事の見方、考え方、現実の捉え方などなど
絶対と信じていた価値観が次から次へとコケてゆく、衝撃と快感!
※15年間続いた物語も、いよいよクライマックス。
活き活きと変貌していく主人公・零くんの一挙一動に、心が熱くなる。
願わくば、頂点目指して奮闘する彼の足取りより
残る最大の懸案〈あかりさん問題〉が
予想の斜め上を行く幸せな結果に終わることを、祈ってやまない。
ではでは、またね。