現実と空想の圧倒的なる融合  『円 劉慈欣短編集』 劉慈欣 引用三昧 -38冊目-

地火-じか 

現在、地球上の大陸には、燃えつづけている炭鉱が多くある。中国にもいくつかある。 去年、新疆で、劉欣-リウ・シンは生まれてはじめて地火-ディフォ(地下で起こる火災。日本語では“地中火”)を見た。見渡すかぎり、地面にも山の斜面にも草木一本なく、空気中には硫黄臭のする熱波がうねり、その熱波が周囲の光景を揺らめかせていた。まるで全世界が水中に没したか、焼き網の上に置かれたかのような光景だった。 夜になると、地面にぼんやりした赤い火の帯が何本も見えた。無数の地割れから光が漏れている。地割れのひとつを覗き込んで、劉欣-リウ・シンは息を呑んだ。まるで地獄の入口だった。赤い輝き地中深くから発しているが、それでもやはり、狂暴な熱が感じられた。顔を上げて、夜のとばりに覆われた赤い光の網目に視線を向けると、地球が薄い地殻にくるまわれ燃える炭だということを実感した。                                            [46]

遠くに目をやると、大きなボタ山が見える。百年以上にわたり、採掘した石炭からとりのぞかれた黒い石が積み上げられてきた山だ。周囲の丘よりずっと高い。ボタに含まれる硫黄が薄いで発熱し、青い煙を上げている‥‥。なにもかも、長年降り積もった炭塵の層に包まれ、同じ暗い灰色になっていた。それが劉欣-リウ・シンの少年期の色、彼の人生の色だった。                                          [53]

常識に反して、水蒸気は目に見えない。目に見える白い湯気は、水蒸気が空気中で冷えたときにできる微小な水滴だ。高温高圧下では、水蒸気は、摂氏四百度から五百度に達する恐るべき過熱蒸気となる。すぐに冷えるはずもなく、いまは、掘削櫓より高いところでしか白くならない。このような蒸気は、通常、火力発電所の高圧ボイラーの中にしか存在しないが、ひとたびパイプから噴出すると(その種の事故は何度も発生している)短時間で壁を貫通するほどの威力がある。                                                          [72]

局長は、黒い人海に向かって手を振った。                                                                「天-そらは落ちない!」〔「どんな災厄があってもこの世の終わりはない(なんとかなる)の含意がある」〕                                                                                                    群衆は凍りついたように動かなくなった。呼吸さえ止まったかのようだった。    「中国のあらゆる産業労働者、あらゆるプロレタリアートの中で、われわれより長い歴史を持つ者はいない。われわれより多くの風雨と災厄に耐えてきた者もいない。だが、炭鉱労働者の上に天が落ちてきたか? 否! われわれ全員がいまここにこうして立ち、あの老炭柱を見ていることがなによりの証拠だ。               われわれの天は落ちない。過去に天は落ちなかった。将来も、天が落ちてくることはない!                                     困難? そんなものはまるで珍しくない。同士諸君、われわれ炭鉱労働者が楽に暮らせたことがいつあった? ご先祖さまの代から数えても、楽に暮らせた日がいつあった? 指折り数えて、よく考えてみろ。この中国とそれ以外の全世界に、いったい何種類の産業があり、何種類の労働者がいる? そしてその中に、われわれより大きな困難を強いられている産業がひとつでもあるか?                      ない。そんなものはひとつもない。困難のなにが珍しい? 困難がないほうが不思議だ。なぜらわれわれは、天を戴いて立つだけではなく、地をも支えて立つからだ!  もし困難を恐れていたら、とうの昔に死に絶えていただろう。           だが、社会と科学は進歩している。多くの才能ある人々が、われわれのために新たな方法を考えてくれている。いま、われわれはひとつの解決策を手にした。この暮らしを一変させる希望ができたる暗い坑道を出て、太陽の下、青空の下で、石炭が採れるようになる! 炭鉱労働が人もうらやむ仕事になる! この希望は、また生まれたばかりだ。信じられないというなら、南の谷に行って、あの大きな火柱を見るがいい! だが、まさにそのための努力が、この災厄を引き起こした。それについては、のちほど詳しく説明しよう。いま、われわれが知らねばならないのは、これが炭鉱労働者にとって、最後の困難かもしれないということだ。美しい明日のために代価を払う必要があるというなら、われわれは一団となってそれに立ち向かおう。先人が何代にもわたってそうしてきたように。今度もまた、天は落ちなかった!」                  群衆が無言で解散したあと、劉欣-リウ・シンは局長に向かって言った。「あなたと父さん、二人と出会うことができて、たとえ死んでも、この人生に悔いはありません」「行動し、余計なことは考えるな」局長は劉欣-リウ・シンの肩を叩き、その体を引き寄せて抱擁した。                                                               [78]

 

郷村教師 

「たとえばひとつの鉄の部屋があるとしよう。この部屋にはどこにも窓がなく、壊すこともできない。中には熟睡している人がおおぜいいて、まもなく全員が窒息死する。彼らは昏睡から死に至るので、死の苦痛を感じることはない。            いま、あなたが大声を出して彼らに呼びかければ、不幸な少数が目を覚まして現実に直面し、救いようのない臨終の苦しみを味わうことになる。それでもあなたは、彼らに対して正しいことをしたと思いますか?」                    「しかし、その少数はすでに立ち上がった。だとすれば、この鉄の部屋を壊すという希望がないとは言えまい」(魯迅「吶喊」序より)                          [129]

「宇宙でもっとも不可解な点は、それが理解できるということだ」と執政官は言った。「宇宙でもっとも理解できる点は、それが不可解だということです」と元老院議員は言った。                                                                        [161]

 

栄光と夢 1 延期されたオリンピック

ラソン選手の特徴のひとつは、おしなべて表情に乏しいことだ。トレーニングやレースを通して、長時間にわたり単調な体力消耗に耐えてきたことの結果だろう。しかしクレイルは、月明かりのもとで微笑むシニの表情に心を動かされた。ただ、その笑顔がもたらした感覚は、ナイフで心臓をえぐられるような痛みだった。クレイルは茫然と立ちつくし、彼自身もまた、一体の彫像と化した。はあはあというシニのあえぎが引き潮のように静まったあと、クレイルはようやく正気をとり戻し、腕時計を手首に戻して小さな声で言った。                               「きみは生まれてくる時代をまちがえた」                                       [325]

 

原典は本文526ページという重厚な作品集。

後半まで勇み足してまったが、この後を引用できないのが残念だ。

 

マレーシア旅行(13日発)の準場に忙殺されている

あれこれ面倒な手続きが多く、出発前からてんてこまいだ

詳細に関しては、18日の帰国後に。

 

ではでは、またね。

 

 

トケイ浜はプライベートビーチ!? 沖縄うたた旅 2024.1.28-31 2日目⑤ 喜如嘉集落🚘古宇利大橋🚘トケイ浜🚘ホテル

2024年1月29日(月) 

ホテル🚘PLOUGHMAN'S LUNCH BAKERY🚘名護城公園🚘大宜味村芭蕉布会館🚘 笑味の店🚘芭蕉布会館👣喜如嘉集落🚘🚘古宇利大橋🚘トケイ浜🚘ホテル

ティーヌ浜の東に広がるトケイ浜・・人っ子一人いない静けさに時を忘れる

 

芭蕉布の里・喜如嘉を後に、一路南へと走る

ほどなく右手に、本日最後の目的地・古宇利島が見えてきた

左が屋我地島で右が古宇利島、両者の間をつなぐ細いラインが古宇利大橋

ズームすると棒高跳びのバーみたいな橋の形状がよくわかる

 

真喜屋の信号を右に折れ、奥武島屋我地島と渡って北端の美らテラスへ

駐車スペースに車を停めれば、白い古宇利大橋が目の前に

美ら海水族館から回ってきたのだろう、何組もの家族連れで賑わっていた

こんなに天気がいいのだから、橋の上からの眺めはきっと最高だ!

なんて期待しつつ車に戻ったのだけど・・・

 

実際に橋を渡ってみたら、歩道の手すりがず~~っと続いており

動物園の金網越しに鑑賞するタイプの「絶景」だった

大型観光バスの座席など視点が高ければ100バーセント楽しめるのだろうけど

ーーこれなら宮古島の伊良部大橋の方がずっと感動的だったな

(滞在していた4日間はほとんど曇りor雨模様だったけど〉

 

ま、それでも天気は相変わらずの快晴続き

島のビーチに行けば澄んだ沖縄の海が満喫できるはず

と、古宇利島南端から時計回りにぐるっと半周

島の北端・ハート形の岩で有名な「ティーヌ浜」を目指す

 

このあたりかな、と未舗装道路に乗り入れてみれば

そこは広大な駐車スペース

売店や屋台が並び、何台もの車が出たり入ったりしているし

ティーヌ浜へと降りてゆく道は、家族連れやカップルが列をなしていた

どうやら大変な観光スポットに来てしまったらしい

 

とりあえず100円払って車を停めたものの

賑やかな場所には興味がないので、すぐに立ち去ろうかと思ったが

マップを見ると、ティーヌ浜と逆の東方向にも「トケイ浜」というビーチがあった

せっかくここまで来たんだから、そっちに行ってみるか

ハート岩目当ての若者たちに背を向け、誰の姿もない舗装路を東へ歩いてゆく

すると100メートルほど先に、車数台分のスペースが

どうやらこれが「トケイ浜」の駐車場らしい

なんだよ、無料だったじゃん・・・

一台も停まっていない空き地を横目に、さらに進むこと100?メートル

ふいに、目の前が大きく拓けた

トレイ浜、誰もいない美しい水辺の景色が見渡す限り広がっていた

見事なまでに澄み切った水に、夢中でシャッターボタンを押す

左手に伸びる岩場まで歩き、波打ち際を振り返る

文字通り"トケイ浜二人占め"だった(遠くに見える姿は相方)

入り江を囲んだ岩場、溶岩がそのまま固まったようにゴツゴツしている

恐竜(トリケラトプス?)の横顔っぽい、角つきのシルエット

少し沖合の海面からも、ガオー!と岩礁が顔を出す

「トケイ浜」悪くないが、恐竜にちなんで「ダイノ浜」とか名付けたくなった

 

・・・・それにしても、波の音と風の音しか聞こえてこない

浜辺の流木に腰掛け、まるで無人島に流れ着いたかのようなひとときを楽しむ

 

しばらく浜辺でぼーっとしていたが

そういえば右の砂丘を越えて行った相方がなかなか戻ってこない

ちょっと様子を見に行くか

サンゴの砂粒に足を取られながら、広い砂浜のさらに東へと足を進める

・・と、こちらも岩場に縁どられたサンゴの浜辺だった

予想どおり、相方の他には誰の姿も見当たらない

ほとんど縁日状態の「ティーヌ浜」から数百メートルしか離れていないのに・・

青い空と海そしてサンゴの浜・・・とびきり贅沢な時が流れてゆく

 

30分以上過ごしただろうか

子猫を連れた一人の男性が現われパドリングを始めた

岩の上で留守番し、ミーミーと主を呼ぶ子猫の声を聞きながらトケイ浜を後にする

 

それから先は、那覇を目指して一直線

水族館から戻る車で込み合う"美ら海渋滞"に巻き込まれまいと距離を稼ぐ

幸いラッシュが始まる前に通過したらしく、予想より早く帰ることができた

日没直後の国頭方西街道ーーやっぱ沖縄は"晴れてナンボ"だよなぁ

 

早かったとはいえ、ホテルの駐車場に戻ったのは19時半過ぎ

朝からずっと動き詰めだった疲れから、新規開拓に乗り出す余力は残っていない

1年前の夜に訪れた市場中央通り入ってすぐの居酒屋で決め打ち

アーサーのテンブラなど定番の沖縄料理を楽しんだ

 

ではでは、またね。

 

 

芭蕉布の里・喜如嘉を歩く 沖縄うたた旅 2024.1.28-31 2日目④ 笑味の店🚘大宜味村立芭蕉布会館👣喜如嘉散策

2024年1月29日(月) ホテル🚘PLOUGHMAN'S LUNCH BAKERY🚘名護城公園🚘大宜味村芭蕉布会館🚘笑味の店🚘芭蕉布会館👣喜如嘉散策

ただ歩くだけで心地よい芭蕉布の里・喜如嘉集落

 

島野菜料理をいただいた後は、芭蕉布会館へとんぼ返り

2階に上がって13時から再開した芭蕉布作りの様子を見学・・したものの

入口直後にロープが張られており、遠くから眺めることしかできない

どんな作業なのか判然としないまま、数分で1階フロアに戻った

 

それでも先ほどと同じ親切な女性係員が

芭蕉布作りのビデオ映画を再生してくれたので

一枚の芭蕉布を織り上げるまでどれほど大変なことなのか、知ることができた

八重山の「みんさー織」にも通じる芭蕉布の伝統的な文様たち

 

せっかくのいい天気なので(一年前はほとんど晴天に恵まれなかった)

芭蕉布の里・喜如嘉集落をぶらぶら歩いてみた

芭蕉布会館のお姉さん(職員)に聞いて初めて知ったのだが

この集落の各所で、NHK連続朝ドラ「ちむどんどん」の撮影が行われたとのこと

相方が長年朝ドラを視聴していたので、急遽"プチ聖地巡り"も兼ねてみた

くっきり晴れ渡った青空を従えて雄々しく吠える赤銅のシーサー

まずはお姉さんに薦められた丘の上の展望台を目指す

頂上には伝統的な拝殿が、暖かな日差しを浴びてたたずむ

そして反対側に目を転じると・・・

のびやかな喜如嘉の景観が一望できた

実はこれ、「ちむどんどん」のオープニング?に使われてた・・んだったっけ?

一度も番組を観てないので、"答え合わせ"のしようがない

「朝ドラ大好き」の相方はちゃんと分かっていたらしく

眼下に広がる景色を感慨深げに眺めていた

ともあれ、青い空と海の鮮烈さには目を奪われた

陽当たりがいいのだろう、寒緋桜も五分から七分咲きといったところ

ジャコウアゲハも蜜を吸いにやってきた

もうひとつお薦めだという、七滝を目指す

道は谷合へと続いており、徐々に細くなってゆく

と、路上にラグビーボールのような緑の固まりが落ちていた

なんだこれ、ひょっとしてパパイヤ?

ということは・・視線を上に向けてゆくと

道端にパパイヤの木を発見、完全に"野良"状態だ

てことは、熟したら食べ放題!? なんだか羨ましくなってきたぞ

さらに途中から未舗装になった砂利道を歩くことしばし

どん詰まりに小さな水の流れーーこれぞ喜如嘉のお薦め観光スポット「七滝」

滝つぼ近くから仰ぎ見ると、確かに幾筋かの滝が連なっていた

まあ、七滝っちゃあ七滝だろう

暗い谷あいから再び陽光のもとへ戻り、日向ぼっこ気分でとことこ歩く

そこここでつぼみをほころばせた寒緋桜が、桃色の紗をかける

ふと足元に目をやると、落ち葉の間で妙に白い枯葉が・・

いや、チョウだった

枯葉蝶(コノハチョウ)の仲間かと思って画像検索したが、似たものは発見できず

・・・あとでゆっくり探してみよう。

イトバショウの木もそこいらじゅうにニョキニョキ生えている

これはすごいバナナっぽいんだけど、もしかして食用(実バナナ)なのかな

喜如嘉共同店、集落最大のスーパー(何でも屋)

こちらも店内が「ちむどんどん」の舞台になったらしい

いちおう入ってみたけど、ごく普通の雰囲気だった

再び集落散歩に戻る

とにかく静かで気持ちがいい

見慣れたブーゲンビリアも、透過光を浴びて紅く染まる

家と家の間の細い道を行くと、いたるところにイトバショウの畑?が

芭蕉布の里」ならではの風景が、どこまでも続く

気が付けば、あっという間の午後3時

そろそろ切り上げて出発しないと、古宇利島巡りが夕方になってしまう

せっかくの好天だし、北部の綺麗なビーチもかっちり見ておきたい

後ろ髪を引かれる思いでレンタカーに戻り、一路南を目指した

 

ではでは、またね。

 

 

『円』に圧倒され、『カラヴィンカ』に引きずり込まれる 先月(2024年2月期)読んだ&揺さぶられた本 MakeMakeの読書録

今月13日に出るマレーシア旅行の支度で、徐々に忙しくなってきた

なんとかその前に沖縄旅行の記録を終わらせたいのだが

まずは毎月恒例の「読書録」を済ませたい

ちなみに先月読了した本(小説・それ以外・コミック)は以下の通り

 

2024.2

★『Re:ゼロから始める異世界生活』㉝ 長月達平

★★『つばき餡』 坂井希久子

★★『円 劉慈欣短編集』 劉慈欣 ★★『カラヴィンカ 』遠田潤子

★★『がん-4000年の歴史-』㊤㊦ シッダールタ・ムカジー

★『地図のない場所で眠りたい』 高野秀行/角幡雄介

乾隆帝――その政治の図像学中野美代子

昨年末から続いていたスローペースの元凶⁉『がん』(上下巻)を

ようやっと読了することができた

(厳密には本日1日までかかってしまった)

たぶん3月からは以前のペース(1月あたり十数冊)に復帰できるはず

 

〔コミックス〕

★★『BLACK LAGOON』①-⑬[⑬のみ初読] 広江礼威

★★『推しの子』①-⑬〔⑫⑬は初読]赤坂アカ×横槍メンゴ

★『怪獣8号』①-⑪〔⑩⑪は初読] 松本直也

 

結果、2月の《揺さぶられた本ランキング》は

【小説】『円 劉慈欣短編集』 劉慈欣 

    ※最初から最後まで圧倒されっぱなし(『円』は再読だが関係なかった)

     月並みだけど、ただただ凄い!! としか言いようがない

     とりわけ心に響いたのは、解説でも触れていたが

     ミクロな個人の営みとマクロな宇宙の視点が見事に融合しているところ

     この興奮と感動は、実際に読んだ者でないと絶対に分からない

     分厚くて少々とっつきにくいかもしれないが、ぜひとも手に取ってほしい

    ①『カラヴィンカ 』 遠田潤子

        ※『円』をさんざん褒めといてなんだけど、こちらも同着1位

     ひとたび本を開いてしまったら、もう先が気になって止められない

     行き先不明の特大ジェットコーススターに乗った気分で

     一気呵成に最後のページまでたどりついたときには

     とうに夜は明け、朝よりも昼に近い時間帯になっていた・・

     小説読みにとって、これ以上ない至福の一夜を送ることができた

     3年ほど前に始めた〈サイコロ読書システム〉のおかげで

     ずっと読みたいと思っていた遠田潤子だけど

     ツボはまったときの彼女の作品は、圧倒的な吸引力で迫ってくる

 

     もっと続けて読みたいが、"1作家2冊まで"という自己ルールを順守し

     (そうしないとどんどんジャンルが偏ってしまうのだ)

     あと一冊(『アンチェルの蝶』になった)でストップしておく

 

【小説以外】①『がん-4000年の歴史-』㊤㊦ シッダールタ・ムカジー

    ※読んだ内容が頭に入らず、いったい何度"寝落ち"したことか

     そのたび意識下途絶える少し前まで逆戻りしては、改めて読み直す

     そんな"七転び八起き的読書"を繰り返すうち

     上巻の半分を過ぎたあたりで、やっとのことで〈読書エンジン〉がかかった

     あとは一気呵成・・とまではいかないまでも、一行一行興味深く読み進め

     次々明かされる「意外な事実」に、目からウロコがポロポロボローー

     どこかSFにも通じるセンス・オブ・ワンダーの興奮を提供しつつ

     人類最大の難敵「がん」の正体とその治療法にまつわる

     "正しい現在地と未来予測"をきっちり示してくれる

     良質にして秀逸なドキュメンタリーである

     『円』なんて目じゃないほどとっつきにくいが

     がんのことをちゃんと知りたいんだったら、読まなくちゃ

    

【コミック】①『推しの子』①-⑬〔⑫⑬は初読]赤坂アカ×横槍メンゴ

   ※久々に新刊が出た『BLACK LAGOON』も捨てがたいけど

    ここはやはり"そこまでやるか!"の「推しの子」に軍配を挙げたい

    残念ながら、密かに願っていた"アイの生まれ変わり"は登場しそうにないが

    明らかにクライマックスが迫ってきた現時点においても

    いまだ先を予想しきれない展開にワクワクドキドキが止まらない

    (リアルタイムで連載を追ってないから、意外にあっさり終わってたりして)

 

    ともあれ、死神娘?を子役に引き入れるほどの"トンデモストーリー"が

    いったいどこまで弾けてくれるのか、期待と不安でいっぱいなのだ

 

              ではでは、またね。

島野菜は美味!だけど・・ 沖縄うたた旅 2024.1.28-31 2日目③ 大宜味村立芭蕉布会館🚘笑味の店

2024年1月29日(月) ホテル🚘PLOUGHMAN'S LUNCH BAKERY🚘名護城公園🚘大宜味村芭蕉布会館🚘笑味の店🚘芭蕉布会館

季節の島野菜をたっぷり使った家庭料理「まかちぃくみそぅれランチ」の味は!?

 

来た道を車で戻ることおよそ3分

さきほど通り過ぎた「笑味の店」脇の駐車スペースにレンタカーを入れる

そのすぐ先、街道とは反対側に店の玄関はあった

「笑味の店」の立て看板、その向こうが入口らしい

めんそーれ、いらっしゃいませと賑やかそうだが、店先はとっても静か

一瞬、誰もいないのかな?と不安になった

入口正面に立つと、「笑味の畑」の看板が目に入った

ぐるっとあたりを見回すと・・

道路を挟んだ向かい側にも「笑味の畑」の立て札が

どうやらこのあたり一面で、料理に使う様々な食材を育てているらしい

これなら採れたての島野菜が楽しめそうだ

入口右手には、本日のランチメニューが貼り出されていた

事前に料理の予約を入れていない客は、どちらかを選ぶスタイルだ

 

あけっぴろげな店の中に足を踏み入れる

誰もいないのかと思ったが、声をかけると奥から小さな返事が返ってきた

しかも思ったより広い店内では、7~8人の先客がテーブルについて食事中だった

そこそこの賑わいなのに、誰もほとんど声を出さない・・・なんで?

店内に貼ってあった「畑の地図」、予想より遥かに広大だった

おそらく生産効率など度外視し、農薬も使わず野生に近い形で育てているのだろう

徹底した自然志向が透けて見える

迎えに出た店の女性に名前と予約時間を告げると、奥の予約席に案内された

それにしても、何組もの客がいるのに話し声かほとんど聞こえてこない

ときおり耳に入るものの、それもひそひそ話のレベルだ

ひょっとして「会話は控えてほしい」みたいな暗黙のルールでもあるのだろうか?

表に出ていたメニューと同じものをテーブルに広げる

せっかくここまで来たのだからと、相方ともども色々な料理が楽しめそうな右側

「まかちぃくみそぅれランチ」(2100円税別)を注文する

ちなみに「まかちぃくみそぅれ」とは、おまかせという意味だという

ちなみに要予約の豪華版ランチがこちらの「長寿膳」

ランチ以外にも、氷ぜんざいやサーターアンダギーなどが食べられるらしい

 

風の音しか聞こえない(厳密にはたまに裏手の街道を過ぎる車の音が耳に入るが)

奇妙なほど静けさが漂う店内で、待つこと10分

大きな丸いお盆に載った「まかちぃくみそぅれランチ」が、目の前に現れた

目の前の畑で採れた島野菜をふんだんに使った、「笑味の店」の"おまかせランチ"

ざっと数えただけで十数種類の小皿料理が、大きなお盆いっぱいに並ぶ

いろんな島野菜があるみたいだけど、どれがどれだかさっぱり分からないなぁ

・・なんて思っていたら、ちゃんと「テキスト」が用意されてた

ひとつひとつの料理を丁寧に紹介・解説してある透明ファイル

確かにこれなら、それぞれの正体を学習しながら味わっていくことができるな

ーーーと、ようやく店内を覆う"奇妙な静けさ"の理由に思い至った

そうか、この店の静けさは教会の礼拝堂のそれに近い

もっと言えば、ここは島野菜料理を楽しむ食事処の息を超え

健康食である島野菜に関する知識や価値を学習する

"教育と信仰の場"に近いのではないだろうか

 

そんな裏読みをしたくなるほど

ひとつひとつの食材をじっくり噛みしめ真剣に料理に向き合い

ときおり言葉少なにひそひそ声を交わす利用客たちの

異様な雰囲気の説明がつかないのだ

 

翌日訪れる久米島の浜辺で

太陽に向かって両手を広げ真剣に祈りを若い女性を見た

それと同質の"スピリチュアルな沖縄"の一端を、島野菜の店にも見た

・・なんていったら、大げさすぎるかもしれないけど

料理の味そっちのけで、店内に広がる沈黙のワケに思いを巡らせる

この写真を撮ったときも、10名程度の客がテーブルについていたけれど

まるで無人の古民家にいるかのごとく、話し声ひとつ聞こえてこない

 

最初は料理に使われる島野菜について相方と話しつつ食べていたが

やがて周囲の静けさに圧迫されるように言葉少なになり

いつしかふたりとも黙々と食事に専念していた

 

気が付けば、膳に載せられた皿はすべて空になり

「ごちそうさま、おいしかったです」と店の人に声をかけて席を立つのだが

現実には、"身体にいい食事をいただいた"という記憶しかない

なんか口や舌より、健康長寿とか医食同源とか〈頭で味わった〉印象が残っている

間違いなく島野菜は美味しかった!

でも、どこか宗教っぽい"スピリチュアル臭"を感じてしまう

もっとフツーに食べればいいのにーーと余計なチャチャを入れしたくなったよ

たまたま店にいた間だけ、ヘンな空気が漂っていたのかもしれないけどね

 

ではでは、またね。

寒緋桜から糸芭蕉へ 沖縄うたた旅 2024.1.28-31 2日目② PLOUGHMAN'S LUNCH BAKERY🚘名護城公園🚘大宜味村立芭蕉布会館

2024年1月29日(月) ホテル🚘PLOUGHMAN'S LUNCH BAKERY🚘名護城公園🚘大宜味村芭蕉布会館

バナナの仲間のイトバショウ、食用ではなく幹から糸(芭蕉布)を作るのだ

 

感動的に美味しいパンを平らげたあとは、北谷から西海岸に出て一路北を目指す

一年前とは違い、空は見事に晴れ渡り、どこを見ても青い空と海ばかり

車の窓を開けては何度もデジカメのシャッターを切った

たぶん名護湾の手前あたり、1月末にしては上々の空模様だ

 

目指す大宜味村まで、残る道のりは4分の1ぐらいか

しかし時刻は10時半を回ったばかり

このまま直行すると予約より2時間も前に到着してしまう

せっかく天気もいいことだし、時間つぶしを兼ねて寄り道することに

名護市内に入ってから道を右に折れ、名護岳のふもとにある名護城公園を目指した

 

実はここ、ちょうど一年前にも寒緋桜を見ようと立ち寄ったことがある

そのときは、名護岳の頂上を目指したものの

ふもとから中腹まで登ったところで時間切れとなり、ギブアップ

天気の方も曇りがちだったため、花見も中途半端なまま立ち去っていたのだ

 

てなわけで、いざリベンジ! 

と、名護桜まつりの会場でもある名護城公園を再訪

今度こそ青空の下で存分に寒緋桜を眺めようと展望台付近で車を停めた、のだが・・

あちこちに立つ桜の木が妙に寂し気

それもそれはず、ほとんど枯れ枝といっていいほど花が咲いておらず

かろうじて日当たりのいい場所の枝先に、赤い色彩が認められる状態だったのだ

1年ぶりの名護城さくら公園だが、開花状況はせいぜい1分か

ようやく枝の先端がほころび始めた寒緋桜を、苦労してファインダーに収める

 

それでも天気のほうは一年前と違い、ほぼ快晴

気を取り直して、展望台の一番高い場所まで昇ってみた

展望台から眺める名護市街・・靄があるのか期待したほどではなかった

なにより景色を引き立てる寒緋桜の濃いピンクが、どこにもない

名護湾の沖合に何隻もの白い船が浮かぶ、何をしてるのかな?

 

もっと桜が咲いている場所を探そうと、展望台の奥に続く遊歩道へと車を進める

ここから名護岳のふもとをぐるっと一周する遊歩道は

速度制限はあるものの、そのまま車で走ることができるのだ

(一年前訪れた時にしっかりと確認しておいた)

 

点々と寒緋桜が並ぶ遊歩道は、普通車がやっとすれ違えるほどの細さ

対向車が来たら、時々設置された退避スペースまで後戻りする必要があった

ありがたいことにそうした事態になることは一度もなく

数分後には、東屋がたたずむ名護岳中腹の広場へと到着した

遊歩道の最高地点(たぶん)となる開けた場所

実は一年前に名護岳山頂を目指したとき、ちょうどこの"東屋ポイント"で時間切れ

そのあと展望台を訪れ、車に乗ってここまで来れることを知ったのだった

 

東屋周辺は日当たりがよく、麓よりも寒緋桜の花が多くみられた

・・といっても、せいぜい2分咲きといったところか

なるべく花の密度の濃い場所を探して、一枚

甘い蜜を出すのだろう、ミツバチがせっせと働いていた

 

無人の東屋で日向ぼっこをしながら、今年最初のお花見を満喫する

それから車に戻って、遊歩道の残りを踏破した(対向車は一台もなかった)

 

さあ、あとはランチの店まで一直線!

と言いたいところだが、まだちょっとし気が早い

予約した13時まで、1時間以上も余裕があったのだ

古宇利島を左に見つつ、国頭方西街道を北上してゆく

店の前で待つのももったいないから、先に大宜味村を攻略しよう

目指すは、大宜味村芭蕉布会館

沖縄の伝統工芸・芭蕉布のあれこれが見学できるらしい

しかも嬉しいことに、入場無料

 

予約した「笑味の店」の脇を通り過ぎ

3分ほど走れば芭蕉布会館のある集落・喜如嘉(きじょか)だ

公民館向かいの駐車場に車を停め、会館に続く緩い登り坂を歩いてゆく

と、左手に一面の鮮やかな緑が

芭蕉布の元になる植物・糸芭蕉の畑だった

バナナの木そっくりのイトバショウ

食用バナナ(実芭蕉)とは異なり、幹から採取した繊維で生地(芭蕉布)を作る

それにしても(食用)バナナそっくり

実際バナナかと見間違う実がたわわにできるが、種が多く食用には向かない

建物の入口手前には、詩人・山之内獏の歌碑「芭蕉布

では、お昼過ぎの芭蕉布会館に"おじゃまします"

広さはバレーボールのコート一面ぐらい(もうちょい小さいかな)

こぢんまりした空間に昔の道具や資料などの展示物、芭蕉布を使った品々、記念品、

芭蕉布作りビデオを鑑賞するエリアなどが設けられている

ここ喜如嘉で古くから伝えられてきた芭蕉布作りにまつわる品々

芭蕉布の一部を額に入れたもの、とってもオシャレなインテリアになりそう

芭蕉布製のお札入れに心が動くも、100パーセント手作りだけに・・・た、高い~

 

カウンターにいた親切な女性職員の説明を聞きながらあれこれ眺めていたら

あっというまに予約時間の10分前

2階の作業場で実際の芭蕉布作りが見学できるが、ちょうど昼休みなのだとのこと

それを聞いて、お昼ごはんを食べた後、もう一度おじゃますることを告げ

いったん芭蕉布会館をあとにする

建物の外に出て、背後に連なる丘を見上げると

抜けるような青空の下で、紅い花にも見える木々の梢が・・

道を挟んで駐車場の向かいには、喜如嘉公民館

開放的なようで気軽には入り難い、なんとも言えない佇まい

よく見ると、広い入口の軒先に

暖簾(のれん)のような簾(すだれ)のような、不思議な飾り物が

・・この土地独特の"しきたり"なのか、謎多き集落・喜如嘉

そのへんの探究は後にして、とりあえずは昼飯だ

島野菜料理で評判の「笑味の店」へGO!


ではでは、またね。

毎朝食べたい"ハードパン" 沖縄うたた旅 2024.1.28-31 2日目① ホテル🚘PLOUGHMAN'S LUNCH BAKERY

2024年1月29日(月) ホテル🚘PLOUGHMAN'S LUNCH BAKERY

一年前より遅咲きだったが、この春も可憐な寒緋に逢えた(名護城公園にて)

 

沖縄旅2日目は、ランチがメインイベント

北部大宜味村の「笑味の店」で島野菜を使った料理をいただくのだ

完全予約制だったので、出発前に予約を済ませておいた

とりあえず、その時間(13時)まで現地に到着すればいい

 

朝食はホテル徒歩圏でもよかったのだが

あいにく那覇中心部でこれといった店が見つからない

いい感じの空腹状態でランチに臨みたいから

近頃はやりのビュッフェバイキングはありえない

(朝食ごときに2000円払う気にもなれなかった)

かといってコンビニで済ませてしまうのも避けたいところ

 

結局、やんばるに向かう途中で朝から開いてるパン屋に立ち寄り

軽めのテイクアウトをしていこう、ということに

 

んで、あまり遠回りしない場所に適当な店がないかと探してみたら

ホテルから30~40分ほど北上した北中城に
PLOUGHMAN'S LUNCH BAKERY というこじゃれた名前のパン屋を発見

沖縄の店しては早い朝9時から営業しているみたいだったので

少しゆっくり支度して、朝8時半にホテル脇の駐車場を出た

 

朝の那覇は例によって通勤ラッシュがひどく

あちこちで小さな渋滞に巻き込まれたが

本島中央を北へ伸びる国道330号線に入るとスムーズに流れはじめ

9時10分過ぎごろ、小高い丘の中腹にある専用駐車場に停めることができた。

坂を上った正面に設置されていた店の案内板

表示の通り、駐車スペースは右に、店舗は左にと分かれており

両者は150メートルばかり離れていた

ちょっとしたお散歩気分で、丘の上に建つBAKERYまで登っていこう

 

ちなみに、開店直後&こんな辺鄙(失礼)な場所だというのに

早くも駐車スペースには2~3台の車が停まっている

もしや結構な人気店なのでは・・と遅ればせながら気づいた

 

前述の通り、パーキングを出てからいったん坂道をくだり

案内板の手前を過ぎて、しばらく細い道をたどると

左手の山腹に、小さな石段が上に続いていた

生い茂った木立に隠れるような数十段をよっこらせと登っていくと・・

ツタのからまるPLOUGHMAN'S LUNCH BAKERYの店先

パン屋さんというより、別荘とかコテージと呼びたくなるたたずまい

とにもかくにも、扉を開けて入ってみると

そこは、正真正銘のパン屋さんだった

入ってすぐ左手の棚の上に、まるまるとしたパンが勢ぞろい

あきらかに作り立てだとわかる、甘い小麦の香りを漂わせている

ざっと見たかぎり、総菜パン(おかずパン)的な品はなく

いずれも小麦粉ベースに色々な食材を練り込んで焼いた

いわゆる「ハードパン」のたぐいらしかった

 

パンが陳列されているのは、入口周辺のエリアのみ

その先に広がる店内にはテーブル席が並べられ

先客と見られる数組のカップルが静かに朝食(ブランチ?)を食べていた

 

店を切り盛りしているのは、髭の男性とそのパートナーらしき女性

どこかアーティスティックな雰囲気をまとっている

ひとことで言うと、頭のてっぺんからしっぽの先まで"オシャレなベーカリー"なのだ

ひょっとして、ここは味より雰囲気を楽しむスポットだったのか

・・・頭の片隅にひねた邪推が浮かぶが、気を取り直して目の前のパンに目を戻す

いずれも握りこぶし程度の大きさで、お値段は1個あたり400円程度

強気な値段設定だなぁと思ったが、すぐそんな先入観は消し飛んだ

適当に選んで購入した2つのパンが入った袋を持った瞬間

そのずっしりとした重さに驚かされたのだ

ーーこいつは、見た目よりもはるかに食べ応えがありそうだぞ

 

2個のハードパンが入った袋を抱え、徐々に膨らむ期待を胸に車へと戻った

しばらく走ったところで自販機を発見し、飲料ボトルを購入

そのまま車内でパンにかぶりつく

 

まずは、なんといっても絶妙な噛み応え

硬すぎず、そのくせ柔らかすぎない食感に引き込まれた

そして噛めば噛むほど押し寄せる小麦・バター・アーサーetcの風味・風味・風味

「味より雰囲気を楽しむスポット」だなんて、とんでもない

ここ数年、いや十数年で口にしたパンのなかで文句なしのナンバーワンである

 

初日入った糸満漁民食堂のときも頭をよぎったけど

今回の沖縄旅行は、かつてないほどの"グルメ運"に恵まれたらしい

たった3度の食事で「沖縄に来たら絶対入りたい店」が2カ所もできたのだから

 

おいしいパンだったね~~と相方と感動を分かち合いつ、一路車はやんばるへ・・

 

ではでは、またね