これが、"源泉かけ流し"の真相だ! 『ヴィジュアル版 正真正銘五ツ星源泉宿66』小森威典 周回遅れの新書Rock

本書で明かされた「事実」は、小学生でも理解できるほど明解だ。

たとえば、以下の一文である。

知っているつもりで意外と知らないことは少なくないのですが、その一つが全国に温泉宿泊津製が約1万四三八〇軒〔※2011年時点〕ある中で「一〇〇%源泉かけ流し宿」はたったの1%しかないという事実でしょう。14p 

しかも、それで話は終わらない。

ところが、「一〇〇%源泉宿」の概念が壊れるような事実に直面しました。「湯舟に生(き)のままの源泉が空気に触れることなく流れ込み、それが一年を通して適温に保たれている」という条件を満たす温泉宿は、限りなくゼロに近いことが判明したのです。  なぜなら、夏と冬では外気の温度差が三〇度以上あり、その時々の条件に応じて、加温するか加水するかしないと、人が快適に入浴できる温度にならないからです。     でも加水、温水すれば、それはもう「生のままの源泉」とはいえません。17p 

 

ここまで読んで、ふっと疑問を抱いた方も少なくないだろう。

たとえば、こんなふうに。

ーーちょっと待て。

確かに水を加えたり加熱したりしたら「源泉そのまま」ではなくなるけど

その程度の"調整"は誤差の範囲内なんじゃないのか・・と。

正直うたた(俺だ)も、そこまで厳密にチェックする必要があるのか。

単に"重箱の隅を楊枝でほじくってる"だけじゃないのか。

などなど、むらむら反論したくなってきた。

 

だが、著書が言葉通りの「源泉かけ流し」に固執する理由こそ、まさにそこなのだ。

源泉の質がたしかで、湧出量も十分なら、少々加水していても構わないのではないという人も、いらっしゃるかもしれません。もちろんそう思う方はそれでいいかもしれませんが、加水すれば、温泉は死んでしまうのです。28p

この「温泉が死ぬ」とは、宗教的な比喩ではなく、科学的な「事実」なのだ。

ちょっと長いけど、引用させていただく。

温泉はもともと"還元系"で、湧出後、時々刻々生きているがごとくダイナミックに変化し、最終的に酸化されて何ら変化しない水溶液となる、その変化を温泉水のエージング(老化)と言うそうです。                            われわれの皮膚は、加齢によって金属が錆びるのと同様に酸化します。すなわち、それが老化なのですが、本物の温泉には還元作用、すなわち参加を抑制し元に戻す作用があるというのです。                               したがって、新鮮な還元系の温泉に入浴することは、皮膚の酸化および老化の抑制効果が期待できるわけですが、源泉が湧出してから長い時間が経過したり、水や空気に触れることで、その効果がなくなるということを、大河内先生〔※法政大学工学部教授〕はORP度(酸化還元電位)法という方法を使って、科学的に証明したのです。〈中略〉 加水の動機が源泉不足の埋め合わせという悪質なものであろうが、やむを得ぬ処置であろうが、水を加えてしまえば、温泉が変質してしまうことに変わりないわけですから、私は、これは認めるわけにはいきません。29-30p

 

むろんこの「事実」も、いち大学(研究機関)の教授が主張する「一説」に過ぎない。

また、「新鮮な還元系の温泉に入浴した場合」と「加水した温泉に入浴した場合」の

"効果"の差がどのくらい大きいかなど、具体的なデータも示されてはいない。

それでも、『本物温泉の絶大な威力』(48ページ~)に書かれた〈具体例〉に接し、

日本各地で実施されている〈本物温泉を利用した医療〉を読んでみると

少なくとも、"正真正銘の源泉かけ流し温泉"には他にはない健康効果が備わっている!

と、確信せざるをえないのだった。

 

でもって、本書の3分の2にあたる後半部分(第二部)は

著者が自ら足を運んで調査した1600軒以上に及ぶ温泉のなかから

文句なしに「源泉かけ流し」と認める66の《五ツ星源泉宿》が紹介されている。

 

温泉宿が大好きで、毎年10軒程度は泊ってきたうたただが

本書に記された温泉に入ったのは、わずか2ヶ所のみ。

次回からは頑張ります・・としか答えられない、ていたらくである。

ともあれ、本書のお陰で〈絶対に行きたい!温泉宿〉が60軒以上増えてしまった。

この調子では、100歳まで元気いっぱいに過ごせたとしても

とうていクリアできそうにない。

壁伝いにぎっしり並ぶ1000冊以上の未読本ともども

人生が2度あったとしても、全然足りない"マイ・ノルマ"なのだった。

 

どれほど明確に否定されようと

"売り手側"にとってマイナスイメージとなる情報は、容易に拡散されず

いつの間にか「従来の常識」の中に埋もれ、消え去っていく・・・

今回、本書を通じて初めて知った『間違いだらけの温泉常識』も

大部分の温泉宿がひた隠ししている〈都合の悪い真実〉を

反論の余地なく暴露したにも関わらず

初版の発売から10年以上の時が経った今なお

このショッキングな〈科学的事実〉は、黙殺されたまま。

全国各地の温泉宿は「源泉掛け流し」という偽りの謳い文句を平然と掲げ

本来表示する資格のない効能を利用客にアピールし続けている。

 

自分たちにとって都合の悪いことは"なかったこと"にし

逆に0.1%でも"可能性"が残っていれば、御用学者を動員し大々的に宣伝しまくる。

ーーウソだとバレさえしなきゃ、何をアピールしようが言論の自由なのか!?

健康食品・ダイエット法・美肌美白・ガンの特効薬etcetc

人間の夢や希望をエサにする業界において

決して揺るぐことのない、商売哲学なのだよなぁ。

 

ではでは、またね。