再訪確定。次回は"紅葉狩り"だ! 奥日光&湯西川ふたり旅 2022.5.9-11 2日目③ 戦場ヶ原散策~湯ノ湖畔⇒道の駅日光⇒湯西川温泉

2022年5月10日(火) 日光湯元~戦場ヶ原⇒湯西川温泉

     階段の途中にいた親子ウサギ。調度品ひとつひとつが、趣深い宿。

湯ノ湖畔から戦場ヶ原を通って中禅寺湖へと、車は走る。

雲の中を進んでいたような昨日とは打って変わって

どこもかしこも陽射しでキラキラ輝いて見える。

とりわけいろは坂を下るあいだ、どちらを向いても新緑のトンネルが連なる様は

名高い紅葉の時期とはまた違う絶景を、たっぷりと堪能させてもらった。

むろんハンドルを握らず、助手席でボーッとしていられるから

こんな能天気な感想を書けるんだけどね。

 

ともあれ、気持ちいいほど空いてる道を快調に走ること1時間たらず。

昨日も立ち寄った「道の駅日光」の駐車場に、車を入れる。

完全平日(火曜日)とあって、半分ほどが空きスペース。

様々な名産品が並ぶショッピングエリアも、のんびり見て回ることができた。

さっそく宿でもらった買い物クーポンを使い

バウムクーヘンやおかきなど日持ちするものを選び、しっかり使い切った。

 

再び車に戻り、国道121号線をひたすら北上。

鬼怒川温泉から川治温泉と、日本有数の温泉歓楽地をかすめてゆく。

車窓から眺めているだけでも、閉鎖したり廃墟のようになった温泉宿が目につく。

ここにもまた、"コロナの傷跡"が・・・

 

とはいえ、そんな感傷に浸るのも一瞬のこと。

青空と新緑のコラボレーションが、沈んだ気分をあっという間に跳ね上げる。

声にならない歓声をお供に、車は五十里湖畔から湯西川湖畔へ。

道の駅湯西川の前を、閉店時間の16時ちょうどに通り過ぎたと思ったら

15分後には、湯西川温泉・平家の里にある、この日の宿に滑り込んでいた。

 

途中車内から「到着は16時を過ぎそうだ」と電話していたからなのか

門前の路上に初老の職員が待っており、駐車スペースまで誘導してくれた。

行列を作って頭を下げるような"おもてなし"はゴメンだが

万が一にも迷わぬよう、労を惜しまず迎えてくれる配慮には頭が下がる。

その後も職員に案内され、荷物を持って母屋の入口へと向かう。

どっしり構えた建物も風情があり、そのくせ華美ではない。

――――じわじわと"いい宿"の気配が、漂ってきた。

 

    玄関正面のタペストリー?。真っ暗なのは、夜の10時に撮ったから。

      左手にロビーへの登り階段が伸びる。これも夜の写真。

 

広い玄関に入ると、正面には巨大なタペストリー?。

おそらく題材は、この地に伝わる平家伝説にまつわるものなのだろう。

壁面に骨董品らしき壺が点在する木造階段を登ると、二階が受付ロビー。

ロビーを兼ねたこの広く高い空間にも、様々な楽器や骨董品が並んでいた。

 

         夜の受付&売店。当然、昼間はもっと明るい

        部屋に行くには、この階段を登り切らないと・・

                                さらにこちらを、もう"ひと登り"・・

 

・・疲れてきたので、あとは入手したパンフから引用したい。

「樹齢400年以上の欅、栗、栃、檜などの銘木をふんだんに」使った『銘木の館』

そう書いてあるだけあって、とにかく建物中の"木の風景"が美しい。

チェックイン手続きを済ませ、階上にある部屋へと移動するあいだも

広くて長い木造階段や、飴色の木組みに目を奪われ、しばしば立ち止まってしまう。

 

           ようやく最上階のフロアに到着。

          今回泊まった部屋。居心地、すこぶる良し!

         周囲は、山だらけ。レジャー施設は皆無。

 

案内してもらった部屋は、本館最上階の角部屋。

ゆったりした和室で、窓から雄大な山並みが見渡される。

さっそく、宿泊客で混雑する前にと、本館大浴場へと足を運ぶ。

実はこの宿には、露天風呂と内湯を合わせて6つの湯殿が備わっている。

内訳は、露天風呂付き本館大浴場、大露天風呂、貸切露天風呂の三つが

それぞれ男女別に用意されているのだ。

パンフレットには、

いずれも源泉掛け流しの豊富な湯量と泉質の良い効能豊かな温泉です

とあったが、体を洗うことができるのは本館大浴場のみ。

戦場ヶ原歩きでたっぷり汗をかいた身だから

なにはなくとも頭と体を洗ってさっぱりしたかった。

ゆえに最初のひと風呂は、迷わず本館大浴場へ。

 

いくつも階段を下りて、フロント&ロビーを突っ切り、その先の内湯へ。

男風呂の扉を開け、足元に目をやると・・ひとつもスリッパがない。

先に到着した宿泊客は、みな本館の外にある大露天風呂に入っているようだった。

おかけで、白い湯気がもうもうと立ち込める大浴場も

頭上の緑と青空が眩しい小振りな露天風呂も

事実上の貸し切り状態で、心ゆくまで満喫することができた。

 

          「無人」をいいことに、内湯をパチリ。

    調子に乗って、露天風呂も一枚。・・・メッチャ、気持ちよかった。

 

強烈な硫黄臭を漂わせた白濁湯だった昨日の宿とは泉質がまるで違い

こちらは一見した限りでは、無色透明。

パンフレットにも「性状 無色透明及び無味。わずかに硫黄水泉臭を有す」とある。

とはいえ、なぜか長時間湯船に浸かっていることができず

10分ほどで「・・もう出ようかな」という気分になってしまう。

それくらい、"濃厚な成分"を感じる温泉だった。

 

せっかくの〈貸切風呂〉だからと、出たり入ったりしたものの

結局、30分ほどでギブアップ。

なかば湯あたりしつつ、自室への階段をふらふら登っていく。

すぐに、部屋で待ってくれていた相方とバトンタッチ。

(部屋のカギがひとつしかないため)

幸い、40分ほどで戻ってきた彼女も、独占状態に近い入浴ができたらしく

「当館の源泉はお肌がツルツルになる美肌効果の高い天然温泉です」との謳い文句通り

ピカピカになった肌触りに驚いていた。

 

         山の端に影が伸び、お腹の虫も鳴き出した。

 

その後、部屋でのんべんだらりと過ごすうちに

ほどなく夕食の時間(午後6時)を知らせる電話が入る。

天然の銘木で建造された囲炉裏のお食事処」へ、いそいそと向かう。

等間隔に囲炉裏が切ってある大広間に、部屋ごとに宿泊客が座るシステムだったが

敷地が広く天井も高いので、隣が気になることは皆無。

むしろ開放感があるぶん、個室よりもゆったりと楽しむことができた。

 

そして、今夜のお目当て「囲炉裏会席」。

パンフレットには、昔ながらの囲炉裏端で川魚、味噌ベラ、ばんだい餅などを焼きながら湯西川の銘酒を味わっていただけます。となっている。

宿泊客の名が記された囲炉裏席に案内されると

すでに一の膳と、囲炉裏火の回りに串刺しにされた食材が用意されていた。

 

    用意されていた一の膳。これだけで、何回「うまい!」と発したことか。

    名物の囲炉裏料理。むしろこっちの味がフツーだったのが、驚き。

 

もちろん「絵になる」のは囲炉裏料理の方だった。

しかし、味に関しては、それ以外の「会席料理」の方が印象に残っている。

なぜなら、この席で供されるひと皿ひと皿が、

地元の新鮮な食材を使った料理、なんてレベルではない絶品揃いだったからだ。

これは、よっほど料理長が工夫を凝らしているに違いない・・

前菜・温物・お造り・煮物・揚物・鍋物と、続々登場する料理を次々詰め込みながら

(もったいなくて残せなかった)、見事な"技"にひたすら感激していた。

       

もう、これ以上は入らない・・

相方と二人して、お腹をなだめつつ

それでもスペシャルサービスの「特選和牛」に嬉しい悲鳴を上げたり

〆のご飯までお代わりしたり。

デザートに出た「黒ゴマプリンとフルーツ」まで、ひとつも残さず平らげた。

 

どれが一番美味しかったか?

いずれも甲乙つけがたく、ひとつに絞ることができない。

確実に言えるのは、"いちばん普通"だった料理が

「囲炉裏で焼いたイワナ」ということ。

並みの温泉旅館なら〈名物〉のはずのひと品が、最もフツーに思えたのだ。

それくらい、この夜の食事は"特別だった"と断言できる。

 

料理を運んで来てくれた女性に、季節ごとに内容が変わることを聞いたら

再訪せずにはいられなくなった。

――次は、紅葉が綺麗な秋に来よう。

同じように感激する相方と、早々と旅行計画を立てた次第。

内房の網本温泉に続き、"行きつけにしたい宿"の二件目が、やっと見つかった。

 

      夜のロビー。よく見ると、あちこちに面白いものが・・

         いちいち絵になるので、つい撮ってしまう。

     部屋の入口に置いてあった「カメムシ捕りキット」。すごい!

 

膨れた腹を抱え、苦しい苦しいと唸りながら部屋に戻る。

敷かれた布団に倒れ込み、しばし意識を失うものの

午後10時過ぎに、むっくり起き出し、タオルをひっつかむ。

大露天風呂が開いているのは、夜の12時まで。

それまでに、なんとしても入らなければ

貸切露天風呂の予約をキャンセルした意味が、なくなってしまう。

 

階段を降り、薄暗いロビー&フロントを抜け、玄関まで降りる。

外履きのサンダルに履き替え、月明かりが降り注ぐ屋外へ。

左手に広がる駐車場の向かい側に設置された、大露天風呂の灯りを目指した。

 

      暗闇にポツンと灯る明かり。うたたよ、あれが風呂の灯だ。

              いざ、大露天風呂へ。

      脱衣場には、三度笠。雨や雪が降った時に被るらしい。

 

しんと静まった入口の戸を開けると、ラッキーなことに、またもや無人

本館大浴場の5~6倍はあろうかと思える、広い湯船にとっぷりと身を浸す。

見上げた夜空には、欠けた月と明るい星が七つ八つ・・。

なんとか北斗七星は見つけたが、あとはどうでもよくなった。

 

         夜10時20分。この暗さが、たまらない。

 

気が済むまで温泉を満喫し、本館に戻ろうと戸口を開けたところで

ちょうど入って来ようとする客と、顔を見合わせる。

示し合わせたようなタイミングに、どちらからともなく苦笑いを浮かべたのだった。

 

        傘を被った月に照らされ、露天風呂を後にする。

            風呂も食事も、文句なし!

 

ではでは、またね。