2018年11月27日(火) 成田⇒ホーチミン⇒ビエンチャン
ビエンチャンの宿「Vayakorn Inn」
アンコールワット観光に向かう団体客に引っ張られて
プノンペン空港で降りてしまいそうになったが
ドタンバで出入国カードを見直し、なんとか回避できた。危ない危ない。
乗客率3割ほどまで下がった機内に留まり
無事定刻18時55分、ビエンチャン郊外のワットタイ国際空港に到着した。
日本の地方空港より小ぢんまりした施設内で
簡単な入国審査などを受け、何の問題もなく出口からロビーへ。
まずは両替所に向かい、日本円をラオスの通貨キープ(Kip)に替えてもらう。
ちなみにこの時のレートは、10000キープがおよそ130円。
ゼロを2つとって2~3割増しにすればOK、と頭に叩き込む。
次に、ダメ元でプリペイドSIMカード購入にチャレンジしてみたら
簡単な英単語のやり取りだけで、すぐ5日間有効のカードの入手に成功。
これで、旅行中での最低限のネット環境も確保できた。
どうやら予想していたより、観光客に過ごしやすい国らしい。
ともあれ、スムーズに最低限の準備を終え、いよいよ空港ビルの外へ。
時刻は夜の8時近く。あたりは闇に包まれている。
11月末とはいえ、東南アジア特有のもわっとした空気が身体を包む。
スーツケースをゴロゴロ引っ張る我々ふたりに気付いた
ガソリンスタンドの作業服のようなお揃いのユニフォーム姿の男たちが
わらわらとやって来て、口々に「タクシー?」と声をかけて来る。
だが、ネットで空港と市内を結ぶ「エアポートシャトル」の情報を得ていたので
「ノー」と手を振り、パス乗り場を目指す。
事前に調べた限りでは、最終2145空港発(40~60分間隔 所要20分)
ひとり15000キープで、ホテルの近くまで乗せてくれるはずだった。
情報どおり、出口を出て右に向かうと、端っこのところにバス停らしき目印を発見。
パネルに運行ルートらしきものも確認できた。
しかし、時刻表は見当たらず。定時運行は期待できそうになかった。
ま、気長に待つさ・・ベンチに腰かけ、ほっと一息。
それにしても、ラオス最大の国際空港なのに、なんだかとても静かだった。
とはいえ、誰もいないわけではない。喋り声も少しは聞こえてくる。
さっき声をかけてきた制服の人たちだけでも、5~6名は正面にたむろしている。
だけど・・そう、声が小さいのだ。
この数年、何度か降りたベトナム各地の賑やかな空港とは、対照的な静けさだった。
もともと大声で騒いだりするのは性に合わないので、こうした静けさは大歓迎。
どうやら、思ったよりのんびりできそうだぞ。
何ならフルーツらしき香りが混じる夜の空気を深く吸い込みながら
初めて降り立ったラオスへの期待が、高まっていく。
・・空港の正面脇に座ったまま、能書きばかりを並べてしまった。
なぜなら、待てど暮らせどバスがやってこないから。
ベンチに座りぼーっとしている間に、たちまち30分が経過。
さらに10分が過ぎたが、パスの気配は毛ほども感じない。
ここにいたって、ようやく、先程の作業服姿の若者が発した言葉の断片が蘇る。
あのとき「タクシー?」の掛け声に、「ノー、バス。エアポートシャトル」と答えた。
すると彼は、「ノー、バス」と応じたような記憶が・・
ひょっとしてあれは、「(今日は)バスは来ないよ」という意味だったのでは!?
バスを待ち始めて、45分後。
よっこらしょと立ち上がり、空港の正面出口付近まで戻り
さっき声をかけてきた若者に、「バス、フィニッシュ?」と、声をかける。
すると「イエス、フィニッシュ」。これも小さめの声で答えてくれた。
・・やっぱ、そうか。じゃ、タクシーでもしょうがないな。
諦めて、予約しておいたホテル名「Vayakorn Inn」を書いた紙を差し出し
「ホテル、ワイヤコーン・イン。OK?」と伝えると
にっこり笑って「オフ・コース」。
軍服を思わせるごつい出で立ちを裏切る柔らかな応対で
スーツケースを受け取り、車に乗せてくれた。
初めて訪れる国の空港では、いつも警戒心を最大限に高めてしまう。
特にインドや東南アジアなど、白タクや吹っ掛けタクシーが活躍する可能性があると
パンパンに膨らんだハリセンボンのように
疑いの眼差しを四方八方に向けるのが、習わしとなっている。
慣れない観光客をカモにする「悪者」たちが手ぐすね引いているに違いない。
そんなふうに疑っていたのが恥ずかしくなるくらい
制服姿のタクシードライバーは、終始穏やかで親切な対応だった。
ガイドブックに書かれた定額料金の7ドルで、ホテルまで送り届けてくれた。
ふわっとした笑顔で軽く手を振り、走り去るドライバーを見送るうち
入国以来ずっと張り詰めていた肩の力が、一気に抜けていく。
そして、ようやっと、次のように思い始めたのだった。
・・これまで訪れた東南アジアの国々とは、かなり違うような気がするぞ。
結局、夜の9時を回ってしまったけど
2泊の予定で予約したビエンチャンの宿「Vayakorn Inn」に足を踏み入れると
ますますタイ・ベトナム・マレーシアなど
他の東南アジア諸国との違いが、明白になっていった。
もちろん、夜も更けていた、ということもあるのだろうが・・
レセプションにいた若い男性スタッフの対応が
これまた、とっても穏やかで優しいのだ。
それも、ベトナムなどでしばしば体験する
こちらに身体を摺り寄せて笑い掛ける、といったベタベタした親しさではない。
半歩後ろに下がって、そっと控える。
いわば、良くできたメイドのような距離感で、終始接してくれるのだ。
ホテル二階の踊り場からの眺め
人柄ばかり語ってしまったが、ホテルの建物も同じく「穏やか」。
たまたま予約した宿が、木目を生かしたオールドスタイルだったこともあるが
裕福な誰かの邸宅に招かれたかのような、シックで暖かな総木造の内装。
レセプションから、広い階段が上階へと延びている。
しかも階段の手前には靴箱が。客室に行くためには、靴を脱ぐルールなのだ。
日本の風習と微妙に重なっていて、なんか嬉しい。
いきなりベタボメしてしまったけど、正直これだけでもラオスに来て良かった・・
と、しみじみ思ってしまったのだった。
これでもメインストリート!?
ともあれ、妙に落ち着くホテルの部屋に荷物を置き
すぐ一階に降りていく。
空港でモタモタしていたもんで、はや時刻は夜の9時半少し前。
急いでレストランを見つけないと、夕食を食べそびれてしまうのだ。
前もって「歩き方」で、夜遅くまで営業している店をチェックしておいたので
300メートルほどしか離れていない、その店を目指した。
ホテル前の細い道から、大通りを越えて、まっすぐ南へ歩く。
メインストリートを50メートルも離れると、あたりはたちまち闇に包まれ
とても一国の首都とは思えない静けさと、木々や花の香りが漂い始める。
裸電球がポツポツと灯る、そんな農村じみた道の途中に、レストランはあった。
Banlao Beer Restaurant(バーンラオ・ビア・レストラン)。
「緑に囲まれたテラスで食事が楽しめるレストラン。ライトがとも夜の雰囲気もいい」
と紹介されていたが、闇の中で眺めるとジャングルの中の廃屋(失礼)にも感じられる
カウンター席以外はほぼ野外といった雰囲気の、素朴な店だった。
で、やっばりここも、静か。
店のおばちゃんもニコニコして、愛想はとてもいい。
声の音量は小さく、言葉数も少ない。
でも、居心地は決して悪くない。
いい意味で、〈ほっとかれてる感〉が、すごくするのだ。
レストランの入口
とにかく、ここで、ラオス最初のごはんにありついた。
ラープ・カイ(鶏肉にレモン、ライム汁、香草などを混ぜて炒めた料理)
カオ・クア(ラオス風チャーハン)
カオ・ニャオ(もち米)など、ラオスを代表する料理と、ラオスビールで乾杯。
タイとベトナムに挟まれた国だけに、両隣の料理との共通点を感じる。
しかし、隣国のような香辛料を利かせたパンチは伝わって来ない。
全体的に、素材の味を立たせるソフトな味付けなのだ。
要するにーー素朴。
でも、しっかり手はかかっている。
カオ・ニャオなんて、もち米を竹筒みたいなおひつに入れて蒸しただけだが
これが、妙に旨い。
結局、ラオス滞在中は毎晩これを食べていた気がする。
そんなこんなで、移動につぐ移動、ときどき失敗&時間の無駄を経て
なんとか宿と晩飯にありつけた、初日。
けれど、予想を大きく上回る好感触。期待は膨らむばかり。
さあ。いよいよ明日から、本格的な「ラオスの旅」がスタートだ!
ではでは、またね。