毎月毎月、手を変え品を変え出版されている
いわゆる「異世界モノ」を代表するシリーズのひとつ。
2014年1月以来、3ヶ月に1冊というハイペースで刊行が続いており
(先月末、26巻が発売された)
本編以外にも「短編集」が6冊、「外伝」が4冊出ている。
そんなわけで、ジャンルごちゃまぜで読み漁っているオッサンは
"第✕章"と呼ばれるひと区切りがついた時点で
4~5冊まとめて、ウェイティングリストにアップ。
可及的速やかに読むことにしている。
ちなみに今回読んだのは、外伝④と短編集④⑤
本編は「第6章」に相当する21~25巻の5冊。
記憶を呼び戻すため、先に20巻(第5章最終巻)を再読したので
合計9冊ぶっ通しで読破したことになる。
いかに〈人気ラノベシリーズ〉とはいえ、これくらい(既刊36冊)続くと
最初に設定したアイデアだけでは、話のレベルが維持できず
ついつい「新たなる強敵」「ライバル」「ステージ」をでっちあげ
それに対し主人公らが「新技・新アイテム・新キャラクター」で対抗していく
いわゆる《エスカレーションモード》になだれ込むケースが少なくない。
(超能力とかバトル漫画によくあるパターンだよね)
ましてや、本作の舞台は
"どんな無理難題でも作者の筆先ひとつで実現してしまう"「異世界モノ」だ。
実際、数多くの人気異世界シリーズが、巻を重ねるごとにマンネリ臭を強めていき
外から〈刺激〉を取り込み続けるものの、徐々に面白味を失っていく姿を
何度となく見て(読んで)きた。
そんななかにあって、25巻を重ねたいまなお、本作「Re:ゼロ」は
そうした"アイデア一発勝負"の〈お手軽異世界ラノベ〉とは一線を画す
充実の内容と、高い完成度を維持し続けている。
もちろん、ラノベの"お約束"ともいえる
悪ノリ&コミカルなギャグ(やりとり)の面白さは、文句なし。
あの手この手で、多彩なキャラクターの魅力を引き立てるいっぽうで
登場人物ひとりひとりの背負う「人生?」にも深く分け入り
誰もが心に抱く悩みや苦しみに通じる、シリアスな世界を描き出していく。
だが、何よりも異彩を放つっているのが、主人公・ナツキスバルの描き方だ。
ひきこもりだった一人の少年が、ひょんなことから異世界に転生。
見ず知らずの新天地で、ゼロから人生をやり直し
自分でも気づかなかった様々な可能性(力)を獲得していく・・・。
あらすじだけ読むと、とっくのとうに見飽きた〈自己実現物語〉なのだが
本作の主人公は、そんな安易な夢物語とは、ある意味対極に位置しているのだ。
なにしろ彼は、強くも、カッコよくもなく、必殺技の持ち主でもない。
自意識過剰で、自己顕示欲ばかりが際立った、中二病まっしぐら。
"フツー"どころか、"ダメダメ少年"でしかない。
しかし、ひとつだけ、ある特異な力?が備わっていた。
それはーー『死に戻り』
死ぬ(殺される)と、時間を遡った〈あるポイント〉まで自動的に転移。
そこから人生をやり直すことができる、というものだ。
要するに、RPGゲームのシステム「セーブ&リスタート」だと思えばいい。
(ただ、自分でセーブポイントを選ぶことはできない)
本人が望んだわけではもない、この『死に戻り』のおかげで
あっけなく終わるはずだったナツキスパルの異世界における人生は
「(襲い掛かる理不尽な)死」と「強制的リスタート」の繰り返しへと変貌。
否応なく彼は、〈どうすれば死の運命から逃れられるのか〉という
文字通り"命を懸けた戦い"に挑まざる得なくなるのだ。
その後、様々な出会い・対立・争いなどを続けるなかで
ナツキスバルは、少しずつ『死に戻り』の機能を使いこなし
多くの人々(これまたお約束通り大半が女性)と関わりになっていく。
だが、『死に戻り⇒死の回避』の結果として、異世界での実績を積み上げ
どれほど周囲から「英雄」と称えられることになろうとも
彼は、これっぼっちも、〈立派な人間〉にはなっていかない。
というか、『死に戻り』を知らない異世界の人々と違って
読者である我々は、彼が幾度となく失敗し、無様に死んでいく姿を知っている。
むろんナツキスバル本人も、そんな自分の実像を、死ぬたびに突き付けられるのだから
最終的に「うまくいった」からといって、手放しで胸を張れるはずもない。
それでも、『死に戻り』の途上で奪われてしまった〈大切なもの〉を取り戻すため
彼は、ありったけの愛と勇気と忍耐を振り絞り、戦い続けるのだ。
(でも、瞬間瞬間を切り取れば、充分すぎるほど勇敢&カッコいいんだけどね)
なんだか、書いてる本人が「中二病」じみた状態になってしまったが
心情的な部分はさておき、構成的に優れていると感じるのは
この主人公・ナツキスバルの「敵」が
単なるRPGゲームの焼き直しである「ザコ⇒中ボス⇒ラスボス」のように
段階的に強くなっていくだけのパターンではなく
各章ごとに根本的に意味合いの異なる「手強さ」をまとって現れるところだ。
しかも彼の"苦闘"は、〈外〉だけでなく〈内〉でも展開する。
自分自身との戦い、なんて言うと安っぽく聞こえるかもしれないが
この〈内外両面における闘い〉こそ、作者の周到なストーリー構成の賜物であり
25巻を越えてなお、本シリーズがワクワクドキドキ感を失っていない
最大の要因だと、勝手に考えている。
いやはや、これもまた、小理屈こね回してるだけだな。
ま、とにかく、読めばわかるよ。
ガチガチの文学作品しか受け付けない方は、ちょっと厳しいかもだけど
アニメもマンガも小説も大好き!な人だったら、きっと後悔しないはずだ。
ラノベならではのハイペースゆえ、ところどころ推敲が足りないきらいもあるが
そのぶん、勢いやドライブ感覚は抜群だ。
そのあたりも含め、秀逸なイラストも愛でつつ、肩の力を抜いて楽しんでほしい。
・・本音を言うと、スバルとベア子のやりとりが一番好きだったり。
ではでは、またね。