年に一度は、読まずにいられない 『ヴィンランド・サガ』幸村誠(1~24巻) 周回遅れのマンガRock 

たしか16か17巻あたりが出たあたりでまとめ買いし

その後、続きが出版されるたび最初から読み返しているので

かれこれ、7、8回は読み返している作品だ。

さすがに20巻を越えたあたりから

「そろそろ1巻から読むのはシンドイんじゃないかな。

 ストーリーや展開はもちろん、細かい表情の変化とか

 コミカルなやりとりまで覚えているんだし」

などと考え、飛ばし読み覚悟でページを開くのだが――

 

まったくもう、困ったことに、何度読み返しても面白い。

近年、着実に進んでいる記憶力の衰えも否定はできないが

それでも、10回近く体験した(見た)寸分違わぬはずの場面に

つい目が止まり、ぐふふっ・・とか気持ちの悪い笑いが漏れてしまう。

 

この、戦いと、暴力と、愛と、憎しみと、友情と、悩みと、葛藤と、希望と、笑いが

絶妙なさじ加減でまざりあい、互いが互いの触媒となって化学反応を起こし

読み進めば進むほど、”きっとこれは、とっても大切なことを描いた物語なのだ”。

――と、思わせてしまう作者の力量に、毎回、驚かされている。

 

この物語がそうであるように

〈戦いの中で子供が大人になる物語〉の大半は

むろん主人公の精神的な成長がメインテーマなのだが

えてして、《戦いに勝てば勝つほど、敵は凶悪・強大になっていく》

というバトル・エスカレーション形式に陥ることが少なくない。

なぜなら、そうやって彼らの世界を際限なく拡大し

その都度、次の一手として新兵器や必殺技を編み出し、勝ち進んでいけば

さほど産みの苦しみにのたうち回らず

ある意味「同じパターンの繰り返し」だけで、ストーリーが転がってくれるからだ。

 

なので、この手の《バトル・エスカレーション・システム》は

格闘・スポーツ・レース・SF・学園マンガなど

実に多くのジャンルにかけて蔓延しており

最初のうちは「おっ、なんかいいじゃん!」とノリノリで読んでいた作品が

気が付いたときには、あたかもアリジゴクにはまったアリンコのように

《バトル・エスカレーション》のレール上で走行開始。

以来、苦闘も挫折も再生も友情も、ことごとくマニュアル化した

陳腐なパターンを再生産するだけで、魅力のかけらもなくなってしまうのだ。

 

実際、半世紀近くジャンルを問わずマンガを読み続けてきたなか

本当なら、ますます面白くなっていくはずの10巻前後で

「ブルータス、お前もか・・」

と呟きたくなる思いで別れを告げた作品が、いくつあったことだろう。

 

だが、嬉しいことに

巻を重ねるたびに高まっていく「面白いマンガ」のハードルを

軽々と飛び越え、期待以上の感動を与えてくれる、ひとにぎりの作品たちがいる。

何度読み返しても、「彼」「彼女」たちの魅力が褪せることはない。

いや、それどころか、読み返すたびに、新たな面白さに出逢うことができる。

(もちろん半年~1年間隔で読み返していることも大きいが)

そんな、いわば【座右のマンガ】のひとつこそ

今回取り上げた、『ヴィンランド・サガ』なのである。

 

第一部と称していいだろう「戦いと復讐の日々」。

第二部の「奴隷時代」。

そして第三部「落とし前?」を経て

いよいよ第四部がスタート。

冒頭から謳われていた遥かな地を目指す旅へと船出していく

様々な縁で出逢い、不思議な結びつきを得た主人公たち。

1000年という時の隔たりなんぞ、なんのその。

レイフおっちゃんとおっつかっつのオッサンもまた、見えない同乗者となり

ともに”はるかなるヴィンランド”を目指して、出航するぞ。

 

ではでは、またね。