今日からナポリで2泊する予定だったが
予約したのはホテルだけで、交通手段は決めていなかった。
なので朝7時に起き、朝食を済ませると、その足でテルミニ駅へと直行。
とにかく、ナポリ行き列車の乗車券を購入することに。
構内の動販売機を使い、言語をEnglishに設定。
クレジットカードを使うと、簡単に手に入った。
だが思ったほど本数がなく、一番早い便でも10時56分発。
なんと3時間近く、時間が余ってしまった。
このまま駅でボーッとしてても、無駄だよな。
歩いて行ける範囲で、観て回ろう!
いったん駅を出て、近場観光に繰り出すことに。
まずは、正面の五百人広場をつっきり
向かいにある「ディオクレティアヌスの浴場跡」へ。
298~309年に時の皇帝ディオクレティアヌスの命により造られた
ローマ時代最大370✖380mの広さを誇るテルマエだ。
一度に3000人が使用できたというから、
お台場の大江戸温泉物語といい勝負なんじゃないかな。
1700年も前にそんな大規模公共施設が当然のように営業していたのは
ちょっとした驚きだ。
しかも、そんな国宝級の遺跡が、ターミナル駅の正面に
むきだしのまま、あっけらかんと建っているのだから、ローマの凄さはハンバない。
残念ながら、内部の見学は予約制らしく、外側から眺めるだけだったが
その一部を使って造られたサンタ・マリア・ディリ・アンジェラ教会には
しっかり入場見学させてくことに。
確かに、浴場跡を利用したとわかるドーム状のくぼみが各所に設置されており
普通の教会とはまったく違う、岩窟のような空気がただよっていた。
建物の外側も浴場跡の、半ば崩れかけた石積みを再利用しており
いかにも廃墟っぽい雰囲気を漂わせていた。
ちなみにこの建物の設計者は、御存じミケランジェロ。
さすがは天才! アレンジも一味違う。
じっくり見たつもりだったが、まだ2時間も余裕があった。
ならばと、近場でチェックしておいた、もうひとつのポイントを目指すことに。
駅を背にして、さらに東北東に歩くこと、7~8分。
レンガ造りのこぢんまりとした建物の前に、たどりついた。
Museum and Crypt of Capuchins(カプチン派修道会博物館)、通称「骸骨寺」。
地下墓所が、そっくりそのまま博物館になっており
5つの堂におよそ4000体のカプチン派修道僧の骨が収められているのだ。
それも単なる墓ではなく、天井・壁・はてはシャンデリアまで人骨で飾られている
〈そちらの趣味の方々〉には、とても有名な観光スポットだという。
建物正面にへばりつくように設置された階段を登り
ガラス張りのモダンなオフィスへと入場。
静かな笑みを浮かべる若い女性係員から入場券を購入し
もいちどガラス戸を通って、いよいよ地下墓所へと降りていく。
感想は・・思ってたより、ちっちゃいな。
5つの堂は、それぞれ4畳半にも満たないドーム状の空間。
その壁や天井のいたるところに、人骨を使った文様や絵?が張り付いている。
通路の照明器具(傘〉も人骨製で、なんだかモビールみたい。
しかも全身の骨格を見ると、みな150㎝にも満たないミニサイズ。
それもあって、どこか作り物のように感じてしまうのだ。
ともあれ、極めてキテレツな展示には違いないので
ついカメラのレンズを向けたくなるが、残念ながら撮影禁止。
それでも隠し撮りする人が後を絶たないのだろう
コーナーごとに男性の職員が見張っていて
〈掟破りは絶対に許さない〉という強い意志が伝わってくる。
そりゃまあ、ネットで簡単に見放題にでもなったら
確実に入場者は半減するだろうしね。
てなわけで、なにかとミニサイズだった「骸骨寺」。
50メートルにも満たない見学路を2~3回往復すれば、おなかいっぱい。
30分もたたずに出口へ向かった。
まだ時間があったので、小さなミュージアムショップを見て回り
太陽と月をかたどった陶器製のチョーカー?を購入する。
(身に着けたらすぐ割れそうだったので、今もパソコンの脇にぶら下がっている)
博物館を出たとき、ようやく時計は10時過ぎに。
これなら余裕で列車に間に合う。
急ぎ足だった行きと反対に、あたりを眺めながらのんびり駅に戻っていった。
それでも、10時15分にはテルミニ駅に到着。
昼食用のサンドイッチ(バゲットにハムなどを挟んだヤツ)を購入し
そろそろ出発便の案内(出発時間やプラットホームの番号)が出ているはず
と黒い壁のような電光掲示便を上から下までチェックするが・・
乗車券を買ったナポリ行きは、いまだ表示されぬまま。
同じように、どこか待ち遠し気にたむろする人々と一緒になって
じりじりしながら、案内の表示を待ち続ける。
毎度のことだが、この〈待つしかない状況〉ってのは、ホントに苦手だ。
結局、ナポリ行き列車の情報がパッと点灯したのは
出発15分前、10時41分のことだった。
それっ!とばかり小走りに、表示されたホームへ直行
荷物と一緒に、すでにドアが開いていた列車内に乗り込む。
ちなみに、今回乗車する列車の種別は「RV(レッジョーナーレ・ヴェローチェ)」
国内旅行でも愛用している快速列車(各駅より停車駅が少ない普通列車)だ。
もちろん全席自由席。
なので、せっかくの鉄道旅行、よい席を確保せねば・・と急いだ次第だが
実際に乗ってみれば、なんのことはない。ガラッガラ。
出発時刻の間際になっても、1車両の乗客は10名に満たなかった。
なにはともあれ、のんびりゆったり列車の旅ができるのは、嬉しいかぎり。
しかも座席は、お馴染み2席づつの対面式。
車窓の旅が大好きな相方と、それぞれ別のブロックを独り占め。
ローマ南部の緑豊かな田園風景を眺めつつ
ぽかぽか日射しにうつらうつらの鈍行列車旅を、満喫したのだった。
ローマ1056発RV⇒ナポリ1310着。
ではでは、またね。