物語世界をたゆたう悦び 『慶次郎縁側日記』より「脇役」「やさしい男」「赤まんま」北原亜以子 周回遅れの文庫Rock

多くの人にとって人生がそうであるように

”いつまでも終わらず続いてほしい世界”

というものを、誰しもひとつやふたつ抱えているはずだ。

私の場合、その最たるものは、物語(小説)である。

だから、大好きなシリーズが完結しても

すぐには全巻を読み通さず

数年、ときには十数年をかけて、少しずつ読み継ぐことにしている。

しかし、七年半前、すでに鬼籍に入った北原亜以子の代表作

慶次郎縁側日記』(『脇役』を入れると全17巻)の場合は

〈ふと気付いたら夢中になっていた〉という、珍しいケースだった。

 

正直最初の一、二冊は、ストーリーが重すぎて、いまいち浸り切れず

「ちょっと合わないかな」という印象の方が強い記憶がある。

それでも、無理に綺麗にまとめず

スパッと切り取ったような終わり方が妙に心に残り

半年に一回程度の間隔で、読書ローテーションに組み込むことに。

そんなこんなで、およそ2年。

巻を重ねるにつれ、登場人物たちが自分の中で徐々に存在感を増していき

題名通り、主な脇役たちが交代に主人公を務めた『脇役』に至って

ついに、《全員主役》の濃密な物語世界へと引きずり込まれてしまった。

 

こうなると、次に来るのは

先を読みたい!・・でも、終わらせたくない!!

のせめぎ合いだ。

とりあえずは、はやる気持ちをグッと抑え

今回のローテで3冊目となる『赤まんま』で、一度離れることにしよう。

そうすれば、あと1年半~2年の間は《新作》を楽しめるのだから。

 

大好きな物語の「続き」が、確実に読める。

これに優る悦びは、ほんの数えるほどしか思いつかない。

(もちろん、突然人生を断たれる場合もあるけど。

 その辺は不可抗力ということで・・)

 

ではでは、またね。