どうせそんなことだろうと思い
さほど大きな期待は抱いていなかったものの・・ああ、十年一日の如し。
哀しいほど予想通りの「安倍路線追従内閣」ができあがった。
三大派閥をそれぞれ要職につけ
ご丁寧に安倍晋三の弟まで入閣させるという
見事なまでの優等生ぶりには、もはや言うべき言葉をもたない。
せめて、濡れ手で粟で手に入れた権力に酔いしれ、我を忘れことなく
官房長官時代と変わらぬ実直な仕事ぶりを、期待するのみである。
なぜ、わざわざこんなことを言い募るかというと
どういうわけか、菅新総理に対する期待の声のなかに
「秋田から出稼ぎで上京し、裸一貫からの叩き上げで総理の地位まで昇りつめた。
だ・か・ら。庶民の立場がわかり、下から目線の政治を心がけてくれるに違いない」
――という、明らかな勘違いが多数含まれていたからだ。
権力は、人を簡単に変えてしまう。
たとえ下積み時代に苦労を重ね、「俺だけは庶民の側に立つ」と誓おうと
いざ自身が、強大な力を揮える立場を奪取すると
むしろ過去の(非力だった)自分を否定するかのごとく
権力の行使に酔い知れる危険性があるからだ。
たとえば、ここ100年ほどの間に
『暴君』『独裁者』と称された人物をピックアップしてみよう。
アドルフ・ヒトラー・・父の三度目の結婚で生まれた4人のうちの3番目。
やがて父は農業に失敗し、アドルフは強圧な父に反発しつつ貧しい青年時代を送る。
成績不良による落第、画学生への夢も奪われ、やり場のない不満を政治に注ぐ。
ちなみに姓ヒトラー(ヒュードラー)とは、「日雇い農夫」の意味。
スターリン・・父親は貧しい靴職人。レーニンの崇拝者として政府の中枢に潜り込む。
謀略によりライバルを次々と失脚させ、叩き上げで総書記の地位に昇りつめる。
毛沢東・・地方の農家の息子。裕福ではなく家族経営レベル。
習近平・・父親は一時政府の要職を務めるが、文化大革命で追放。
自身も、地方の農村へ下放され、苦難の青年時代を送る。
いわゆる上流階級の出身者は、ひとりもいない。
みなさん、ほぼ裸一貫からの叩き上げで頂点へと昇りつめている。
だからこそ、一時的にせよ〈英雄視〉もされたわけだが
ここで注目していただきたいのは
〈出発点(生い立ち)から到達点までの落差〉だ。
そう。なまじ権力とは無縁のところで育ってきたばかりに
いざ、自分が一国の頂点に立ってしまうと
強すぎる力の使い方が分からず、ややもすると万能感に任せて
強権発動・残虐行為など、とんでもないことをやらかしかねないのだ。
ま、日本の場合、トップとはいっても
そこは合議(談合)大好きな、”和を以て貴しとする国”。
アメリカ大統領のように軍の司令官を兼任するなどの
権力の一極集中は起こり得ないので
そんな大騒ぎする必要もないとは思うのだが・・
余計なお世話ながら、トントンと釘を打たせていただいた次第。
繰り返しになるが、もはや多くは期待してない。
せめて、ここまで実直さをアピールしてきたんだから
首相になったとたんふんぞり返る、〈手の平返し〉だけは勘弁しておくれ。
ではでは、またね。