路線バスで極上"船の旅"を満喫! エストニアからラトヴィアへ 2019.6.27-7.4 3日目 60'sふたり旅

2019年6月29日(土)

 

3日目のスケジュールは移動が多く、ちょっとあわただしい。

まずは、朝7時頃に起床。

荷物をまとめてチェックアウトし、スーツケースを預かってもらう。

そして、トラムで鉄道のタリン駅前にあるバスターミナルへ。

前もって時刻表が入手できなかったので早めを心掛け、8時過ぎに到着した。

だが改めて掲示されていた時刻表を調べてみると、

――たったいま出ていったばかり。

しかたない。少しずつ集まって来た地元のおばちゃんたちを眺めながら

ここで1時間ほど待って、東方向の近郊に向かう路線バスに乗る。

目指すは、エストニア野外博物館。

スマホの地図アプリで現在位置を確認しつつ

30分少々で入口前の停留所に到着。

ちなみに、このルートも初日に買ったウヒスカールトでOKだった。

 

結局、開館時間の10時より30分ほど早く着いたため

閉まったショップの扉の前で、待つことに。

すると、入館者でもない地元の人々が荷物を抱え、次から次へとやってきて

入口前の広場で、木材加工?のようなものを始めた。

何かのイベントが開催されるらしく、その準備に追われていたのだ。

 

すっかり観客モードに入り

声を掛け合いながら忙しく働く人々の姿を見ているうち

ショップのドアが開き、いらっしゃい!と招き入れられた。

さっそく「大人2人」と告げかけたところで

チケットテーブルの上に広げてあった「料金表」に目が留まった。

通常の大人料金の下に「Senior」の項目があったのだ。

しかも、小さな文字で「60's over」と但し書きが。

さっそくパスポートを提示し、60歳以上だと言うと

ふたりとも通常の半額程度で入場できた。

日本の場合、シニア料金は65歳以上というのが普通だが

欧米はその線引きが60歳まで下がる場合が多い。

しかも値引き率は、ほぼ五割。

博物館や美術館などに入場する際は、

ぜひダメ元でシニア割引にチャレンジしてほしい!

(といいつつ、つい忘れ、大人料金を払ってばかリなんだけど)

 

とにかく、朝イチの10時から、エストニア野外博物館の中へ。

「博物館」と銘打ってはいるものの、その実態は

開けた林の中にエストニア各地の伝統的な木造建築物が点在している

という、いかにものんびりとした雰囲気の施設。

教会、水車小屋、農家、郵便局?など、年季の入った木造建築は、

グリム童話など、ヨーロッパの昔話の舞台そのもの。

そここに咲き乱れる草花に目を止めながら、のんびり散策することができた。

 

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いちばん印象深かった木造の教会

やがて「フォークダンス」が行なわれる11時が近づいてきたので

入場する時に受付の女性に聞いた中央広場を目指すことに。

ところが、教えられたはずの場所に着いても・・人っ子一人いない。

あれ? おかしいなあ?

ふたりして首をひねっていると、はるか遠くから賑やかな音楽が。

あ、なんかやってる!きっと場所が変更になったんだ!

音を頼りに、足早に目指すこと数分。

「これって、フォークダンスじゃ、ないよね?」と相方。

そう。音楽は音楽でも、このサウンドとビートの効き具合は

……ロックっぽいかも!?

とはいえ他に目星もなく、なおも歩き続けていくと

目の前に多目的広場っぽいオープンスペースが。

大勢の人が忙しそうに大きなテントとテーブルの間を動き回り

正面のステージには、明らかにロックバンド風の若者たちが演奏中。

どうやら、フォークダンスとはまったく関係ない

別のイベント会場に来てしまったようだ。

 

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謎のイベント会場

このときすでに、時計は11時半の手前。

フォークダンスは、どこでやってんだよ~!

そのイベントに関連してだろう、道の両側にずらりと並ぶ

電動ノコギリやらスノーバギーやら農工具の出店の前を足早に進むうち

結局、最初の入口付近まで戻ってしまうことに。

「こりゃ、またドジったかも・・」

呆れて見合うふたりの中年夫婦。

と、その耳に、軽やかなリズムの音が!

あわてて、正面ゲートから伸びる大通り?へ足を向けると

なんと入口からほどなく、コの字型に農家が建つ小さな広場で

民族衣装をまとった数十人の男女が

楽器演奏と歌に合わせて踊っているではないか!

なんのことはない、受付の女性が指し示した「そこの広場」は

「中央広場」ではなく、「入口広場」だったのだ。

ろくに英会話ができないので、この手の勘違いはしょっちゅう起きる。

今回も、SIMカードをケチッたため翻訳アプリを使いこなせず

後になってから、「なんだ、そうだったのか~!」と嘆くケースが続出したのだ。

 

それはともかく、なんとか間に合った!

時間にすると、最後の10分程度に過ぎなかったが

いったいどこから集まって来たのか

下は幼稚園くらいの子供から、上は後期高齢者と呼ばれそうなお年寄りまで

老若男女バラエティ豊かな人々が、色鮮やかな民族衣装をまとい

周囲で見物する観光客を踊りの輪に引きずり込んでは

元気いっぱいに踊る姿は、なんだか妙に胸が熱くなる光景だった。

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たぶんみなさん地元のポランティア

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伴奏も素朴

最後の踊りが終わり、盛大な拍手と喝采のなか、

周囲に向かってお辞儀をする踊り手たち。

見ているだけで疲れてしまい(ホントは歩き疲れただけだったが)

昔の小屋を利用したカフェでひとやすみすることに。

屋外のウッドデッキで目の前を歩いていく踊り手たちは

いずれも顔見知りのようす。

小さな子どもは、両親らしき男女と手をつなぎながら

中高生ぐらいの男女のグルーブも、同級生のような親密さ。

どうやら、みんなボランティアで、

毎週末、ここに踊りに来ているようだった。

”歌と踊りで独立を勝ち取った”と言われるバルトの国々だけに

国を挙げて若い世代に伝統を伝えるための努力を続けているのかもしれない。

 

と、ちょっと偉そうなことを書いているうちに、昼過ぎになってしまった。

あまりのんびりしてると、島に行くバスに乗り遅れてしまう。

来た時に調べた時刻まで売店で時間を潰し、帰りのバスで鉄道駅へ。

さらにトラムを乗り継ぎ、2泊した宿で預けたスーツケースをピックアップ。

昨日のルートをなぞって、長距離バスターミナルへ。

まだ時間があったので、ここでまた昼食を摂り、

無事クレッサーレ行きのバスに乗り込んだ。

新しく設備も整っている大型バス。

空席も多く、1人で2席使ってゆったり過ごせた。

綺麗な車窓に、次々と現れては去っていくタリンの街と、緑いっぱいの平原。

しかも、このこの路線、なんとバスごとフェリーに乗りこみ、

そのまま対岸の島へと渡るのだ。

風力発電のプロペラが建ち並ぶ海岸線を離れ

眩しい陽光が振り注ぐフェリーのデッキで満喫するクルーズ気分。

所要約4時間のこの旅が、なんとたったの15ユーロ!

最初から感じていたことだが、

今回の旅は公共交通機関の料金がとってもリーズナブル。

多少は冒険してでも島に渡ろう、と思ったのも

この移動コストの手軽さのお陰だった。

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空ばかり撮ってしまう

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バスごとフェリーの腹の中へ

国立公園のなかを走っているような絶景を見続けること、4時間。

予定通り16時30分前に、終点・クレッサーレのバスターミナルに到着する。

クレッサーレは、バルト海に浮かぶエストニア最大の島・サーレマー島の中心都市。

南に開けた港町で、50キロほど離れた向かい側はラトヴィアだ。

降りてすぐ向かったのは、チケット売り場。

実は、2日後、ここからラトヴィアの首都リガに行くバス便の時間が

日本でのネット検索では見つからずじまいだったのだ。

しかも、いま来たルートと違い、

リガに行くためには、島から本土に渡ったところで、

いったんバスを乗り換えねばならない。

だから、なにはなくとも、バスの時刻を確認&予約する必要があったのだ。

 

その結果、リガに行けるバスの時間は

朝8時20分か15時過ぎのいずれかのみ。

また、ここで購入できるチケットは、乗り換えポイントの町までだけ。

しかも、合わせて6時間以上かかる、という事実が判明した。

となると、朝イチのバスしか選択肢はない。

迷わず、8時20分の便を予約。

ついでに、明日見て回るつもりだった主要ポイントをつなぐ

島内バスの時刻表も確認させていただくことに。

すると、明らかにこちらよりは年輩の女性の係員は

こちらのたどたどしい申し出を何度も聴き直してくれたあと

名刺よりもひと回り大きい紙を取り出し

各観光ポイントを結ぶバスの時刻表を路線ごとに確かめ

合計三枚の表裏にびっしり記し、渡してくれたのだ。

・・・・なんて親切な。

「旅ノート」に貼り付けた、その手書きの時刻表を見るたび

いまもそのときの温かい気持ちが胸に広がる。

 

よし、これで明日の予定も立てられそうだ。

あとは、今日の宿に向かうだけ。

スーツケースをゴロゴロ引いて、10分ほど離れたクレッサーレの中心部へ。

広い広い青空の下、低い住宅が並ぶ、静かな街を行く。

「歩き方」にも、リゾートタウンと記されていたとおり

どこを見ても絵ハガキのような綺麗で解放感のある街並み。

中央の小さな広場では路上に直接噴水が吹きあがり

地元の子供たちがはしゃぎながら、その上を走り回っていた。

 

そんな広場から、右手に折れ、ほんの1~2分のところに

クレッサーレの宿Vanalinna Hotelはあった。

一階が早朝から開いているパン屋で、案内された部屋はロフト(屋根裏」だった。

ここを選んだ理由は、ベッドの位置。

天井に傾斜があるせいで、2台のシングルベッドが

部屋の対角線上という最も離れた場所にセッティングされているからだ。

これなら、イビキ対策もばっちり! というわけだ。

専用バスルームは当然だが、今回は冷蔵庫も完備されている。

料金は、2泊税込みで93.5ユーロ。

とってもスタンダードなお値段だ。

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静かでくつろげたクレッサーレの宿

朝からま移動続きで少々疲れたが

気持ちが高ぶっていて、落ち着かない。

とにかく一度、外へ出る。

広場をぐりるとかこむレストランのテラス席と

その中央の噴水で飽きることなく走り回る子供たち

ちょっと足を延ばせば町一番の名所・クレッサーレの城の三角屋根が。

吸い込まれそうな青空のもと

どこに目をやっても、「絵になる」風景ばかり。

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その後、宿に戻って、1時間ほどベッドでうたたねし

9時まえ、夕食がてらまたまた町なかへ。

地元の客で賑わっていそうな店を探すうち、

クレッサーレ城のすぐ隣にある魚介料理の店「ク・クー」に決めた。

決め手は、お城を一望できるテラス席。

お城をかすめてゆっくり流れる千切れ雲を眺めながら

獲れたての海の幸を味わう、この幸せ。

時刻ははや、10時過ぎ。

でも、まだ空はやっと色づき始めた程度。

北ヨーロッパの長い長い昼は、なかなか暮れようとしない。

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テラス席の目の前にクレッサーレ城が・・

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長い長い夕暮れ また空ばかリ撮ってしまう


・・なんて、キレイにまとめようとしたが、最後につけたし。

料理もお酒も美味しかった!

でも、ちょっと魚の火の通りが浅かったかも。

お腹が丈夫ではない当方は、その夜、蕁麻疹に悩まされたとさ。

 

さあて、明日は、今回の旅の白眉。

クレッサーレ島めぐりだ。

 

ではでは、またね。