穴ボコタクシーの乗り心地 キューバふたり旅 2020.2.26-3.5 6日目(その3)

2020年3月2日(月) ハバナ市内

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              モロ要塞の大砲

昼食代わりのジェラートでひと息ついて・・

さて、帰りはどうしよう。

そろそろ、タクシーにチャレンジしてもいいよな。

ときおり大通りを走り抜けるポンコツタクシーやバイクに気づくたび

手を挙げて停めようか迷いながらも

「ひとり5円」という格安料金に引き寄せられ

結局、2時間ほど前に降りたバス停(反対方向)に戻ってしまった。

ホンット、貧乏性だよな。

当然、すぐに目指すナンバーのバスに乗れるはずもなく

地元の人たちと一緒に、ぼーっと待つことに。

貴重な旅先での時間を、こんなムダ遣いしちゃっていいのか!!?

数分おきに頭の中の理性が訴えるが

せっかくここまで歩いて戻ったんだから、と屁理屈で押し込める。

 

さいわい、30分ほどで旧市街方面行のバスがやってきた。

だが、すでに満車状態。とても座れる状態にない。

おまけに来た時以上ののろのろ運行で、バス停の間隔もやたらと短い。

しょっちゅう停車しては、結構な数の乗客が乗り降りし、さらに時間を奪われる。

それでも吊革にぶら下がって踏ん張り続けること、およそ1時間。

よーし、旧市街が近づいてきたぞ!・・と喜んだそのとき。

バスはいきなり、90度方向転換。

そのままアサッテの方向に遠ざかり始めた。

路線図の読みが甘く、旧市街の脇をすり抜け南に向かうルートだったらしい。

慌てて、停車ボタンをプッシュ。最寄りのバス停で下車する。

 

あたりは、商業地域と工場地域が混ざった雑然とした雰囲気。

熱気と埃と排気ガスが立ちこめ、たまらず歩道の日陰側に身を寄せる。

グーグルマップで確認すると、現在地は旧国会議事堂から南西に2キロほど。

過酷なバス旅(相方は途中で座れた)で、ふたりとも疲労困憊。

時刻も、すでに15時30分を回っていた。

どのみち、旧市街でタクシーに乗車。

海峡の対岸にあるモロ要塞まで行くつもりだったので

空車が来たら無条件で停めて乗ってしまおう!、と覚悟を決め

旧市街に向けて歩きながら、"流し"のタクシーを捕まえることにした。

・・・だが、そんなときに限って、なかなかタクシーが来ない。

やっと来た!、と思ったら、どれもこれも「乗車中」。

結局、20分以上歩き通して、中央公園に到着してしまった。

 

さすがに観光スポットだけあり、あたりは客待ちのタクシーでいっぱい。

たまたま目の前で停車し、客を降ろしたタクシーがいたので

これ幸い、「乗せてくれ」と意思表示すると

頭の禿げあがった小太りの中年ドライバーは、OKと答えてくれた。

ところが次の瞬間、「すぐ終わるから待て」と、身振りで伝えると

急に車を降り、タイヤ交換を始めたのだ。

・・たぶん、パンクしたのだろう。

 

だめだ、こりゃ。

ホイールからタイヤを外すドライバーに手を振って別れを告げ

公園周辺に停車しているタクシーの一団に向かっていくと

すかさず一人の男が「タクシー?」と言いながら、近寄ってきた。

どうやら運転手ではないようだが、何者?

気持ち警戒しながらも、「モロ要塞に行きたい」と告げる。

すると「テン(10CUC)」と値段を言う。

負けじと「ファイブ」と答えると、今度は「エイト」。

そこで「シックス。ラストプライス」と強気に出たところ

彼は「OK」とうなずき、その場で待つよう身振りで合図してから

停車中のタクシーに小走りで向かった。

・・・あー、そうか。

自分の車から離れるわけにはいかない運転手に代わって

客引きや値段交渉を行なうことで、マージンを稼いでいるわけだ。

そう納得し、ふと顔を上げた、まさにそのとき。

タイヤ交換を終えたオジサンドライバーのタクシーが

すーっと目の間を走り過ぎて行った。

――なんだよ。こっちの方が早かったじゃん。

でも、頼んでしまったのだから、あとは待つしかない。

 

そして、数分後。

一台のオンボロタクシーが、目の前にスッと停まり

さっきの男が「これに乗れ」と手招きした。

改めて「シックス(6CUC)?」と確認すると、「イエス」の答え。

こちらの要望通り、600円少々でモロ要塞まで行ってくれるタクシーを

探し出してくれたのだった。

(マージン込みなので、実際の料金はもっと安いはず)

んじゃまあいいか、と乗り込むと、外に劣らず内側もボロボロ。

シートはつぎはぎだらけで、窓も開かない。

おまけに足下に穴が開いており、油断すると大変なことになりそうだった。

日本なら絶対に車検に通らない大中古車?だが

ここキューバでは、立派な現役だ。

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        乗ってしまえば、どってことないんだよね・・

 

さすがにエンジンの調子は悪くないらしく

低速ながらもスムーズに車は走る。

海峡の下をくぐる海底トンネルも無事に通過し

10分とかからず、対岸の先端に位置するモロ要塞の入口に到着した。

 

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              「ザ・要塞」のたたずまい      

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              今は、みんなの"憩いの場"

 

タクシーを降りたとたん、爽やかな海風が身体を包む。

溜まっていた熱気をスッと醒ましてくれた。

目の前には広々とした芝生越しに、うずくまる獣のような要塞の姿が。

さらにその先は、青々としたカリブ海(メキシコ湾?)。

十数分前、ぼーっと立っていた、

 

排気ガスとほこりだらけの旧市街とはまったく違う

まるでリゾート地のような、心地良さだった。

 

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              このまま昼寝したい気分

 

時刻は、16時をちょっと過ぎたあたり。

要塞の中を見て回ることもできたが、外の雰囲気があまりに快適だったので

わざわざ屋内に入っていく気になれなかった。

広々とした砦の周辺をぶらぶら歩いたり

砲台のモニュメントが並ぶ芝生の丘に寝転んだり

日向ぼっこ気分で、ゆったり1時間ほど過ごしたのだった。

 

一日中照り付けていた陽射しも傾いてきた、17時30分。

そろそろ、次の目的地を目指すことにしよう。

要塞の前の道で客待ちしていた、数台のタクシーに近づいていく。

バスにチャレンジする気力は、とっくのとうに尽きていた。

しかも、これから向かうのは旧市街ではなく

海岸沿いに西へ6キロほどの高級ホテル「National de Cuba」。

この中で開催される、予定の歌と踊りのショーCABARET PARISIENの

19時30分の回を観に行くことにしていたのだ。

 

公園広場でおこなった、先程のやり取りを思い出しながら

行き先(ホテル名)を告げ、値段交渉に取り掛かる。

だが、客待ちしているタクシーが少ないせいか

同じようなボロ車だというのに、今回はみんな強気だった。

それでも、最終的には10CUCで手を打ってくれた。

距離が倍ぐらいあったから、そこそこ妥当な値段だったのかもしれない。

 

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            強気だった、モロ要塞のタクシー

 

さすがはタクシー。

バスとは違い、10分ちょっとでホテル前へ。

ちなみにこの後の予定は・・

ロビーにあるチケットカウンターで、19時30分スタートの回を購入。

1時間程度のショーを楽しんだあとは、旧市街に戻り

この旅で一番美味しかったレストランEsquina de Cubaで

最後のディナーを、心ゆくまで楽しもう・・という目論見だった。

 

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                      National de Cuba。  右手の海岸通り沿いに・・見えるかな?

 

だが、しかし。

思った通りにいかないのが、キューバの旅の醍醐味?

しっかりかっちり、こちらの思惑をぶちこわしてくれるのだ。

 

ではでは、またね。