リーガ発、激安鉄道の旅 エストニアからラトヴィアへ 2019.6.27-7.4 6日目 60'sふたり旅

2109年7月2日(火)

 

エストニアの首都タリンからサーレマー島へ

さらにラトヴィアの首都リガを巡った今回の旅も

気づいてみれば、はや6日目。

最初の内はカメの歩みのようにスローペースだった時間感覚も

リーガに着いた昨日あたりから一気にスピードアップ。

とうとう、今日いちにちと明日の午前中を残すのみとなった。

(成田着は4日午前だがすべて帰国のための移動&待機に費やされる)

 

朝7時半に起床し、1階に降りて朝食スペースへ。

何種類ものパンとハム、新鮮なフルーツをいただく。

朝食付きの旅は今回初めてで、なぜか得した気分だったが

宿泊客に対して座席数が少なすぎ、常に次の人が待っている状態で

ゆったりできる雰囲気ではなかった。

この宿ゆいいつの残念な点だったように思う。

 

ともあれ今日の予定は、午前中は街歩き。

午後からは、バスか鉄道で郊外に遠出するつもりだった。

まずは、ホテルを出て旧市街を北上。

リーガのショップを覗いてみることに。

「歩き方」で紹介されていた何店かを回り

素晴らしい民芸品やアクセサリーなどに目を瞠るが

手作りだけあって、なかなかのお値段。

屋外の民芸品マーケットで

ウールの手袋とストールを求めるのが精いっぱいだった。

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どこでも元気な 旅の仲間

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広場でチェロのパフォーマンス

その後も、元気に遊ぶ地元の子供たちや

音楽学校の生徒だろう路上演奏を披露する若者たちを眺めつつ

初夏の日差しがたっぷり降り注ぐ古都をいったりきたり。

お昼まで残すところ30分。

旧市街の中心にあるリーガ大聖堂に入る。

実はここで毎日、昼の12時から

オルガンのミニコンサートが開催されるのだ。

最初は人影まばらだった聖堂内だが

正午が近づくにつれ、どんどん群衆で満たされていく。

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これを聴きにきた

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地元の人々と観光客 半々ぐらい

そして、ほぼ満席となった12時過ぎ。

大聖堂に備えつけられたパイプオルガンの演奏者席にひとりの女性の着席。

余りに有名なトッカータとフーガ(バッハ)など、3曲を披露した。

聖堂全体を揺るがすような超低音から

小鳥のさえずりを思わせる高音域まで

ここでしか聴くことの出来ない迫力満点の演奏に、胸を熱くする。

しかし、もっと深く印象に残ったのが

たまたま隣に座った老夫婦とのたどたどしいやりとりだった。

ドイツ出身の奥さんと、リーガで生まれでシベリア帰りのご主人。

第二次大戦後、ソ連に目を付けられ

何十年もの間シベリアに流刑されていた。

バルト三国の独立を期に、ようやく祖国への帰国を果たしたというのだ。

「シベリアは地獄だった」と、言葉少なに呟くご主人。

思わず「たくさんの日本人もシベリアで命を落としました」と告げたら

口元をぎゅっと噛み締め「・・sad times」と答えてくれた。

しょせん通り過ぎるだけの観光客にすぎないが

どの国も何らかの重い歴史を背負っていることを、忘れたくはない。

 

大聖堂でのオルガンコンサートは30分ほどで終了。

残りわずかな旅程に背中を押され

旧市街の南に位置する鉄道駅に直行する。

「ラトヴィアのスイス」と呼ばれるSiguldas(スィグルダ)行きの

次の列車を確認するためだった。

すると、奇しくも数分前に出たばかり。

次の発車時間は14時30分との答えだった。

「1日10便以上運行されている」と「歩き方」にあったので

駅に行けばすぐ乗れるだろうと、高をくくっていたのが裏目に出た。

「2時間近く待つのももったないから、バスにしようか」

と相方に伝え、隣のバスターミナルへ移動。

次便の出発時間をチェックすると・・14時20分。

その差わずか10分。

しかもバスの方が列車より5分~30分も遅いという。

「じゃあ、まだ列車の方がいいか」と

 

空いた時間を簡単に済ませるつもりだったランチに当てるべく

その足で、飛行艇ドームが目印の中央市場へ。

「歩き方」にも載っていた

Silkites un Dillitesという魚市場に隣接する店に入った。

観光客と地元の人々でごった返す店内で

ファストフード店のメニューを思わせる写真入りのメニューとにらめっこ。

名物だという魚介のスープと、魚の酢漬けを注文する。

昨夜の感動が舌に残っていただけに、期待値は最高だった。

ところが・・・

「――なんか、いまいちだね」と相方。

確かに、スープは塩辛いだけでうまみを感じられず

酢漬けは日本の〈なれ鮨〉に近いのだろうか

発酵臭ばかりが鼻についてしまうのだ。

ふたりで2品注目しただけだったが、完食できずにギブアップ。

シュールストレミングまではいかないにしても

北欧三国同様、バルトの国々でも、生魚の発酵食品が好まれていることを

すっかり忘れていた。

ちょっと高めでも

無難にフィッシュ&チップスを頼んだ方がよかったみたいだ。

もちろん、ホヤやクサヤのように、好きな人は好きなんだろうけど・・

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いいかげん「安い順」に注文するのはやめましょう

午後2時過ぎ、気を取り直し、ふたたび鉄道リーガ駅へ。

14時30分始発の乗車券をsiguldasまで購入する。

ひとり1.9ユーロ、200円ちょっと。

1時間以上乗って、この安さ!

たぶん旧ソ連時代の料金体系をそのまま引き継いでいるせいだろう。

ともあれ今回初めての列車旅。

鉄道好きの我らは、ちょっとワクワクしながら

ホームに停まっていた、いかにもな旧式車両に乗り込んだ。

中はガラガラ。各車両に数人しかいない。

ひとつずつボックスを独占し、のんびり車窓風景を楽しむことに。

やっぱり、パスより列車だね。

 

途中、一度検札があっただけで

プレイヤーで音楽を聴ききながら、ラトヴィアの山と森を眺める。

1時間少々のぜいたくな時間を堪能し、Siguldas駅で下車。

隣接する観光案内所で地図とお城に行くバスの時刻表を受け取り

スィグルダのシンボルだという、手元の曲がった杖のミニチュアを購入する。

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駅の時刻表 壁時計の「S!」 はSiguldaのマーク

すでに数人の観光客が待つバス停から、リーが行きのミニバスに乗り

坂道を登ること10分。

スィグルダいちの観光地「トゥライダ城」の入口でバスを降りる。

トゥライダ城は、小高い丘の上に赤レンガが周囲の緑に映える13世紀の美しい城。

現在は、教会、庭園、墓地などを含めた歴史博物館になっている。

雨がバラつく安定しない天気だったが

「ラトヴィアのスイス」と呼ばれるだけあって

思わず深呼吸したくなるほど、高原の空気は気持ちよいものだった。

 

受付の小屋でチケットを購入(ここでもシニア料金の確認を忘れる)。

中世ラトヴィアの歴史をたどりながら、

素朴な伝説に彩られた史跡を、のんびり巡っていると・・

なにやら、背後からざわついた気配が近づいていた。

見ると、駅周辺ではついぞ見かけなかった東洋人の一団。

声高に交わす言葉は、中国語。

中国人の団体客が、観光バスで立ち寄っていたのだ。

そういえば、ここ数年、世界中どこに行っても、

(もちろんわしらが自力で行けるレベルの観光国だけど)

最も入るアジア人観光客は、中国人。

香港や台湾も一緒に見てしまうから、よけい多く感じるのだろうが

中国語を話す人々が圧倒的にナンバーワン。

2番目は、韓国人。

日本人は・・ベストスリーにも入ってない気がする。

 

結局、その後のトゥライダ城見学は、

中国語の歓声や笑い声に抜きつ抜かれつしながら。

中世ラトヴィアの歴史に想いをはせる・・

といったキザなひとときとは無縁のものになった。

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深い森に囲まれた古城・・なのだが

それでもしっかり全域を歩き巡り、再び入口に戻って見ると

すでに大型バスの姿はなく、ほとんど無人の世界に。

パラパラ落ちていた雨はすっかり上がり

帰りの列車の時間までにはだいぶ余裕があったので

ミニバスには乗らず、ゆっくり歩いて駅まで戻ることに。

片側1車線の舗装道路の周りに広がるのは、草原と森と、そして清流。

その境目を、とことこ歩いていく。

時々擦れ違う自動車が走り去ると、聴こえてくるの

は自然の音だけ。

ちょっと分け入った木々の間に、美しい小鳥の姿を見かけたり

日陰の土の上をのったり這う、巨大なカタツムリにカメラを向けたり。

観光名所でもなんでもない、こんな〈道の途中〉が

実際のところ、最も強く記憶に残る旅のワンシーンだったりする。

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”なにもない”のがすごくいい

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足元に注意!

こんなふうに書くと、余裕たっぷりの旅だったように思えるかもしれないが

ホントのところ、その後、駅に到着するまで、トラブル続きだった。

川を渡っているとき、頭上から若者の奇声が。

ふと見上げると、ロープウェイを使った絶叫アトラクション!?だったり。

近道しようと思い、車道から離れ、歩行者用通路を選んだら

その正体は山の上目指しどこまでも続く木製り階段。

途中で引き返すわけにもいかず、金毘羅参り気分でなんとか登りきったり。

さらにあと少しで見えるはずの鉄道駅が見つからず

困り果てていたところ

いきなり降り出したゲリラ雨も苦にせず

自分のスマホで一生懸命正しい順路を教えてくれた

通りがかりの地元家族のみなさん。

アラブ風の顔立ちで、シリアなど中東からの移民だったかもしれない。

親身に対応してくれて、ほんとうに感謝します。

おかげさまで、余裕をもって駅へと帰着。

小腹が空いたので、キオスクでホットドッグをパクつく余裕もできた。

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スィグルダのシンボル ”曲がった杖”がにょきにょき

そして、19時過ぎ。

再び1.9ユーロの、のんびりゆったりの鉄道旅。

行きよりもさらに人影のまばらな車内で

人目も気にせず足を延ばし

ときおり雨が降ったり、晴れて陽射しが射したり

雨と夕日が競い合うような空模様をぼうっと眺める

これもまた至福のひととき。

明日、帰らなきゃいけないなんて・・やだなぁ。

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鉄道の旅は、どこか違う

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20時40分?リーガ駅到着  また逢えるといいな

リーガに戻った後は、

翌日のアエロフロートのウェブチェックインにチャレンジ。

(SIMカードなしでも近年ホテルでは、ほぼWi-Fiが入っています。

 なので、ウェブチェックインは旅先での必須行動のひとつ)

すると、なんとか窓側の並び席を確保できたが、かなりの込み具合。

ひょっとして、満席? いやーな予感が、広がる。

 

そして、最後のディナーは、

もちろん昨夜感激した「マルナー・ビデ」!

ところがどっこい、翻訳アプリがうまく扱えぬままま、

どこかで見た英単語を頼りに、直感だけで注文したら・・

これが大失敗。

なんとサバのオイル付け(缶詰をそのまま開けてくれた)と

小籠包もどき(皮が硬くてパサパサ。昨日の美味はどこにいった!)

どちらも口に合わず、残してしまった。

昨日も担当になり、顔を覚えてくれていた店員のお姉さんが

気を遣ってデザートを無料でサービスしてくれたのが

ますます申し訳なかった。

――そんなケチケチせず、プリペイドSIMカードを買っておけばよかったなぁ。

またもや反省しきりのアラカンおやじだった。

 

※ちなみに、この旅の後、新しいSIMフリースマホをゲット。

 心細かったメモリの問題も解消し、

 地図も翻訳もめいっぱい使えるようになりました。

 (でも、決して失敗はなくならない・・)

 

ではでは、またね。

 

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やっぱり青空は気持ちいい