"異世界モノ"の頂点 『Re:ゼロから始める異世界生活①~㉕』長月達平 周回遅れの文庫Rock

毎月毎月、手を変え品を変え出版されている

いわゆる「異世界モノ」を代表するシリーズのひとつ。

2014年1月以来、3ヶ月に1冊というハイペースで刊行が続いており

(先月末、26巻が発売された)

本編以外にも「短編集」が6冊、「外伝」が4冊出ている。

そんなわけで、ジャンルごちゃまぜで読み漁っているオッサンは

"第✕章"と呼ばれるひと区切りがついた時点で

4~5冊まとめて、ウェイティングリストにアップ。

可及的速やかに読むことにしている。

ちなみに今回読んだのは、外伝④と短編集④⑤

本編は「第6章」に相当する21~25巻の5冊。

記憶を呼び戻すため、先に20巻(第5章最終巻)を再読したので

合計9冊ぶっ通しで読破したことになる。

 

いかに〈人気ラノベシリーズ〉とはいえ、これくらい(既刊36冊)続くと

最初に設定したアイデアだけでは、話のレベルが維持できず

ついつい「新たなる強敵」「ライバル」「ステージ」をでっちあげ

それに対し主人公らが「新技・新アイテム・新キャラクター」で対抗していく

いわゆる《エスカレーションモード》になだれ込むケースが少なくない。

(超能力とかバトル漫画によくあるパターンだよね)

 

ましてや、本作の舞台は

"どんな無理難題でも作者の筆先ひとつで実現してしまう"「異世界モノ」だ。

実際、数多くの人気異世界シリーズが、巻を重ねるごとにマンネリ臭を強めていき

外から〈刺激〉を取り込み続けるものの、徐々に面白味を失っていく姿を

何度となく見て(読んで)きた。

 

そんななかにあって、25巻を重ねたいまなお、本作「Re:ゼロ」は

そうした"アイデア一発勝負"の〈お手軽異世界ラノベ〉とは一線を画す

充実の内容と、高い完成度を維持し続けている。

 

もちろん、ラノベの"お約束"ともいえる

悪ノリ&コミカルなギャグ(やりとり)の面白さは、文句なし。

あの手この手で、多彩なキャラクターの魅力を引き立てるいっぽうで

 

登場人物ひとりひとりの背負う「人生?」にも深く分け入り

誰もが心に抱く悩みや苦しみに通じる、シリアスな世界を描き出していく。

 

だが、何よりも異彩を放つっているのが、主人公・ナツキスバルの描き方だ。

ひきこもりだった一人の少年が、ひょんなことから異世界に転生。

見ず知らずの新天地で、ゼロから人生をやり直し

自分でも気づかなかった様々な可能性(力)を獲得していく・・・。

あらすじだけ読むと、とっくのとうに見飽きた〈自己実現物語〉なのだが

本作の主人公は、そんな安易な夢物語とは、ある意味対極に位置しているのだ。

 

なにしろ彼は、強くも、カッコよくもなく、必殺技の持ち主でもない。

自意識過剰で、自己顕示欲ばかりが際立った、中二病まっしぐら。

"フツー"どころか、"ダメダメ少年"でしかない。

しかし、ひとつだけ、ある特異な力?が備わっていた。

それはーー『死に戻り』

死ぬ(殺される)と、時間を遡った〈あるポイント〉まで自動的に転移。

そこから人生をやり直すことができる、というものだ。

要するに、RPGゲームのシステム「セーブ&リスタート」だと思えばいい。

(ただ、自分でセーブポイントを選ぶことはできない)

 

本人が望んだわけではもない、この『死に戻り』のおかげで

あっけなく終わるはずだったナツキスパルの異世界における人生は

「(襲い掛かる理不尽な)死」と「強制的リスタート」の繰り返しへと変貌。

否応なく彼は、〈どうすれば死の運命から逃れられるのか〉という

文字通り"命を懸けた戦い"に挑まざる得なくなるのだ。

 

その後、様々な出会い・対立・争いなどを続けるなかで

ナツキスバルは、少しずつ『死に戻り』の機能を使いこなし

多くの人々(これまたお約束通り大半が女性)と関わりになっていく。

 

だが、『死に戻り⇒死の回避』の結果として、異世界での実績を積み上げ

どれほど周囲から「英雄」と称えられることになろうとも

彼は、これっぼっちも、〈立派な人間〉にはなっていかない。

というか、『死に戻り』を知らない異世界の人々と違って

読者である我々は、彼が幾度となく失敗し、無様に死んでいく姿を知っている。

むろんナツキスバル本人も、そんな自分の実像を、死ぬたびに突き付けられるのだから

最終的に「うまくいった」からといって、手放しで胸を張れるはずもない。

それでも、『死に戻り』の途上で奪われてしまった〈大切なもの〉を取り戻すため

彼は、ありったけの愛と勇気と忍耐を振り絞り、戦い続けるのだ。

(でも、瞬間瞬間を切り取れば、充分すぎるほど勇敢&カッコいいんだけどね)

 

なんだか、書いてる本人が「中二病」じみた状態になってしまったが

心情的な部分はさておき、構成的に優れていると感じるのは

この主人公・ナツキスバルの「敵」が

単なるRPGゲームの焼き直しである「ザコ⇒中ボス⇒ラスボス」のように

段階的に強くなっていくだけのパターンではなく

各章ごとに根本的に意味合いの異なる「手強さ」をまとって現れるところだ。

しかも彼の"苦闘"は、〈外〉だけでなく〈内〉でも展開する。

自分自身との戦い、なんて言うと安っぽく聞こえるかもしれないが

この〈内外両面における闘い〉こそ、作者の周到なストーリー構成の賜物であり

25巻を越えてなお、本シリーズがワクワクドキドキ感を失っていない

最大の要因だと、勝手に考えている。

 

いやはや、これもまた、小理屈こね回してるだけだな。

 

ま、とにかく、読めばわかるよ。

ガチガチの文学作品しか受け付けない方は、ちょっと厳しいかもだけど

アニメもマンガも小説も大好き!な人だったら、きっと後悔しないはずだ。

ラノベならではのハイペースゆえ、ところどころ推敲が足りないきらいもあるが

そのぶん、勢いやドライブ感覚は抜群だ。

そのあたりも含め、秀逸なイラストも愛でつつ、肩の力を抜いて楽しんでほしい。

 

・・本音を言うと、スバルとベア子のやりとりが一番好きだったり。

 

ではでは、またね。

ジャンヌ・ダルクは“旗ふり娘”だった 『カペー朝』『ヴァロア朝』佐藤賢一 周回遅れの新書Rock

「フランス王朝史」と名づけられた3冊シリーズの、一・二巻目。

(三巻目の表題は『ブルボン朝』)

本来であれば、全部読み終えてから書き始めるべきだが

いっぺん水面まで浮上して、ひと息つきたくなった。

そうせずはにいられないほど、中身がこてこてに詰まっており

ちょっとでも気を抜いてさらっと読み流そうものなら

ほとんど頭に残らず、正直、〈読んだ実感〉がなくなってしまう。

――それくらい、"歯ごたえのある=噛み砕くのに苦労する"書物なのである。

 

何について書かれたものかは、表題を見れば一発で分かる。

フランス史を題材にした小説を数多く生み出した作家・佐藤賢一

10世紀末から18世紀末までの、およそ800年間

カペー・ヴァロア・ブルボン朝と続いた、フランス(王国)の歴史を書いたものだ。

それを、(初代)ユーグ・カペーに始まる歴代の王を時間順に並べ

各世代の王(王族)が考えたとことや行なったことを、要領よく解説している。

・・・のだが。

どうにもこれが、すんなり頭の中に納まってくれないのだ。

 

まずもって、これでもか!というぐらい

同じ名前の人物が、繰り返し現れては、退場していく。

カペー朝家系図』に表記されたものだけでも、11人の「フィリップ」。

ヴァロア朝家系図』では、12人の「シャルル」。

さらに両方股にかけて、10人ずつの「ルイ」が登場するのである。

もちろん著者も、この"ややこしさ"に心を痛めたのだろう

拡大の君主に「肥満王」「尊厳王」「幸運王」などの〈俗称〉を付けたり

「ブールゴーニュ公」「オルレアン公」「ヴァンドーム伯」などの爵位を載せて

可能な限り混乱を避けようと試みている。

とはいえ、正直それも、"焼け石に水"の印象が強い。

 

さらに、二巻目『ヴァロア朝』に入っていくと

王位を継ぐべき「直系男子」が、しばしば断絶することに。

その結果、何が起きるかと言うと・・

叔父甥関係や娘婿など、いわゆる「傍流」にバトンが手渡される。

要するに、イングランド神聖ローマ帝国スペイン王国など

他の家(国)を背負った、こちらも類似した名前の人々が続々と登場し

フランスという国の舵取りに、しゃしゃり出てくる。

これがまた、ヨーロッパ全土を巻き込む〈お家騒動〉に発展し

遺産(領土)を巡って、同じような戦争が何度も繰り返されるのだ。

 

そんなわけで、新しい(忘れてしまった)名前が出るたび

新書の冒頭1ページを使った「家系図」を開いては

"えーっと、このフィリップはどこの誰だったっけ?"とか

そのつど、当事者たちの(血縁関係)を確かめないと、内容が頭に入らなかった。

・・ま、普通の記憶力の持ち主なら一回で済むところを

3度4度と重ねているだけなのかもしれないが。

 

あれ?

なんだか、「読みづらさ」ばかり強調して

文句を垂れてる雰囲気になってしまったけど

ここからが、だが!しかし!・・というオススメだぜ。

 

昨日、競泳の日本選手権で100メートルバタフライで優勝した

池江璃花子選手が、「努力は必ず報われる」と

涙ながらに語ったことについて

〈努力すれば絶対に夢がかなうわけじゃない!〉なんて

揚げ足取りじみた反論が湧き上がっているが

本当に全力を尽くして努力した人は

なんらかの形で「報われる」と、断言したい。

 

んで、池江選手の努力にはとうてい及ばないにしても

これもある種「努力は必ず報われる」の、ひとつの現われなんだよね。

 

似たような名前ばかり出て来て、なんか歴史の教科書みたいだな。

なんて、あっさり投げ出さず・・

新時代の顔となった王の肖像画を、頭に焼き付け。

名前が出るたび、冒頭の「家系図」で血縁関係を確認し。

そのときどきの道しるべとなってくれる地図や図版を、何度も見直し。

時には秘蔵の歴史地図を開いて地名や戦況を調べてみたり。

できる範囲で、理解に近づくための手間を惜しまず

自分自身を登場人物に重ねながら、じっくり彼らの言動をトレースしていく。

 

すると、ひとつひとつの「名前」に、"命"が宿ってくるのだ。

 

こうなれば、あとは、しめたもの。

いままで読んできた様々な本の中で出会った

既知の「人物」や「エピソード」が登場するたび

小さな感動が、胸の中で沸き立つのだ。

ーーおおっ、ここで、この人が来る(事件が起きる)のか!!

 

 

たとえば、『カペー朝』の82ページから始まる十字軍。

塩野七生の『十字軍物語』全四巻(文庫版)を数月前に読了しているから

短い文章ひとつひとつ、登場人物ひとりひとり。

そのすべてが、鮮やかに立ち現れてくる。

おまけに、当時のフランス君主〈若王ルイ七世〉の視点で描いているので

新たな発見までも、てんこもりなのだ。

何の気なしに見始めた映画に、大好きな役者が特別出演していた!

そんな〈ご褒美感〉が何度も体験できるだから、たまらない。

 

他にも、「ポワティエの戦い」「名将デュ・ゲクラン」「モンモランシー」

「メアリ・ステュアート」「カトリーヌ・ドゥ・メディシス」「王妃マルゴ」など

思わぬところで記憶に刻まれていた人物に出逢うたび

「十字軍」同様の幸福感を味わうこことなった。

その最たるものこそ、救国のヒロイン「ジャンル・ダルク」といえる。

なにより新鮮だったのは、彼女の描き方だ。

「聖女」「救世主」として、今やフランス史で最も有名な女性のひとりだが

筆者の記述は、ある意味そっけなさを感じるほど、坦々としている。

そして、今回最大の発見(いまさらか?)が、以下の記述。

 

女救世主は世間一般のイメージにあるように、自ら剣を振り回して、男まさりの蛮勇を

示したわけではない。確かに全身を鎧兜で固めていたが、専ら振っていたのは天空に座

する救世主と百合の花を掲げる天使が描かれた三角の旗であり、果たしていたのは軍勢

の士気を鼓舞する役割なのだ。          (『ヴァロア朝』144ページ)

 

要するに、「女戦士」ではなく「旗手(旗振り)」に過ぎなかったというのだ。

個人的には、ジャンヌ・ダルクのイメージが一新させられてしまった。

 

「なぜジャンヌが救世主たりえたのか」という優れた分析も含めて

ぜひも、ご一読いただきたい。

10ページにも満たないので、立ち読みでも十分可能だ。(140ページ~)

 

まだまだ書きたりないが、このくらいでやめておこう。

文字通り、噛めば噛むほど、味が出てくる。

いや、読書経験(努力?)を積めば積むほど、"報われる"作品なのである。

 

ではでは、また

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「言葉狩り」は"仕事"じゃないよ 『まん延防止等重点措置』を巡る議論について 本日の”なんだかなぁ”

新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない

大阪・神戸など、いつくかの自治体で

緊急事態宣言に準ずる「まん延防止法等重点措置」を

適用することになった。

当然、ここで最も重要な問題として論ずべきことは

同措置法の具体的内容に関する確認や意見交換に他ならない。

ところが今現在

なによりも注目を浴び、議論の対象となっているのは

「まん延防止法等重点措置」を略した言葉「まんぼう」の、是非。

"魚のマンボウを連想する。まるで危機感を感じられないふざけた呼称だ"といった

不満や怒りが、ハンパない規模で燃え上がっているのだ。

 

ま、確かにオヤジギャグっぽい空気はプンプン漂ってくるよね。

おおかた、関係者のなかにいたダジャレオヤジが

"うーん、これじゃ長くて、覚えるのも呼ぶのも大変だなぁ。

 ‥‥そうだ! 頭の四文字をとって「まんぼう」と呼んだらどうかな。

 同じ名前の魚もいることだし、きっとすぐに定着するはずだ!"

なーんて、発令に至った深刻な状況などまったく考慮せず

能天気な「ノリ」だけで、得意になってこのアイデアをぶち上げたのだろう。

誰かさんが、ちょっと悪乗りして(たぶん本人はウケ狙い)

『オリンピッグ案by渡辺直美』を持ち出したのと、同レベルの発想に他ならない。

 

そんなわけで、今回も思い切り国民感情を逆なでし

見事逆鱗に触れてくれた略称「まんぼう」に関しては

単なる〈世の中を知らないバカオヤジの独りよがり)であり

これっぽっちも、弁護するつもりはない。

しかし、だからといって、この「呼び名」ばかりに議論が集中し

反省して改めました⇒これにて一件落着!

といわんばかりの扱い方には、首を傾げるしかない。

 

だって、単に〈トンチンカンな呼称を引き下げた〉だけなのに

肝心な「まん延防止法等重点措置」の内容に関しての議論までもが

完了してしまったようなムードなのだから。

いや、そうじゃなくて、やっとスタートラインに立てたところだよね。

ここから何度も意見を交換して、交渉して、

国民(市民)の了解を得ていくのが、政治ってもんでしょ。

どうしてそれが、ただの「言葉狩り」で〈任務完了!〉みたいな雰囲気なわけ?

危機感ゼロの「まんぼう」を得々と口にする政権側もアホだけど

略称を改めさせただけで、"何事かをやり遂げた"と勘違いしている野党側は

さらに輪をかけて頼りにならんことが、はっきりわかってしまった。

 

 

ついでに、もうひとつ。

永い間ずーーっと、"なんだかなぁ"と思っていたことにも触れたい。

今回の主題である、「まん延防止法等重点措置」。

「まん延」って・・・なんで、わざわざ「ひらがな表記」にするんだろう。

 

当用(常用)漢字に含まれない文字だから?

そんなもん、必要(新聞やテレビで文字を出すという必要)に応じて、

カムバックさせればいいだけのこと。

どうせ、毎年、国語審議会というお偉方が額を突き合わせて

あーでもない、こーでもないと、改定作業に取り組んでいらゃっしゃるんだから。

新版が出るたびに「新語」を取り入れていく国語辞典と同じように

バージョンアップすれぱ済むことでしょ。

 

「蔓延」だと難しくて読みづらい、読みやすくするための「ひらがな」だ。

いやいや。そりゃ確かに読めるけど・・「MAN」という音が判るだけ。

いっぽう意味の方は、ほとんど〈闇夜のカラス?〉状態になってしまう。

少なくとも「蔓延」と正しい漢字で表記してくれれば

「ツル」と読めないとしても、"草みたいに延びてるのかな"程度の予想は出可能だ。

でも、これが「まん延」となると・・・ほらね。何のとっかかりもなくなる。

それどころか「まん延焼の3文字からは

ときおり使われる「障がい者」にも通じる、《間が抜けた》印象しか伝わってこない。

その意味では、今回の〈まんぼうダジャレ〉もまた

漢字が持つ〈意味〉を放棄した「ひらがな表記」の産物だったと、言えそうだ。

 

毎度ながら、細かいことをグダグダ書いてしまったけど

せっかく〈漢字・ひらがな・カタカナ〉という3種類の文字を自在に使いこなし

豊かな文化を築き上げてきたんだから

「簡略化」を理由に、自らの手でその美点を握り潰すのは、やめようよ。

統合による地名(市町村名)の、薄っぺらな改名作業もだけど

これ以上、《日本文化の破壊》を繰り返さないでほしい、と切に願うばかりだ。

 

ではでは、またね。

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

有名人の「聖火ランナー辞退」大歓迎。どんどん"フツーの人"にチャンスを譲ろう! MakeMakeの遠吠え

相次ぐ有名人のドタキャンに続き

大阪市内における「ボイコット宣言」など

全国的なコロナ感染再々々拡大を受け

オリンピック東京開催に関する否定的意見が花盛りだ。

 

ま、いいんじゃないんですか。

どんどん、やっていただきましょう。

そもそも「聖火リレー」など、開幕前の〈慣習的儀式〉に過ぎず

全国47都道府県すべてを踏破せねば開催できない、ってわけでもない。

走りたくない人や、走らせたくない場所は、避ければいいだけ。

それに、有名人の方々が辞退すればするほど

本来、トーチに触ることもできなかった一般庶民が

聖火ランナーへと"繰り上げ当選"するのだ。

有名人による集客&宣伝効果を期待し

大金を積んでスポンサー登録した巨大企業こそ悔しがるだろうが

"一生の一度の晴れ舞台"をタナボタ体験できる方々には

よかったね! おめでとうございます! ・・と、素直に祝福したい。

 

それにつけても、漏れ聞こえてくるのは

聖火ランナーに併走(先導)する協賛スポンサーカーの

(あえて?)空気を読まない〈から騒ぎ〉だ。

新型コロナの感染拡大など存在しないかのように

「元気」「ファイト」「感動」と、大声であおりたてる。

おそらく兆のレベルだろう巨額なスポンサー料を注ぎ込んだぶん

少しでもオリンピックを盛り上げ、売り上げ増大につなげたいんだろうけど

残念ながら、逆効果にしかならないと思う。

 

開催まで4カ月を切った今現在も

オリンピック開催に対する世論の意見は厳しく

この先、感染拡大がどんどん進行すれば

より大きな「開催中止」の声が、高まっていくことは間違いない。

そんな"異常事態"のただなかにあるというのに

従来のオリンピックのノリそのままで

イエ~イ!エンジョイしようぜ! とか、一人盛り上がってみせたところで

ぶっちゃけ「・・バカじゃないの」と呆れさせるだけ。

スポンサーイメージのアップなど、逆立ちしたって無理だろう。

(といっても、フロリダ半島でバカ騒ぎする若者たちのような集団もいるが)

 

ともあれ、当初の予算を数倍上回る建設&準備費を吐き出した日本政府。

こぞって巨額の協賛料を支払い

世界的イベントに便乗した宣伝戦略に余念のない、巨大企業の面々。

加えて、オリンピックに関するすべての権利を独占し

開催しなければ、放映料・著作権料など莫大な金を稼ぎそこなうIOCと。

出所こそ異なるものの、いずれも強力な「金の力」にブッシュされ

今後、予想以上にパンデミックが拡大しようとも

この夏の東京オリンピック開催は、もはや《決定済み》だと認識している。

 

他はともかく、「お役所仕事」にかけては

おそらく世界一の段取り上手だろうこの国のこと。

たとえ新型コロナ感染拡大の第4波が襲い掛かってこようとも

定められた手順をしっかりと守りつつ、粛々かつ整然と準備を積み上げ

すでに再開しているスポーツ競技のノウハウを目一杯取り入れ

〈最大限、可能な範囲で〉、実現してくれるだろう。

 

この時点で、「絶対」という言葉は使えない。

感染爆発・感染発覚による一部選手の出場停止・参加辞退国(選手)など

重大なアクシデントが発生する可能性すら、否定はできない。

しかし、それでもなお、すべてが終わってみれば

「やっぱり開催してよかった」と

2021年の東京オリンピックを振り返ることになる。

そう、信じて疑わないのだ。

 

ではでは、またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キューバを旅する人へ  2020.2.26-3.5の自由旅行で得た「秘訣」 

しょっちゅう中断を繰り返しながら

1カ月半以上にわたって書き続けた「キューバの旅2020」。

あまりにも"行き当たりばったり"な内容だったので

最後のしめくくりとして

『初めてキューバを旅する人』に向けた

ポイント(教訓?)的なものを、付け加えることにした。

 

名づけて、次は失敗しないぞ! これでキューバ旅行はバッチリだ!
・・・ほんとかよ。

 

ポイント① キューバスマホは「SIMカードなし」で充分。

本編でも書いたけど、高いお金を(欧米の3倍~)を払ってまで

プリペイドSIMカードを購入するメリットは、ほとんどない。

確かに、リアルタイムでネットに接続でき

翻訳ソフトで日本語⇔スペイン語の変換が自在になるのは超便利だが

キューバの場合、首都ハバナですら

ネット利用できるのは、一部の高級ホテル内か市内数カ所のWi-fiスポットのみ。

一日の大半を高級ホテル内で過ごす人でもなければ

文字通り「宝の持ち腐れ」となってしまう。

 

では、キューバスマホは使えないと諦めるしかないのか?

いやいや、オフラインでも十二分に活用可能。

あらかじめ(日本滞在中に)オフラインマップをインストールしておけば

キューバ国内どこに行っても(最低限ハバナ市内&トリニダー間は)

検索機能はもちろん、目的地までの道順などもぜーんぶ教えてもらった。

※ネットの情報に「グーグルマップは使えない」とあったが

 環境が改善されたのだろうか、一度もフリーズせずに利用できた。

 

また、「翻訳ソフト」も、音声入力こそ不能だが

文字入力なら日本語⇔スペイン語の翻訳は、自由自在。

つまり、最低限、こちらの要求(質問)は正確に伝えることができる。

 

上記2つのアプリが活用できるだけど

ガイドブックの地図を頼りに目的地を探して何時間も歩き回ったり

会話帳片手に筆談やジェスチャーまで総動員し、悪戦苦闘していた昔に比べれば

旅の快適さは、文字通り「天国と地獄」ほども改善されている。

中学1年レベルの英会話(ほぼ単語の連呼)しかできないアラカン夫妻が

ここ数年、以前のように右往左往せずに海外自由旅行を楽しめるのも

すべてはこのスマートフォン様々のお陰だと言えるのだ。

 

ネットにつなげる必要なんか、ない。

必要なアプリを日本でインストールしたスマホをパートナーに

キューバの旅を満喫しよう。

 

ポイント② 値切るときには、しっかりきっちり値切らないとダメ。

別にケチらなくても、日本よりずっと安いんだから、相手の言い値でいいじゃん。

そんな風に感じる人も少なくないとは思うが、これ、すごく重要なこと。

もしも、みんなが「相手の言い値」で支払っていると

売り手であるキューバの人は「日本人なら、いくらでもふっかけることができるぞ」

などと勘違いし、どんどん値段を釣り上げていく。

その結果、確かに日本人観光客は〈ちやほやされ〉〈特別扱いされる〉。

しかしそれは、単なる「バカなカモ」扱いだ。

当たり前のことだが、相場(適正価格)を知ろうともせず、相手に言われるまま

何倍もの大金を差し出す人など、一人前=対等な社会人とは見なされない。

日本人が「いつもへらへら笑ってて、ろくに料金交渉もできない幼稚な人種」と

バカにされないためにも、ひとりひとりが《日本代表》の心構えで

はっきりイエス・ノーを伝え、両者が納得する価格に落とし込んでいただきたい。

 

キューバではセレブの旅を満喫したい」という方にまではお願いしないが

少なくとも、普通の人々の暮らしに接したい自由旅行愛好者にとって

カモネギ扱い〉されるのは、決して楽しくないはすだ。

また実際のところ、相手の反応を目の前で感じながら値段交渉に挑むのは

思っていた以上に楽しい体験だった。

特に、値段のすり合わせが完了し、相手と見交わして頷き合うことは

外国語会話が残念な自分にとっては、意思疎通を実感する貴重な瞬間といえた。

むろん、相手が不快になるほど値切り倒すのは問題外だが

少しずつで、いいから「値段交渉」にトライしていただきたい。

きっとそれは、旅の醍醐味を増すだけに留まらず

〈定価国家・日本の殻〉を抜け出し

世界の大半を占める〈交渉国家〉を体験することにも、なるのだから。

 

ちなみに、"交渉"するのは、必ず、お金を渡す前。

払った後になってから、慌てて言い出しても無視されるだけだよ。

 

他にも細かい「教訓」はいっぱいあるけど

最優先事項は、上のふたつかな。

まだまだパンデミック真っ盛りだから

いつになったら行けるかわかんないけど

ぜひとも「キューバの旅」のお供に、ご一読あれ。

 

ではでは、またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ハラスメント"で荒稼ぎ? 「今こそ、職場から『TELハラ』をなくすとき」(朝日新聞3/31広告記事) 本日の"なんだかなぁ"

たかが、新聞の全面広告。

いちいち目くじら立てなくてもいいだろうに。

そうたしなめられることを承知で

あえて大人げなく、書いてしまおう。

 

 問題のブツは、本日の朝日新聞(朝刊)8面全部を使った広告記事だ。

やや長いが、都合のいいところだけ引用したと思われたくないので

あえて全文を紹介したい。

 

今こそ、職場から「TELハラ」をなくすとき。

いよいよ明日から新年度。

職場の電話が忙しくなる季節も始まります。

中には大切な用件もある一方で、

実際はそうでもない電話がほとんど。

仕事の手を止められ、時間まで奪われてしまう。

そんな経験は誰しもあるはずです。

 

そしていまだに残る「電話番は新人の仕事」という慣習。

かつては彼らが仕事を憶えるために有用だったかもしれません。

けれど、ひと昔前と比べ、重要な電話は激減したのも事実です。

テレワークが当たり前になり

ビジネスの連絡手段が様変わりしているいま、

「電話は新人が取るべき」だったり、

「総務が電話に出るのは当たりまえ」という職場の空気や慣習は、

もはや無言の「電話ハラスメント」になりつつあるのかも。

ハラスメントなんて大げさかもしれませんが、

普段は見えづらい職場の痛みに目を向けてもらうため、

あえてそう表現してみました。

 

経営や働き方改革を担う皆さま。

職場の電話ストレスを救えるのは、あなたです。

生産効率が求められる中、余分な電話負担もなくし、

現場の力をもっと有意義に活用してもらいませんか。

※以下、企業名と「うたい文句」は省略

 

ひと言でいえば、「電話代行サービスを利用しませんか」、という広告。

確かに、職場にかかってくる電話のすべてが重要なわけではなく

"忙しくて電話なんか取っていられない"状況に陥るときも、あるだろう。

会社によっては、そのための「電話代行サービス」が有用なことは、理解できる。

だが、しかし・・。

 

例えば、このサービスを導入した結果

新入社員が「電話を取る仕事」を免除された場合。

電話どころか、そもそも他者との応対を習得してこなかった

社会一年生のカレ・カノジョは、いったい、いつ、どこで

〈社会人として最低限必要なコミュニケーション力〉を身に付けるのだろうか。

どれほど出身大学の偏差値が高かろうと

それと「実社会における会話力・アピール力・対応力・交渉力」などは

まったくの別物である。

ましてや、小学生の頃から勉強一筋。

友人関係も部活動もぶっちぎって答案用紙に向かい続けたおかげで

引く手あまたの有名大学に進学できました!

そのすべて・・とまでは言わないが、少なくとも半分以上は

電話を含めた他者との会話に、多かれ少なかれストレスを感じるに違いない。

だって、友達付き合いすら経験してないのだから。

 

もし、そんな彼らが「電話ハラスメント」的な《正義》を手にしたら

ほぼ100パーセント、電話番を拒否し続けることになる。

その結果、企業人としての会話や交渉はもちろん

社会的な人間関係を維持するための「挨拶や敬語の使用法」まで

なにひとつ身に付けることなく、企業人としてそれなりの実績を重ねていく・・

などということが、果たして可能なのだろうか?

無理でしょ。どう考えても。

 

要するに、何を言いたいのかというと。

 

実際には、「嫌いな上司がいる」「ちょっと疲れた」「出社が面倒臭い」といった

必ずしも重要とは言い難い〈動機〉を

「上司からパワハラを受けた」「仕事が過酷でうつ状態になりかけている」など

〈ハラスメント問題〉にすり替え

「自分は弱者だから、権利を保護してほしい」と主張。

己は〈休日出勤&残業ゼロ〉の好待遇を"ゴネ得"とばかりに実現させ

その結果生じる〈残務〉〈大変な仕事〉なとの尻拭いを

上司を含めた上の世代に、ぜーんぶ丸投げしちゃう。

 

そんな、嫌なことを全部「ハラスメント」にこじつけて拒否しまくり

旨い汁だけを吸って、融通無碍の暮らしを満喫する《自称弱者》。

いわば『ハラスメント・ゴロ』が

いま、猛烈な勢いで増えている、ってことなのだ。

 

嘘だと思うなら・・

そうだな、以前にも紹介した本だが

『医者の稼ぎ方』筒井冨美(光文社新書)でも、読んでみてくれ。

直接「ハラスメント問題」を語ってはいないが、結局は同じことだから。

世論の高まりとともに、ある意味苦行のようだった研修医制度が改革された。

しかしその結果、苦労事から逃げ続け、技術の研鑽まで怠る"手抜き新人"が続出し

初歩的な医療行為しかできない「40代ママ女医」〈著者曰く〉が量産。

医者の数は足りてるのに、高度な医療を託せる人がいない

という背筋の寒くなる事態が、全国の病院で静かに進行している。

これもまた、「ハラスメント問題」を〈典型的な被害者目線〉だけでしか捉えず

機械的かつ一律に、研修医の権利を保護する制度を制定。

そこから生じる様々な役得を自らの"楽々ドクター人生"に流用しようとする

《ハラスメント・ゴロ》の存在を、きれいに忘れていたせいだった。

ホント、日本の政治家って、お人よしばかりだよなー。

 

実際のところ、日本の医療体制が現在流行中の新型コロナに対応できない一因は

こうした「自分の生活レベルの維持が最優先」と公言してはばかからない

《ハラスメント・ゴロ》=使えない医者ばかりが増えたせいだと、確信している。

 

またまたとっちらかったけど。

とにかく、そんなわけで

なんでもかんでも「ハラスメント」と名づけ

最悪の状況に陥った被害者だけ基準にした《エセ正義》を振りかざすのは

もう、いいかげんにやめてほしい。

当たりまえのことだから、今さら文字にするのも恥ずかしいけど

苦労しなきゃ、人は成長しないんだってば!

 

ではでは、またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ハバナの呪い"がメキシコで発動 キューバふたり旅 2020.2.26-3.5 7日目~9日目(その3)

2020年3月3日(火) ハバナメキシコシティ⇒成田(+2)

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     東南アジアの旅を思い出させる、メキシコシティの屋台

 

5年ほど前、長女の結婚式への出席にかこつけて

ワイ島オアフ島を旅した。

その後半、ホノルル市内で夕食をとろうと

バスに乗ってチャイナタウンを訪ねたことがあった。

昼間、飲茶の店が多くの観光客で賑わっていた様子を見ており

「今夜は中華料理でも食べよう」と、大通り沿いのバス停で降りたのだ。

ところが、まだ夜8時にもなっていないというのに、あたりは真っ暗。

人通りも絶えていて、ほとんどの店が閉店状態。

明らかにラリッてる様子のコールガールや、目つきの鋭い男たちが徘徊しており

慌てて駆け戻ったバス停(唯一明るい照明が付いていた)では

自主的に見回りしているという地元の男性に

「夜、こんなときに来ちゃだめだよ」と諭され

すごすごバスターミナルへと戻るバスに乗り込んだことを、覚えている。

 

その時、短時間ながら歩いたホノルルのチャイナタウンと

おなじようなヤバい空気が、夜のメキシコシティを満たしていたのだ。

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        まあ、慣れればそんなに怖くないのかも・・

 

それでも、車内にまでその「ヤバさ」が入り込むことはなく

空港からおよそ1時間後、無事バスは終点ブエナピスタ駅に到着した。

鉄道のターミナルや地下鉄の駅に乗り換え可能な、交通の要所だけあって

大都市中心部にしては灯りが少ないながらも、大勢の人々が行き交っていた。

周囲には高層ビルなど近代的な建物が聳えているものの、その足下

大通り沿いには雑多な屋台が軒を連ねており

今と昔がごっちゃになったような、不思議な雰囲気だった。

ちょっと道を逸れるとすぐ暗がりが広がり、どこにいるのかわからなくなる。

そんななか、右往左往しながらも手にした地図を頼りに歩き

5分ちょっとで、目的のスーパーマーケット「ウォルマート」に到着する。

 

外資本の巨大スーパーだけあって、一歩中に入れば

いずこも変わらぬ、ショッピングセンターの風景が広がっていた。

とはいえ、ここはメキシコ。

多数の買い物客にまじって、あちこちで制服姿の警備員が目を光らせている。

さすがにこれなら、安心して買い物ができそうだ。

さあ、キューバ‥‥ならぬメキシコ土産を探しに行こう!

さっそく、目当てのチョコレート香辛料のブロックを探し始めると

・・緊張していたからか、強めの冷房のせいなのか

いきなり、猛烈な腹痛&便意が。

そう。6時間ほど前に食べた、キューバ最後のスイーツ。

その中に潜んでいた生水(生氷)が、ここぞとばかりに仕掛けて来たのだ。

 

慌てて、相方に買い物を託し

トイレを求めて、広い広い店内をぐるぐるさ迷う。

ようやく出入口付近にトイレマークを発見。

4~5人が列を作っていた最後尾につき、冷や汗を流しながら、待つ。

だが、なかなか個室のドアが開いてくれない。

・・なんでだよ!? とよく見てみると

6つ並んでいる「個室」のうち、3つが使用不可で立ち入り禁止。

これじゃ、時間がかかるはずだ。

おもわず「・・まいったなぁ」と嘆きの声を洩らすと

前に並んでいた30代ぐらいのメキシコ人男性が振り返り

こちらにむかって、ニヤッと笑いかけてきた。

"お互い、待つ身はツラいよなぁ"

言葉にしなくても、気持ちは伝わって来るものだ。

こちらも、苦笑い&溜め息で応える。

 

冷や汗を流しながら、待つこと、十数分。

ようやく順番が回って来た。

・・・無事、粗相をすることなく、ミッションをクリアできた。

やれやれ、これで一安心。

これ以上お腹を冷やさぬよう、両手で下腹部を抱えつつ、店内に戻ると・・

ショッピングカートに身体を預け、人待ち顔の相方の姿。

ひととおりチョコレートを調べてみたが

期待していたほど種類は多くなかったらしい。

それでも、空港で買うより確実にお得だと思ったので

あらかじめチェックしておいたカルーアチョコを、合計8個ほど購入。

香辛料もハバネロを中心に、適当に見繕ってカートに入れた。

しかし、レジに向かう途中。

改めて計算してみると、思った以上に高くなることが判明。

空港で両替したメキシコペソでは、3分の2ぐらいしか買えそうになかった。

 

仕方ない、超過分は棚に戻すしかないか・・

と、そのとき、レジ近くにいた数人の女性警備員が目に停まる。

同僚と世間話でもしているのか、柔らかな雰囲気だった。

そうだ。ダメもとでこの人に訊いてみよう。

しまっておいたVISAカードを取り出し、彼女に見せつつ「VISA、OK?」。

すると、ニッコリ笑って「OK!」の答え。

やった!

そのままカートを押し、レジへと向かう行列に並んだ。

そして集計を終え、合計金額が出たところで

手持ちのペソのほぼ全額を差し出し

「プラス、ディスカード」と、VISAカードを見せると

レジ係のおばちゃんは、うんうんと頷き

こちらの希望通り、不足分をカードで処理してくれたのだった。

ムーチョス、グラシアス!!

(後日届いたカード明細書によると、この時の不足分は1340円だった)

 

とにもかくにも、ミッション達成。

あとは、空港に戻るだけだ。

持参してきた買い物バッグに戦利品を詰めこみ

照明キラキラのカルフールから、裸電球が目立つ薄暗い繁華街へ。

店仕舞いを始める屋台の前を足早に進み、空港行きのバス停を探すと・・

そこには、透明なアクリル板で周囲を囲まれた四角い空間が。

空港を通る「メトロバス」の停留場だけ、他とは完全に仕切られており

購入済みのプリペイドカードを提示しないと、中に入れない仕組みになっていた。

しかも、そこでは数名の警察官が常駐し、非常事態に備えていた。

要するに、ここまでやる必要があるくらい治安が良くない、ということなのだ。

         

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          ・・また、灯りが消えていく


誰もいない〈空港行きスペシャルバス停〉の入口に近づくと

すぐに若い男性の警官がやってきて

「空港に行くのか? じゃ、この中で待ちなさい」と身振り手振りで教えてくれた。

中のベンチに腰掛け、さっきスーパーで買ったジュースでひと息つく。

その間も、バスが到着するたびに「これじゃないぞ」と警官が教えてくれる。

万一間違うバスに乗ってしまったら、飛行機に乗り遅れる危険もあっただけに

この痒い所に手が届くような心遣いは、ほんとにありがたかった。

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           警察官が常駐するバスターミナル

 

待つこと20分ほどで、空港行きのバスが到着する。

乗客は、われわれ2人のみ。

おまけに出発直前、一人の女性警官が、当然のように乗ってきた。

明らかに、車内での犯罪防止のためだった。

行きとは違い、その後の停留所で乗って来る客も、わずか数人。

小一時間後、バスが空港に着くまで、立ちっぱなしで警護し続ける女性警官。

降りるとき、「グラシアス!」と声をかけると、笑顔で応えてくれた。

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         我らふたりを護衛してくれた女性警官

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       ライティングする建物もあるが、なんとも寂しい

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        もちろん、頑張ってる屋台もあるけどね

 

実は今回、旅先をキューバになったのは、たまたまの巡り合わせに過ぎなかった。

最大の理由は、エアロメヒコの格安航空券が見付かったこと。

これだけ。

なので、欲張りな我々は、途中でメキシコに泊まることも考えた。

だが、ストップオーバーすると追加料金(+1万だったかな)がかかると言われ

その結果、キューバだけに宿泊する旅程を決めたのだ。

・・欲張って、メキシコ泊を選ばなくて良かった!

今回の〈7時間メキシコシティ滞在〉で得た、一番の教訓こそ

ラカンシロートふたりで、メキシコフリー旅行はやめたほうがいい!!

だったのだから。

 

なんやかんや、手間取ったものの

メキシコシティ国際空港に戻ったのは、成田便出発の3時間前。

ちょうどいいスケジュールで、メキシコ市内観光が体験できたことになる。

(といっても、バスに乗ってスーパーで買い物しただけなのだが〉

今回もまた、悪運の強い旅だった。

これだけトイレ通いをり返したのに、一度も旅行の障害にならずに済んだし。

 

アあとは、預けた荷物を回収し、時間が来るまで空港ビル内でお茶。

チェックインと入国審査も、普段通りスムーズに終える。

さすがにこの時期(3月初頭)は新型コロナの影響で、成田便も空いているだろう。

・・なんて予想は見事に裏切られ、機内は大量のメキシコ人で、ほぼ満席。

もちろん全員マスクを着用しているが、それ以外、なにひとつ変わらなかった。

ちなみに、メキシコシティカルフールで水分を出し切ったおかげか

14時間の飛行中、トイレに行ったのは一度だけだった。

 

2020年3月4日(水)~5日(木)

■アエロメヒコAM0058 メキシコシティ0050⇒0620(+1)成田

 

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              日本の空は、優しい

 

ではでは、またね。