「言葉狩り」は"仕事"じゃないよ 『まん延防止等重点措置』を巡る議論について 本日の”なんだかなぁ”

新型コロナウィルスの感染拡大が止まらない

大阪・神戸など、いつくかの自治体で

緊急事態宣言に準ずる「まん延防止法等重点措置」を

適用することになった。

当然、ここで最も重要な問題として論ずべきことは

同措置法の具体的内容に関する確認や意見交換に他ならない。

ところが今現在

なによりも注目を浴び、議論の対象となっているのは

「まん延防止法等重点措置」を略した言葉「まんぼう」の、是非。

"魚のマンボウを連想する。まるで危機感を感じられないふざけた呼称だ"といった

不満や怒りが、ハンパない規模で燃え上がっているのだ。

 

ま、確かにオヤジギャグっぽい空気はプンプン漂ってくるよね。

おおかた、関係者のなかにいたダジャレオヤジが

"うーん、これじゃ長くて、覚えるのも呼ぶのも大変だなぁ。

 ‥‥そうだ! 頭の四文字をとって「まんぼう」と呼んだらどうかな。

 同じ名前の魚もいることだし、きっとすぐに定着するはずだ!"

なーんて、発令に至った深刻な状況などまったく考慮せず

能天気な「ノリ」だけで、得意になってこのアイデアをぶち上げたのだろう。

誰かさんが、ちょっと悪乗りして(たぶん本人はウケ狙い)

『オリンピッグ案by渡辺直美』を持ち出したのと、同レベルの発想に他ならない。

 

そんなわけで、今回も思い切り国民感情を逆なでし

見事逆鱗に触れてくれた略称「まんぼう」に関しては

単なる〈世の中を知らないバカオヤジの独りよがり)であり

これっぽっちも、弁護するつもりはない。

しかし、だからといって、この「呼び名」ばかりに議論が集中し

反省して改めました⇒これにて一件落着!

といわんばかりの扱い方には、首を傾げるしかない。

 

だって、単に〈トンチンカンな呼称を引き下げた〉だけなのに

肝心な「まん延防止法等重点措置」の内容に関しての議論までもが

完了してしまったようなムードなのだから。

いや、そうじゃなくて、やっとスタートラインに立てたところだよね。

ここから何度も意見を交換して、交渉して、

国民(市民)の了解を得ていくのが、政治ってもんでしょ。

どうしてそれが、ただの「言葉狩り」で〈任務完了!〉みたいな雰囲気なわけ?

危機感ゼロの「まんぼう」を得々と口にする政権側もアホだけど

略称を改めさせただけで、"何事かをやり遂げた"と勘違いしている野党側は

さらに輪をかけて頼りにならんことが、はっきりわかってしまった。

 

 

ついでに、もうひとつ。

永い間ずーーっと、"なんだかなぁ"と思っていたことにも触れたい。

今回の主題である、「まん延防止法等重点措置」。

「まん延」って・・・なんで、わざわざ「ひらがな表記」にするんだろう。

 

当用(常用)漢字に含まれない文字だから?

そんなもん、必要(新聞やテレビで文字を出すという必要)に応じて、

カムバックさせればいいだけのこと。

どうせ、毎年、国語審議会というお偉方が額を突き合わせて

あーでもない、こーでもないと、改定作業に取り組んでいらゃっしゃるんだから。

新版が出るたびに「新語」を取り入れていく国語辞典と同じように

バージョンアップすれぱ済むことでしょ。

 

「蔓延」だと難しくて読みづらい、読みやすくするための「ひらがな」だ。

いやいや。そりゃ確かに読めるけど・・「MAN」という音が判るだけ。

いっぽう意味の方は、ほとんど〈闇夜のカラス?〉状態になってしまう。

少なくとも「蔓延」と正しい漢字で表記してくれれば

「ツル」と読めないとしても、"草みたいに延びてるのかな"程度の予想は出可能だ。

でも、これが「まん延」となると・・・ほらね。何のとっかかりもなくなる。

それどころか「まん延焼の3文字からは

ときおり使われる「障がい者」にも通じる、《間が抜けた》印象しか伝わってこない。

その意味では、今回の〈まんぼうダジャレ〉もまた

漢字が持つ〈意味〉を放棄した「ひらがな表記」の産物だったと、言えそうだ。

 

毎度ながら、細かいことをグダグダ書いてしまったけど

せっかく〈漢字・ひらがな・カタカナ〉という3種類の文字を自在に使いこなし

豊かな文化を築き上げてきたんだから

「簡略化」を理由に、自らの手でその美点を握り潰すのは、やめようよ。

統合による地名(市町村名)の、薄っぺらな改名作業もだけど

これ以上、《日本文化の破壊》を繰り返さないでほしい、と切に願うばかりだ。

 

ではでは、またね。