運賃5円のバスに乗る キューバふたり旅 2020.2.26-3.5 6日目(その1)

2020年3月2日(月) ハバナ市内

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             道路標識にもお国柄が・・・

相変わらず低空飛行を続ける腹具合のおかげで

何度か〈トイレ参り〉を務めるハメとなり

またも充分に眠れぬまま朝を迎える。

これまでの海外旅行と同様、飲料水はペットボトルのミネラルウォーターのみ。

それなりに気を付けているのだが、飲食物に使う水や氷がヤバいらしい。

他の国と違い、明らかに外国人向けのカフェやレストランでも水の管理がゆるく

特にドリンク(モヒート)の氷、アイスクリームに使う水などが

しつこい腹痛&下痢症状を引き起こしているのだろう・・。

と、想像はつくのだが、3月早々だというのに、とにかく暑い。

特に強い陽射しが降り注ぐ日中は

ついつい冷たいデザートやドリンクに手が伸びてしまう。

実害といっても、インドでやられたの時のように寝込むほど重症ではなく

鈍い腹痛が続いたり、トイレが近くなったりする程度。

だから、〈冷たいものでホッと一息〉⇔〈やっぱり来たのか、今回も〉

の往復運動を、性懲りもなく繰り替えすのだった。

 

そんなわけで、この日も朝の8時過ぎ。

少々"おむずかり"のお腹を抱え、ホテルを出発。

途中、革命博物館の前庭で、兵士たちに守られた独立運動の記念品

――「グランマ号(ゲバラカストロキューバ上陸に使った船)」をはじめ

「装甲車」「戦闘機」「高射砲」などが、半放置状態で展示されている――

を眺めつつ、旧市街の北部へ。

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             革命博物館のゆる~い展示

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          キューバ革命の始まりを告げる「グランマ号」

現地の朝食ランキング第8位の店「Le de Monic」に入る。

8時半前ながら、広くない店はほほ満席状態。

ほぼすべての客が、海外からの観光客だ。

運よく空いた席に座り、人気だという朝食セットを注文する。

フレッシュジュースとサラダ、メインがハム卵料理+トーストという定番だが

評判通り、ボリュームはたっぷり。

なんとか頑張って完食したが

相方は「トリニダー・ランチ」のダメージを引きずっており、半分でギブアップ。

ネットで人気の店の共通点は、とにかく〈ボリューム〉に尽きる。

店の雰囲気・サービス・味を押しのけ、〈安くて腹に溜まること〉が最優先。

圧倒的に若い人の投票が多いので、値段と量が「いい店」の基準なのだ。

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          ヘンテコモニュメントが立つ広場

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            遠足? それとも社会見学?

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          元薬屋?シックな博物館にも迷い込んだり

 

その後、腹ごなしを兼ねて、旧市街をぶらりぶらり。

あったまって?きたところで、いよいよ本日のメインイベント。

市内を巡る路線バスに乗り、グーグルマップで見つけたスーパーマーケットへ!

海外旅行で定番になった、「スーパーでお土産をまとめ買い」という

ミッションをクリアするのだ。

 

しかしキューバハバナ)の場合、バスはあまり使い勝手が良くない。

まず一カ所にバスが集まる「パスターミナル」は(少なくとも近くには)見当たらず

どこかルートの途中にあるバス停から乗る必要があった。

それでも、日本でプリントアウトしたバス路線図を持参してたので

「これさえあれば一発だ!」なんて楽観視していたのだが・・

やはり・・キューバは甘くなかった。

 

確かに、大通りの途中には、

明らかにバスを待っていそうな人々が、ごちゃっと集まっているエリアがあり

ほぼ数分ごとに乗客を満載したバスがやって来ては、適当な場所で停車。

数人~十数人が降り乗りして、また出発することを繰り返していた。

だから、"そこいらへん"がバス停なのは疑う余地がないのだが

完全に「地元民向け」の交通機関だからか

普通の国?なら当然設置されている、目印(ポールや看板)もあったりなかったり。

おかげで、どのバスがどの停留所に停まるのかが、いまひとつ判然としない。

もちろん、バスの正面上には路線を示す(アルファベット+)番号が貼ってあり

そのナンバーを「路線図」と照らし合わせれば

目指すスーパーマーケット方面行きのバスに乗れるはずだった。

理論上は。

しかし、バス停の表示がわかりにくい(存在しない)ため

目指すバスがこのあたりに停車するのかどうかさえ、確認できないのだ。

 

それでも、ほかに方法はない。

待っていれば、そのうち目的地方向へ向かうバスが来るだろう。

「路線図」でチェックしておいた、バスの番号(3つほどあった)を唱えつつ

蒸し暑く、埃っぽく、排気ガスの匂いがキツいバス停?で待ち続けること

20分・・40分・・そして60分。

ナンバーの異なる十数台のバスを、力なく見送り

う~ん、やっぱりここじゃないのかな~・・と諦めかけた、そのとき。

ついに求める「P14」のバスが、視線の先に現れた!

同じように待ちくたびれていたのだろう、十人以上の地元民が身を乗り出し

停車しかけたバスの乗車口に、わらわらと群がっていく。

 

ここで、乗り遅れるわけにはいかない。

人の流れに混じって、バス前方のドアから乗り込み

チラリとこっちを見た運転手に「ドス(二人)」と声をかけ

握りしめていた10センターボ(10円前後)コインを、料金箱に投入。

小さくうなずく運転手を見て、私・相方の順で車内に進む。

やった・・2人分10円でバスに乗れた!!

しかもラッキーなことに、2人とも空席(窓側)に座ることができた。

むろん観光バスとは違って、かなり汚れた窓越しではあったが

それでも外の景色を眺めながらの、快適なハバナ市内を巡る旅が始まった。

・・・・というわけにはいかないんだ。キューバだから。

 

ではでは、またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Greed(強欲)の暴走を許すな 所得額に上限を定め、超過分は諸問題の対策に使おう。『バイヤーズクラブ いのち救う薬を求めて』(NHK-BS世界のドキュメンタリー 3.17放送) MakeMakeの遠吠え

タイトルやキャプションが気になった番組は、念のためHDに録画。

余裕があるときに順次再生し、「もういいや」と思うまで観ることにしている。

大半は冒頭の5~10分間見ただけで消去するのだが

それでも、たまに『お宝』を掘り当てるので、どうにもやめられない。

3月17日(水)2300からNHK-BS1で放送されたドキュメンタリー番組

『バイヤーズクラブ いのち救う薬を求めて』も

そうやって出会えた《大当たり》だった。

 

番組の主人公は、オーストラリア・タスマニア島に暮らす一人の男性。

数年前、彼は、C型肝炎に感染し、そのまま放置すれば命を失う状況にあった。

だが、まさにその頃、とある製薬会社がC型肝炎の特効薬の開発に成功。

1~2か月間、定期的に服用するだけで

それまで、いかなる治療法を駆使しても1割程度しかなかったC型肝炎の治癒率を

ほぼ100パーセント、何の副作用も伴わずに完治できるようになった。

まさに、奇跡の新薬誕生!

 

ところが、ひとつだけ、大きな問題があった。

命を救う特効薬の値段が、とにかく高い。

国によって違うが、欧米など先進国で購入する場合

日本円にして、およそ600~1000万円という価格が付けられていたのだ。

実際に薬を作るために必要な「原価」は、1ドル未満だというのに。

 

男は、行き詰った。

まとまった金を用意するだけの、経済的余裕がなかったからだ。

命を救える薬があるのに、使うことが出来ない。

このまま、死を待つしかないのか・・

 

しかし、ひとつの情報が、男を救うことになる。

その名は――ジェネリック医薬品

超高額に設定された欧米諸国とは別に

インドやアフリカなどの開発途上国?で提供される「特効薬」は

特許の大部分を免除した「ジェネリック薬」で代行され

先進諸国の20~100分のⅠという手ごろな価格で

(それでも日本円で数万のレベルだが)提供されていたのだ。

 

迷わず男は、単身、インドに渡航

あらゆるつてを頼って、ジェネリック薬を入手。

帰国後、その服用を開始し、見事C型肝炎を完治させる。

 

だが、男は、それで満足しなかった。

自分と同じように高額過ぎる薬代が払えず

命の危機にさらされているC型肝炎患者のため

個人輸入によるジェネリック薬の提供に乗り出したのだ。

ネットを通じてスタートした、この「代行輸入サービス」に

すぐさま世界中の、お金に余裕のないC型肝炎患者たちが注目。

短い間に、数百・数千人の命を救うこととなった。

 

しかし、「特効薬」を開発・販売している製薬会社が

そんな〈スタンドプレー〉を、見逃すはずもない。

ボランティア的な男の行為の違法性を訴え、その活動を全力で阻止。

自らが設定した〈高すぎる薬価〉に関しても

「特効薬の開発に要した莫大な資金を回収するための正当な価格設定であり

 潤沢な元手がなければ、新たな薬の研究・開発もできなくなる」

と、堂々と言い放った。

最初の一年間だけで、数兆円規模の利益を上げたにも関わりず。

 

ま、早い話。

マネー・ファースト。人命はその次。・・ってことだ。

かつての金融危機で、巨額の退職金を「貰い逃げ」したCEOらの例を見るまでもなく

強欲=Greedに囚われた人間ほど、醜い存在はない。

 

だって、そうだろう。

たとえ何兆円集めようとも、びた一文「あの世」には持っていけない。

もちろん巨額の富を得たからって、天国に行けるわけでも、

神族の一員にランクアップできるわけでもない。

(そもそも「天国」も「神さま」も存在するとは思ってないし)

それどころが、多すぎる金は、幸せよりむしろ不幸や争いを引き寄せる。

肉親・親戚同士が憎み合い奪い合う、相続騒動は言うまでもなく

巨額の遺産を持て余し、生きる目的を見失った〈二世〉も、哀れでしかない。

 

だからこそ、強く、強く、提案したい。

"金に人生を奪われない"ためにも、

もっとたくさんの金を!というゴールのないマネーゲームに、上限を設定。

ある一定額を超えた所得(財産)は

国家の枠を超えた非営利組織の許にストック。

医療・福祉・貧困・教育など、苦しむ人々の自立を助ける

〈生きたカネ〉として、有効に使用するべきだ――と。

 

具体的な上限額は、たとえば・・年間で100億円あたりでどうだろう。

実際、これ以上稼いだところで、どんな使い道があるというのか。

せいぜい、島を買い取るとか

自分のロケットを作って飛ばすとか

専用のアミューズメントパークを作るとか。

いずれにしたって、ロクなもんじゃない。

 

むろん、過剰分の金を譲渡した人に対しては

ちゃんとした「見返り」が必要だ。

たとえば、それは《名誉》で報いることができる。

かつて貴族のランク付けに使われた「伯爵」「公爵」etcとは別に

超高額所得者だけが名乗れる〈新たな爵位〉を授与する、とか。

日本でいえば、〈名誉皇族に任ずる〉という道もある。

どのみち、日本の皇族は国政に関する「決定権」を持たないのだから

その一端に連なる栄誉を与えたようと、痛くも痒くもない。

少なくとも、補助金?目当ての"結婚ゴロ"が割り込まれるより

国内外に対して、はるかに見栄えのいい〈新皇族〉になる。

 

 

それ以外にも、「命名権」や「国民栄誉賞的なセレモニー」など

《名誉》をベースにした特別なグループの設立は、決して難しくない。

え? そんなことしたら、新しい特権階級ができてしまう? 

いいんじゃないかな、それで。

生い立ちやら生まれ持った才能で、明らかに存在している「格差」を無視して

〈人はみな平等〉〈みんな違って、みんな素晴らしい〉とか

ありえない理想を追い求めるより、はるかに現実的な"対策"だと思うよ。

それに、ほら、ノーブレス・オブリージュって、あるじゃん。

「選ばれし者は、その地位に叶う責務を果たさなければならない」ってやつ。

《名誉》って、裏を返せば《義務》。

階級にふさわしい言動を、背負って立つ存在なのだ。

それができないようなロクデナシだったら、世論で引きずり下せばいい。

みんな得意でしょ。過剰に反応してあっというまに炎上させるの。

 

あいやー・・いつのまにか、黒くなってきたようだ。

このあたりで、MekeMekeは退散しよう。

 

ではでは、またね。

 

 

 

 

 

 

 

ようこそ、極上の時間旅行へ。 『ぐるぐる♡博物館』三浦しをん 周回遅れの文庫Rock

中学生の頃は「理科部」

高校の3年間は「天文部」と

〈理系オタク少年道〉まっしぐらだっただけに

本書は迷わず手に取り、積読山脈もスルーして、読破してしまった。

(「読破」と言うほど重厚な内容でもないが)

で、改めてしみじみ痛感した。

――やっぱ、博物館って、いいよな~!!

 

特に、第2館で紹介されたキング・オブ・ザ・ミユージアム「科博」。

国立科学博物館には、半世紀前の記憶がくっきり残っている。

当時、都内の高校で天文部部長という"雑用係"を押し付けられていた私は

たぶん何かの雑誌(天文関係?)に載っていた

国立科学博物館主催の「学生向け天体観測会」の案内に興味を持ち

全部員(といっても7~8名程度)を引き連れて

夕方の上野駅公園口から、当時は古い旧館だけだった科博の建物に乗り込んだ。

そして、博物館の職員に親切な解説を受けながら

最上階の観測ドームに鎮座する望遠鏡の接眼レンズを順に覗いては

木星の縞模様や周囲をめぐるガリレオ衛星土星のリングなど

都会の夜でも充分に観測できる、夜空のパノラマを楽しませてもらった。

 

熱しやすく冷めやすい、根気も学習欲も中途半端だった我々は

確か毎週金曜日?に開かれていた、この無料観測会に

ほんの数回しか参加していない。

落ち着きがなく、暇さえあれば〈面白いこと〉を探すガキだった我々のことだ。

おそらく、すぐまた別の何かに興味を移してしまったのだろう。

 

そして、四十数年の歳月が過ぎた。

実はその後も、プライベートや仕事(打ち合わせ)で

何度か旧館時代の科博を訪れていたのだが

リニューアルした後は、改装したことすら気づかぬ情報音痴ぶりだった。

 

それでも、大々的なリニューアルを経て

地球館(新館)と日本館(旧館)のツートップ体制で生まれ変わった「科博」に

足を踏み入れたのは、一昨年(2019)の9月前半の週末。

おりしも開催中の「恐竜博2019」に行きたいという

次女一家の長男(当時3~4歳)の希望を受け

科博の中で、われらふたり(祖父母)と待ち合わせることにしたのだ。

 

生まれ変わった国立科学博物館の詳細は、本書を参照していただきたい。

ただ、どこもかしも薄暗く埃臭かった、かつての「科博」を記憶する者にとっては

まるで別の施設だったことだけを、記しておこう。

 

んで、わざわざジジバカぶりをさらすエピソードに触れたのは

世界の昆虫コレクションを前に、ぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいた孫のことを

語りたかったから、というわけではない。

 

あるいは、本書で紹介されていた「ハチ」や「ジロ」はもちろん

シアター360」まで見落とした、己の目の"節穴ぶり"を嘆きたいわけでもない。

地球館の何階だったか、はっきり覚えていないが

確か、「宇宙を探る」みたいなコーナーだったと思う

その奥まった一画に、どことなく見覚えのある「品物」が展示されていた。

近寄って、説明書きを読むと、それもそのはず。

はるか半世紀前の高校時代。

あの「観測会」で、木星の縞模様や土星のリングを見せてくれた

天体望遠鏡に、他ならなかったのだ。

その瞬間、胸の内に、ふわっと蘇ってきたのは

部員たちと一緒に過ごした、暗いドーム内でのひとときや

遊び半分で来た我々に、根気よく丁寧に教えてくれた職員の語り口など。

だが、なによりも強烈だったのは

"いやはやなんとも・・あっという間だったなぁ・・・"。

という、自身が生きた半世紀への想いだった。

 

で、柄にもなく興奮した恥ずかしさもあり

たまたまいちばん近くにいた次女(二児の母)に

「この望遠鏡、俺が高校生の時、天文部の活動で科学博物館に来て

 月とか木星とか土星とか観測させてもらったヤツなんだぜ、いや、懐かしいなぁ」

などと、口走ってしまうと

次女の返事は、「ふーん。そうなんだ」

 

――この気持ち。他の人には、ぜったいわかんないよな。

 

『ぐるぐる♡博物館』の面白さを紹介するはずだったのに

気づけば、はるか数億光年かなたの思い出話を、長々と続けてしまった。

ま、このように(どのようにだよ)

一度でも博物館に魅力を感じた体験のある人なら

読めばわかるさ 迷わず読めよ byアントニオ猪木(リハビリ頑張れ!)

・・と、強くオオスメする。

 

いままで、国内国外を問わずあっちこっち出かけてきたけど

正直、あまり有名でない博物館には、どこかうさん臭さを抱いており

よほど時間に余裕があるとき以外、立ち寄らなかった。

(実際、雲仙岳災害記念館前は、車で素通り)

しかし本書を読んだ後、その方針は改めることに決めた。

取り敢えずラインナップされたうち

茅野市尖り石縄文考古館」「奇石博物館」「雲仙岳災害記念館」

石ノ森萬画館」「めがねミュージアム」「ボタン博物館」は訪れたい。

もちろん「科博」も、次回は1日かけてゆっくり回ろうっと。

 

ではでは、またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘンな民族・日本人の〈正体〉がわかる! 『逆説の日本史①~㉒』井沢元彦 周回遅れの文庫Rock

今を去ること40年ほど前(そんなに昔のことか!)

梅原猛の『隠された十字架』に出逢い

おもっきし頭の中を"ちゃぶ台返し"されて以来

消えることがなかった《現行日本史に対する疑問と不信感》。

それを、サターンロケットのブースターのように

遥か宇宙空間へと飛び立たせてくれたのが

1990年代の前半に始まった(なんとこれも30年前のできごとだ)

井沢元春著『逆説の日本史』シリーズ゛であった。

 

〈井沢史観〉とも呼ばれる彼の日本史解釈?は

不世出の哲学者・梅原猛が唱えた「怨霊信仰」の上に

「ケガレ忌避」「言霊信仰」という、新たな2大要素を付け加え

日本の歴史は「ケガレ忌避」「言霊」「怨霊鎮魂」抜きには考えらない――と宣言。

さらに、法的・倫理的規範を超える「話し合い絶対主義」は日本独自の「宗教」

「勝ち組」が「負け組」に名誉を譲る国の「和」と「怨霊鎮魂」等々

きわめて斬新かつ明快なビジョンを次々発表。

名だたる専門家が満足に説明できなかった〈日本史への素朴な疑問〉を

素人にも納得できるかたちで、ズバズバ解き明かしてみせた。

 

さらに、日本の歴史学界および歴史学者は、あまりにも極端な実証主義

わかりやすく言えば「証拠になる史料が存在しなければ対応する事実もない」

という概念にとらわれ過ぎている。など、既存の権威への疑問を表明。

(現存する!?)史料に書かれていないことは、存在しない(!???)・・といった

「史料原理主義」としか呼びようのない〈原則〉を死守し続ける

日本史学界の"常識外れ"ぶりを、ひとつひとつ事例を挙げて論破していく。

 

※例えば、時の為政者が書き残したことを一言一句正しい事実だと鵜吞みするのは

 いまどきの小中学生でも「おかしい」と思うだろう。

 もし自分が〈残す側の人間〉だったら、都合の悪いこと、負い目になることを

 わざわざ暴露し、自己を貶めることなど、ありえないからだ。

 ところが学者のみなさんは、それを「100%真実だ!」と断言してしまう。

 ・・あまりに幼稚で、あまりに現実を無視した〈史料絶対主義〉。

 それこそ、2020年の今も変わらぬ、日本史学の「常識」なのである。

 

――てな感じで、いちいち事例を挙げていったら

それこそ、一冊の本が書けてしまうだろう。

むろん、コピペと受け売りだらけのクズ本にしかならないが。

 

ともあれ四半世紀、22巻+αの特大ボリュームを費やし

日本史にまつわる長年の疑問に明快な答えを出し続けている「井沢史観」。

しかし、今なお彼の唱える〈名解答〉は、

ことごとく《異端》《根拠なし》《常識外れ》と、無視されたまま。

でもって、その理由が――

「お前の主張することはどの史料にも載ってない。従って、全部でたらめだ」

なのだから、そもそも議論にすらならない。

 

いや、別に俺はどっちが正しくても構わないんだぜ。

ただ、単なる「美談」「友情」性善説」ぐらいで説明できるほど

日本の歴史(人間)てのは、単純なもんじゃねーだろ

せめて良くできた小説を読んだ時みたいに

「なるほど、そうだったのかー!」と

心から納得できるような、リアリティのある歴史を体験したいだけなんだ。

 

そもそも、日本史に対する?を目覚めさせたくれた

梅原猛の『隠された十字架』。

あれも、学界からは総スカンされてっけど

だったら、シロートのオイラにも納得いく「正解」を教えておくれよ。

〇どうして、法隆寺の正門の真ん中には、

 何かを阻むように、ぶっとい柱が突っ立っているのか?

※北京の紫禁城だって、建物の中央ラインは「天子様のための専用通路」。

 下々の者が立ち入ることは、決して許されなかった。

〇どうして、法隆寺秘仏百済観音の後頭部にはぶっとい釘が突き立ち

 動き出すことを恐れるように、光背(背後の板)に縫い止められているのか?

※神像(神様)の頭を釘で打ち付ける。これが〈怖れ〉以外のなんだというのか。

 

40年後の今も、脳裏に刻み込まれている、この2つの謎に

「なるほど、そうだったのか!」と納得(感動)できる答えを提示してくれたのは

歴史学者ではなく哲学者・梅原猛、ただひとり。

どのみち『すべての学説は仮説』なのだから、

自分が納得できる考え方を採用するのは、当然だよね。

 

話題が梅原方面に逸れてしまったけど

井沢史観は、いわばその「発展型」にして「改訂版」なわけで

ますます我らがシロートの《納得感》と《エウレカ!感》を高めてくれる。

もし未読の方がいらっしゃったら、ぜひ!

 

・・でも、各巻文庫で600ページ前後を22冊読み通すのはちょっと。

という向きには、『㉒明治維新編』がオススメ。

ラスト第六章に「補遺編」が設けられ、

連載開始以来の四半世紀の間に明らかになった新事実を

伝家の宝刀《井沢史観》で、バッサバッサと斬りまくっている。

この一冊で〈心の色メガネ〉が粉々になる経験をしてしまった人は

きっと、第一巻から読み直さずにはいられなくなる。

 

あと、書き忘れたけど

《井沢史観》を使って今の世の中を見ると

政治・経済・外交・文化・芸能・スポーツetc

この国で起きる様々なモノゴトの〈裏側〉が、すっごい、よくわかる!

ホント、メチャクチャ応用が利くから。

間違いなく、"ひと粒で百倍おいしい"読書体験になるはずだ

 

他にももっと言いたいことがあったけど

書いてる途中で、ポロポロ落っことしてしまった。

機会があれば、また寄り道しよっと。

 

ではでは、またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

「怨霊鎮魂」

「宗教的影響の無視・無知」

「史料絶対主義」

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱり「水」が鬼門だよ キューバふたり旅 2020.2.26-3.5 5日目(その2)

 

2020年3月1日(日) トリニダー⇒ハバナ

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ハバナ旧市街、夜の賑わい

キューバで最後の二晩を、そこそこ優雅に過ごそうと

ちょっとだけ奮発して、ホテル形式の宿を予約。

広くて寝心地のよいベッドでごろごろしたり

バルコニーの椅子に座って眼下の通りを眺めたりと

プチ・リゾート感覚を満喫する、おっさんとおばさんだったが

・・〈水難〉は、こんなとこにもひょっこり顔をだす。

 

それは、キューバの旅ですっかり日課となった「トイレチェック」。

深く静かに続いていた〈お腹の不調〉をなだめるべく

相方と交代で用を足していたときだった。

苦闘しながらも「オツトメ」を済ませ、水洗バーをプッシュ。

――水が、流れない。

いや、谷間の湧き水のようにチョロチョロ流れるばかりで

これっぽっちも〈水洗〉の役を果たさないのだ。

 

すぐにホテルのスタッフを呼び

「何とか直らないか」と頼んでみたものの

明らかに学生らしきインテリメガネのイケメン兄ちゃんは

何度かレバーを押しても状況が変わらないことを確認しただけで

きっぱり我々を見つめて「大したトラブルじゃないよ」

と、もう完全に気合で誤魔化す無責任体制へと切り替わった。

ならばと、部屋の交換を申し出たが

「空き部屋がない」と、またも胸を張って宣言する。

・・・だめだ、こりゃ。

 

仕方なく、スタッフにはお引き取りいただき

自力で何とかしようと、〈にわかDIYモード〉にチェンジ。

廃水レバーにかける力の加減を、あれこれパターンを変えて試したり

貯水タンクの蓋を開け、レバーと浮輪?の接続をチェックしたりと、試行錯誤。

すると、およそ20分後。

なぜそうなるのかはわからなかったが

いったん水道の元栓を閉じ、改めて開くと、

たまに、便器内への水漏れがストップ。

水洗に必要な量がタンクの中に溜まってくれる・・という事実が判明。

そこで今後は、こまめに水の元栓を開閉しながら

だましだまし使うことにした。

それにしても、トイレ・シャワー・生水と

キューバのトラブルは、やたら《水がらみ》が多い気がする。

キューバの教訓◆『生水』と『水まわり』には、くれぐれも注意せよ!

 

汗だくになったトイレとの格闘で

つかのまのリゾート気分は、あっさり消滅。

ふたりとも散発的なストライキを続けるお腹を抱え

小一時間ほど、ベッドでごろり。

実は、5日目に入ったというのに

なぜか今回に限って、未だに時差ボケが治りきっておらず

夕方近く(日本では明け方)になると、決まって強い睡魔に襲われるのだ。

 

それでも、暗くなるまで部屋に留まっていては

この日の行動が「長距離バス移動のみ」で、完結しかねない。

お互いに励まし合いながら、16時30分すぎ、フラフラ外に出ていく。

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路上が「コート」

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ちゃんと目線をくれる

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           みんなで"押しがけ"、ポンコツ

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                             動いたぞ。さあ、乗った乗った!

 

幸い、旧国会議事堂やセントラル広場のある中心部までは

歩いてわずか数分という、好立地。

広場の北に伸びる一段高い歩道スペースで、絵の市場?が開かれていたので

いかにも南国っぽい、色鮮やかな作品の数々を眺めて歩く。

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いかにも「キューバ風?」なアート作品

そこから東へ進むと、革命博物館の前庭が左手に現れ

やはり数分で、最大の観光スポット・旧市街。

様々な国からやって来た観光客に混ざって、街並みや店を見て回る。

・・しかし、いまいち面白くない。

1・2日目の町歩きでも感じたことだが、商品のバラエティが乏しいのだ。

どの店に入っても、並んでいるのは、決まった数種類の「ザ・土産もの」ばかり。

いつも旅先でおこなっている、個性的なお店で面白い品を探す。

という楽しみ方が、なかなかできない。

もちろん〈オリジナリティのある店〉もポツリポツリとは見つかるものの

あ、これいいじゃん!・・と思うようなヤツは、文字通り「桁違いのお値段」ばかり。

明らかに、外国からの観光客だけをターゲットにした、〈高級品〉扱いなのだ。

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ヘミングウェイが通い詰めた?「カフェ・フローリアン」

結局、夕方のハバナ旧市街を1時間以上、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと

歩き回ったが、なにひとつ買わずじまい。

夕涼みに出ているのか、やたら地元の人々で賑わう広場のベンチに座り

売店で買ったジュースを飲んで、ひとやすみ。(そういえば、日曜だった)

 

・・なーんか、お腹が空いてきたね。

気が付けば、すでに18時過ぎ。

ろくに昼食も食べていなかったので、当然の自然現象だ。

ちょっと早いけど、どっかで晩飯にしよう。

事前に調べたネット情報で「人気の店」をチェックしてみると

すぐ近くに、この時間でも営業中の店を発見。

善は急げ?とばかり、綺麗なネオンと賑やかなキューバミュージックで

存在感を際立たせていたレストラン「Mojito Mojito」に入る。

(ちなみにネットの人気ランキングは第2位だった)

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店内。ここも天井が高い。

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なぜ、楽器しか撮ってないのか。「バンド」は相方込みの記念写真だから。

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珍しく料理。デザートだけどね。

明るく開放的な店内と、料理も雰囲気もいうことなし。

なにより、早めの時間だったのが幸いして、すぐ近くで生演奏を楽しめた。

昨夜、トリニダーで聞いたアコースティックな音楽とは違い

今回は、サルサ?みたいな、ビートとパンチの効いたモダンミュージック。

おまけに、若い男性ボーカルの声の〈伸び〉が、ハンパないのだ。

こんなクリアで力強い声を出す歌手、日本では井上陽水ぐらいしか思い浮かばない。

演奏後、チップを求めて若い子が回って来たとき

衝動的にCD(DVD?)を購入していまうほど、気に入った。

(帰国後、再生しようとCDプレーヤー、DVDプレーヤー、パソコンで試してみたが。

 まるで開くことができなかった。方式が違うのか?「なんちゃって」なのか?)

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ハバナの夜は、これからこれから・・

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でも、この暗さは・・"上級者向け"っぽい

ともあれ、料理と音楽に大満足。

そのままほろ酔い気分で、夜の旧市街をぶらつきながら

21時過ぎにはホテルに戻ることが出来た。

明日は、朝から晩までハバナ市内を巡る予定だから

ゆっくり休んでいられる。

・・というより、実質最終日なので、心残りがないようしっかり過ごさなければ。

 

唯一の気がかりだった「トイレの水問題」も

何度か試すうち、コツがわかってきた。

「流れない」という最悪の事態だけは避けられそう。やれやれ。

相変わらず、二人とも腹具合はイマイチ。

しょっちゅうトイレのお世話になるだけに、正直、大問題だったのだ。

 

さて、キューバハバナ)のライフスタイルにも慣れたことだし

いよいよ明日は、庶民の足・路線バスに挑戦だ!!

 

ではでは、またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グーグルマップの「最短ルート」は〈最楽〉ならず! キューバふたり旅 2020.2.26-3.5 5日目(その1)

2020年3月1日(日) トリニダー⇒ハバナ

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左手にカリブ海が広がるパノラマ・ロード

前夜、女主人に「明日は朝8時に出ます」と伝えておいたら

7時30分にはしっかり食事の用意が整っていた。

昨日と同じ2階ベランダの展望席で、フレッシュジュースでのどを潤していると

女主人の母親らしきお婆さんが、笑顔とともに作り立ての料理を持ってくる。

レベル高し!

とはいえ、ふたりとも昨日のランチによるダメージが残っており

せっかくのゴージャスな朝食を、半分近く残してしまう。

もったいないので、お皿を下げに来た女主人に「テイクアウト?」と尋ねると

「もちろん!」とうなずき、すぐ持ち帰り用の容器を用意してくれた。

そして、8時。

予約していたはずのタクシーが、なかなか現れない。

朝食の時間と一緒に申し込んだつもりだったが

あいにくこちらは伝わってなかったようだ。

幸い、時間の余裕は確保しておいたので

さっさと気持ちを切り替え、見送りに出てくれた女主人と握手して別れた。

今回の旅では、計3カ所の宿に泊まったが

ここトリニダーのホスタルが、ダントツで良かった。

もし再度訪れる機会があったら、迷わず同じところを予約するだろう。

 

ともあれ、タクシーから徒歩に切り替え

やや急ぎ気味に、バスターミナルの広場を目指す。

ところが来る時と違う直線ルートを選択したせいか、道路の凸凹は少なく

終始下り坂でもあったので、拍子抜けするほどあっさり到着する。

結果的には、タクシーを呼ばなくて大正解。

直角三角形の情誼に例えると、往路は一番長い斜辺コース。

復路は直角をなす残りの二辺を大回りしたわけだが

〈スーツケース転がし派〉には、断然こっちのほうが楽ちんだった。

◆教訓◆グーグルマップの「最短」は、「最樂」にあらず!

しかも、.出発時間の15分ながら、すでにバスは到着しており、客待ち状態。

これ幸いと乗り込むと、これまた行きとは違い、乗車率は2~3割ほど。

そのあと、のんびりやってくる客を待ったおかげで、出発は10分遅れだったが

行きの「2時間遅れ」に比べれば、ウソみたいなスムーズさだ。

 

※広場に向かってスーツケースを転がしていく途中

 両側の道いっぱいに露店が連なり、路上市場が始まっていた。

 く、悔しい~、トリニダーでは〈市場巡り〉を楽しみにしていたのに・・

 もし「次回」があったら、絶対日曜日に訪れよう!

 

★トリニダー0840⇒1530ハバナ

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牛の団体さんが横断中

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            カウボーイも、ここでは現役


左手にカリブ海、右手にパイナップルやサトウキビ畑などを眺めながら

1時間ほど快適なドライブを続けたあと

バスは、リゾート地であるシエンフエゴスの高級ホテルの近くで、停車した。

トイレ休憩だった。

ラッフルズホテルを思わせる、コロニアル形式のオシャレな外観。

「ちょっと降りてみようよ」と相方に声をかけるが、どうにも反応が鈍い。

2人用のシートで横になったまま、休んでいたいという。

あまり口にはしていなかったが、昨夜始まった胃腸の不良が続いているらしい。

.朝食の時は元気に見えたのに・・

しかたない。トイレが近いわが身に、選択の余地はなし。

用足しを兼ねて、ゴージャスなホテルの中に乗り込んていった。

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泊まってみたい気もする、シエンフエゴスのホテル

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中庭からの眺め。コロ~ニアル!

ここで数人の客を拾い、半分近い乗車率となったバスは、その後も快調に飛ばす。

およそ2時間で、往路と同じレストランと土産物屋がセットになったドライブイン

ランチ休憩に入った。

半野外のテーブル席に腰を下ろし、いくぶん食欲の戻った相方と

朝食時にテイクアウトしたハムサンドで、軽く済ませる。

道中ずっと、.2人席で横になって休んでいられたのが良かったようだ。

その後も、それぞれ2席を独占。

ぼんやり車窓風景をながめたり、うつらうつらして、旅の疲れを癒すことに・・。

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なにはなくとも、青い空

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くねくね線路は、街が近づいた印

ふっと気がつくと、すでにバスは見慣れた海峡沿いの道を走っていた。

なんだ、もうハバナじゃないか。

予定時刻より30分近く早い15時過ぎ、無事イベロスターホテルに到着。

すぐにスーツケースを転がし、この旅3つめの宿に向かう。

最初に泊まった安宿よりかなり近く、7~8分で入口にたどりついた。

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建物の2・3階がホテル(一番右の2階ベランダが泊まった部屋)

4階?建てビルの1階入り口に設置されたドアベルを押すと、

すぐに若いスタッフが降りて来て、鍵を開けてくれた。

階段を昇った2&3階が、予約しておいたホテル「Habana Five」。

キューバ最後の宿ということで、ちょっぴり奮発。

初日と二日目に泊まったホステルの、倍近い料金だった。

・・といっても、2泊で78ユーロだが。

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やたらと高い天井に、プロペラのような扇風機。

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これは翌朝。整理整頓は苦手なり。

でも、さすがにそれだけのことはある。

白で統一された部屋は天井が高く、水回りも大丈夫そう。

ホテル形式なので、24時間専門のスタッフが常駐しており

門限を気にすることもない。

狭いながらも通りに面してバルコニーがあり

こじゃれたドリンクを手に、街並みを眺めることもできる。

 

なんて、パリッとしたシーツのベッドに寝そべって

プチ・リゾート気分を楽しんていたのだが・・

そうそう一筋縄ではいかないのが、キューバハバナ)の旅。

またしても、新たなる〈水難〉が待ち受けていたのだ。

 

ではでは、またね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

重厚な‟淵参り“がはじまる。『詩歌川百景①』吉田秋生 周回遅れのマンガRock 

重く、厚く、濃く、そして深い――。

海街diary』(全9巻)とリンクする

〈もうひとつの場所(人々)〉を描いた新シリーズが、幕を開けた。

 

前回のヒロイン・浅野すずが、亡き父と暮らしていた

山間の小さな温泉町を舞台にした本作は

彼女の義理の弟・和樹を主演男優に

和樹が働く旅館の孫娘・妙を主演女優に据えた

「谷間(たにあい)の小さな集落に肩寄せあって生きる人々)をめぐる

優しく、心温まるストーリーである――

とかいう、ステロタイプな「夢物語」とは、まさに正反対。

狭い山里の温泉町だからこそ受け入れざるを得ない

絡まり合った血縁やしがらみのただなか。

〈不和・軋轢・嫉妬・ひとりよがり・閉鎖性〉などなど

人々の〈隠しておきたい素顔〉が、容赦なくさらけ出されていく。

 

しかも、『海街diary』が湘南随一の観光都市・鎌倉で

すずたち中学生や、その兄や姉といった若者世代を中心に据えていたのとは異なり

山深い温泉町を舞台に幕を開けた本作では

登場人物の大半が、和樹ら親世代より上の中高年以降となる。

そのため、前シリーズにあった〈躍動感〉〈瑞々しさ〉〈バカっぽさ〉など

若さ(未熟さ)に拠ったコミカルな表現は、ほとんど影を潜める。

 

代わって、音もなく静かに押しせる津波のように押し寄せ

和樹や妙たち若者を取り囲むのは

逃げ場のない閉ざされた社会のなかで否応なく絡み合う

人間関係の重さ・深さ・複雑さ・面倒くささ、だったりする。

おまけに、「あなたのためを思って」なんていう

"善意の仮面"すら付けてしゃしゃり出てくるのだから、たまったもんじゃない。

 

それでも和樹と妙は、ときには〈夢や希望〉までも飲み込もうとする

"上から目線の身勝手"に立ち向かい

他でもない自分自身の手で、〈未来〉を掴み取ろうとする。

ま、そうはいっても、少なくとも妙の場合は

和樹が「黒い」と呆れるぐらい、したたかだったりするんだけど.。

 

そんなわけで、『海街diary』の明るさ(湘南っぼさ?)を期待して

本書を手に取った人は、この〔重苦しさ〕を多少しんどく感じるかもしれない。

だいいち、血縁・仕事・ご近所関係がやたらめったら絡み合っているから

登場人物の繋がり具合を飲み込むだけでも、ひと仕事なのだから。

それでも、説明文の長さにひるまず

ときに『海街diary』のワンシーンを思い返しながら

鰍沢温泉の露天風呂に身を沈めるように、ゆっくりじっくり、読み進めてほしい。

「噛めば噛むほど・・」の言葉で知られるスルメのように

どこか深い所から、じわりじわりと、〔おもしろい〕が湧き出てくるはずだ。

 

最後にひとつだけ、独断と偏見で選んだ「名言」を。

 

赤い寒椿につもる雪

そこかしこから立ち上る湯けむり

谷間(たにあい)の小さな集落に肩寄せあって生きる人々

――という

都合のいい美しい物語だけを発信するのが おれの仕事だ

年長者が幅をきかせ スピード感のない行政

旅人はもてなすが 移住者はいつまでもよそ者あつかいの閉鎖性

他者のプライバシーにずけずけ踏み込む デリカシーの欠如

ザ・田舎の不都合な真実には 一切触れない        〔174ページ〕

 

ではでは、またね。