キャメロン・ハイランドでトレッキング中編/"年寄りの冷や水"とはこのことか マレーシアうたた旅 2024.3.13-18 3日目② タナ・ラタ郊外👣Path10👣鉄塔下👣エスケープルートへ

2024年3月15日(金)

Highlanders Garden Guesthouse👣Yong Teng Cafe👣トレッキング(Path10~)

頂上まであとひと息・・だが、そのひと息がキツすぎる。

 

45度越えの急斜面もなんのその

届く範囲にある木の枝・草の葉を手当たり次第に掴みながら

どうにかこうにか3階分の高度を稼ぎ、やや平坦な踏み分け道に合流する。

ほっと一息ついたその目の前に、一匹のトンボがすっと飛んできた。

お前こんなとこで何ハーハーしてるんだ?

とでも呆れるように、枯草の茎にとまったまま動こうとしない。

これ幸いとデジカメを取り出し、ピントを合わせた。

人を怖れぬキャメロン・ハイランドのトンボ。両者の距離は30㎝そこそこ。

 

その間に相方も無茶な急斜面に取り憑き、果敢に登攀を開始。

大丈夫か?と声を掛ける間もなく、踏み分け道の取り付きへと到達していた。

いくら若い頃、テントを背負って北アルプスを縦走していたとはいえ

60代後半にしてなお、互いに譲らぬファイティングスピリットである。

 

苛酷な急斜面を這い上がって間もなく、急に展望が開けた。
わずか数分で、かなり高度を稼いだことを実感する。

 

その後、山の斜面を斜めに横切る登り坂を進み

15分ほどで、本来歩くはずだったPath10への合流を果たした。

Path10との合流地点付近。木漏れ日が作る鮮やかな緑に目を奪われる。

ふと足元を見ると、そこにも小さな花が薄桃色のつぼみを実らせていた。

 

撮った写真を見るかぎり、快適なトレッキングコースと思うかもしれないが

その実Path10は、予想を裏切る本格的な登山道であった。

実感としては、ほとんど南北アルプス(日本)のアプローチと一緒。

巨大な岩や木々が歩幅を越える段差を作っており

ひとつ乗り越えるたび最適な足運びを頭の中で組み立て

全身をフルに使ってクリアする、その繰り返しを要求されたのだ。

 

ここに至って初めて、ゲストハウスのインド人青年の「ベストルート」は

60代日本人カップルにとって"ベスト"ではあり得ない、という事実に気づいた。

その証拠に、Path10に入って以来、5~10分ほどの間隔で

何組ものトレッカーたちと出会うのだが(追い越されてばかり)

彼ら彼女らは、ことごとく2~30代の若いカップルか小さな子供連ればかり

最高齢でも50代前半か?という現役世代だったのだ。

ちなみに人種構成は見事までに欧米、それもヨーロッパ系。

日本人どころかアジア系トレッカーは、一人も見かけなかった。

ハローと声をかけ、山道を軽やかに登ってゆく若きトレッカーたち。

こんな後ろ姿ばかりを、何組見送ったことだろう。

 

てなわけで、汗をかきかき30分も歩くうち

どうやらルートを見誤ったらしい――と後悔の念がふつふつと湧き上がってきた。

とはいえ、ここまですでに1時間近く登り続けている。

今さらUターンして降りるとも楽じゃないし、なにより悔しすぎる。

ええい、行けるところまで行ってみるか!

半分以上やけのやんぱちで、足を進めてゆく。

 

しかしその一方、気になる変化も・・

いつもなら一定のペースで後を追ってくるはずの相方が、徐々に遅れてきたのだ。

相方を待って、立ち止まる時間が少しずつ増えていく。

どうやら、最初の急登で足を痛めてしまったらしい。

幸い、歩けないほどの痛みではないというので

ペースを落として、休み休み進むことに。

 

そんなこんなで、いつ終わるとも知れぬハードな登山道を登り続けること

1時間半~2時間ぐらいだったろうか。

ようやく森林から岩場へ抜け出し、一気に周囲の景色が広がった。

タナ・ラタ(たぶん)の街並みを遥かに見下ろす。

グヌン・サヤール山の頂上まであと一息。

森から草地へと植生が変わり、可憐な花々があちこちで彩りを実らせていた。

 

入口の急登にアタックしてから、およそ2時間半。

ゲストハウス出発に遡ると、4時間に迫る苛酷なトレッキングの果て。

ようやくグヌン・サヤール山頂手前の鉄塔下へと到着。

相方ともどもコンクリートの床にひっくり返って、小休止をとった。

周囲の地形や手元の地図から判断する限り

10~15分程度でPath10の終点となる山頂にたどり着ける見通しだった。

しかし、その"あと一歩"が食わせもの。

我らを追い越し、軽快に登ってゆく若き登山者たちがたどるルートは・・

右端の石段はまだいい、問題はその先、またまた急斜面が待ち受けていた。

頑張れば登れないことはないが、相方の脚の調子が悪化する可能性も無視できない。

帰りの道も考慮すると、これ以上無理しないほうがよさそうだ。

幸いスマホのマップには、頂上を経由せずに

このまま山腹をたどって降りてゆくエスケープルートが表示されていた。

たぶん、こっちのほうが楽だろう。

そう判断して、まっすぐ南に進むサブルートをたどることに。

左に開けた景観を楽しみながら、のんびり歩きだした・・・はずだったが。

最初の内は周囲を観察しながら、目に留まった植物などを記録していたが・・

ほんの数分も歩くうち、Path10となんら変わらぬ急斜面の凸凹道へと姿を変えた。

なんのことはない、この山腹を縫って畑地帯へと降りてゆくルートもまた

雨が降れば川へと姿を変える、"ほったらかし"登山道だったのだ。

脚の置き場に迷いつつ、無慈悲な下り坂を進んでゆく。

それでも雨が降っていないのが、不幸中の幸いか。

 

マップで見る限り、道のりはようやく半分、折り返し点を過ぎたあたり。

このあとまだ、3時間も4時間も歩き続けなきゃいけないのか・・

期待していた目の覚めるような眺望にも出会えぬまま

時間ばかりが過ぎてゆく午後1時半だった。

 

ではでは、またね。