2024年3月15日(金)
Highlanders Garden Guesthouse👣Yong Teng Cafe👣トレッキング(Path10~)
頂上まであとひと息・・だが、そのひと息がキツすぎる。
45度越えの急斜面もなんのその
届く範囲にある木の枝・草の葉を手当たり次第に掴みながら
どうにかこうにか3階分の高度を稼ぎ、やや平坦な踏み分け道に合流する。
ほっと一息ついたその目の前に、一匹のトンボがすっと飛んできた。
お前こんなとこで何ハーハーしてるんだ?
とでも呆れるように、枯草の茎にとまったまま動こうとしない。
これ幸いとデジカメを取り出し、ピントを合わせた。
人を怖れぬキャメロン・ハイランドのトンボ。両者の距離は30㎝そこそこ。
その間に相方も無茶な急斜面に取り憑き、果敢に登攀を開始。
大丈夫か?と声を掛ける間もなく、踏み分け道の取り付きへと到達していた。
いくら若い頃、テントを背負って北アルプスを縦走していたとはいえ
60代後半にしてなお、互いに譲らぬファイティングスピリットである。
苛酷な急斜面を這い上がって間もなく、急に展望が開けた。
わずか数分で、かなり高度を稼いだことを実感する。
その後、山の斜面を斜めに横切る登り坂を進み
15分ほどで、本来歩くはずだったPath10への合流を果たした。
Path10との合流地点付近。木漏れ日が作る鮮やかな緑に目を奪われる。
ふと足元を見ると、そこにも小さな花が薄桃色のつぼみを実らせていた。
撮った写真を見るかぎり、快適なトレッキングコースと思うかもしれないが
その実Path10は、予想を裏切る本格的な登山道であった。
実感としては、ほとんど南北アルプス(日本)のアプローチと一緒。
巨大な岩や木々が歩幅を越える段差を作っており
ひとつ乗り越えるたび最適な足運びを頭の中で組み立て
全身をフルに使ってクリアする、その繰り返しを要求されたのだ。
ここに至って初めて、ゲストハウスのインド人青年の「ベストルート」は
60代日本人カップルにとって"ベスト"ではあり得ない、という事実に気づいた。
その証拠に、Path10に入って以来、5~10分ほどの間隔で
何組ものトレッカーたちと出会うのだが(追い越されてばかり)
彼ら彼女らは、ことごとく2~30代の若いカップルか小さな子供連ればかり
最高齢でも50代前半か?という現役世代だったのだ。
ちなみに人種構成は見事までに欧米、それもヨーロッパ系。
日本人どころかアジア系トレッカーは、一人も見かけなかった。
ハローと声をかけ、山道を軽やかに登ってゆく若きトレッカーたち。
こんな後ろ姿ばかりを、何組見送ったことだろう。
てなわけで、汗をかきかき30分も歩くうち
どうやらルートを見誤ったらしい――と後悔の念がふつふつと湧き上がってきた。
とはいえ、ここまですでに1時間近く登り続けている。
今さらUターンして降りるとも楽じゃないし、なにより悔しすぎる。
ええい、行けるところまで行ってみるか!
半分以上やけのやんぱちで、足を進めてゆく。
しかしその一方、気になる変化も・・
いつもなら一定のペースで後を追ってくるはずの相方が、徐々に遅れてきたのだ。
相方を待って、立ち止まる時間が少しずつ増えていく。
どうやら、最初の急登で足を痛めてしまったらしい。
幸い、歩けないほどの痛みではないというので
ペースを落として、休み休み進むことに。
そんなこんなで、いつ終わるとも知れぬハードな登山道を登り続けること
1時間半~2時間ぐらいだったろうか。
ようやく森林から岩場へ抜け出し、一気に周囲の景色が広がった。
タナ・ラタ(たぶん)の街並みを遥かに見下ろす。
グヌン・サヤール山の頂上まであと一息。
森から草地へと植生が変わり、可憐な花々があちこちで彩りを実らせていた。
入口の急登にアタックしてから、およそ2時間半。
ゲストハウス出発に遡ると、4時間に迫る苛酷なトレッキングの果て。
ようやくグヌン・サヤール山頂手前の鉄塔下へと到着。
相方ともどもコンクリートの床にひっくり返って、小休止をとった。
周囲の地形や手元の地図から判断する限り
10~15分程度でPath10の終点となる山頂にたどり着ける見通しだった。
しかし、その"あと一歩"が食わせもの。
我らを追い越し、軽快に登ってゆく若き登山者たちがたどるルートは・・
右端の石段はまだいい、問題はその先、またまた急斜面が待ち受けていた。
頑張れば登れないことはないが、相方の脚の調子が悪化する可能性も無視できない。
帰りの道も考慮すると、これ以上無理しないほうがよさそうだ。
幸いスマホのマップには、頂上を経由せずに
このまま山腹をたどって降りてゆくエスケープルートが表示されていた。
たぶん、こっちのほうが楽だろう。
そう判断して、まっすぐ南に進むサブルートをたどることに。
左に開けた景観を楽しみながら、のんびり歩きだした・・・はずだったが。
最初の内は周囲を観察しながら、目に留まった植物などを記録していたが・・
ほんの数分も歩くうち、Path10となんら変わらぬ急斜面の凸凹道へと姿を変えた。
なんのことはない、この山腹を縫って畑地帯へと降りてゆくルートもまた
雨が降れば川へと姿を変える、"ほったらかし"登山道だったのだ。
脚の置き場に迷いつつ、無慈悲な下り坂を進んでゆく。
それでも雨が降っていないのが、不幸中の幸いか。
マップで見る限り、道のりはようやく半分、折り返し点を過ぎたあたり。
このあとまだ、3時間も4時間も歩き続けなきゃいけないのか・・
期待していた目の覚めるような眺望にも出会えぬまま
時間ばかりが過ぎてゆく午後1時半だった。
ではでは、またね。