この木の隣で暮らしたい。 北見&帯広ふたり旅 2022.6.6-9 2日目(5)道の駅うらほろ🚗ハルニレの木

2022年6月7日(火)北見市内(ホテル)⇒道の駅ぐるっとパノラマ美幌峠

900草原⇒釧路市湿原展望台⇒道の駅うらほろ⇒ハルニレの木⇒帯広市

 

       奥に立つハルニレ。こちらのほうが被写体としては有名か。

 

スマホのナビを頼りに「ハルニレの木」を目指す。

しかし通行可能な道として示されたのは、そのはるか手前。

ちょうど川岸に突き当たったあたりまでだった。

この情報通りだと、延々歩いていく必要があるけど・・

ま、行けるトコまで行ってみるか。

ナビ通り、国道38号線から左に折れる細い道に入ってゆく。

 

畑か草原かわからない、一面の緑のただなかをトコトコ進むこと数分。

ナビで表示された川岸に到達した。

どこか、この辺に車を停めていくしかないのかと思い

土手へと続く砂利道を登ってみると

・・川に沿って車がすれ違える幅の道路が、ずーっと伸びているではないか。

ナビには乗ってないけど、この道ならまっすぐ行けそうだ。

ハンドルを握る相方に「行ってみよう!」と声を掛け、車を乗り入れた。

 

   土手の上に伸びていた道路。なぜこれがナビに乗ってなかったのか?

 

すると、数十メートル走ったあたりでナビの地図が急に切り換わり

川沿いの土手道が新たに表示され

「ハルニレの木」の近くまで接近できるようになった。

よくわからないが、カーナビの"気まぐれ"には慣れているので

結果さえよければ無問題!と、広い川原の草原を左手に眺めつつ車を進めてゆく。

 

すると1キロほど北上したころ、川原に広がる一面の緑の向こうに

ポツン、ポツンと、半円形の枝を広げた独立樹が見えてきた。

おそらくあれが「ハルニレの木」に違いない。

土手道からは数百メートル離れており

ちょうどその位置に洋館風の建物が、一軒建っていた。

近づいてみるとカフェテラスのようだったが、こちらは休業中。

「ハルニレの木」を見にやってきた人達のために作られた施設なのだろう。

ひと頃は、そこそこ人気の観光スポットとして賑わっていたらしい。

   

ともあれ、カフェテラス?前の駐車エリアに車を停める。

17時過ぎということもあってか

建物周辺から、300メートルほど離れた草原のなかに立つハルニレの木まで

人も車も、我々以外まったく見当たらない。

生活圏から遠く隔たっているためか、耳に入るのは風のそよぐ音だけ。

・・願ってもない自然環境だった。

 

      あとはひたすら歩くだけ。経路は右手の踏み分け道のみ。

 

さっそく、ハルニレの木をモチーフにしたコンクリートの斜面を降り

ひと一人がやっと通れるだけの、細い踏み分け道へと進んでゆく。

静寂のなか、草の茎を踏む靴の音だけが、ぎゅっ、ぎゅっと繰り返される。

そばの草むらで休んでいたのだろう、ときおり驚いた野鳥が足元から飛び立ってゆく。

そのたび「はたた、はたた」という羽音が、優しく耳を打つ。

数年前、カッパドキアの谷を歩いた時以来の、至福のひとときだ。

 

膝上の高さで広がる草原をかき分け

少しずつ大きさを増してゆくハルニレの木に近づいてゆく。

最初、土手道から眺めたときに気づいていたが

「ハルニレの木」なる樹木は2本(2セット)あって

300メートルほどの距離に立つ手前の一本が、有名なほう。。

さらにそこから100メートルばかり奥に、もう一本立っていた。

     

まずは、どことなく見覚えのある手前の一本へと向かう。

踏み分け道は直接ハルニレの根元に続いておらず

真横の位置から分岐が延びているので、そこから接近を図った。

近づいてよく見ると、一本の根元から二本の太い幹が伸びているように見える。

そのあたりが「恋人たちの守り神?」と見なされ人気が出たらしいのだが・・

ともあれ広い青空の下、無人の草原にたたずむ樹木は

確かにある種の"神々しさ"をまとっているように感じられた。

 

       手前のハルニレ。樹冠が高く、力強さが伝わってくる。

        さらにその向こうには、無人の原っぱが・・
     

それにしても、なんという静けさ。

周囲をぐるっと見渡しても、360度、草の海が広がるばかり。

もちろん「ハルニレの木」の美しさもハンパないけど

この圧倒的な"原っぱ"こそが、なにものにも代えがたい"宝物"に思えてくる。

 

            二本目のハルニレへと続く道。

    木の間越しに土手上のレストハウス(中央)を振り返る。と、遠い・・

 

いったん元の踏み分け道まで戻り

さらに100メートルほど奥に立つ、2本目のハルニレにも逢いにゆく。

こちらもまた「恋人の木」に負けず劣らず、見事な枝ぶりとたたずまいだ。

というか、帯広で見つけた絵葉書は、こちら(奥)の方が写っていた。

丸みを帯びた枝ぶりが、生き物っぽくて絵になるからだろう。

 

     ついに"仲間"が現れた(白い建物とハルニレの中間にある黒点

 

30分ちかく、ぼーーーっとしていただろうか。

斜め上にあった陽射しが少しずつ傾きを増し、色も赤みを帯びてきた。

気が付けば、18時を回っていた。

名残惜しいけど、そろそろお別れしなければ・・・

と、土手へと戻る踏み分け道に向き直ると

ひとつの小さな人影が、ゆっくりこちらに向かってくるのが見えた。

ようやく、同好の士が現れたようだ。         

 

彼方に待つレストハウスに向け、ゆっくりと足を運んでいくと

ちょうど人影は一本目のハルニレの木の裏側に回ったらしく

その姿を確認することはできなかった。

きっとあちらも、誰にも邪魔されずに対面したいのだろう。

挨拶など無粋なだけ。そのまま岐路をたどってゆく。

 

       できることなら季節・時間・天候を違えて、再訪したい。  

 

それにしても、すごい出逢いを果たしてしまった。

晴れ渡った美幌峠にも興奮したが

この静寂に満たされたひとときには、かなわないだろう。

ありがとう、ハルニレの木。

 

ではでは、またね。