"イマイチ"を捨てる道産子魂 帯広ふたり旅 2022.10.26-29 3日目(3)二風谷アイヌコタン・文化博物館⇒帯広市内/炉ばた魚千

2022年10月28日(金) 

北海道ホテル⇒うらかわ優駿ビレッジ⇒二風谷アイヌコタン⇒炉ばた魚千(帯広)

        3日目のハイライトは、この店だった!!

 

普段は夜も明るい首都圏の道を走り慣れているので

日没と同時に漆黒の闇に包まれる十勝・帯広あたりの車道は

めちゃくちゃ走りにくい。

前方に一台でも先行する車があれば、これ幸いとくっついていけるのだが

極端に通行量の少ない山越えロードで、そんな幸運に恵まれるケースは滅多にない。

やむなく、ヘッドライトをハイビームにしたままで走行。

対向車の光が見えてきたらローに切り替えるという、地道な努力を続けていく。

 

そんなわけで、二風谷のアイヌ文化博物館を出発しておよそ1時間後。

闇夜の灯台のように明かりを灯す道の駅・樹海ロード日高にたどりついたときには

ドライバーの相方はもちろん、ナビを務めるうたたもバテはじめていた。

それでも、糖分とカフェインを摂取し

あと半分ちょっとだ、などと声をかけつつ10分後には車に戻った。

 

その後、いよいよ道は峠に差し掛かり

カーブとトンネルが次々に現れては消えてゆく。

さらに、あと少しで日勝峠というあたりでは

トンネルを出た瞬間、四方を白色に覆い尽くされた。

どうやら濃霧・・というか、雲の中に入ってしまったらしい。

見通しはほとんど効かず、せいぜい2~30mといったところだろう。

やむなくスピードを徐行レベルまで落とし、手探り状態で路面を拾ってゆく。

 

幸い、まもなく峠(最高地点)を越えたからか

ほんの数分で"白色地獄"は終了。

おまけに、前方を走るトラックに追いついたおかげで

帯広市近郊までの数十分は、そのテールライトを頼りに走ることができた。

 

ーー唐突だが、ここで【ローカルドライブの教訓】をひとつ。

★地方(失礼!)の夜道は、時間通りに移動できるなんて考えるなよ。

 街灯ひとつない真っ暗な道を、おっかなびっくり走るしかないんだから。

 

そんな暗い夜道に悩まされながらも、

二風谷出発からおよそ2時間半後の19時台なかば。

どうにかこうにか、本日の宿泊地・ホテルルートイン帯広駅前に到着した。

昨夜泊った北海道ホテルとは違い、その名の通り駅前にあるビジネスホテル。

当然、部屋は狭く、付属の大浴場も「大」とは名ばかり。

支払った追加料金だって、昨夜より少し高かった。

なのになぜ、ここを選んだのかというと・・理由はただひとつ。

十勝最後の夜は、駅近の居酒屋で新鮮な魚介類を腹いっぱい食べたい!

そう。前回(今年6月)に来たときに入った居酒屋が

あまりに旨く、おまけに信じられないほど安かったからだ。

 

そんなわけで、部屋に荷物を置いてホテルを出たとき

すでに時刻は8時近くになっていたが

最後の力を振り絞って、ふたりとも「旨い居酒屋で食べるぞ」の意欲に燃えていた。

さて、どこに行こう。

あらかじめ数軒の候補をリストアップしていたけれど、正直迷ってしまう。

ここで冒険して失敗すると、リベンジするチャンスがないからだ。

 

・・無難だけど、この前入った店と同じトコにしようか。

弱気の虫に負けて、そう提案しようと決めた矢先。

隣を歩いていた相方が突然立ち止まり、左脇にある炉端焼きの店を指差した。

ちょっと、ここ見てみようかな。

そう言うと、返事も待たずに引き戸を開ける。

ここでようやく、思い出した。

奇しくもその店は、前回(6月)に帯広を訪れた際

満員だからと門前払いを喰らった店、炉ばた魚千(うおせん)だった。

今夜も予約してないから、難しいんじゃないかな。

半ば諦めつつ店先で待っていると、すぐに相方が戻ってきた。

大丈夫だって。入ろう!

てなわけで、図らずも前回のリベンジを果たせることになったのだ。

 

       「炉ばた魚千」で4か月前のリベンジを果たす。

 

帯広で人気の炉ばた店・魚千のなかは、思ったよりも広く

調理場をぐるっと囲む長いカウンターと、テーブル席がいくつか設けられていた。

そのカウンターの一角に案内され、腰を下ろした。

席は半分がた埋まっており、予想していたほどは混んでいない。

後で聞いた話だが、この時間(8時ごろ)以降なら割合空いているのだとか。

そういえば、前回断られた時間帯は7時前だったっけ。

 

       カウンター席と調理場の間に、食材や食器が並ぶ。

  ホタテ刺身とタコやわらか煮をセットで注文。💛私(時価)は次の機会に・・

 

ともあれ、お腹はペコペコだ。

ふたりともアルコール飲料を注文してから、お品書きを手に取る

・・というか、手元のメニューより黒板に記された「本日のおすすめ」に目が行く。

結局、店の人のアドバイスを取り入れ

ホタテとタコ煮と、魚のカマ焼き(時価)など数品を頼むことに。。

 

驚いたのは、何か焼き魚を食べようと思って

お品書きに並んでいたホッケの塩焼き注文したところ

店の女主人?はすぐさま、こう返してきたのだ。

「今日のホッケはおいしくないから、やめたほうがいいよ」

え? マジで? お品書きに載ってるのに、店の人が否定しちゃうわけ!?

んで、今日はこれがおいしいと言われたカマ焼きを注文したんだっけ。

(メモしてなかったので魚の名は忘れた。メチャ旨かった記憶だけは残っている)

 

マメなメモ魔ではないので、注文した品を全部並べることはできない。

しかし2カ月が過ぎた今なお、舌と鼻孔に刻まれた強烈なる美味がふたつある。

ひとつ目は、ホタテの刺身。

ピンポン玉のようにまん丸に張り詰めた、つやつやのホタテ貝柱。

口に入れてかみしめたとたん、いっぱいに広がる旨味の嵐。

あまりの美味しさに、思わず目を閉じていた。

 

   左側が「ホタテの刺身」。間違いなく、これまで口にしたなかでベスト。

 

そしてふたつ目が、ホッケの代わりに薦められた魚のカマ焼き。

さすがに大袈裟だなぁ、と思ったけれど

食べた後で相方が店の人に告げた言葉を紹介したい。

ーーこんなに美味しい魚を食べたのは、生まれて初めてです。

 

   絶品のカマ焼き。今でもこの一枚を目にすると、あの美味!が甦る。

 

他にも、記憶に残る味は少なくない。

大満足でカマ焼きを食べ終えた後、サービスで作ってくれたすいとんとか。

会計後に手渡された、手作りデザート(リンゴのシャーベット?)だったり。

とにかく、単に注文した料理を提供するだけでなく

客の"身の丈"に合わせて的確なアドバイスをしてくれるのが、ありがたい。

追加の料理を頼もうとしたら、「食べきれないからやめた方がいいわよ」とか。

マニュアル通り無難に受け答える最近の接客とはまるで違うコミュニケーションが

新鮮ながら懐かしく、とても暖かかった。

 

   勝手に作ってくれた〆の「すいとん」・・ああ、これもメチャ旨だった。

 

それと、書き忘れてしまったけれど

さっき店の人が言った「今日のホッケはおいしくない」の、オチ。

脂ののったホックホクのカマ焼きに歓喜していたとき

店の人がこっそり生ゴミのバケツに投げ入れているところを、見てしまった。

吟味して仕入れた品だろうに、美味しくないと判断したら迷わず捨てる。

プロフェショナルの意地が、ビシビシ伝わる瞬間だった。

 

    何度、食べては天井を見上げただろう。夢心地とは、このことだ。

 

さて、気になる会計。

久々に「時価」なんかを注文して、ややビビッていたけれど。

大人ふたりがお腹いっぱい食べて(デザートつき)、お酒も少しずついただいて。

ぜんぶひっくるめて、諭吉1人で足りてしまった。

こんなに旨いホタテとカマ焼きを味わえて、このお値段なら文句なし。

次回は何をご馳走してもらえるかな?

・・なんて、早くも期待してしまうのだった。

 

         ほろ酔い気分で、夜の歓楽街をぶらぷらと。

 

ではでは、またね。