お前は・・「渡鬼」の山間温泉町版かっ!?"
そんなツッコミを入れたくなるほど
幼馴染み、親類縁者、親子孫三代が複雑に入り乱れ
腹を探り・衝突し・言葉を交わし合う、重厚にして芳醇な物語。
――なーんて抽象的な言葉、いくら並べても何も伝わらないことぐらい承知している。
けれど、ときどきページをめくる手を止め、俯瞰で眺め直したくなるほど
様々な想いが、タペストリーさながら綴り織られているのだから、仕方ない。
そんななかでも、今回初登場の「まーこ姉ちゃん」が抜群にいい。
主人公ズのひとり和樹が働いている温泉旅館「あずまや」。
その現社長・仙太郎の姉にあたる、小川麻揶子。
「田舎は嫌い」と公言し、東京の大学を卒業後も地元に戻らず
そのまま東京の企業に就職した、バリバリのキャリアウーマンだ。
数年ぶりに里帰りした彼女が和樹たちやヒロイン妙、「あずまや」の面々と再会。
静かな光を放つ宝物のような言葉を、ぷかりぷかりと紡ぎ出してゆく。
子供はみんな泣くんだ それでもみんな車を降りる時は笑顔で「行ってきます」と言うんだ 77-8p
あいつがイヤでたまらないのは多分自分に似てるから あいつは あたし自身を映す鏡なの 89p
親の盛る毒は巧妙でねえ‥‥ 解毒すんのにエラいエネルギーが必要だもんで それならうちの母親も負けてない
さすが姉妹 唱える呪文まで似てる 90p
あたしねえ 今「いい人」と戦ってンの ホトケのナントカとか言われてっけど 早い話「悪者」になりたくないズルい奴なのよ辞めろって面と向かって言いたくないから そっちが空気読んで辞めてくれってワケ 仕事ちょっとずつ減らすとか居づらい雰囲気にしてね どっかで聞いたような話でしょ? 93p
ひとつひとつのシーンが胸に沁みわたり、思わず何度も読み返した。
「こんな断片じゃ何がイイのか、まるでわからん」
そう感じた方は、ぜひご自身で確認を!
自分のフィルター越しにしか社会を見ない
"善意の仮面をかぶった厄介者たち"も、もちろん健在だ。
2巻でも、以下のフレーズが大活躍。
姉さんは彼女と子供のためを思って休ませてあげようとしたのに!
パワハラなんて! 私そんなつもりじゃなかったのよ!
そーよまーちゃん! 姉さんは「あずまや」のためを思って。63-5p
ーーホント、"意識しない悪意"って・・タチが悪い。
箱庭にも似た狭い温泉町の話だけに、好いた惚れたの恋愛話もまた
3つの世代を縦横に結び、幾重にも折り重なってゆく。
繊細にして美味なるミルフィーユのように。
ちなみに今回のキーワードは――。
恋は突然やってくる そして苦悩が始まる
人はなぜ誰かを好きになるだろう たとえ苦しむとわかっていてさえも 60p/177p
要所でいい味を出している"ギャグ"にも、触れておこう。
今回、ツポにはまったのは
チベットスナギツネのorみたいな目、というフレーズ。
68、82、94ページと登場するたびエスカレートする演出を、じっくり楽しみたい。
このペースだと、第3巻が出るのは、来年の夏あたりか。
その時はまた、『海街ダイアリー』から12巻ぷっ通しで読むんだろうな。
ではでは、またね。