「プーシーの丘」に登る途中にあった、お供え物?
朝、5時半。
真夜中のような暗闇のなか、相方と共にホテルを後にする。
目指すは、ワット・シェントーンの南面、東西に延びるサッカリン通り。
ルアンパバーン名物「托鉢」を見物するためだった。
僧侶が喜捨を求めて街を練り歩く「托鉢」は
毎朝、ラオス全土で行なわれている、いわば日常風景。
そのなかでも、ここルアンパバーンは何軒もの寺院が密集し
数百数千に及ぶ僧侶が夜明け前から托鉢に回るため
"ルアンパバーンに来たら早起きして托鉢を見に行くべし"
という〈旅人たちの常識〉が、いつのまにか出来上がっていたのだ。
誰もいない真っ暗な道を歩くうち
角を曲がった細い路地の向こうから、人の気配がただよってきた。
なんとなく足を忍ばせ、そっと近づいていくと
ロウソクのような小さな灯りのもと
オレンジ色の袈裟?をまとった僧侶たちの行列が、うすぼんやりと見えてきた。
さらに近寄ると、道端に並んで座る10人ばかりの地元住民の前を
20人ぐらいの僧侶が順に通り過ぎながら、何かを受け取っているのがわかった。
テレビ番組やガイドブックで「ルアンパバーンの托鉢」のことは知っていたが
頭の片隅では"どうせ観光客向けのショーだろ"
などと、醒めた〈斜め上から目線〉で受け取っていた。
けれども、メインストリートから離れた
めったに観光客が立ち入らない、狭い路地のそこここで。
明け方とはいえまだ真っ暗な時間に、地元の人々が道端に並んで座り
托鉢に来た僧侶たちに、用意した食べ物を渡す姿を前にすると
――すごい。みんな、毎朝マジでやってるんだ~!
といった、頭の悪い感嘆文がこぼれてしまう。
そんなふうに、内心では感動しながらも、身体の方は現金なもので
反射的にデジカメを構え、せわしなくシャッターを押し続ける。
とはいえ、冷静になればすぐ気づくことだったが、あまりにも暗すぎた。
結局、この時撮った写真は、どれも「闇夜のカラス」状態。
おかげで、"最も自然な托鉢風景"は、撮り逃してしまったのだった。
写真に残せたのは、メインストリートの「観光托鉢」ばかり
その後、あちらこちらで行なわれている小規模な「托鉢」を眺めながら
メインストリート・サッカリン通りに出たのは、朝6時過ぎ。
さすがに、市一番の托鉢スポットだけあり
この通り沿いだけは、煌々とした灯りがともされ、多くの観光客が詰めかけていた。
そして広い歩道に沿って、風呂場の桶サイズの小さな椅子?がずらり勢ぞろい。
観光客が一列に座り、やはり列を作って歩く大勢の僧侶に、食べ物を渡していた。
何のことはない、観光客向けの「托鉢(喜捨)体験ツアー」だった。
ツアーに参加した人々は、みな興奮気味に喜捨を行ない
そんな観光客の姿を、数百人に達する観光客たちが、押しのけ合いながら撮影する。
そう。どこかで見た記憶のある、人気観光スポットの光景、そのものだ。
地元の人々は毎朝欠かさない。さすが手慣れた様子。
ここに来る途中、〈暮らしの中の托鉢〉に出逢えて、本当に良かった。
それはそれとして、こういいったお祭り騒ぎも、決して嫌いじゃないだけどね。
実際、他の東南アジアの国かららしき女性たちの一団に頼まれで
カメラのシャッターを押すのも、結構楽しいものなのだ。
・・で、あっという間に終了。
ともあれ、我々がその「メインステージ」にたどり着いた6時過ぎには
辺りが明るくなり始めており、「托鉢」は終わりかけていた。
ほんの15分ぐらいで、あっという間に僧侶たちの姿は消え去り
あとには歩道に沿って並ぶ風呂桶の細い列と、残った食べ物が散らばっているばかり。
興奮して写真を撮りまくっていた観光客たち(我らも〉は
どこか気が抜けた顔で、三々五々宿に戻っていくのだった。
早朝のワット・シェントーン。静謐。
同じようにホテルに戻っても良かったけど、まだ6時半。
朝食は8時からだから、それまで少し散歩しようか。
相方と意見も合ったので、まずは目の前のワット・シェントーンへ。
昨日に続き、二度目の見学。
入口で、昨日買ったチケットを見せると
係の女性は、軽く手を振って入場を認めてくれた。
最初に訪れた夕方とは違い、朝の境内にはすがすがしい空気が漂っていた。
人の姿もまばらで、自由自在に見て回れる。
ときどき座って小休止したり、のんびり時間を過ごす。
さて、次はどこへ?
街全体を見渡すことができる、高台にでも行ってみるか。
メコン川と並行して流れるナム・カーン川に沿って南西に歩き
川沿いに設けられた入口から急な階段を上っていく。
途中の小屋で入場券(20000kip)を購入。
つづら折りの急な石段を、10回ほどいったりきたり登っていくと
小高い山の頂上に金色の塔タート・チョムシーが建っている。
標高150m。ルアンパバーン市内か一望できるスポット「プーシー」だ。
朝もやのなか、徐々に気温が上昇。頂上に着くころには、すっかり汗まみれに。
これだけ頑張ったのだから、さぞやいい眺めが・・・と、思いきや。
どっちを向いても、木々の茂みが中途半端にジャマしており
期待したほどの〈絶景〉からは程遠い、と感じた。
山上の仏像はカッコよかったんだけど・・
眺望は、これが精いっぱい(天気もイマイチだった)
相方ともども、ちょっと肩を落とし、朝食を食べに戻ることに。
せっかくなので登りとは反対側、国立博物館に面した大通りへと降りてゆく。
まだ8時前だが、すでに多くの露天商が歩道に沿って店を開けていた。
工芸品、土産品、Tシャツなど、色鳥殿の品々が並んでいる。
ーーそうだ、ナイトマーケットで買ったのと同じTシャツがあるかもしれない!
実はホテルに戻ってから、一枚しか購入しなかったことを大後悔。
「明日見つけたらまとめ買いしよう」と、心に決めていたのだ。
ところが・・どの店を覗いても、並んでいるのは
ビエンチャンの市場にも山積みになっていた、大量生産の安物ばかり。
ナイトマーケットで見た、独特なデザインの品は、ひとつも見当たらなかった。
おそらく、昼間やっている店とは違う流通経路で仕入れているのだろう。
最初の予定通り、ルアンパバーンで2泊していれば
きっちりリベンジできたのだが、・・これもまた縁だと思うしかない。
何も買わないのに、みんなニコニコ。
気持ちを切り替え、朝ごはん目指してホテルに向かう
途中、やけに地元の人々で賑わう細道があると思ったら、朝市の通りだった。
野菜・果物・肉類・香辛料・花・日用品などが
それぞれ幅1.5mほどの板の上に並べられており、1軒ずつの店になっている。
歩くのにも難儀するほどの人がひしめき合っているのだがおん
音楽・騒音はもちろん、掛け声や値段交渉の声も、ほとんど耳に入らない。
ビエンチャンと同じく・・いや、それ以上に静かな朝市だった。
朝市。たぶんこの日のハイライト。
なにウリ? とにかくデカい
生鮮食品は持ち帰れず。残念。
途中、様々な香辛料を並べる一軒の店の前を通り
置いてあった「花椒」の袋を眺めていると
店のオジサンが袋から一粒取り出し、味見させてくれた。
・・・・・・か、から~いっ!!
香辛料が大好きで、コショウもトウガラシもバンバン振りかけるタチだが
たった一粒で、口から鼻に突き抜ける「花椒」の刺激にはビックリ。
思わず「花椒」と「胡椒」の粒の入った袋を買ってしまった。
※帰国後、日が経つにつれ「花椒」の鮮烈な辛さが抜けていった。
常温で密閉保存していたが、それだけだと鮮度が保てなかったらしい。
次の機会があったら、即座に冷凍してみるか。
朝市が楽しくふらふらしていたら
あっという間に8時を過ぎてしまった。
さあ、朝飯を食べて、もうひと眠りするぞ。
ではでは、またね。