忘れたくない言葉 from『海街diary』吉田秋生(その2) 

相も変わらず

先頭に立って一歩を踏み出す者は現れず

他者の落ち度を探し回り、互いの足を引っ張り合うだけの

しょうもない日々が繰り返されてゆく。

かといって、自らはなにひとつ行動しようとせず

グチばかりが零れ落ちそうな口を、あわてて引き締め

今日も誰かが発した言葉に、手を伸ばす――

 

〇すずの従兄弟・直人(美大生)、ひとめ惚れした?女性・糸に己の過去を語る。

直人「‥ほんとにここは 子供の頃行きたかった地図にない場所みたいだ。

   おれガキの頃 いじめられてたんです。

   いやもうそん時はキツくて 死ぬとかはとても怖くてできなかったけど

   とにかく逃だしたくて

   誰も知らない地図にものっていない秘密の場所に行ってしまいたかったんです」

  「でも そんな場所どこにあるんだろう。

   おれは探そうと図書館に行って 地図を広げたんです。

   そこで『あっ』と自分のアホさに気がついて そのあと大笑いして」

  「バカバカしくなって親に言いました。

   今の学校はバカばっかだから転向させてくれ このまんまじゃバカがうつるって

   我ながらよくやったと思います。

   親もピンときたみたいで 何も言わず転向させてくれました。

   そのことは 今も感謝しています」

  「転向してからはキャラの作り込みが功を奏して 

   クラスの人気者になっちゃいました。

   おかげで学校生活は それなりに楽しかったです」

  「でも 今も時々思うんです。

   もしあの時 こんな場所が身近にあったら 見つけることができていたら

   もっと楽に過ごせたかもしれないって」

糸「『立ちあがって たたみなさい 君の悲嘆の地図を』

  イギリスの詩人オーデンの詩です。

  私は学校に行けなかった3年間 この詩に何度も救われました」

 「お茶のおかわり いかがですか?」

直人「はい いただきます」

 直ちゃんは 地図にない場所を とうとう 見つけたんだ 〔第6巻116-9ページ〕

 

〇三姉妹の長女・幸(看護師)の友人?井上泰之(理学療法士

 "見守ることの大切さ"について語る。

泰之「大事なのは 自分のことをちゃんと見てくれてるって

   実感できることじゃないかな」

  「先回りして世話を焼くことばかりがいいとは限らないんですよね。

   患者さんのリハビリでもそうなんです。

   手を出しちゃったほうが実は簡単なんです」

  「障害の程度が同じぐらいでも

   その人の性格や考え方で リハビリの進み具合は大きく異なります」

  「健康なおれたちが不幸なハンディを負った人たちの本音を理解するのは

   正直不可能です。

   だからせめてずっと見守ってますよって 

   それぐらいしかできないし 自分にできることなんかその程度だって

   そう思っていたほうがいい気がするんです。

   何より傲慢にならずにすみます」        〔第7巻65-6ページ〕

 

〇サッカー小僧トリオと修学旅行で同グループになった、「すず」たち女性陣の会話。

女A「‥どーよ?」

すず「なんつーか‥ビミョー?」

女B「だね」

すず?「ある意味 社会の縮図?」

女B「でも多田くんもいるし すずカレも‥まあ大丈夫じゃない?」

※男三人それぞれの顔の上に「女子的格付け 普通 使える 使えない」の文字。

女A「甘いね!」

  「うち弟ふたりいるからわかるけど 男ってバカに引きずられンのよ!

   水は低いところに流れるってアレ!」

女B「え~~~そーなの?」

女A「バカの吸引力はあなどれない!」          〔第7巻75ページ〕

 

〇三姉妹の次女・佳乃、ガンで急逝した二宮さんを偲んで語る。

佳乃「‥二宮さんは いろんな方とご縁があったんですね」

※キョトンと見つめ返す上司(恋人)とナマグサ僧侶(二宮さんの友人)

佳乃「亡くなった祖母の口ぐせなんです」

  「人づきあいでもなんでもしっくりくるものは きっとご縁があったから

   そうでないものは

   気に入らないと思わず ご縁がなかったと思いなさいって」

僧侶「‥さすが佳乃ちゃんのおばあちゃん」

  「二宮のおばちゃんも 血縁とはしっくりこなかったかもしれないが

   いろんな人と縁を結んだ

   それでいいのさ」               〔第8巻155-6ページ〕

 

〇幸、自分の両親のことを、泰之に語る。

幸「前にも話したけど 

  うちの両親は自分たちの都合を優先して家を出ていってしまったの」

 「無責任で‥勝手な人たちだなって思う。

  それは今も変わらないわ」

 「でも、それでよかったのかもしれないとも思うの」

 「彼らは彼らなりに 幸せになろうとしたんだと思う。

  ダメな人たちだったけど」

泰之「ダメだったかもしれないけど 幸せになろうと一生けんめいな人たちだった」

  「言葉って不思議だね

   ダメだった――で終わると

   ああ やっぱりダメだったんだなって思う」

※回想/佳乃(次女)の言葉

 ダメだったかもしれないけど やさしかったんだよ  〔第8巻171-2ページ〕

 

人のフンドシでばかり相撲を取らず

明日からは、またヘタクソな文章をぶっ書いくべし――だな。

 

ではでは、またね。