忘れたくない言葉 from『海街diary』吉田秋生 

さすがに、ノーガキをこねくり回す気分になれない。

昨日紹介した『海街diary』から

何度読んでもページを心が釘付けになってしまう

いつくかのシーンを――セリフのみだけど――引用したい。

 

〇幸田三姉妹の長女・幸(看護師)の言葉

おとなのするべきことを子供に肩がわりさせては いけないと思います。

私の勤務している病院の小児病棟には 

いわゆる難病といわれている子が大ぜいいます。

そういう子は例外なくいい子で しっかりしてます。

なぜだか わかりますか?

厳しい闘病が 彼らを子供でいることを許さないからです。

子供であることを奪われた子供ほど 哀しいものはありません。[1巻47ページ〕

 

あの人は たいして病院にきちゃいないわよ。

ああいうタイプが 死にかけてる病人と向きあえるわけないじゃない。

いるのよねー 時々。

現実が受け入れられなくて 尻込みしちゃう家族が。

弱ってく家族の姿 見たくないのかもしれないけど

くることはきても 病院にいるのなんか ほんの10分たらず。

着がえを届けにくるだけで さっさと帰っちゃうの。

それでも本人は せいいっぱい看病してるつもりなのよ。

その意味ではウソはないの それが限界なのよ。〈中略〉

以前はものすごく腹が立ったけど それはそれで仕方がないと思うようになったわ。

死んでゆく人と向き合うのは とてもエネルギーのいることなの。

許容量が小さいからってそれを責めるのは やっぱり酷なのよ。[同52-3ページ〕

 

〇手術で片足を失ったサッカー少年・多田裕也を見舞いに来た女子中学生らの言葉に

 チームメイト(親友)の太一が抱いた、率直なキモチ。

女生徒①「もう多田くんのことが かっ かわいそうで

     神様って なんてヒドいことすんだろうって。

     あんまりかわいそすぎて みんなで泣いちゃったんですう~」

女生徒②「病気に負けないでがんばってくださいね!

     これからもずっと応援します!」

太一(なんかヤな感じ)

 おまえらなんにも知らないくせに 気軽にがんはれなんて言ってんじゃねーよ

 多田はもう充分がんばってるんだよ

 おまえらに言われるまでもなく ずーっとずーっとがんばってんだよ

 悪気はないから? それがどーしたんってんだ 

 悪気がなきゃ そんなノーテンキでいーのかよ [2巻109ページ〕

 

〇上の事件?の後、すず(主人公・四女)と多田の会話  

すず「ホントいうと あの時あたし 裕也のこととか 完全に吹っとんでたの。

   だってあの子たち あんまり かわいそうだかわいそうだっていうんだもん。

   あたしもよくいわれたから 

   お父さんもお母さんも死んじゃってかわいそうね 

   兄弟いなくてさびしいでしょ かわいそうねって。

   あたし兄弟がいないこと さびしいって思ったことなかったし

   両親が死んじゃったのは確かにつらかったけど

   自分のことかわいそうだって思ったこと なかったから

   他人にいわれてはじめて あたしってかわいそうなんだって

   そう思われてるんだって知ったの」

多田「あー それわかる! おれも親せきのおばあちゃんに かわいそうにーって

   大泣きされてドン引いた!

   あん時おれ キレそーだった

   アンタにかわいそがってもらうスジあいねえって マジやばかったー」

すず「あたしはぶっちりキレちゃったー。

   かんたんに人のことかわいそうっていう人 すっご ムカつく!」

多田「だよなー なんじゃその上から目線 おめーナニサマだっての」

すず「だよねー」                    [同123-4ページ〕

 

〇幸(看護師)と、先輩(元看護師・女性)の会話

先輩「真実ってさ 一つじゃないんだよね。
   人は信じたいものだけを信じて 見たいものだけを見るのよ。 

   母にとって、最後まで兄だけが自慢できる子供だったように

   別の何かがあるなんて 思いもしないのよね」

 思いもよらないことが ある日ふいに姿を現す

 昼間 偶然見つけた月のように

 でもそれはずっと そこにあったのだ

 ただ気づかなかっただけで             [2巻156-7ページ〕 

座右の銘のひとつ、ユリウス・カエサルの名言をアレンジしたもの。

 ホントの意味は、もっと前から長々と引用しないと、わからない。

 気になる方は、ぜひ原書(元のマンガ)で確かめてほしい。

 

〇幸と、同じ病院に勤務する井上泰之〈リハビリテーション科〉の会話

 上記のモノローグの〈続き〉になってるぽい。

井上「見えないって思い込んでたものが見えた時って やったーって思いませんか?」

幸「〈絶句する顔のアップあって)‥‥妹が同じようなこと言ってました」

井上「え?」

幸「真昼に月が見えると なんか得した気分になるって すずが」

井上「へえー」

 見ようと思わなければ 見えないもの 

 ずっと――そこにあっても

 山は人の心の中にあるのかもしれない       [3巻99-100ページ〕

★これもずっと前から紹介しないと、伝わらないかも‥‥。

 マンガからの引用って、ムズカシー。

 

〇おしまいに、もいっこ。

 いろいろと落ち込んでいたけど、少し元気になったすずが、ひとこと。

 やっぱり長い"助走"があって、この〈決めゼリフ〉にたどり着く。

すず「なんか いくら努力してもどうにもならないことって やっぱあるけど

   だからって別に 終わりじゃないんだなって」    [3巻140ページ〕 

 

ではでは、またね。