2020年2月28日(金) ハバナ⇒トリニダー
シャワーを浴びてリフレッシュしている間にも
外から流れてくるキューバ?ミュージックの音が、大きくなってくる。
部屋で休んでいるのがもったいなく思え、予定より早めに屋外へ。
何度も「ドール?」と聞き直した裏口の扉を開け
ポツリポツリと明かりが灯りはじめた、たそがれ時の石畳道を下っていく。
ちなみに今回宿泊したカーサ(宿)は、斜面に広がる市街地の高い場所にあり
中心部や広場を目指すと、ほとんどが下り坂になる。
(だからこそ、スーツケースを曳いて宿まで行くのが一苦労だったのだ)
うっすら夕焼け空が残る街路に、素朴な裸電球色の明かりが映える。
そこに水色・桃色・オレンジ色・緑色など、パステルカラーの家々が連なり
どちらを向いても、絵になる景色ばかりだ。
行き交う地元の住民も、ハバナ市内よりずっと肩の力が抜けている。
商店の人も商売熱心とはほど遠く、ご近所同士での談笑に夢中だったり。
なんとなく子供時代の夏祭りを思い出すような、ホッとする情景だ。
そして、祭囃子の代わりに聞こえて来るのは、多種多様な音楽。
果ては、懐かしの80年代ロックナンバー(クイーンとか)まで
いたるところから生演奏が流れてくる。
どこもドリンク付きで10CUC(1000円)程度。
音楽好きにはたまらない環境だ。
とりわけ、.町一番の盛り場.・マヨール広場では、大掛かりなライブの真っ最中。
立て看板の向こう側に数百の折りたたみイスが並べられ
半分ほど埋まった観客に、ラテンミュージックのヒットパレードを披露していた。
2月の末だというのに、あちこちで咲き誇る原色の花々が
広場のお祭り気分を、いっそう盛り上げている。
それにしても、この「ユルさ」は、なんなんだろう。
お金を払って会場内に入らなくても、屋外だからいくらでも聴き放題なのだ。
我々も、その恩恵をたっぶり享受させてもらい
あちらこちらと歩きながら、バラエティ豊かな生演奏を鑑賞することに。
しばらく〈聴き歩き〉を楽しんでいると、あっという間に時刻は20時まぢか。
さすがに、お腹が空いてきた。
朝はバーガー?一個、昼はスナック菓子のみで、空腹にならないほうが不思議だ。
事前にネットで調べておいた「トリニダーの人気レストラン一覧」を開き
近場から順に回ってみると・・
たまたま週末(金曜)の夜という巡り合わせのせいか、人気の店はどこも満員。
第一希望にしていたイタリアンレストランの前にも、長い列ができていた。
しかたないなあ・・
観光客でごった返すメインストリートを外れ、バス通りに向かってトボトボ進む。
すると、行く手の右側に、ポツンと明かりがともる入り口。
その前で、おじさん(といっても40代ぐらい〉が立ち
.通り過ぎようと舌我々に、熱心に声をかけてきた。
そういえばここも、リストアップした人気店のひとつだったはず。
どんな感じかな? ひょいと中を覗くと、邸宅の中庭がそのままレストラン。
数人のバンドが、アコースティックな生演奏を披露している。
客席もほとんど埋まっていて、それも地元の人が多いようだった。
――よし、ここに決めよう。
店の名は RESTAURANTE-BAR-HOSTAL Palador Sol Y Son。
おそらく地元の名士かなにか、裕福な人の邸宅だったのだろう。
歴史を感じさせる調度品が並ぶ居室を抜けて、中庭に足を踏み入れると
回廊に囲まれた緑豊かな空間が待っていた。
各テーブルにキャンドルライトが灯され、ちょっと恥ずくなるほど、よい雰囲気。
幸い、昨夜に始まる〈腸の反乱〉も下火になってきたので
好きなものを好きなだけ食べることができそうだ。
たぶん昔ながらのキューバ音楽だろう
アコースティックな演奏をパックにした伸びのある歌声をお供に
一日ぶりのまともな食事を、しっかりいただくことができた。
結局、生演奏が終わるまで居坐り続け
レストランを後にしたのは、22時過ぎだった。
それでも、宿を目指して来た道を引き返す、その両側から
いろいろな音楽が聞こえてくる。
むしろ、これからが本番だ!とばかり、演奏にも熱が入っていた。
数十メートル進むたびに、また新しい音楽が迎えてくれる・・
どこか夢のなかのような石畳道を、のんびりゆっくりと、登っていく。
やっばり、来てみてよかった。
ではでは、またね。