生水との戦い、はじまる。 キューバふたり旅 2020.2.26-3.5 2日目(後編B)

2020年2月27日 ハバナ市内

 

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クルーズレストランに乗り込む"踊り子"のみなさん

時刻は3時半をいくらか過ぎたところ。

なんだか無性に眠くなってきたが、無理もない。

日本にいたら、早朝5時半前後なのだから。

とはいえ、ここで"ひと休み"なんぞしていたら、ず~っと時差ボケ状態のまま。

歩き疲れてきた足をなだめつつ、頑張って進んでいくと

左手(海峡側)に地方工場のような箱型の建物が見えてきた。

埠頭の倉庫を改装した、サン・ホセ民芸市場だ。

キューバの民芸品は何でも揃う」との記述(ガイド本)に目を留め

ここを目指して歩いてきたので、さっそく中に入ってみる。

 

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スキマだらけのサン・ホセ民芸品市場

改装したとはいえ、倉庫そのもののだだっ広い建物内に

数十軒の店が肩を寄せ合い並んでいた。

しかし、客の姿はちらほら程度。

近づいた我らに眼をとめ、店の売り子がしきりに声をかけてくる。

ほんじゃまあ、何か掘り出し物があるかも・・と

端から順に眺めていったのだが――いやはや、なんとも。

店が替わっても、並んでいる品の顔ぶれは、ほぼまるっとおんなじ。

全種類かき集めても、せいぜい50パターンといったところか。

ちょうど金太郎飴の切り口のように、見事なまでに同一の品ぞろえだったのだ。

 

おまけに、どれもこれも「ザ・キューバ土産」といったシロモノばかり。

チェ・ゲバラのTシャツ、革命軍の帽子、兵士の人形、ヘミングウェイの灰皿etc

期待は、たちまちしぼんでいった。

それでも、軽やかな音楽に引き寄せられ

海側のテラスに並べられたベンチに、よっこらしょと腰掛ける。

ちょうどその近くで、生バンドが演奏していたのだ。

歌い手と楽器奏者合わせて5~6人が、わずか数人の聴衆に向かい

それでも根っから楽しそうに、リズム感抜群のキューバ音楽を奏でている。

本来、いくらかのチップを出すべきなのだろうが

あまり近寄らず、海峡を行き交う船を眺めるふりをしながら

しばらく、ぼーーっと過ごしていた。

 

そのまま、あっという間に30分ほどが過ぎ去る。

これ以上.歩き回っても疲れるだけだと、.ようやく理解はしたものの

かといって、タクシーに乗って宿まで直行するのは、どうにももったいない。

結局、海外旅行でいつも頼りにするスーパーマーケットに立ち寄り

ミネラルウォーターなどを確保しつつ、宿を目指して歩いて行くことに。

 

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            路上の旗は、なにかのイベント?

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広場のモニュメント。なんかヘンテコ。

てなわけで、グーグルマップ(オフライン)で「スーパーマーケット」を検索。

近場から順に、訪ねてみたのだが・・

スーパーどころか雑貨屋ですらない普通の店(カフェ?)だったり

建物は大きいものの、殺到した大群衆で身動きもままならない施設だったり

(品揃えも少なく、たぶん昔の中国と同様の「配給所」なのだと思う)

旧市街を抜け、中華街の近くまで来て、ついに「スーパー発見!」と喜んだら

今度は「閉店(閉鎖)」した後だったりと、みごとに踏んだり蹴ったり。

どうやら、欧米や東南アジアほど〈スーパーマーケット〉は普及してないようだった。

 

そこでようやく、"スーパー探し"を断念。

どんな店でもいいから、とにかく水を手に入れようと

目を皿のようにして大通りを歩いていくと

ところどころに、幅2メートルほどの棚を前に置き

その後ろに1~2人が立っている売店?らしきものがあった。

よく見ると、彼(彼女)らの背後に、水のボトルが並んでいるではないか。

・・あ、ここだ!

近づいて、「ウォーター?」と声を掛けると

コクリとうなずき、ミネラルウォーターのボトルを取り出してくれた。

500ミリリットルで1本50円はしない。日本と同じぐらい。

一般庶民向けの店で人民ペソしか使えなかったが、4本購入する。

両替しておいて、よかった。

 

これで、少なくとも明日の目的地トリニダーまでは、カバーできる。

水を手に入れ、ずいぶん気分は楽になった。

あとは、マップを頼りに宿(カーサ)まで戻るだけ。

最短距離をたどって、細い通りをたどっていくと

たまたま、その途中に、かなりの数のお客で賑わっている

小さなスーパーらしき商店を発見!

内部の広さは、日本の街なかのコンビニと同じくらい。

とはいえ、ここも品揃えは極端に少ない。

ひとつの棚(幅1メートル程度)に、一種類の商品が積み上げられているだけ。

しかも、売り切れているのか、幾つかの棚はカラッポ。

やはり昔の中国とおなじく、社会主義経済の国。

個人個人の嗜好に応じる余裕はなく、〈同一商品の大量輸入〉が基本方針のようだ。

確かにこれでは、多種多様な商品がズラリと並ぶスーパーマーケットは

やっていけないのかもしれない・・。

 

ともあれ、少ない品揃えではあったが

1.5リットル入りのミネラルウォーターと

クラッカーらしきスナック、チョコレートのお菓子があったので、即購入。

お菓子系の食べ物は、この2種類のみ)

明日の移動中(長距離バス)における飲食物が、確保できた。

 

こうして、水のボトルと軽食(お菓子)だけを手に、宿に到着。

1~2時間ほど休憩をとり、夜7時過ぎ、ふたたび外へ。

グーグルマップに載っていた、地元の人で賑わうレストランを目指した。

宿から歩いて5分ほどの、CASA PUEYO。

様々なものが店内に飾られている、老舗っぽいキューバ料理の店だ。

2種類の缶ビール、ガーリックシュリンプなどをいただく。

昼の店ほどは感激しなかったが、なかなかの味で充分満足できた。 

 

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とても雰囲気のいい店

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        缶ビールだけツー・ショットで・・どうすんの?


・・てなとこで、無事に一日が終わるのが、いつものバターンなのだが

そうは問屋が卸さないのが、キューバという国だったりする。

予感は、あった。

夕方一度宿に戻った時、近くの路上にバキュームカーのような車が停まっており

バケツを手にした付近の住民が、その周りに集まっていた。

そう。給水車。つまり、断水が起きていたのだ。

もしかすると、宿の水もストップするのか・・と一瞬不安になったが

今日は水(ミネラルウォーター)があるから、大丈夫!

な~んて、思いを巡らす努力を止めてしまったのが、ウンのつき。

 そう。夜中になって、トイレ(いちおう水洗)の水が、

まったく流れなくなったのだ。

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問題の「断水騒動」。日常茶飯事らしい。

「だんもともとこの宿では、水回りの苦労が多かった。

初日の夜も、いつまでたってもシャワーがお湯にならず、水でガマン.。

ただし翌朝はお湯が出たから、夜中でボイラーの火が落ちていただけだった。

しかし今回の〈トイレ事件〉は、明らかに断水が原因。

あらかじめ判っていたはずだから「流れませんでした」では済まない。

もちろん、宿の人を呼べば、何とかしてくれるとは思うが

.この時間(夜中の1時)に大声を出して騒ぎになるのは、避けたかった。

(廊下の途中に鍵のかかった柵扉。宿泊客はその先に行けない状況)

 

どこかに水道の蛇口はないものか・・

部屋の扉を開け、なかば手探りで暗い廊下の反対方向へと歩いてみた。

すると、その先には半野外風のベランダがあり

何かの作業場に使っているのか、あちこちに工具やセメントの袋などが置いてあった。

さらに壁際に四角く囲ったくぼみと、その上の蛇口を発見。

祈る思いでひねると・・水がチョロチョロ出て来るではないか!

さっそく作業場にあったブラバケツに水を溜め、えっちらおっちら部屋のトイレへ。

なんとか〈手動水洗モード〉の起動に成功し、事なきを得た.。

 

こうして、夜中の2時近くまでバタバタしていたところに

さらなる〈泣きっ面にハチ〉的トラブルが、忍び寄ってくる。

・・・お腹の具合が、怪しくなり始めたのだ。

 

普段からシモのコンディションは良好で

.旅先でもほぼコンスタントに"お通じ"に恵まれる、便通優等生だったのだが

なぜかこの夜に限って、30分おきぐらいに強烈な便意に襲われ

トイレとベッドを往復する、という異常事態が発生する。

(そのたび外から水を汲んでこなければならないので、苦労は✖2)

そう。明らかに「下り腹」ってヤツだ。

思い当たるのは・・昼間におごってもらった格安ソフトクリーム。

庶民向けゆえ、生水をふんだんに使っていたに違いない。

 

そんなわけで、この夜も安眠とほど遠い状況のもと

いつ「出動」の声がかかるかわからない、消防職員の気分を味わうはめに。

3時以降は本を読んで気を紛らわせ、ひたすら耐え忍ぶのだった。

ま、眠れないんだから、しょうがないよ。

 

ではでは、またね。