2020年2月27日 ハバナ市内
時刻は3時半をいくらか過ぎたところ。
なんだか無性に眠くなってきたが、無理もない。
日本にいたら、早朝5時半前後なのだから。
とはいえ、ここで"ひと休み"なんぞしていたら、ず~っと時差ボケ状態のまま。
歩き疲れてきた足をなだめつつ、頑張って進んでいくと
左手(海峡側)に地方工場のような箱型の建物が見えてきた。
埠頭の倉庫を改装した、サン・ホセ民芸市場だ。
「キューバの民芸品は何でも揃う」との記述(ガイド本)に目を留め
ここを目指して歩いてきたので、さっそく中に入ってみる。
改装したとはいえ、倉庫そのもののだだっ広い建物内に
数十軒の店が肩を寄せ合い並んでいた。
しかし、客の姿はちらほら程度。
近づいた我らに眼をとめ、店の売り子がしきりに声をかけてくる。
ほんじゃまあ、何か掘り出し物があるかも・・と
端から順に眺めていったのだが――いやはや、なんとも。
店が替わっても、並んでいる品の顔ぶれは、ほぼまるっとおんなじ。
全種類かき集めても、せいぜい50パターンといったところか。
ちょうど金太郎飴の切り口のように、見事なまでに同一の品ぞろえだったのだ。
おまけに、どれもこれも「ザ・キューバ土産」といったシロモノばかり。
チェ・ゲバラのTシャツ、革命軍の帽子、兵士の人形、ヘミングウェイの灰皿etc
期待は、たちまちしぼんでいった。
それでも、軽やかな音楽に引き寄せられ
海側のテラスに並べられたベンチに、よっこらしょと腰掛ける。
ちょうどその近くで、生バンドが演奏していたのだ。
歌い手と楽器奏者合わせて5~6人が、わずか数人の聴衆に向かい
それでも根っから楽しそうに、リズム感抜群のキューバ音楽を奏でている。
本来、いくらかのチップを出すべきなのだろうが
あまり近寄らず、海峡を行き交う船を眺めるふりをしながら
しばらく、ぼーーっと過ごしていた。
そのまま、あっという間に30分ほどが過ぎ去る。
これ以上.歩き回っても疲れるだけだと、.ようやく理解はしたものの
かといって、タクシーに乗って宿まで直行するのは、どうにももったいない。
結局、海外旅行でいつも頼りにするスーパーマーケットに立ち寄り
ミネラルウォーターなどを確保しつつ、宿を目指して歩いて行くことに。
路上の旗は、なにかのイベント?
てなわけで、グーグルマップ(オフライン)で「スーパーマーケット」を検索。
近場から順に、訪ねてみたのだが・・
スーパーどころか雑貨屋ですらない普通の店(カフェ?)だったり
建物は大きいものの、殺到した大群衆で身動きもままならない施設だったり
(品揃えも少なく、たぶん昔の中国と同様の「配給所」なのだと思う)
旧市街を抜け、中華街の近くまで来て、ついに「スーパー発見!」と喜んだら
今度は「閉店(閉鎖)」した後だったりと、みごとに踏んだり蹴ったり。
どうやら、欧米や東南アジアほど〈スーパーマーケット〉は普及してないようだった。
そこでようやく、"スーパー探し"を断念。
どんな店でもいいから、とにかく水を手に入れようと
目を皿のようにして大通りを歩いていくと
ところどころに、幅2メートルほどの棚を前に置き
その後ろに1~2人が立っている売店?らしきものがあった。
よく見ると、彼(彼女)らの背後に、水のボトルが並んでいるではないか。
・・あ、ここだ!
近づいて、「ウォーター?」と声を掛けると
コクリとうなずき、ミネラルウォーターのボトルを取り出してくれた。
500ミリリットルで1本50円はしない。日本と同じぐらい。
一般庶民向けの店で人民ペソしか使えなかったが、4本購入する。
両替しておいて、よかった。
これで、少なくとも明日の目的地トリニダーまでは、カバーできる。
水を手に入れ、ずいぶん気分は楽になった。
あとは、マップを頼りに宿(カーサ)まで戻るだけ。
最短距離をたどって、細い通りをたどっていくと
たまたま、その途中に、かなりの数のお客で賑わっている
小さなスーパーらしき商店を発見!
内部の広さは、日本の街なかのコンビニと同じくらい。
とはいえ、ここも品揃えは極端に少ない。
ひとつの棚(幅1メートル程度)に、一種類の商品が積み上げられているだけ。
しかも、売り切れているのか、幾つかの棚はカラッポ。
やはり昔の中国とおなじく、社会主義経済の国。
個人個人の嗜好に応じる余裕はなく、〈同一商品の大量輸入〉が基本方針のようだ。
確かにこれでは、多種多様な商品がズラリと並ぶスーパーマーケットは
やっていけないのかもしれない・・。
ともあれ、少ない品揃えではあったが
1.5リットル入りのミネラルウォーターと
クラッカーらしきスナック、チョコレートのお菓子があったので、即購入。
(お菓子系の食べ物は、この2種類のみ)
明日の移動中(長距離バス)における飲食物が、確保できた。
こうして、水のボトルと軽食(お菓子)だけを手に、宿に到着。
1~2時間ほど休憩をとり、夜7時過ぎ、ふたたび外へ。
グーグルマップに載っていた、地元の人で賑わうレストランを目指した。
宿から歩いて5分ほどの、CASA PUEYO。
様々なものが店内に飾られている、老舗っぽいキューバ料理の店だ。
2種類の缶ビール、ガーリックシュリンプなどをいただく。
昼の店ほどは感激しなかったが、なかなかの味で充分満足できた。
缶ビールだけツー・ショットで・・どうすんの?
・・てなとこで、無事に一日が終わるのが、いつものバターンなのだが
そうは問屋が卸さないのが、キューバという国だったりする。
予感は、あった。
夕方一度宿に戻った時、近くの路上にバキュームカーのような車が停まっており
バケツを手にした付近の住民が、その周りに集まっていた。
そう。給水車。つまり、断水が起きていたのだ。
もしかすると、宿の水もストップするのか・・と一瞬不安になったが
今日は水(ミネラルウォーター)があるから、大丈夫!
な~んて、思いを巡らす努力を止めてしまったのが、ウンのつき。
そう。夜中になって、トイレ(いちおう水洗)の水が、
まったく流れなくなったのだ。
「だんもともとこの宿では、水回りの苦労が多かった。
初日の夜も、いつまでたってもシャワーがお湯にならず、水でガマン.。
ただし翌朝はお湯が出たから、夜中でボイラーの火が落ちていただけだった。
しかし今回の〈トイレ事件〉は、明らかに断水が原因。
あらかじめ判っていたはずだから「流れませんでした」では済まない。
もちろん、宿の人を呼べば、何とかしてくれるとは思うが
.この時間(夜中の1時)に大声を出して騒ぎになるのは、避けたかった。
(廊下の途中に鍵のかかった柵扉。宿泊客はその先に行けない状況)
どこかに水道の蛇口はないものか・・
部屋の扉を開け、なかば手探りで暗い廊下の反対方向へと歩いてみた。
すると、その先には半野外風のベランダがあり
何かの作業場に使っているのか、あちこちに工具やセメントの袋などが置いてあった。
さらに壁際に四角く囲ったくぼみと、その上の蛇口を発見。
祈る思いでひねると・・水がチョロチョロ出て来るではないか!
さっそく作業場にあったブラバケツに水を溜め、えっちらおっちら部屋のトイレへ。
なんとか〈手動水洗モード〉の起動に成功し、事なきを得た.。
こうして、夜中の2時近くまでバタバタしていたところに
さらなる〈泣きっ面にハチ〉的トラブルが、忍び寄ってくる。
・・・お腹の具合が、怪しくなり始めたのだ。
普段からシモのコンディションは良好で
.旅先でもほぼコンスタントに"お通じ"に恵まれる、便通優等生だったのだが
なぜかこの夜に限って、30分おきぐらいに強烈な便意に襲われ
トイレとベッドを往復する、という異常事態が発生する。
(そのたび外から水を汲んでこなければならないので、苦労は✖2)
そう。明らかに「下り腹」ってヤツだ。
思い当たるのは・・昼間におごってもらった格安ソフトクリーム。
庶民向けゆえ、生水をふんだんに使っていたに違いない。
そんなわけで、この夜も安眠とほど遠い状況のもと
いつ「出動」の声がかかるかわからない、消防職員の気分を味わうはめに。
3時以降は本を読んで気を紛らわせ、ひたすら耐え忍ぶのだった。
ま、眠れないんだから、しょうがないよ。
ではでは、またね。