まず、彼女の置かれた特殊な立場を論ずる前に
指摘しなければならないのは、《報道というの名の暴力》の凄まじさである。
さすがに、Webを駆使した全世界規模の情報ネットワークにより
テレビ・ラジオなど権力とつながる大組織にニュースソースが限られていた頃と違い
明らかに人権を無視した「突撃インタビュー」とか「パパラッチ行為」は
公然と行われることは、少なくなってきた。
※その反面、"誰もが匿名で無条件に発信できる"手軽さから起きる事件や問題は
年々どころか日々、増え続けている。
といはえ、どれほど非難の声を浴びせかけようとも
アメリカで警官の行き過ぎた暴力行為が決してなくならないように
〈差別的行為〉や〈いじめ〉は、しぶとく生き延び、何度でも復活を遂げてゆく。
それどころか、未だ猛威を振るい続ける新型コロナウイルス真っ青の勢いで
次から次へとバージョンアップを遂げてゆくのだから、手に負えない。
そう。たとえば・・
上っ面だけでは、〈差別〉とも〈いじめ〉とも判断できないように
薄いオブラートや甘いコーティングを被ったりして。
今回、突然にも思えた「会見拒否」も
試合後に義務づけられた公式インタビューのなかに紛れ込んだ
心無いインタビュアーたちの、いわば〈隠れ差別&いじめ〉発言が
大きな要因になっているのではないか、と推測する。
もちろん、選手と大衆のパイプ役となって、可能な限り"色付け"゛せずに
情報発信しようと心掛ける、良識あるプロが大半だろう。
だが、これとは逆に、"選手の「本質」「素顔」なんか、どーでもいい"。
とばかり、容赦なく〈質問と称する言葉の爆弾〉を投げつけ
選手たちが、怒る・困る・泣くといった
感情をあらわにする瞬間を無理矢理作りだしては
「スクーブ・ショットをゲットだぜ!!」と、大喜びする"ゲス報道陣"も
間違いなく、一定の割合で存在し、ゼニを稼いでいる。
なぜならば・・本当に哀しいことだけど
その手の〈選手の素顔〉を、金を払ってでも見たがる"みんな"がいるから。
要するに、何を言いたいのかというと。
今回の「事件」の原因であり
たぶん彼女の「うつ病」の引き金にもなった"真犯人"こそ
上に挙げた〈インタビューの名を借りた公開差別&いじめ行為〉に他ならない。
・・・てなことである。
いやしくもプロテニスの頂点・グランドスラムという晴れ舞台で
イジメまがいの差別的行ないなど、存在するはずがない。
――と否定するあなたは、よほどのお人よしだ。
通常、実際に、放送されるインタビュー映像は、二言三言。
長くても、せいぜい2~3分といったところ。
だが、実際にはその数倍、ときには十数倍の時間が費やされる。
しかも、「いい回答(反応)」が得られないとインタビュアーが判断した場合
同じ質問が、何度も、何度も、何度も繰り返される。
加えて――ここが結構大きなポイントだが—―
字面だけを拾えば「差別的」ではない言葉であっても
発言者の態度や表情、喋り方、イントネーションなどに手を加えれば
いくらでも「フツーの質問」が「差別・いじめ的質問」へと、裏返されてしまうのだ。
卑近な例を言えば、うたたも立場上「先生」と呼ばれることが少なくなかった。
だが、人によっては「センセー」と、明らかにおちょくって呼んでいた。
文字にすれば、全く同じ発言であろうと、両者が提示する気持ちは正反対なのだ。
話を戻そう。
そしてもうひとつ、大阪選手には、〈差別〉〈いじめ〉の標的とされる
大きな外見上の特徴があった。
皆さんご存じの、人種問題である。
そうでなくても、「ブラック・ライブズ・マター」運動に刺激され
コート内外で積極的に意見表明を発した結果
世界中のプロスポーツ選手のなかでも
彼女は、突出したオピニオンリーダーとして脚光を浴びる存在になった。
それだけに、「伝統」の美名の裏でふんぞり返る〈旧価値観〉の擁護者どもにとって、
最も巨大な"目の上のたんこぶ"といえるだろう。
しかも、彼らにとって幸いなことに、ネチネチ嬲るための"攻撃材料"は山ほどある。
なにしろ、一世紀以上の間〈優秀民族・白人(アングロサクソン系)〉の象徴だった、
プロ・スポーツ「テニス」の伝統をぶち壊す異人種なのだから。
――ウィリアムズ姉妹が浴びた"嫌悪感"を、ぜひ思い出していただきたい。
(それを言ったら、オリンピックだって当初は「いかに白色人種が優れているか」を
証明するイベントだったんだけどね。クーベルタンの「参加することに異議がある」
という〈名言〉も、全文を読むとまるで違う意味になるんだよ~。嘘ばっかだね)
じゃあ、どうしたら、気持ちよく「ナオミ、カムバック!」できるのか?
うたたが提案する対策法は、冒頭のサブタイトルに書いた通り。
公式会見を開催するときには、質問を受ける(選手)だけでなく
質問する人(報道陣)の顔も並行して撮影し
字面だけでなく、どんな態度・表情・口調でインタビューしているのか
全視聴者に、その素晴らしい?ご尊顔を無修正で放送すること。
早い話、放送・通信・新聞社の名前に隠れた「匿名の取材者」ではなく
特定の顔を持つ一個人として、それぞれが責任をもってインタビューしていただく。
ただ、それだけのことなのだ。
そうすれば、いかに発言者が無自覚・無神経なパーソナリティの持ち主であり
「私は、差別してるつもりなどまったくない!」と胸を張ろうと
第三者から見て、"明らかにやり過ぎ。誹謗中傷に相当する"と感じるものであれば
良識ある親しい周囲が「あんな下品な質問はやめてちょうだい!!」
とかなんて、必死になって引き止める・・ケースもあるんじゃないかな。
そんな期待を込めての、意見表明である。
そもそも、「匿名」に隠れて
自らのうっぷん晴らしのような〈差別・いじめ・無差別攻撃〉を繰り返すことほど
人として、恥ずかしい生き方はない。
〈何を書いてもOK〉みたいな「安全地帯」などこしらえなければ
若い女の子を自死にまで追い詰める、"この世の地獄"は生まれなかったのだから。
ーーあ、痛っ。
いっぱしの正義漢ぶって、偉そうに意見している己もまた
安全地帯に棲息する、ひとりの"匿名野郎"なのだった。
せいぜい自戒しなければ。
・・それでも極力、特定の個人攻撃は避けている・・・はず・・つもりだよ。
ではでは、またね。