絶景の谷・グリンデルワルトへ ジュネーヴ発ボローニャ着 鉄道自由旅行 2018 5/29-6/5 2日目(後半) ふたり旅60'

2018年 5月30日(水) 2日目後半 ジュネーヴ⇒グリンデルワルト

 

コペンハーゲン空港からのトラブル続出のため

異例の前後半仕立てとなった、旅の2日目。

2度に渡る乗継便変更とスーツケース紛失後の手続きのため

ホテルのチェックインに間に合わず、空港で一晩過ごすはめになったものの

翌朝には朝食&仮眠でリカバー。

さらに、ルフトハンザ経由で届いたスーツケースたちとも、無事再会。

当初の予定通り、12時42分発ベルン行きの列車に間に合った

なんとも悪運強き還暦ふたり旅。

 

さっそく、ヨーロッパ鉄道旅で初めての1等車へ乗り込むと・・

広い、明るい、ゆったり、そしてガラガラ!

ほとんど人で埋まっていた2等車輛とは大違いで

向かい合わせのボックス席をひとり1区画独占して

絵葉書のような美しい車窓風景を眺めつつ

思いっきりリラックスできた。

なまじ前夜からのトラブルで睡眠不足だったこともあり

ホンッと、1等にしておいてよかった!

と、珍しく自分の判断を褒めていた。

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車窓風景は至福のひととき

その後も、ベルン駅で8分後に出発するインターラーケン行きに乗り換え、

インターラーケン駅から7分後に出発するグリンデルワルト行きへと

乗り換えも極めてスムーズ。

インターラーケンからは車輛もローカル色が強まり

ちょっとした登山電車の雰囲気。

今や日本では珍しい「窓開け」可能タイプだったので

車輛から顔を出し爽やかな高原の空気を思い切り浴びてしまった。

 

しかし、あと30分ほどで終点のグリンデルワルトに到着。

というころ、車掌らしき恰幅のよい女性が近づいてきた。

そして、「切符を拝見」という仕草を見せたので

本日の日付と乗車区間を記入しておいたユーレイルパスを提示すると

――なにやら、額に皺を寄せ、困ったような表情を浮かべ。

たぶん「この路線はパスの利用範囲外です」と言ったのだろう

追加料金を支払うよう、告げられてしまった。

え? グリンデルワルトまではパスが有効と確認したはずだが・・

首を傾げたものの、さすがにここで逆らうわけにはいかない。

やむなく、追加料金を支払う事態に。

たぶん、日本円にして7000円ぐらいだったような。

一両の前半が1等、後ろが2等、という区分けになっており

当然眺めのいい前方に座っていたため

2人分の1等料金を支払うハメになってしまったのだった。

・・ま、仕方がない。

そうこうするうちに、定刻の16時08分。

、列車は終点のグリンデルワルトへ滑り込んでいく。

 

いかにも山小屋風の駅舎は、どこか箱根湯本に似ていた。

というか、こっちのほうが元ネタなのだろう。

さすがにスイスでも有数の人気観光地だけあって

遊びに来ている人の数は多く、日本からの個人旅行者らしき家族の姿も。

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駅前からこの景色

午後4時過ぎとはいえ、時々雨がパラつくものの、ほぼ青空が広がり

あたりはまだまだ真昼間という雰囲気。

まずは、明日の予定を検討しなくては・・と

観光客でにぎわう駅前通で、日本人が経営する観光案内所に立ち寄った。

ガイドブックやプログでは有名な案内所で

ツアーを申し込まなくても、色々有益な情報を提供してくれるとの評判だ。

そこで当方も、ちゃっかり「いまオススメのハイキングルート」を

教えてもらおうと考えたのだ。

なぜなら、この地域のベストシーズンは7~9月あたり。

我々がグリンデルワルトに到着した5月末は、夏よりも春に近く

代表的なコースは歩けない可能性が高かったのだ。

 

果たして、この時期から山歩きを楽しめるルートは、あるのか?

次々にかかる電話や観光客からの問い合わせに

テキパキと対応していく案内所の主(男性)に尋ねてみると・・

まだ雪が多く残っており、主なハイキングコースは通行不可。

明日の山歩きに想定していたルートも、まだ通行許可が下りていなかった。

――ガーン!

しかし、ガックリ肩を落とす我々に。

「でも、このルートなら、雪は少ないので大丈夫です」

すかさず代案を提示。

バスでローブウェイの駅に行き、一気に山の上(Mannlichen)へ。

壮大なアイガーや高山植物を堪能しつつ

ユングフラウ鉄道で有名なKleine Scheidegg(クライネ・シャイデック)まで

尾根歩きを楽しめるという。

「はあ、そうですか・・」

と、受け流しつつも、心はすでに決まっていた。

(よし、明日はここを歩こう!)

 

まだまだあたりは昼間の陽射しだったが

時計を見るとすでに17時過ぎ。

本日予約した宿は、駅前から坂道を登り続けることおよそ30分のところにある

ロッジ風ホテル「ガストホフ・パノラマ」。

例によって満足な英会話ができないので

余り遅くない時間にチェックインしたほうが、万一の備えにもなる。

そこで、さっそく近所で一番大きいスーパーマーケットに入り

サンドイッチ、チーズ、ワインなど今夜の食事をまとめ買いすることに。

夕食のためだけに往復1時間かけ駅前のレストランに入る気にはなれなかった。

物価の高いスイス有数の観光地、とくれば値段の方も想像がつく。

すると、みんな同じことを考えていたのだろう

スーパーの中は各国からの観光客だらけ。

中国や韓国、さらに日本からの団体客らしき人々の姿も。

ジュネーヴ以来、耳にすることのなかった日本語が飛び交っていた。

 

スーツケースなど旅の荷物に加え、今夜の食事が詰まった袋を両手に抱え

ヨタヨタと駅前のバスターミナルに戻る。

観光案内所を出た後、立ち寄ってルートを調べてみたのだが

どうやらホテルの近くまで、路線バスが走っているようだったのだ。

似たような観光客なのだろう、大小のリュックを背負った人々に交じって

待つことしばし。時間通り、目指すバスがが停留所に現れた。

誰もお金を取り出さず、何かを運転手に見せるだけで次々乗り込んでいく。

――もしかして、これかな!?

自分の番が来たとき、運転手にホテルのバウチャー(予約券)を見せる。

すると、彼はコクリと頷き、車内に入るよう指し示した。

やっぱり。グリンデルワルトのホテルに泊まる人は無料なんだ!

ジュネーヴのときもそうだったが

物価が高いぶん公共交通機関の料金に関しては

いちいち支払わずに済むよう、いろいろ便宜が図られているんだ。

・・と、お高いだけではないスイスの太っ腹ぶりに、感心した一幕だった。

 

ともあれ、ほぼ満席になったバスは定刻に出発。

すぐに、ジャバラ状に行ったり来たりしながら標高を上げていく。

日光のいろは坂ほどではないが、かなりの傾斜だ。

すべての全荷物を抱えてこの道を歩いて登るのは、やはり無謀だった。

その後、次々に現われるロッジ風宿泊施設で少しずつ客を落としながら

ゆっくり登り続けること、およそ20分。

左手の坂の上に、予約票の写真で見た3階建てロッジの外観が見えてきた。

あわてて降車ボタンを押し、無事ホテル前に到着!

 

まだ夕方と呼ぶには少々高い陽射しのなか

アイガーにつらなる壮大な雪山の岸壁を遥かに臨む

あまりに移しい絶景に、しばし言葉を失う。

――やっぱり、来てよかった!!

 

その後、ホテルのドアが閉まっていたため

電話をかけて、名前を名乗り、

ウィーアー、イン・フロント・オブ・ザ・ドアー、ナウ!

とかなんとか、めちゃくちゃな英語でもなんとか通じたようで

奥の家からふくよかやオバサンが出てきてくれた

無事、チェックインを済ませることができた。

こういことがあるから、やっぱりSIMカードは必要なんだよな・・

 

案内された部屋は、例によって格安モードのダブルルーム。

2泊で18000円、スイスとしてはかなりリーズナブルな宿だ。

バルコニー付きではあったが、当然のように絶景に面した正面ではなく山側。

それでも、右手奥にはそそり立つ真っ白な山肌が広がっており

なかなかの解放感が得られた。

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それなりの絶景・・でした

ま、とにもかくにも・・

自宅を出てからまる2日間、ずっと我慢していたシャワーをようやく浴び

バルコニー近くにゆったり腰をおろし

買ってきた食料品とワインをいただくことに。

期待してなかったこともあり、食べ物もワインもなかなかの美味。

とくに肉の美味しさは、日本よりずっと上に思えた。

 

思えば、このグリンデルワルト初日の夕食が

今回の旅で初めての、まともな食事だったのだ。

たった2日しか経っていないのに

早くも1週間ぐらい旅をしてきた気分。

いつも思うけど、やっぱり旅って、すごいよなぁ・・

 

ではでは、またね。