ベルニナ特急は、普通車が特等席! ジュネーヴ発ボローニャ着 鉄道自由旅行2018 5/29-6/5 5日目 ふたり旅60'

2018年6月2日(土)

 

この日は、朝から電車を乗り継ぎ

スイス有数の絶景登山列車を楽しんだあと

一気に国境を越え、イタリアのボローニャを目指すという

ほぼ列車に乗り続けの大移動日。

朝8時13分Maienfeld発の電車に遅れるとすべてがアウトになるので

乗り逃すものかと、ふたりとも朝6時には目が覚めてしまった。

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最後に気づいたハイジの看板

このまま部屋で待つのももったいないので

時刻表を確認し、一本早い電車でChur(クール)へ向かうことに。

そこが、この日のメイン・ベルニナ特急の始発駅なのだ。

というわけで、予定より30分ほど早い8時前にChurに到着。

お目当てのベルニナ特急の車両は、すでにホームに入っていた。

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箱根鉄道と姉妹路線?だとか

最初に先頭車両を見てみると

グリンデルワルトまで乗った鉄道と同じスタイルのボックス席が

前半は1等車、後半は2等車という2ブロックに区切られて並んでいた。

しかも2等車部分には数人の先客がいたが、1等エリアはガラガラ。

別にパノラマ車輛でなくて、ここでもいいな・・

と思いながらも、とりあえず初日(2日目の朝)ジュネーブ駅で

1人2000円あまりかけて予約した座席を探すことに。

すると、2両目以降はすべて天井までガラス張りのパノラマ列車。

全席指定の座席は、週末ということもあってか、観光客でぎっしり。

そして、我々が予約した車輛(確か3か4号車)もまた

ドイツあたりと思われるご婦人たちの団体客で、ほぼ満席状態。

我々が予約した、真ん中あたりの通路側2席だけが、ぽっかり空いていた。

幸い、通路で立ち尽くす我々に気づいた臨席(予定)のふくよかな中年女性が

にっこり笑いかけ、「どーぞいらっしゃい」と手招きしてくれたのは嬉しかったが

思わず相方と目線を交わしてしまった

《確かに眺めはいいわけど、この〈完全アウェイ状態〉で

 英会話もろくにできない俺たちが、2時間以上過ごすのはちょっとキツイよな》

そこは三十ウン年来のパートナー、無言のうちに方針の決定に至る。

OKOKと、何を言いたいのか自分でもよくわからない言葉を笑顔で伝え

指定席を予約した車輛を下車、ふたたび先頭車両へ取って返した。

すると、ラッキーなことに、一等エリアは、いまだ乗客ゼロ。

そこで贅沢にも、1人ワンボックス(向かい合う四人席)ずつ座ることに。

予約料金は無駄に終わったけど、断然こっちの方が快適!

運転席も見える先頭車だったたので、まさにベルニナ特急独り占めの気分だった。

 

8時32分、一等エリアには、発車前に2人乗って来ただけで。列車は出発。

以後、途中駅でも誰も乗車せず、ボックス席は完全に貸し切りスペースに。

終点のTirano(ティラーノ)までの4時間以上、ときどきうとうとしながら

氷河の山々や湖、断崖の鉄橋、ループ線など、次々と広がる絶景を

心ゆくまで堪能することができた。

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まずは、山

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そして、氷河湖

氷河特急やベルニナ特急をはじめ、スイスに何本も走っている観光鉄道は

すべて「予約しないと乗車できない」ということになっているが

当然、観光客以外の地元の人々だって予約するわけで

そのために、一般車両を使った「自由席」もほぼ確実に用意されているはず。

20代の頃から、青春18きっぷを駆使し

鈍行列車で日本中を回っていた私たちのようなわがままな旅人にとっては

団体の観光客でぎゅうぎゅう詰めのパノラマ列車(予約席)より

こういった普通車自由席のほうが、はるかにしっくり来て楽しめるのだ。

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車両の写真はこれだけ。鉄っちゃん失格

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写真より記憶、と言い訳しよう

ともあれ、結果的にではあったが、今回のベルニナ特急は大正解。

十数回に及ぶヨーロッパ鉄道旅行のなかでも

ダントツで快適なひとときとなった。

 

12時49分、ベルニナ特急は終点Tirano(ティラーノ)に到着。

いつの間にか国境を越え、イタリアに入国していた。

列車を降り駅舎を出て、広場の向かい側に建つ、似たような建物に向かう。

そこがイタリア鉄道の始発駅だった。

残ったスイスフランを使って、駅の売店でサンドイッチと飲み物を購入。

ホームに移動し、停車していたMilano行きの列車に乗り込む。

各駅停車扱いだからか1等車はなく、全席2等だった。

しかも、国境を超えたとたん、いきなり車内が落書きだらけに。

スプレーで書き殴った解読不能の文字が、車輛橋のドアと壁に踊っていた。

よく見ると、シートも窓も手入れが行き届かず、ボロボロ。

そして乗車してきた客も、一気に有色人種率がアップ。

やっぱり違う国に入ったんだなあ・・と実感する。

 

それでも列車は定刻の13時08分、Milanoめざしてゆっくり動き出した。

ちなみに、駅で購入したサンドイッチ。

ひょっとしてイタリアの味か!? と期待したが・・

味も値段もスイスと変わらなった。

 

イタリア北部の低い丘陵地帯を縫うように列車は走り続け、

15時40分、Milanoに到着。

さらに、購入しておいた座席予約券(1人10ユーロほど)を使い

Milano16時15分発のユーロスターに乗って、一路Bolognaへ。

さすがにこの車内では、乗車券・座席予約券のチェックがあったが

この日は、朝から1度も車掌の検札に会わなかった。

特にイタリアに入ってからは、車掌の姿はちらちら見かけたものの

女性客とのおしゃべりに夢中で、検札にまわる気配もなかった。

イタリア人だから、との偏見があるのかもしれないが

それでも「やっぱイタリアだなぁ」と、呟きたくなってしまう。

 

小汚い旅行客(私たちのことです)が、やや居心地悪く感じるほど

ユーロスターの一等席は〈走るオフィス〉といった雰囲気。

パソコン画面を睨んでキーボードで入力したり

資料を手に仕事の話に熱中する仕事客の方が多かった

新幹線の中のように、どこか緊張してしまう。

早く着くのはうれしいけど、やはりこの手の乗り物は性に合わない。

時代に逆行する鈍行大好き人種なのだなと、つくづく思った。

 

・・とかなんとか、文句を言いながらも、ビジネス超特急のおかげで

17時22分、本日の終点Bologna(ボローニャ)に到着。

時刻だけ見ると「夕方」の印象だが

6月最初のイタリア中部で、17時代は真昼間。

頭の上から強い陽射しがガンガン降り注ぎ

荷物を転がし、駅から宿に向かう間も、どんどん汗が滴り落ちてくる。

 

巨大な駅のなかで方向を見失い、さらに駅周辺の工事にも惑わされ

駅からやや距離のある(徒歩15分)本日の宿に到着したのは

18時を回ったあたりだった。

ここから2連泊するのは、We Bolognaという名のホテル。

ドミトリーなど格安の部屋も用意している、若者向けの安宿だ。

メインストリートからちょっと入った

どこか大学のキャンバスを連想させる敷地に入ると

ホテル前の芝生や広場には、学生らしきグループが何組も。

今風のユースホステル、といった感じだ。

私たちのような年配客の姿はほとんど見かけなかったので

ちょっと場違いだったかな・・と最初は思ったが

フロントデスクの対応は分かりやすくシンプル。

案内された部屋も広々としており、離れた場所に2台のベッドだけでなく、

図書館のような大きなテーブルまで用意されていて

勉強や仕事にも不自由しない環境が、しっかり整えられていた。

きっと、バカンスを兼ねた「レポート合宿」などに使ってる学生も多いのだろう。

とにかく、スイス国内のコンパクトな部屋の3倍ぐらいある広さ。

青々とした芝生が広がる窓からの眺めも手伝って

屋内にいながら解放感を得ることができた。

ちなみに宿泊料は2泊で120ユーロ(15000円程度)。

単純に価格だけを比べると、スイスの3割安といったところだが

実際に泊まった印象は、・・半額ぐらい?のお得感だった。

南ヨーロッパは、物価が安くて助かる!

 

朝早くから電車に乗りづめだったので、さすがに疲れた。

部屋でひとやすみした後、駅の反対側にある旧市街までトコトコ散歩。

9時まで開いているスーパーで、土産物の候補を物色してから

道路の半分ぐらいまでテラス席を出していたEataiy Bolognaという

地元ではそこそこ有名だというレストランで、夕食をとった。

かつてのヌーベルキュイジーヌではないが

素材の味を生かしたどこか日本風な味付けの料理に舌鼓を打つ。

なかでも、生魚とメロンの組み合わせは新鮮で、今も記憶に残っている。

それにしても、やっぱりイタリア料理は口に合う!!

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ボローニャ旧市街。なんか落ち着く

スイス・ジュネーブからイタリア・ボローニャまで

鉄道を乗り継いできた今回の旅も、いよいよラストスパート。

残された時間は、わずか1日半。

明日は、どこに行こうかな?

 

ではでは、またね。