相変わらず、フットワークが軽い軽い。
会話が(モノローグも)、縦横無尽に走る走る。
ときにはコースから飛び出して、《言葉のマハラジャ・ダンス》を披露する。
そのくせ、思わぬ時に超ヘビー級パンチまで、繰り出す始末・・!
一部の方を除くと、何を言ってるのか「ワケワカラン状態」だと思うが
『知らない映画のサントラを聴く』に続いて開いた
『砕け散るところ見せてあげる』読了後の、ストレートな感想だ。
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正直、冒頭は大好きな〈妄想モノローグ全力疾走〉の連発で
さっそく竹宮節が始まったな!
と、前のめりで物語世界に突っ込んでいけた。
たとえば、こんなふうに。
高校三年生の俺は、年明けにセンター試験を控えている。
目指すは県内最難関の国立大学。受かる可能性は、これまでの模試の成績などから判断するに、半々よりはマシ程度だろうか。安心なんてとてもできない。ここから本番までどれだけラストスパートできるかにすべてはかかっていて、体調を崩して寝込みでもしたらそれで終わりだ。..
滑り止めを受ける予定はない。経済的な余裕もあるが、それ以上に、俺には他のどの大学にも進みたくない強い理由があった。もしも今回だめだったら、浪人して次もまた同じ大学を受けるつもりでいる。それでもダメなら二浪だ。バイトとかしながら……おっと。
だめだったなら、とか考えるのも無しなんっだ。今の無し、やり直し。
俺は受かる。ていうか「受かった!」、あえての過去形。ぴしゃっと一発頬を叩いて気合を入れ直す。腹は決まった。準備はいいか。いくぜ白血球、最大出力で免疫バリアー展開!
「そいやぁっ!」
勢いをつけて窓を思いっきり開け放つ。 (8ページ)
・・つい、ノリノリで引用してしまったが、主人公の紹介もできたので、ご容赦を。
ま、このように一読してクセ&アク〈てんこ盛り〉の語り口。
生理的に受け付けられない人も多いとは思うが、私は年甲斐もなく大好きだ。
しかし、話がもう一人の主人公(高一の女子〉に入って行くにつれ
少しずつ、〈ココロの腰〉が引けていった。
どう考えても、苦手なジャンル――『いじめ』を中心に動き始めたからだ。
なにせ、これを書いている本人が、〈いじめられ体質〉の持ち主。
そのため、リアルな〈いじめシーン〉を読むたび
自分が体験したあれこれがゾンビのごとく生き生きと蘇り
〈ココロのかさぶた〉を容赦なくひっべがすのだ。
「イジメた側はきれいさっぱり忘れるが。イジメられた側は死ぬまで忘れない」
――これって、正真正銘の真実だからね。
それでも、たとえ読後感が最悪であろうと。
読み始めた以上、最後まで読み通すのが作品に対する礼儀。
とのモットーのもと、痛みを噛み締めつつ読み続けた。
すると、どういうことだろう。
話が進むにつれ、いじめ&暴力の状況はエスカレートの一途をたどるというのに
なぜか、胸の奥深くから〈熱いもの〉がこんこんと湧き出してきたのである。
となると当然の如く、ページをめくる手は停まるはずもなく・・
いつのまにやら、いつか来た道の[徹夜モード〕に突入。
日の出を迎えるころには、最終ページのゴールテープを切っていた。
しかも、気が付くと、〈ココロのかさぶた〉をひっぺがされ
新たな流血を招いていたはずの「古傷」は
きれいさっぱり・・とまではいかないが、少しだけ癒された気分になれたのだ。
――これって、けっこうスゴいことだと思わないか?
毎度のことながら、小説の内容よりも〈自分語り〉に熱中してしまったが
ひとことで言うと、本作は・・
『〈圧倒的な熱〉と〈不屈の勇気〉で綴られた大いなる希望(ヒーロー)の物語』
・・なのである。
え? 最後までわけわかんない、だって?
大丈夫大丈夫。実際に読んでみれば、わかるから。
ではでは、またね。