"若冲"ひとりじめ 京都ふたり旅 2021.10.4-7 1日目(その2) 相国寺(承天閣美術館)

2021年10月4日(月) 新横浜⇒京都

f:id:utatane-do:20211010213043j:plain

      お散歩を楽しむ京都のチビたち。なんで座ってんのかな?

 

いい感じに空腹が満たされた、午前10時半すぎ。

京都観光の皮切りにと向かったのは、同社大学の北に位置する相国寺

境内の「承天閣美術館」で、伊藤若冲の肉筆画を鑑賞するのだ。

とはいえ、朝食をいただいた三条河原町から相国寺までは

直線距離でも1.5キロほど離れている。

ここは当然、一日乗車券を活用してバスに乗るべきところだったのだが・・

旅の始まりとあって、メンタル的には完全な興奮状態。

ろくに眠れず体力も落ちきっているにも関わらず

散歩がてら歩いていこうか!・・なんていう無謀な決定を下し

30度を超える真夏の路上にふらふら出てしまったのが、運のツキ。

最初のうちこそ、家並みのちょっとした変化を見つけては

やっぱり京都の街歩きは楽しいな~ とか、のんきに楽しんでいたのだが

そんな余裕を持てたのも、最初の15分がいいところ。

丸田町通りを挟んだ北側に、広大な京都御所の塀が見えてきた頃には

早くも頭の奥がじーんと重たくなり、熱中症の一歩手前にさしかかっていた。

 

30分ほど前、進々堂でコーヒーを片手に予定を確認し

京都御苑の中にもいろいろ見所があるから、歩き回ってみよう」

とか、余裕こいていたのが、どれほど身の程知らずだったのかを思い知る。

・・いかん、もうだめだ。

口の中でもごもご呟き、南の堺町御門から白石が敷き詰められた京都御苑の中へ。

日陰で休めるベンチを探し、倒れるように座り込む。

 

f:id:utatane-do:20211010213555j:plain

      遠すぎた京都御所。次回は予約を入れて、じっくり参観したい。

f:id:utatane-do:20211010213317j:plain

 灼熱の京都御苑・鷹司邸跡。一五〇年前、左手の白い看板付近で久坂玄瑞が自害。

 

目の前、遥か彼方にゆれる御所の建礼門までの距離を目測し

京都御所と御苑の散策は、次の機会にするか・・。

あっさり日和り、相国寺に向かう手近なバス停をグーグルマップで検索。

南東の富小路口から丸田町通りへ戻り、川原町丸田町バス停で乗車。

同志社大学の前を通り、烏丸今出川で降りた。

目の前には、同志社大学の西?門が。

昨年の秋、京都大学の敷地内を歩き回り、生協で買い物ができたので

今回も、同じように〈同志社大学散策〉を楽しもうと考えたのだ。

ところが・・

通路の中央で、顎の高さほどのタテ看板が通せんぼ。

赤い枠で囲まれた中を見ると

「コロナのため関係者以外のキャンパス内入場は禁止します」の文字が。

結局、外の通りから煉瓦造りの建物を眺めるだけに終わった。

悔しいけど、これまた京都御所同様、"次回の愉しみ"に取っておこう。

 

なにかと思うようにいかず、落ち込みかけた気分を再び引き締め

同志社大学と女子大の間を抜ける道を北上し

相国寺の境内へと、足を踏み入れる。

あまり「予習」は好きでなく

今回もザッと下調べしただけだったが

伊藤若冲相国寺の関りは非常に深いものがあり

本人の墓も、この寺の境内にあるらしい。

気が向いたら、後でお参りしようかな、と思いつつ

なにはともあれ、まずは「承天閣美術館」へ!

f:id:utatane-do:20211010214108j:plain

      相国寺・禅堂? この寺が立派なのは、若冲の作品を売却したため。

 

ちらほらと人が行き交う、静かな境内を本堂めざして進み

右側奥に見えてきた美術館の門を潜る。

「美術館」の言葉を裏切るように

純然たる日本庭園の先に、寺の一部と化した和風建築が見えてきた。

承天閣美術館だ。

それにしても、京都市内に3ヵ所しかない"あの若冲"に逢えるスポットだというのに

ほとんど人の姿を見かけない。

・・いや、そのほうが好きなだけじっくり鑑賞できるから、有難いんだけどね。

なにはとあれ、生若冲まで、あとわずか。

f:id:utatane-do:20211010214322j:plain

       承天閣美術館へのアプローチ。まるっきり日本庭園。

 

靴を下駄箱に入れ、靴下で入場。

売店を兼ねた受付で、一人800円の入場料を支払う。

実はこれ、3ヵ所見つかった〈京都の若冲スポット〉のうち、最も安価。

イベント的には嵐山の福田美術館が一番派手っぽかったが

果たして2000円払ってまで観たいのか・・

一度もホンモノに対面したことがなかったので、正直、わからなかった。

なので、最初は"気軽に逢える美術館"に決めた次第だ。

ま、お金の話はこれくらいにしとこう。

f:id:utatane-do:20211010214423j:plain

             写真撮影は、ここまで。

 

受付と向かい合って、数列ベンチが並ぶロビーのようなスペースがあり

据え付けられた大型モニターでは

所蔵作品を中心に若冲の生涯をまとめたプログラムが、エンドレスで再生されていた。

ひと休みがてら、そこに座っている人の姿も、せいぜい5、6人といったところ。

・・・これは、マジで"独り占め"できるかも。

湧き上がる興奮を抑えつつ、正面の「第一展示室」へと忍び足で入っていく。

 

当然、内部の撮影は禁止。

どんな作品が並んでいたのか、写真では紹介できないのが残念だが。

ひとことで言えば――"夢のようなひととき"だった。

 

事前の情報では、動植綵絵と同時期に描かれた「釈迦三尊像」が有名だったので

大好きな動物関係の作品は少ないかな、思っていたけど・・

いい意味で、予想は裏切られた。

 

カッコイイ! という言葉しか出ない「鳳凰図」。

美しくないところまでをも克明に描き出した、草花のリアリティ。

わざと樹木から遠く離れた空のなかほどに、放り投げたような小鳥の姿。

なによりも、六羽の鶏の鋭い眼差しと

たった一筆で豪快に表現してみせた、六つの尾羽。

もちろん丸山応挙・池大雅など、他者の手による作品も立派だったが

やはり、なんといっても若冲の凄さは"わかりやすい"!

いい意味で素人っぽい、外連味たっぷりの構図や描き方は

バンクシーに代表される、現代のウォールペインティングにも通じるものがある。

とにかく、理屈抜きで〈面白い〉のだ。

 

もうひとつ、ぜひ特筆したいのは

コロナの"おかげ"で、館内がガラガラだったこと。

他に入場者がいなかったわけではないが

少なくとも行列や順番を気にせず

観たい作品の前で好きなだけ立ち止まったり

何度も行ったり来たりを繰り返したり

離れたベンチに腰掛けボ~ッと眺めたり・・・

文字通り"気が済むまで"、たっぷり鑑賞できたのだから。

 

本当は、こんなこと書いちゃマズいんだろうけど

少なくとも、この日、このとき(二時間余り)だけは

Thank you Corona! ――なんて、胸の裡で囁いてしまったよ。

 

ではでは、またね。