ナキウサギに逢える散策路 帯広ふたり旅 2022.10.26-29 2日目(2)然別湖温泉⇒然別橋👣駒止ガレ場👣然別橋

2022年10月27日(木) 然別湖温泉・ホテル風水⇒然別橋⇔駒止ガレ場

    山道の両側は美しいコケでいっぱい。植物好きなら、こちらも必見。

 

然別橋そばの空き地に車を停め

左手に延びる踏み分け道をゆっくり登り始める。

午前10時頃とあって、周囲の地面や草は白い霜に覆われていた。

足元には岩がゴロゴロしており、油断すると転びそうだ。

斜面には、びっしりとコケやシダが生えている。

それでも徐々に高まる陽射しが心地よく、快適なハイキングとなった。

誰にも行き交わないことを確認し、マスクを外す。

森の匂いを胸いっぱいに吸い込み、さらに足を進めていく。

 

ときどき足を停め、目に付いた光景を撮影しつつ10分ほど歩いただろうか。

ふいに、左手の前方から「ピッ」とも「チッ」とも聞こえる鳴き声が聞こえてきた。

ひょっとして、これは・・!

期待に胸を高まらせながら、ゆっくり登ってゆくと

視界が大きく開け、左手に岩がゴロゴロ積み重なっている斜面が見えた。

そして、目の前の踏み分け道の先には

大きな望遠レンズ付きカメラを構えた5~6人ほどの先客の姿が。

誰もが真剣な面持ちで、斜面の一角にレンズを向けている。

どうやら、ここが有名なナキウサギ観察スポット、『駒止のガレ場』らしい。

しかも、たったいま、そのナキウサギが姿を現わしたようだった。

 

いったいどこにいるのか!?

一刻も早く野生のナキウサギを見てみたい!! と興奮しつつも

野生動物だから、下手に動けば警戒して巣穴に隠れてしまうのでは

もし自分の行動でナキウサギが引っ込んでしまったら、撮影者の皆さんに申し訳ない。

・・などと、いらん昔の知識(動物番組制作)が現場へと向かう足を鈍らせる。

結局その場に留まったまま、デジカメのズームを一杯に効かせて

撮影中のカメラマンたちが視線を注ぐ先を、あれこれ探してみることに。

すると、ちょうど斜面の真ん中あたり。

岩が丸く突き出た場所の上に、薄茶色い鏡餅のようなシルエットが見つかった。

―――あれだ!

そのシルエットをファインダーの真ん中に据えたまま

デジカメのズーム機能を最大まで引き上げ、夢中でシャッターを押す。

 

   ど、どこにいるんだ!?・・ズームの倍率を上げ、ナキウサギの姿を探す。

      岩の上にナキウサギ発見! 記念すべき一匹目だった。

 

続いて二枚目、と思った次の瞬間。

ナキウサギの姿は、影も形も消えていた。

残念、これだけか。

それでも主役が退場したので、やっと気兼ねなく動くことができる。

再び歩き出し、ナキウサギ狙いの強者たちが待ち構えるガレ場の正面へと移動した。

 

   ナキウサギが棲むガレ場と「撮影隊」の位置関係。こんなにも目と鼻の先。

 

地元の人か旅行者か分からなかったが、ほぼ全員が単独行。

揃って大きな望遠レンズ付きのカメラを手持ちor三脚付きで用意しており

明らかに「ナキウサギを撮影するために来た」という佇まいだ。

そんなプロ&セミプロ風の方々のなか、小さなデジカメだけをひょいと手に持ち

物見遊山風に相方連れで乗り込んできた我々は、いささか場違いだったかもしれない。

 

とはいえ、特別な撮影許可書が必要なわけではなく

ガレ場に足を踏み入れてナキウサギの巣穴を探し回るとか

無神経に動きいたり騒いだりしないといった、基本的なマナーさえしっかり守れば

誰もが好きなときに好きな場所で、この〈撮影会〉に参加できるのだった。

 

そんなわけで、我々もしばらくの間ガレ場の前に留まり

ダメ元でナキウサギの出現を待つことにした。

すると、5分も経たぬうち

今度は少し降りた左手の斜面で、「チッ」or「キッ」の声が。

その正面でスタンバっていた2名のカメラマンが

サッと岩斜面の一点に、レンズを向ける。

あいにく、今立っている位置からは見えにくいポイントだった。

うう~~どうしよう。

隠れる危険を冒してでも近づくべきか・・

迷い始めたそのとき、周囲にいた他のカメラマンたちがぞろぞろ移動を開始。

特に忍び足になることもなく、撮影に適した場所を探し始めたのだ。

 

なんだ、少しぐらい動いても大丈夫なのか。

問題ないのなら、同調すべし。

大きな音を立てぬよう足元に気をつけ、ゆっくり移動してゆく。

しきりにパシャパシャとシャッターを押す男性の脇に立ってみると

ーーいたいた! さっきよりも近くて、全身が見える!

人間側のワサワサなどどこ吹く風と、黒目がちな目をパッチリ明けたナキウサギ

よくできた置物のように、ちんまりと岩の上に座っているではないか。

野生のウサギだと聞いていたから、もっと警戒心が強い動物かと思ったのに

実際は、むしろドンくさいほど泰然自若とした生き物っぽかった。

 

        2匹目が登場。思ったより簡単に逢えるんだなぁ。

      左端に寄ってしまったけど、これが一番大きく撮れた。

    全然逃げないから何枚も撮れた。こちらは、ちょっと凛々しい横顔。

 

ともあれ、これっぽっちも逃げる様子がなく

ぼーっと遠くを眺める(というふうにしか見えない)ナキウサギにデジカメを向け

夢中でシャッターを押し続けていた。

結局、5分近くも被写体としてポーズを取ったナキウサギ

悠然と巣穴に戻っていったのである。

・・それにしても、彼らはいったい何のために危険な岩場に姿を見せるのだろう?

繁殖相手を探しているようにも見えないし、残る可能性は「縄張りの誇示」あたりか。

付け焼刃の動物行動学はそのぐらいにしておこう。

 

         美しいコケたちにも、つい目が向いてしまう。

          ガレ場に根付いたスギ(たぶん)の若木

 

いずれにせよ、ナキウサギの"ワンマンショー"は、これにて終了。

ひょっとしたら・・と思っていた、生写真撮影も無事に終えることができた。

現場に張り付き続ける猛者(もさ)カメラマンたちを残し

軽やかな足取りで、登って来た道を戻るのだった。

 

ところが我々の「ナキウサギ観察記録」には、"続き"があった。

すっかり満足して、然別橋付近のスタート地点まで戻ってきたところ

ちょうどそのタイミングを待っていたかのように

右手前方の岩斜面から「チッ」の鳴き声が。

そう。なんと、こんな道端にも、ナキウサギが出現していたのだ。

確かにホテルでもらった「ナキウサギ観察マップ」には、

「このあたりにもナキウサギがいます ご注意あれ!!」の文字が躍っていたけど

・・まさか、ホントにいたなんて。

 

        3匹目もゲット! 岩の上に揃えた前足がキュート。

 

とにかく気を取り直し、そろそろと"現場"に近づいていくと

ちょうど正面でカメラを構えていた男性が、親切にも声を掛けてくれた。

「ちょうどこの先にいますよ」

おかげで無事、3匹目のナキウサギも撮影成功。

待ち時間を全部足してもわずか15分ほどで

3回ものシャッターチャンスに恵まれたのだった。

・・それにしても野生のナキウサギって、ぜんっぜん人間を怖がらないんだな。

人の気配に慌てて逃げる野生動物ばかり見て来たから

このフレンドリーさ(ドンくささ)には驚きを通り越して、呆れてしまった。

ま、そうした能天気?ぶりのおかげで

楽々撮影できたのだから文句を言う筋合いじゃないけどさ。

 

      最大限にズームしてるから、手ブレを抑えるのが大変だ。

   よく見ると一匹ずつ顔つきが違うっぽい。この子は控えめな雰囲気。

 

1時半ほどのハイキングだったけど

またもや"新しい北海道"に出逢うことができた。

これだから、旅はやめられない。

 

ではでは、またね。