1991年1月に出た第一作『戦士志願』から、実に30年余り。
読んでしまうのがもったいない気持ちから、なかなか手に取ることができずにいた
グォルコシガン・シリーズ最終作『マイルズの旅路』を、ようやく読み終えた。
率直な感想は、旧くからの友人にかける言葉と一緒だった。
・・・お互い、歳をとったなあ。
それもそのはず、いまだ仕事に振り回されていた30代前半に出会って以来
ノリノリの後半から40代、確実性を求める50~60代前半までの三十数年間。
若いマイルズの成長とともに、生活してきたのだから。
(そうは言っても、本編でのマイルズはようやく中年に片足を賭けたあたり。
まだまだ"若い"と呼べなくもないお年頃なのだが)
ともあれ、自身の人生を重ね合わせずにいられないほど
一作ごとに、〈個人的なエピソード記憶〉がむくりと立ち上がってくる。
それくらい"一緒に生きてきた感"の強いシリーズ作品なのだ。
(これに続くのは、小野不由美の「十二国記シリーズ」ぐらいか)
そんなわけで、2017年2月の発刊&購入以来。
気が付けば、なんと5年以上の長きに渡って本棚に背表紙を並べ
続編(スピンオフ作)『女総督コーデリア』が出た後まで
"でもシリーズ的にはこれがラストなんだよなぁ"
などと、ぐずぐず読まずにいたのは
「終わり」を認めたくない、単なるワガママのせいだった。
それでも、一昨年から始めた「サイコロ読書システム」のお陰で
スロットマシンのジャックポットのごとく
「SF」「海外」「女性作家」「シリーズ」「途中」のキーワードが揃い
このたび強制的に!? ピタリ条件が合致した本作を読了した次第。
ま、しよーもない前置きはこのぐらいにして
いいかげん本作の感想に話をすすめよう。
歯に衣着せず、思ったまま言ってしまうと――
さすがに『ミラー・ダンス』『メモリー』頃まで全編に満ち満ちていた
圧倒的な躍動感や、読者の予想を見事に裏切るスリリングなストーリーテリング
マイルズほかの登場人物が交わす、コミカルな会話などなど。
激戦地の地雷原なみに仕掛けられていた"面白爆弾"は、頻度も規模もスケールダウン。
どうにも寂しい気分を味わわされてしまった。
それでも、ときおりキラリと光る"いぶし銀"の名演技のごとく
マイルズらお馴染みの(といってもあとはボディガードのロイックくらい)
登場人物が、いかにもな言動で楽しませてくれたから
シリーズのファンとしては、それだけで充分満足だったりする。
本作を棚に上げてしまうことにはなるが
少なくとも、第1作から『メモリー』までの10作品は、文句なしの大傑作。
この流れで"マイルズ推し"になった読者であれば
13作目の『外交特例』までスルスルっと、一気読みできるはずだ。
「えーーっ、30年も昔の古~い作品なんて、そんなに面白いのかなぁ?」
とか、食わず嫌いをするのは、余りにもったいない。
『夏への扉』や『アルジャーノン』なんて、もっと"大昔"の古典SFなんだし。
とりあえず、第1作『戦士志願』だけでもナナメ読みしてみればいい。
『銀英伝』とか『化物語』にハマッた人なら、イチコロ(古っ!)だと思う。
個人的には『スターウォーズ』『スタートレック』より楽しめる。
小説には珍しく、前半の『バラヤー内乱』あたりまでは3回も読み直してしまったよ。
ではでは、またね。