"部活動ノリ"が眩しい! 『うなドン 南の楽園にょろり旅』青山潤 周回遅れの文庫Rock

ええっ!!・・・これが、「学術調査」なのか!?

 

東京大学の"ウナギ博士"が

多くの謎に包まれたウナギの生態(特に産卵場所)を探るべく

文字通り世界中を飛び回った〈探検記録〉の、第二弾。

※第一弾の『アフリカにょろり旅』は

 題名通りアフリカ南部を中心にウナギ探索を決行。

 様々な苦難に巻き込まれた(招き寄せた)記録

 ・・だったような記憶が、うすぼんやりと残っている。

 10年以上前に読んだきりなので、心もとないけど。

 

アフリカ編では、探検より飢えや乾きに"耐える"場面が多かった気がするが

一転して本書の青山氏は、前へ前へと突き進んでいく。

なにしろ、ろくな準備も下調べもせず、会話も通じない現地の人々相手に

出たとこ勝負で〈ウナギ探し〉に情熱を燃やす。

それでも、単身インドネシアに乗り込んだ記録「にょろり旅TAKA1」は

"経験不足な若者が気合だけでウナギ採集をやり遂げた!?"という

独り身ゆえのムチャクチャな旅記録。

もっと言うと、常識知らずな"ウナギバカ"の脱線ぶりを

おもしろおかしく脚色した、"なんちゃって探検"だとばかり思っていた。

 

ところが、信じがたいことに、〈上には上がいた〉。

続く、海外でのウナギ探し記録『うなドン』で

三年後?の青木氏は、手下?の俊、指導教授・塚本先生の三人チームで

南海の楽園タヒチにへと飛ぶ。

この地域に生息する珍しいウナギ、「メガ」を採取するためだった。

なんやかんやいっても、実質的なチームリーダーは塚本教授。

東京大学海洋研究所に籍を置く文字通りの学者先生、エリートである。

 

ところが、ぎっちょん。

世界的リゾート地タヒチを舞台に、この三人が繰り広げる〈メガ探索〉といったら・・

青山氏のインドネシア単独行に輪をかけたような、行き当たりばったりぶり。

地元の人々の"噂話"やら"又聞き"など、あてにならない情報を頼りに

それっ!とばかりジャングルに乗り込み

川を遡りながら(メガは内陸部の川に生息している・・らしい)

ひたすらウナギ獲りに励むのだ。

それも、満足なキャンプ用品どころか食料も用意せずに。

 

――出たとこ勝負にもホドがある。

高校のワンゲル部(今も似たようなのがあるはず)だって

出発前には最低限の準備を整えるというのに

いい大人たち(それも東大の教授&研究員だぞ)が三人揃って

"ガキの探検ごっこ"そのまんまの、限りなく無謀な探検に命を懸けるのだ。

 

実際、本書を読んでいる間中、うたたの頭の中では

半世紀ほども昔の、高校~大学時代にやらかした

「天体観測を装った(天文部だったので)山上のオールナイト酒盛り」だとか

北アルプス稜線で暴風雨に逢い、潰れたテントを背負いながら朝を迎えた」記憶が

次から次へと、回り灯篭のようにリプレイされ続けていた。

それくらい"若気の至り"としか評しようのない、"三バカ大将日記"なのである。

 

いったいぜんたい、どれほどムチャクチャな〈探検行〉だったのか・・

具体的に引用したくなるけど、そこはじっと我慢の子。

興が削がれるので、ぜひともご自身で味わっていただきたい。

ただ、旅の終わりに教授が言った言葉だけは、ちょっと引用してしまおう。

なにせ『うなドン』なる本書の題名は、ここから来ていたのだから。

 

※これもネタバレか? 気になる方は、この先を読まないように。※

 

どんな結果が待ってるかわからない。無茶だって笑われてることも知ってる。でも、どうだ、俊! 僕たちとウナギ研究会のドン・キホーテになろうじゃないか! 笑われようが何しようが毅然と胸を張って行こうじゃないか! うん、いいなぁ。うなぎのドン・キホーテ、略してうなドンだな!」324p

読了後、湧き上がってきた想いは――うらやましい!

のひとこと。

こんな「探検旅行」に、命を燃やしてみたかった。

・・実際に体験してないから、のほほんと言えちゃうのかもしれないけど。

 

ではでは、またね。