笑って楽しむ"メメント・モリ"(死すべき運命-さだめ)  『とんでもない死に方の科学』C・キャシディー/P・ドハティー 周回遅れの文庫Rock

人生には、残念なことがたくさんある。

たった一度しか死ねない・・というのも、そのひとつ。

しかも多くの場合、その方法を選択する自由も奪われている。

そういう意味で「自殺」は、非常にアグレッシブな行為かもしれない。

 

ともあれ本書は、この自分ではままならない"死に方"について

45通りものシチュエーションを提示し

「もし✖✖だったらどんなふうに死に至るのか」を、科学的にシミュレート。

実際に本人が体験する異変や苦痛をリアルに紹介しつつ

"死後の運命"に至るまで、バカバカしいほど徹底的に予想してくれる。

※例えば、マッコウクジラに飲み込まれたら、消化分解された末に

 世界で最も高価な糞・竜涎香(りゅうぜんこう)に生まれ変わる?かも・・とか。

 

巻末の「訳者あとがき」にも、次のように記されている。

特筆すべきは、「もし●●したらこうなる」というパターンを踏襲しながらも、けっして検証不能な思考実験のみに終始していない点だ。実際に恐怖のシナリオを体験した(せざるをえなかった)人たちの話もふんだんに紹介されていて(二二〇〇匹のミツバチに刺される、エレベーターのケーブルが切れて七五階分を落下する、四六Gの負荷を受けて瞬間的に体重が二トンを超える、など)、それが本書に驚きとリアリティーを添えている。292p

 

体験者の数奇な記録に加え、極めて実用的な〈対処法〉も紹介されている。

たとえば、1 旅客機に乗っていて窓が割れたら 

(高度1万メートルで〉窓が割れたら、十五秒以内に酸素マスクをしないと気絶する。それに、じつをいうと八秒しかたっていなくても脳は深刻な酸欠状態に陥って、マスクが必要だという冷静な判断ができなくなる。20p

――なるほど、だから「酸素マスクの装着を最優先してください」と言われるのだな。

4 生きたまま埋葬されたら

息を止めたほうが酸素の節約になると思うかもしれないが、逆に酸素消費量が増えることになるのでご注意を。血中にたまった二酸化炭素を相殺しようとしすぎて、必要以上に大きく息を吸い込んでしまうからだ。抑えた呼吸をゆっくり続けるのをおすすめする。48p

――そうか。少しずつ息を吸って、吐くことにしよう。

11 乗っているエレベーターのケーブルが切れたら

助かる可能性が一番高いのは、全身をできるだけ平らにすることだ。跳びあがっても無駄。たとえ奇跡的に激突の寸前にジャンプできたとしても、衝突の衝撃は時速一・五~三キロ程度しか減らない。おまけに、床に叩きつけられるときに内臓をつないでいた動脈が切れ、内臓が体の下からこぼれてきて山をつくる羽目になる。89p

――ふむふむ、もしもの時は床に寝そべるのが一番なのか。

 

"色々な死に方を楽しむ"というより

危機的状況におけるサバイバル術を学んでいるみたいだけれど

これはこれで、大変有意義な情報ばかりである。

「ミツバチのひと刺しはさらなる襲撃を招く」。ミツバチが刺すとフェロモンが放出され、その匂いがほかのハチの援軍を呼ぶのである。46p とか

隕石が運よく月か火星から飛んできたんであれば、一カラット(二〇〇ミリグラム」あたり数百ドルで売れるだろう。55p とか

底なし沼にはまって死亡したと確実にいえる事例は一件もない。一件もだ。干潟で泥にはまって身動きがとれなくなり、潮が満ちてきたときに溺れたという人が何人かいたかもしれない。だが、せいぜいその程度である。                   「底なし沼」とは俗称で、正式には「流砂」という。なぜ流砂が危険じゃないかといえば、その中ではあなたは浮くからだ。流砂の比重は水の約二倍あり、あなたがすでに水に浮くのはご存知の通り。流砂に踏み込んじゃったとしても、ヘソのあたりまで沈むのが関の山。厄介なことになるとしたら、頭から飛び込んだときだけだろう。177-8p

 

・・というように、そこいらじゅうが「暮らしの知恵」や「お宝情報」だらけ。

しかも、近年よくある〈 フェイク〉なんかも一切なし。

科学書らしく巻末には18ページに渡って「参考文献」の一覧表が掲載されており

ネタの出どころまで、きっちりかっちり公開されているのだ。

 

サバイバル術を参考にしてもいいし

一味違うトリビア&面白情報のネタも満載。

意外にしぶとい人間の"生きる力"に感動させられたり

トレジャーハンティングの手引きとしても役立つ本書こそ

読者を選ばない、極上の知的エンターテインメントと言えるだろう。

 

最後に、うたたが一番ゾッ・・ときた一節を引用する。

26 ただひたすらベッドで寝ていたら

そもそも動かないこと自体が体に悪い。アメリカでは、そのせいで亡くなる人が喫煙による死者数より多いくらいだ。ケンブリッジ大学のデーヴィッド・スピーゲルホルター教授の研究によれば、映画を観ながら座ったままでいると、作品一本あたり一マイクロライフ(三〇分の余命)が失われる。それを朝から晩まで毎日続けたら、あなたの人生はほかの人より二五パーセントも速く過ぎ去るだろう。186-7p

 

そういえば、今日はずーーっと家の中にこもりっぱなしだったなぁ。

せめて寝る前に、ストレッチぐらいはやっとくか。

明日は、往復2時間の「ブックオフ・ウォーキング」に出発だ!

 

ではでは、またね。