慌てたとき、人は本性をあらわす 「混迷ミャンマー クーデターから一年」「動画が暴いた軍の弾圧」NHKBS1 周回遅れのO.A.C.

遅ればせながら、貯め撮りしておいたテレビ番組のなかから

今年の1月末から2月初旬にかけて放送された

2本のドキュメンタリーを観ることができた。

 

たまたまプーチンウクライナ侵攻後というタイミングだったので

両者の間を結ぶ、背筋の凍るような共通点が目についてしかたがなかった。

表面的な現象こそ、かたや「国内紛争(軍による民主政権の制圧)」。

かたや「二国間の戦闘(ロシア軍によるウクライナ侵攻)」という違いはあるが

その実態は、驚くほど似通っている。

 

ウクライナ侵攻の場合、首謀者は言うまでもなくロシアのプーチン

あからさまではないものの、中国の習近平が"隠れ共同戦線"を張っている。

いっぽうミャンマーの場合も、非武装の市民を無差別に殺害する残虐行為に対して

国際連合に参加する圧倒的多数の国が、強い非難を表明するなか

ロシア(プーチン)と中国(習近平)の2大国だけは、断固として賛同しない。

・・というか、明らかに《黒幕》となって武器や物資を軍に提供し

ミャンマーに民主主義政権が成立しないよう、あの手この手で支援を続けている。

 

その結果、両国の最前線で起きているのは

ともに「ここまで残酷な所業が人間にできるのか」と絶望せざるを得ないほど

情け容赦のないジェノサイド、そのものなのだ。

 

一般市民が避難する学校・教会・病院を狙って爆撃した

ロシア軍の無差別攻撃ぶりは、SNSなどを通じて広く世界に伝えられている。

だがミャンマーの場合、ミサイルや爆撃といった遠距離攻撃が主役でないだけに

その"蛮行"は、はるかに生々しく、やるせない実像を露わにする。

 

たとえば「動画が暴いた――」で紹介された映像だと。

武装デモを行なう群衆に向け、何の躊躇もなく実弾を発砲する兵士たち。

デモの行列にハイスピードで突っ込み、多数を死傷させる装甲車。

"抵抗勢力の一掃"の名目で焼き尽くされた、数百軒の家々。

両手を縛り上げたうえで焼き殺された、戦争に関りのない数十名の女子供。

どれも人間の醜さをこれでもか!と見せつける、正視に耐えないものばかりだ。

おまけに、ウクライナに比べネット環境が整備されていないミャンマー

現地から送られた映像記録は、文字通り〈氷山の一角〉に過ぎない。

 

軍と市民の立場の違いがあるとはいえ、元をただせば同じ土地に住む者同士。

近しい関係を築いているからこそ、際限なく憎しみがエスカレートしてしまうのは

ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争を例にとるまでもなく

留めようのない"人間の業"と認めざるを得ない。

 

それにしても

ミャンマーウクライナ北朝鮮

今現在、不気味なきしみを上げ続けている国々の背後に

判で押したようにロシアと中国の巨大な影が聳え立っているのは

単なる偶然に過ぎないのだろうか。

もちろん、そんなわけない。

前世紀の冷戦時代がそうであったように

彼らが後ろ盾になっているこれらの国家(戦場)こそ

絶対的に正しいと信じる主義主張を守るための

文字通りの「最前線」なのだ。

 

プーチン習近平が抱く不安や懸念も、わからなくはない。

なにせ、圧倒的に広い領土に、様々な民族が入り混じって暮らしている。

まともに民主主義を受け入れようものなら

価値観の異なるこれら数十の集団が、それぞれ民族自決を唱え

次から次へと小国家を設立し、祖国はバラバラに分裂するに違いない。

 

とりわけプーチンロシアの場合は、ペレストロイカ以後に起きた

「共和国独立(含むバルト三国)」を体験しているだけに

ソビエト国家が相次いでNATOヨーロッパ連合)に寝返っていくのは

まさに"父祖の地を敵に奪われる"想いだろう。

そう。彼ら(プーチン習近平)にとって

アメリカやヨーロッパが主導する「民主主義国家」なる形態は

母なる祖国を侵食してゆく、"邪教の徒"に過ぎないのだ。

 

とはいえ、SNSをはじめ個人単位の情報ネットワークが世界をカバー。

誰もが自由と欲望を追い求める風潮のなか

〈全国民が平等な社会〉なる幻想のメッキはすでに剥がされ

ピラミッド型の中央集権体制は、強制と抑圧の象徴でしかなくなりつつある。

 

そんな、否応なく足元から崩れつつある現状への"不安"と"苛立ち"が

独裁国家ミャンマー北朝鮮〉への支援につながり

また、"魂の祖国"ウクライナNATOに奪われかねない恐怖から

一方的に「クリミア半島併合」を強行。

これが思いの外すんなり実現できたことに味を占め

なかば"柳の下の泥鰌"気分で、ウクライナ電撃侵攻&占領を目論んだのだろう。

 

ところが、そうはイカキンタマ

ウクライナ全国民による、予想外の徹底抗戦を受けてしまった。

"戦争"が始まって、すでに1カ月が経過。

にっちもさっちもいかない、とは、まさにこのことだ。

さあ、どうする。

 

絶対に「負け」も「誤り」も認めない社会主義国のトップだけに

このままプーチンが大人しく撤退することは、ありえない。

いかなる形であろうと「勝った」という"トロフィー"を要求するはずだ。

(上記の主義主張は習近平中国もまったく同じ〉

ここで必要不可欠なのは

ゼレンスキー大統領の、"本当の意味での"勇気ある行動。

葵の印籠のように民主主義を唱え「正義」を訴えるだけでクリアできるほど

このハードルは低くない。

 

確か、誰か偉い人が言ってたっけ。

戦いを始めるのは、簡単だ。

難しいのは、誰もが納得するように戦いをやめることだ。

 

さて。

不安と猜疑心に囚われた孤独な独裁者を、いかにしてなだめるのか。

キューバ危機の際のケネディVSフルシチョフではないが

固唾を呑んで「お手並み拝見」と、まいろうか。

 

・・・なんて、他人事みたいに書いちゃったけど

ボンボンと悲鳴のようにミサイルを打ち上げる北朝鮮を見るまでもなく

これって完全に"当事者問題"なんだよな。

 

福島県地震にビビったり

ICBM了解落下でヒヤリとしたり

ワールドカップ出場決定に浮かれたりと

いろんなことがゴチャゴチャ起きているけれど

非力ないち庶民には、この程度のぶーたれしかできないのだった。

 

ではでは、またね。