生来の"SF者"ゆえ、「生命の起源」に関する謎は
ぜひとも存命中に解き明かしてほしいと、熱望している。
だが、物心ついて以来半世紀以上の歳月が過ぎ
気が付けば2022年!という"リアルSFワールド"に到達しているというのに・・
『最先端科学』『新発見』を掲げた書物や映像プログラムを
どれほど熱心に漁ろうとも、どこまでいっても五十歩百歩。
〈ついに分った!〉と華々しく発表されるのは
「生命に必要な物質」や「発生するための条件」など、周辺情報ばかり。
どのようにして生命が始まったのか?
という肝心かなめの謎解きは、これっぼっちも進んでいないのだ。
タイトルに挙げた『生命はどこから来たのか?』の内容もまた
半生を駆けて(というほど大げさではないが)
うたたが拾い集めた「生命起源に関する新発見&情報」を
分かりやすく整理して紹介した、いわば"おさらい本"のレベルに留まっていた。
(ここまできっちりまとめ上げるだけでも、大変な仕事なんだけどね)
他にも、本書の中では
「生命が誕生するためには、特定のタンパク質と核酸(DNAの材料)が
周囲と区別された「膜」(細胞膜)の中に揃った状態が必要」
といった〈具体的条件〉だったり。
「生物が多彩な進化を遂げた背後には
細胞内で共存するウイルスの存在が深く関わっている(に違いない)」
など、昔ながらの〈世代を重ねていく進化〉とは異なる
〈単世代における進化=水平進化〉の可能性が重要視されてきたことが提示され
生命と進化の謎を巡る、いわば《外濠のかたち》は徐々に見えてきた。
加えて、地球以外の火星・タイタン・エンケラドスなどにおける生命の存在が
明日にでも発見されるかのように、語られてもいる。
だが、しかし。
誰もがいちばん知りたいと熱望している
〈最初の生命はどんな過程を経て生じたのか)との疑問には
ものの見事に"ブラックボックス"に入ったまま。
いまだ仮説に過ぎない「宇宙の始まり=ビックバン理論」に類する
想定ストーリーさえ、出来上がっていないのである。
なのに、専門家の方々は、その圧倒的多数が
「条件は揃っている。だから✖✖にも生命が誕生しているに違いない」と主張する。
これだけ豊富な「材料」と「条件」に恵まれた地球の上で
40億年以上もの間、大自然と人類(こっちは数千年だけど)が
ありとあらゆる手だてと機会を尽くし、生命創造に励んでいるにも関わらず
現存する唯一のシステム(タンパク質+DNA)以外
ただひとつも"新たな生命"は生じていない、という厳然たる事実から目を背けて。
とはいえ、「周回遅れ」の例に洩れず
本書が出版されたのは、2013年の8月。
9年近くも過去のことである。
もしかしたら、コペテン(コペルニクス的転回)並みの大発見が
2020年までに起きているかもしれない・・
と、かすかな希望を胸に拝見したのが
NHKBS『Root 生命起源への旅』であった。
――結論から言うと
これまた、見事な肩透かしに終始する。
相も変わらず、独りよがりの"NHK節"が炸裂。
「仮説」に過ぎない推論だったはずのストーリーから
いつのまにか「・・と考えられる」が消え
ことごとく立証済みの事実であるかのような断定口調に変じていたのは
すっかりおなじみの"やり口"。
肝心の最新情報にしたところで、実際に目新く思えたのは
例の"生命誕生に必要な物質"のうち
「いくつかのたんぱく質を自然環境の中で造ることに成功した!」
というもの。
2022年になっても、「材料」の確認と証明に力を尽くすばかり。
・・いや、本当に知りたいのは
(細胞)膜の中に詰まった、その材料が、相互作用?干渉?結合?分裂?etc.
具体的に"どうなると"「生命」へとメタモルフォーゼするのか・・!?
ただ、この一点だけなんだ。
ほんと、頼むから誰か、そこらへん解明してくれないかなぁ。
いったん話を、番組の内容に戻したい。
「生命起源への旅」と、高らかに名乗ったはずが
半ばを過ぎたあたりから、〈進化〉の話題へすり替わる。
ここで提示されたのが
『生命は・・』でもかなりの紙数を割いていた、ウィルス進化論。
ウィルスに寄生されることで生命は大きく進化を遂げた。ってヤツね。
それで? どうまとめるのさ? と眺めていたら
唐突に「寄生」を「共存」と言い換えて
『ウイルスとの共存によって生命(細胞)は劇的な進化を遂げた(と推測される)。
命は、進化は、共存共生なしにはありえなかった!(かもしれない)』
などと、"助け合い(キズナ)"を讃える言葉で締めくくったのだった。
メインテーマだった「生命起源」をほったらかして
ウィルスのお陰で進化しました?
思わず突っ込んじゃったぜ――お前は、ウィズ・コロナか!?
いやはや、久しぶりに"開いた口が塞がらない"体験をしてしまった。
この歳まで生きてきて、つくづく痛感するのは
俺たちって、どうしようもなく"無知なる存在"だ、ってこと。
天才と呼ばれる人々がどれほど研究・開発に励もうと
《知ったぶんだけ知らないことが増える》のだ。
間違いなく、うたた(俺だ)がこの世を去るときも
宇宙の始まり、命の始まり、生まれる前の世界、死後の世界、魂の有無・・
肝心なことは、なにひとつわからなかったなぁ。
・・みたいな感慨にふけるのだろう。
おっと、いかんいかん。
気が付いたら、シニカルゲージがマックスになっていた。
一刻も早く、厳冬の北京で全力を尽くす日本選手の姿を鑑賞して
冷え切った心を暖めなければ・・・
"イジメジャッジ"にも屈することなく頑張る姿は、ホント、胸が熱くなる。
ではでは、またね。