最強の"出汁(だし)スープ"。でも毎食は? 京都ふたり旅 2021.10.4-7 4日目(その3) 殿田食堂/京都市内

2021年10月7日(木) 京都市内⇒横浜

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           五重塔に見送られ、東寺通をぷらぷら東へ

 

2時間半ほどかけて東寺&観智院を巡り終えてみると

はやくも時刻はお昼を回っていた。

いい塩梅にお腹も空いたし、座ってひと休みしたい気分になった。

東大門と並ぶ東寺の東口・慶賀門から、その名も「東寺通」を一路東へ。

10分ばかり歩けば、この日の昼食に決めていたと決めていた店の前に着く。

いつの間にか「京都を代表する大衆食堂」のひとつになっていた

『殿田食堂(とのだしょくどう』だ。

 

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           京都B級グルメの聖地・殿田食堂

 

いかにも"街角の食堂"、といったたたずまいの建物(たぶん二階建て)。

ストレートに「うどん」と書かれたのれんをくぐり店内に入ると

一気に半世紀前へとタイムスリップ。

ラカンには溜まらない昭和の空気が、いっぱいに漂っていた。

ま、今どきは、ググリさえすりゃ、写真も情報も山ほどゲットできるわけで

キザったらしい描写はここらで打ち止めにしておこう。

とにかく、"古き良きうどん屋さん"。

掃除も手入れも行き届いており、どこもかしこもピッカピカ。

柴咲コウも常連というだけあって、一分の隙もなくフォトジェニックだ。

 

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     50年の歴史を伝える店内。古びているけど美しく、清潔。

 

店内に足を踏み入れたとたん、いらっしゃい!(だった・・よな?)

元気いい声と一緒に、店主らしき年上のスリムな男性が笑顔で迎えてくれた。

初めて入る店でやや緊張気味のうたた'Sに向かって

どこから来たのか? どこを見て来たか? など、次々話しかけてくる。

また英文併記のお品書きを開くと、こちらが口を開く前に

人気&オススメのメニューなどを教え、アドバイスしてくれる。

フレンドリーなのは有難いけれど、こうもあっさり距離を詰められると

長年の旅であれこれ騙されては痛い目に遭った記憶を積み上げてきたせいか

「嬉しさ」より「猜疑心」の方が、ピカッと光ってしまうのだ。

少し後から店に入ってきた30代前後のカップル(こちらも観光客)が

常連さんのように会話のキャッチボールを楽しむ、その横で。

人の好意を素直に受け取れない、ひねたうたた(俺だ)は

こわばった愛想笑いをなんとかこしらえ

人気メニューだと勧められた、たぬきうどん他を注目するのが精いっぱい。

 

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  たっぷりのネギが、"スパイス"と言えなくもない。ちなみに相方は親子丼。

 

で、感想。

確かに、様々な本や記事で紹介されていた通り――「出汁(だし)」が絶品。

「めん」が主役の讃岐うどんとは対極に位置する、一杯。

麺(うどん)も具も、"スープ(出汁)を味わうための脇役"に過ぎない。

初日の昼に入った、鯖寿司名物のうどん屋「満寿形屋」もおつゆの味に感心したが

殿田食堂は、さらにその上を行く〈出汁を食べるうどん〉だった。

 

日本食の最大の特徴が、出汁に象徴される「旨み」だとすれば

これぞ和食の真髄!・・と胸を張って宣言できそうな一杯だ。(おまけに安い!)

――なのだ、が。

そんなに食べるとバカになるぞ! と脅す両親の声をよそに、

幼少期からワサビ、胡椒、トウガラシなどの香辛料を愛してきたうたたには

この魚介・海藻類のエキスがぎゅーっと詰まった、まろやか~な出汁が

どーしても、"ひと味足りない"気がしてならないのだった。

〈和食の国の人〉からはみだしても、構わない。

せめて3日に1度は、ピリリとパンチの利いた味が食いてーよ!!

ってあたりが、嘘偽りない本音だったりする。

 

実際、この旅でも2日目の夜は「食堂デイズ」(地中海風?料理)

3日目の昼は「シャーレ水ヶ浜」(ビーフカレー)と

"京都スタイルの味つけ"に背を向けたメシをパクついていた。

海外を旅する度にひしひしと痛感したのだが

日本ほど、バラエティに富んだ食生活を満喫できる国は存在しない。

やれ「✖✖✖に比べて社会保障制度がなってない」

それ「△△△に比べて温暖化対策がダメダメだ」などなど

自称識者・文化人のお歴々は、口々にこの国と国民をこき下ろしているけれど。

普通の生活を普通に営むアラカンうたたは

世界中の料理を本場の味で享受できる日本に生まれて、本当によかったと

心の底から感謝している。

 

むろん、今日明日の暮らしに事欠く貧困にあえいだり

過酷ないじめの元、心身ともにすり潰されそうな

"それどころじゃない!"方々が決して少なくないことぐらい、承知している。

それでも、圧倒的多数の国で毎日ほぼ同じ料理を食べ続けている現実を前にすると

毎回サイコロを転がすように、いとも簡単、しかも廉価に

3度3度の食事をルーツの違うスタイルで自由自在に楽しめる、なんて

〈世界の常識〉では、考えられないことなのだから。

 

――はい。またヘリクツに話が逸れて、"お手付き"ひとつ。

続けて向かうはずだった清水一芳園(しみずいっぽうえん)本店まで

たどりつけなくなってしまった。

まったくもう、書き始めから1カ月が過ぎ

現実の京都では紅葉の真っ盛りを迎えつつあるというのに

いったいいつになったら終わるんだか。

とはいっても、のぞみ号の出発時刻まで、残すところ3時間あまり。

次回こそ、正真正銘の最終回になる!・・に違いない。

 

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    鴨川を渡って、さらに東へ。目指すは、この旅最後の「デザート」だ!

 

ではでは、またね。