世界遺産でも国宝でもないものに感動してしまう 京都ふたり旅 2021.10.4-7 4日目(その2) 東寺/京都市内

2021年10月七日(木) 京都市内⇒横浜市

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         金堂前の消火用バケツ。意外とマッチしている。

 

腹ごしらえを済ませ、そのまま九条通を西へ歩くと

すぐ右手前方に、1000年の歴史を誇る京都のランドマーク

東寺・五重塔が見えてきた。

前回訪れてから35年ほど経っているが

新幹線の車窓からチラ見してるので、久々感はまるでない。

そのまま南大門から境内へ。

自由に行き来できるエリアをぐるっと回りこみ

北側の受付で拝観手続きをおこなう。

 

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           南大門から、おじゃましま~す。 

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     高い建造物を前にすると、思わずいろんなアングルを試してしまう。

 

たまたま「秋期特別公開」の期間中だったので

これも何かの縁と、セット料金(1000円)を払って

まずは金堂・講堂エリアへおじゃまする。

日本一のっぽ(55m)と言われる五重塔を様々な方角から眺め

金堂を拝観し、本尊・薬師如来坐像と静かに対面する。

だが、なんといっても最大の見所は、講堂内部。

21体の彫像が森の木々のように聳え立つ、「立体曼荼羅」だ。

 

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         金堂前。午前10時を過ぎても、参拝客はまばら。

 

有難いことに、この時も参拝客は数えるほど。

しーーんと静まり返った講堂のなか

日本最古といわれる密教彫像たちの前を行ったり来たり。

・・と、大学生だろうか5人ほどの若い男性を引き連れた

これまた同い年かやや上程度のメガネ男子が

あれこれ説明しながら入って来た。

決して大きな声ではなく、聞き手側も静かに耳を傾けているのだが・・

――いかんせん、どうにも気が散って仕方ない。

その気になって聞けば、なかなか良いことをしゃべってるのだろうが

こんなとこで知識をひけらかさなず、ちゃんと予習して来いよ。

と、ひがみ根性ばかりが込み上げてくる。

己の器の小ささを噛み締めつつ、講堂を後にした。

 

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       境内を前のめりに歩くチビたち。ちょっとだけ癒される

 

期待が大きかっただけに、講堂での欲求不満は大きく

拝観受付所の売店を眺めても、気分は落ち込んだままだった。

それでも、売店と対面して建つ食堂(じきどう)のなかで

フラストレーションは、あっさりと解消される。

 

この寺が四国八十八ヵ所巡礼の出発点であり

食堂内に様々な遍路用品が取り揃えてあることに、まず驚いた。

ふーん、こんなものまであるんだ。

感心しつつ眺めるうち、平積み?にされた手ぬぐいに目が止まった。

白い布地一面に、絵文字のようなお経がプリントされている。

あれ? ひょっとして、これは・・

知る人ぞ知る仏像マニア・みうらじゅん氏が

東寺土産に推奨していた「お経てぬぐい」じゃないか!

直前に立ち寄った売店では見つからなかったので

きっと製造停止になったんだ――と、諦めかけていたのだ。

文字の読めない人にもお経が唱えられるように

ひとつひとつの文言の隣に、対応する絵が描かれた歴史的アイデア商品だった。

しかもホクホク顔で購入すると、なんと一枚300円・・安い!

 

さらにこの時期、食堂内でオリジナル仏像画の展覧会?が開かれており

延々十数メートルに渡って描かれた五百羅漢?的佛さまだったり

シャガールローランサンの画風を取り入れた印象派仏画?など

ユニークな作品を、いろいろ楽しむことができた。

この食堂自体、納経所を兼ねており、誰でも自由に参拝できる。

今回に限っていえば、金堂・講堂の彫像群より

こちらの方が、強く印象に残ってしまった。

 

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       食堂内の写真はこれだけ。もっと撮っとけばよかった・・

 

「特別公開」なので、まだまだ入場できる施設が待っている。

チケット裏の境内略図で位置を確かめつつ、北大門脇の「宝物殿」へ。

さらに門を出た先、洛南高校と対面する「観智院」を巡った。

東寺の歴史を語る貴重な品々や資料が並ぶ宝物殿も悪くなかったが

それよりも"掘り出し物"だったのは、東寺一山の勧学院(学校みたいなところ)

所蔵する密教聖教(この言葉がすでに分からん)の質と量とでは日本最高と称される

「観智院」のほうだった。

そもそも、東寺の「別格本山」を"掘り出し物"呼ばわりするのが失礼か。

 

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       ここが観智院。「特別公開」のオマケ気分で入ってみたら・・

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             ホント、居心地よかった~~

 

書院造の部屋ごとに、美しい襖絵や、虚空菩薩像、愛染明王像など

枯山水の庭を含め、いろいろな趣向が凝らされているのだが

なんといっても、さんざっぱら歩き回った足に、板張りと畳の床が無性に心地よい。

加えて、コロナのおかげ?で、広い建物内で見かける人はポツリ、ポツリ。

まるで郷里の古い実家(そんなもの実在しない)に帰省したような

ゆったりとくつろいだ気分になってゆき

奥まった小部屋の縁側では、ごろり寝転んで坪庭を眺める贅沢まで味わうことに。

ほんっとにもう―――

やれ国宝だ、世界遺産だと自分に言い聞かせて拝謁・鑑賞するより

こんなふうに過ごすひとときのほうが、遥かに充実感を得られるんだよなぁ。

てなわけで「観智院の縁側」も、記憶に残る旅のワンシーンに登録されたのだった。

        

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             ぼーっと、庭を眺めていたり・・

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    ゴロリと寝転がったり・・(屋内は撮影禁止。すでにルール違反か?)

 

ちなみに、この建物内には

宮本武蔵が描いた襖絵「鷲の図」「竹林の図」が展示されており

地元のポランティアガイドの方が熱心に説明してくれたけど。

・・うーん・・・なんだか、妙に上手すぎるんだよね。

確かに、いっとき武蔵がここ観智院に匿われていたという歴史事実はあるのだろう。

けれども、ガイドさんの説明どおり、それが20代前半だとしたら

あまりに筆致が流麗で、とても絵の素養のない人物の作品だとは思えないのだ。

いくら武蔵が文武両道に秀でた天才だといっても

晩年の渋い達磨図ならまだしも

コレは、武蔵をイメージして後世誰かが描いたもの、でしょう。

ま。歴史の世界は「言ったもん勝ち」だから

「違う」と証明できない限りは、否定できないわけで。

この文書にはっきり記されている!

などとブツを持ち出されると

それが真実なのか、あるいはでっち上げなのかの判断は、ひとまず棚上げ。

とりあえず「事実認定」されちまうのが、世の習いなのだ。

何の権威もないド素人は、物的反証が見つかるまで待つしかないね。

 

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       女子トイレの案内板も十二単。これって京都共通?

 

はいはい、またまた話題がトラバース。

なんやかんや言っても、今回の東寺拝観において観智院は

食堂と並ぶ大収穫だった。

相方も大いに気に入ったらしく、建物内に焚き込められていたものと

同じお香を2セット購入していた。

少なくとも、半日かけてじっくり拝観した価値はあった。

それにしても、このペースで京都の神社仏閣を見て回ったら

いったい何年かかることやら。

・・恐るべし、千年の都。ってか。

 

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             よし。昼メシを食べにいこう。

 

ではでは、またね。