「祇園の中華」は超スパイシー!? 京都ふたり旅 2021.10.4-7 2日目(その2) 南禅寺~ぎをん森幸

2021年10月5日(火) 京都市

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            悠然と歩く、白川のアオサギ

 

やはりどこかで確認を怠っているのだろう

余裕のないときに限って、道に迷う。

この日も、ランチタイムに間に合わせようと

地図で見つけた(と思いこんだ)近道を選んだのが、運のツキ。

動物園や京セラ美術館が並ぶ仁王門通に抜けるどころか

山際どん詰まりのアーチ型水道・水路閣前へと迷い出てしまった。

 

いかん。仕切り直そう。

改めてスマホマップで目的地を確認。

その間、交代でトイレ&給水タイムをとって、落ち着くことに。

・・なんだ。綺麗な風景に見とれて、直進する道を左に曲がっただけか。

100mほど戻り、南禅寺からまっすぐ西へと進路を訂正。

相変わらず陽射しは強いものの、幸い昨日よりはいくらかマシだった。

間に合わなかったら、しょうがない。

なるべく時間を気にせず、早足にならないように歩くことに。

 

そうやって焦りから解放されると

現金なもので、思ったより道のりが短く感じられる。

15分も歩かぬうちに、祇園の中心部へと続く白川沿いの道に行き当たる。

涼しげな柳並木が左右に連なる、澄んだ流れのなかにアオサギを発見。

人の姿を見てもまったく動じない彼(彼女?)を、記念撮影する。

 

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    白川にかかる行者橋。四万十川の水没橋と同様、欄干がない。

 

そういえば、この近くにも「本」に出ていた中華料理店があったっけ。

さっそく調べてみると・・・あったあった、「ぎをん森幸」!

 

ちなみに、今回"京都の中華料理を食べよう"と思い立ったのは

この〈ネタ本〉に出会ったおかげだ。

その名も――『京都の中華』(姜尚美著)

全国でも類を見ない独自の発展を遂げた京都の(庶民的な)中華料理の魅力を

余すところなく紹介した、文庫のガイド本である。

その中でも、特に詳しく案内文を載せている17店のひとつが

ちょうどここ白川沿いに店を構える、「ぎをん森幸」だった。

 

場所のついでにランチタイムも見てみたら、13時30分までとある。

時間を確かめると、午後1時ちょっと前。

大丈夫、これなら余裕で間に合うぞ。

最初からこの店に決めていたわけではなかったけれど

残り時間を考えると、今から他の店を見て回る余裕はなさそうだ。

――よし、ここに決めた! (入れれば、だけどね)

 

本に示された白川沿い、西側の道を検分しながら進んてゆく。

しかし、中華料理店らしき看板も建物も見かけぬまま

道半ばを過ぎた頃に。

・・・一瞬、気づかずに通り過ぎるところだった。

遠目には目立たない低層ビルの一階。

階段のすぐ脇に、マンションの一室のような入り口があった。

 

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   ドアを開けると、この色紙が。ちなみに料理の写真は一枚も撮ってない・・

 

んじゃ、入ってみるか。

と、普通の住宅のドアと変わらぬ扉を開けると・・

そこはやはり、玄関っぽいスペース。

その右手に広がっていた十~十二畳ほどの客席フロアも

マンションの一室をそのまま流用したものだろう。

アットホームな雰囲気の店内は、ほぼ満席。

直前に入った二人連れは空席に着くことが出来たが

一足遅れの我々は、対応したおかみさん?に、ちょっと待つよう指示される。

それでも、昼食時間にしては遅めの13時前だったおかげか

ほんの数分で、用意してもらった席につくことができた。

 

さて。何を食べようか。

周りを見渡すと、「中華弁当」と名づけられた定食を頼んだ人が多い。

どうやら、これが『京都の中華』に紹介されていた

「大えびの天ぷら」や「春巻き」などを一通り味わえる"お得ランチ"のようだった。

もちろんそれが第一候補だが、二人とも同じじゃつまんないな・・と

ランチメニューを眺めてみると、「本日のランチ」が。

イカピリ辛炒め定食」と書いてあった。

じゃあ、ひとつずつとって、食べ比べてみようか?

いろいろと味わいたい相方も賛成したことで

中華弁当と本日のランチを注文した。

 

ほとんどが近所のお客さんなのだろう

流ちょうな京都弁が飛び交う完全アウェーの空気のなか

手前には、ご飯・味噌汁・じゃこ山椒の小皿・メインのピリ辛炒めが。

相方側には、九つの枡に区切られた平たい重箱が置かれ

ちょうど懐石弁当のように、それぞれの枡に小分けされた料理が入っていた。

では、いただきます。

 

まずは、自分の側にある「イカピリ辛炒め」に箸を伸ばして、ひと口。

・・・なんか、思ったより濃厚な味付けだし・・か、辛いぞ!

実は、事前に『京都の中華』を読んでいたので

「京都の(伝統的な)中華料理はニンニクなどの匂いの強い素材や

 刺戟的な香辛料をほとんど使わない」という特徴が、頭に入っていた。

なのに、本日のランチにラインナップされていた「イカピリ辛炒め」は

辛いもの大好きな自分が食べても、これは辛い! と認識するほど

スパイシーかつ濃厚な味付けだったのだ。

 

いったい、本に書いてあったことは何だったのか・・

狐に摘ままれたような気分で、「中華弁当」をパクつく相方に

どう? そっちは? と訊ねると

うん。おいしいよぉ。どうぞ。

そう言って、天ぷらや春巻をとりわけ、おすそ分けしてくれた。

こちらも「ピリ辛炒め」を提供し、トレード成立。

さっそく、店を代表する味といわれる「大えびの天ぷら」をパクリ。

ふわっとした食感以外、香辛料で痺れた舌は、何の味も捉えられずにいたが

やがて優しい海老の風味が、じわじわと伝わってきた。

――なるほど、これが典型的な〈京都中華の味〉だったのか。

 

なんだか、グルメ雑誌のヘタクソなレポートみたいになってきたので

これ以上は端折ることにするが

要するに・・

「中華弁当」は、伝統的な京都中華を楽しむメニュー。

イカピリ辛炒め」のような「本日のランチ」は

刺激や濃い味を求める、いわば"若い人向けのメニュー"。

だから、明らかに観光客らしき人は決まって「中華弁当」を頼んでいるし

地元のお客さんは、半分程度が「本日のランチ」派という棲み分けだったのだ。

スパイシーなピリ辛炒めのおかげで

あやうく「京都の中華」を見誤るところだった。

 

とかなんとか思い巡らせたりしているうちに、ふたりとも完食。

でもって、感想は。

そうだなあ。期待通り丁寧な造りの「中華弁当」は美味しかったけど。

(特にタケノコぎっしりの春巻は、シャキシャキの食感が絶品!)

香辛料大好きオヤジは――どっちかといえば、ピリ辛のほうが好みかも。

いずれにせよ、たった一軒で分かるもんじゃないし。

この先いろんな店に入って、自分の舌で味わってみるしかないだろう。

 

京都を旅する目的が、またひとつ増えてしまった。

 

13時20分過ぎ、お腹いっぱいで店を出た我々とすれ違うように

一人の若い男が、店の前にスクーターを乗り付けきた。

一瞬、出前から戻って来た店の人かと思い

「ごちそうさまでした」と、あいさつしてしまう。

すると、彼はにっこり笑い返し「おいしいでしょ、ここ?」と答えながら

いそいそと店内に入っていった。

ランチタイムぎりぎりに駆け込んできた、常連客らしい。

ともあれ、そんなやり取りだけで、店への強い愛着が伝わってきたのだった。

 

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ではでは、またね。