最強にして最高の"Re-Readability" 『夢中さ、きみに。』『女の園の星①②』和山やま 周回遅れのマンガRock

いったいどのように言い表したら

和山やま作品の面白さが伝わるだろうか?

あれこれ悩んでいたとき、ふいに浮かんできたのが

タイトルに使った、自家製英単語「Re-Readability」だった。

意味は、読んで字の如し。

"何度読み返しても最初読んだ時みたいに面白い!"--ってところか。

 

なーんて、ひとり勝手に悦に入っていたけど。

念のためにググってみたら・・・あるじゃん、Readability

実際に英語圏での話で使われていて

しかも、主な意味は おもしろく読めること、読みやすいこと。

なんだよー。こんな適当な英単語はないだろうと思っていたのに。

 

ま、いっか。

日本人だけでなく、英語圏の人々にも

「和山やま」のマンガの面白さが、正しく?伝えられるんだから。

 

そんなふうに、普段は、そこそこ理路整然と書いてるつもりの本ブログで

頭のネジが何本か抜け落ちたような、ダサい文章を並べさせたのも

いってみれば、〈和山やま効果〉だったりする。

 

ほんともう、何なんだろうね?

この、"つかみどころのない面白さ"の正体は。

 

デビュー作『夢中さ、きみに。』の冒頭を飾る

「かわいい人」林くんの、どこか否定しきれない可愛らしさとか。

「友達になってくれませんか」で

内気な文学少女(ハンドルネーム/ おいも三兄弟)と、

彼女のメル友として再登場する林くん(ハンドルネーム/仮釈放)との

擦れ違っているようでフィットしている、ベンチでの会話とか。

そしてもちろん、後半最強のキャラクター・二階堂明と

彼が"師匠"とあおぐ日高優一くんをめぐる

そうとうピンボケで、そのくせスマッシュ鋭く打ち込んでくる

〈脱力系トーク&アクト〉の猛ラッシュとか。

 

・・・書いたそばから何を言いたいのかわからなくなってしまったけど

少なくとも、自分では決して思いつくことができない、文字通り異次元の

そのくせ地に足の着いたギャグとユーモア(ペーソスも)たちが

物陰から不意に飛び掛かり、〈笑いの落とし穴〉へと叩き込もうとするのだ。

 

とにかく「面白い」と太鼓判を推す本人でも

どこがどう面白いのか分析するのが至難であることは、ご理解いただけたと思う。

従って? 本作(とりあえず三冊)の面白さを理解したいのであれば

月並みだけど、実際に手に取り、読んでいただくしかないだろう。

 

それと、もうひとつ。

女の園の星』で描かれる女生徒たちの言動が、めちゃくちゃナチュラル。

女性の漫画家の場合、女子高を舞台にした作品はとても多いけど

ここまで肩の力の抜けた"普通さ"に満ちたものは、初めて読んだ気がする。

その自然さは、教師(主人公や同僚)と女生徒たちの〈距離感〉にも共通している。

 

そんなわけで、なぜか確信してしまったんだけど。

作者は、かなりの美人(少なくともリア充に属している)であり

オタク(古いね)とか腐女子とか

大多数の漫画家が背負う十字架のごときヘビーなコンプレックスとは

無縁の世界を優雅に育ってきた人、だと思っている。

。。そうとでも思わないと、この〈現役リア充女子高生〉にしか表現できない

絶妙の発想・ワード・タイミング・掛け合い・ズレかたetc.

などなどは生まれ得なかったはずだ。

実際のところ、教室の隅っこで観察していれば再現は可能なんだけど

この"突き抜けぶり"は、作者がリア充仲間でないと描けない気がするんだよね。

 

たとえば、第二巻の72ページ以降。

授業中に教師(星先生)の左手薬指に指輪の輝きを発見した女生徒のひとりが

とつぜん、がターンと椅子を倒して立ち上がり

「ど・・どうしました?」と訊ねる星に

人差し指を突き付け、「け けっこんしたんか‥‥!?」と絶句する。

そこから始まる一連の騒動&問答なんて、絶対〈内側にいる人の視点)でしょ。

 

ともあれ、そんなしょーもない"勘ぐり"をこね回したくなるほど

教師の面々を交えた女生徒たちの言動が、どうしようもなく気に入っている。

かつて一度でも〈女子高生〉という存在に憧れを抱いたことのある

〈元・少年少女〉の皆さんは、騙されたと思って、ぜひ一読するように。

とってもいい意味で、"期待を裏切られる"はずだよ。

 

ではでは、またね。