2021年9月21日(火) 自宅⇒道の駅どうし⇒忍野八海⇒宿
どこか「ゴッホの絵」のような、ススキ野原
澄み切った伏流水をボーっと眺めていたら
あっという間に時刻は2時半越え。
じっくり見ようと思っていた売店の品々を横目に
駐車スペースへと急行し、結局何も買わずに出発する。スマン。
途中、やけに深い森の中だなぁ・・と思ったら
国の天然記念物「ハリモミの純林」だったりする気持ちの良い道を通って
チェックイン予定時間(15時)まであと5分のところで
小高い丘の上にポツンと建つこの日の宿(ペンション)に到着した。
何年(いや数十年)もの間、国内での宿泊先といえば
街なかのホテル(素泊まり)か料理自慢の温泉旅館と決まっていたが
たまには和食以外の晩御飯を食べたくなり
今回、フレンチ風の洋食で評判の当ペンションを選んだ次第。
後部席のドアを開け、荷物を引っ張り出していると
6~70代と思しき宿のご主人がやって来て
ペンションの中へと案内してくれた。
まずは両手を消毒し、体温をチェック。
脱いだ靴は洗濯ばさみでまとめ、靴箱の決められたスペースへ。
スリッパも同様に扱い、他の客と混同しないよう最大限に配慮する。
さすがは「感染対策のシビアさ」では群を抜く山梨県だ。
ご主人によると、県から委託された旅行代理店の人が時々訪れ
感染対策が的確に行なわれているか調べるのだとか。
今回のコロナ禍が始まって以来
Gotoの尻馬に乗って訪れた北海道・京都・房総半島・伊豆・那須高原など
どこの宿泊施設よりも厳しい感染対策が励行されていることに、ちょっと驚いた。
客室からの眺め。リゾートだね~
ひととおり設備の説明を受けてから、2階の客室へ。
多分チェックイン順に案内しているのだろう
廊下に面して4つ並ぶドアのうち、一番先の角部屋だった。
広々とした洋室にシングルベッドが2台。
その向こうにガラス窓と、雲を被った富士山の姿が。
紹介文の通り、「富士の見える部屋」だ。
今日だけでも何度も見たはずなのに、またもや見とれてしまう。
"神さま"なんて、信じてないんだけど・・
さて、どうしようか。
せっかくだから、ひと風呂浴びよう。
この宿のお風呂は"貸し切り方式"。
先に入って「入口の札」を裏返し、中からカギを閉める方式だ。
幸い?まだ他のお客さんは来ていないので
待つ人を気にせず、ゆっくり湯船につかることができる。
せっかくの〈独占状態〉だったので、相方とも時間をずらし
陽射し振り注ぐ広い風呂場を、ひとりずつ順番に入ることにした。
天然温泉ではなかったが、ジャグジーつきのヒノキ風呂は予想以上の快適さ。
自宅ではできない全身を伸ばして、心ゆくまで湯船に浮かぶ。
ふたりともたっぷり堪能すると、時刻は16時半まてあと少し。
とはいえ、夕食の時間まではまだ2時間以上もある。
せっかくいい天気だし、近くを散歩することに。
湯冷めしないよう、ちょっと厚着をして、ペンションの立つ丘を降りてゆく。
秋めいた陽射しを浴び、キラキラ光るススキの穂を眺めながら
歩いて7~8分のところにある、花の都公園へ。
閉園間近だった入場ゲートはパスして
無料で散策できる「お花畑エリア」をぷらぷら歩く。
公園内に飾り告げる花々を、敷地の前の畑で育てているのだ。
この日は、百日草やコスモス、ポピー?などが
雲を被った富士山の前で、様々な色の絨毯をなしていた。
太陽は大きく傾き、山際の雲の間に隠れつつあったが
なお10人ほどの観光客が、思い思いに散歩したり、写真を撮り合ったりしている。
予報によると、明日の天気は下り坂との見通し。
それだけに、日没までしっかり富士山を鑑賞したかった。
綺麗に整った「庭園」より、無造作な「畑」のほうが好き
結局、太陽が地平線(山並み)に隠れ
富士山の頂上が雲に覆われる17時30分近くまで
花畑のあたりをぶらついていただろうか。
宿に戻り、ベッドで体を伸ばしているうちに、夕食時間となった。
客室からの眺め。だいぶ雲が厚くなってきた。
18時30分スタートと言われていたが
ちょい早めの5分前に食堂に入ると
今回も、我らが一番乗りだった。
入口で両手を消毒し、渡されたビニール袋にマスクをしまい
「どこでもお好きな席にどうぞ」とご主人。
みると、縦に3✖2の配分で並べられたテーブルのうち
左上・右中・左下に、アクリル製の透明な衝立がセットされている。
この3つのうちのどれかに座れば、いいのだろう。
夫婦そろって、迷わず一番眺めのいい左上の席を選んだ。
それにしても、互いの正面にそびえる、この巨大な透明壁ってやつは・・
こちとら毎日顔を合わせているし、食事中だけ気を付けたって無駄だろうに。
いくらなんでも厳しすぎじゃないかという、こちらの顔色を見て
ご主人もまた、苦笑いを浮かる。
「やり過ぎだとは思うんですけど、県の条例で定められてまして。
条件を全部クリアしないと、営業できなくなるんです」(みたいな内容だった)
はいはい。お役所仕事ね。じゃ、仕方ないな。
四の五の言わず、受け入れることに。
ドリンクメニューから、ロゼのスパークリングワインを選んでいると
他の宿泊客も入って来た。
広い食事スペースに、総勢6名が着席。
通常であれば6部屋(12名)を受け入れる宿が、半分しか機能していない。
それでも営業できるだけマシ、と言えるのだろうか。
ご主人は、そのあたりの苦労話も語っていたが
すでに我らの関心は、運ばれてくるひと皿ひと皿に全集中で注がれていた。
ミルフィーユ。絶妙な食感がたまらない。
とにかく、美しい。
そして何より、美味しい!
ボキャブラリーの乏しさには我慢してほしいが
調味料や香辛料に頼らず、それぞれの素材の味が最大限に生かされていた。
しかもベースはフレンチなのだろうが、思わぬところに「和食」が顔を覗かせる。
たとえば、メインだったビーフステーキの付け合わせ。
数種類添えられた野菜のうち、大根の味が、どう考えても〈煮つけ〉だったり。
根っから辛い物が大好きで、何にでも胡椒や唐辛子をかけてしまうのに
その夜に限って、香辛料をまったく必要としなかったのだ。
ライスを"お代わり"したのは、何年ぶりだろう。
陶然としつつ、コースのすべてを完食。
あまつさえ、ライスのお代わりまでして
はちきれそになったお腹をかかえ、自室のベッドに倒れ込む。
・・・もう、だめだ。
ふと眠りから覚めると、天頂を通り過ぎた中秋の名月が
雲に頭を隠した富士山の上に、青白い光を投げかけていた。
やっぱり明日の天気は、望み薄かな・・。
ではでは、またね。