辛抱たまらず山中湖へ 富士山ぐるり旅 2021.9.21-22 1日目(その1) 

2021年9月21日(火) 自宅⇒道の駅どうし⇒忍野八海⇒宿

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   何度見ても、富士山には慣れない。出逢うたびに、胸がドキッ!と跳ねる。

 

いまだ緊急事態宣言中ではあったが

ふたりとも2回目のワクチン接種から、はや2カ月が経過した。

相変わらず決断も強制力も伴わない政策のもと

「専門家」各氏の警告も、"オオカミ少年レベル"と底が割れた今日この頃。

つまるところ、各人が自分の頭で考え

自己責任で決断し行動していくしかないと判断。

折よく山中湖畔の宿に空きを見つけ、1泊2日の旅に出た。

 

午前10時すぎ。

車の後部座席に荷物を放り込み、いざ出発。

何度も行き来したため、見飽きてしまった「246厚木経由」を嫌い

多摩センター~橋本~津久井湖~国道413(道志川沿い)のローカルルートを

のんびり走らせていく。

幸い、台風一過で2日前から晴天続き。

日差しはさんさんと降り注ぎ、サイドウィンドウ越しでも熱いほど。

だが、予想よりも路上を行き交う車の数が多く

幾度ともなく渋滞に捕まり、なかなか距離が稼ぐことができない。

土日祝日と重なると人出が多くなることを見越して

シルバーウイーク中で平日が2日続く21・22両日を選んだのだが

そうそう思うようにはいかないものだ。

 

それでも、辛抱すること1時間半。

橋本市街を抜け狭山湖畔にさしかかるころ、一気に車の流量が減少。

道の両側に豊かな緑が連なる、快適な車窓の旅がはじまった。

常に車の行列と信号機がセットになる街なかの路上と違い

自分の好きなペースで車を転がすことができるのは

ドライブ旅行の大きな楽しみのひとつだ。

ときどき後ろにつくバイクがいたが

いずれも煽ることなく、適切な車間距離を取ってくれた。

ローカルの旅は、のんびりゆったりがいちばん。

 

実は、道志川沿いのルートを選んだのには、個人的な理由があった。

30年以上前、この途中にある宿・道志温泉に

長女が生まれる前と後の2回ほど、泊まったことがあるのだ。

夜、広間でいただいた牡丹鍋と、朝食に供された朴葉味噌の味は

いまでもうっすらと記憶に残っている。

以来30年余り経つが、現在でも宿を続けているのだろうか・・・?

今どき、ググれば一発で分かることだけど

なんとなく、自分の目で直接確かめてみたかったのだ。

 

カーナビとスマホのマップで現在位置を確認しながら

ここが道志村役場・・ちっちゃ!

とかなんとか、いちいち感想を呟いてるうち

進行方向左手に、川の上に張り出したような空地?出現した。

記憶通り、30年前と寸分違わぬ道志温泉のバス停。

ならば、その反対側が道志温泉・・・あった!!

当時のまんまの建物が、左の車窓をゆっくり流れてゆく。

だが、入口はぴったり閉ざされており、人の気配もまったく感じられない。

車で通り過ぎただけだったが、チラ見した限りだと

どうやら店仕舞いからしばらく時間が過ぎているようだった。

※たった今、スマホで調べてみたら・・やっぱり見つからなかった。

 狭い岩風呂に浮かぶアヒルのオモチャ、牡丹鍋と朴葉味噌の温泉宿は

 オッサンの薄れゆく記憶と数枚の写真に残るのみ。

 

年寄りの思い出話ほど、他人にとって無意味なものはない。

てなわけで、先に行こう、先に。

 

早くも赤く色づきはじめた紅葉の葉先を探しながら

道志川に沿って走ること1時間足らずで

最初の目的地「道の駅どうし」に到着する。

〈ライダーに人気〉と謳われるだけあり

広い駐車場の3割ほどがバイク専用のスペースになっていた。

で、車もバイクもほば満車!

12時半過ぎという時間帯を考慮しても、休日並みの混雑だった。

やっぱり、みなさん「辛抱たまらんかった」のだなぁ・・

 

ともあれ、僅かな空きスペースに車を停め

マスクをつけて、いざひとやすみ。

真夏を思わせる強い日差しに、帽子を忘れてきたことを嘆きつつ

メインの建物に向かう。

するとエントランス前、タイルを敷き詰めたスペースの中央に

つばの広い帽子をかぶり、訪れる人々になにかのチラシを渡す老人の姿が。

足下に置かれたチラシの束を見て・・・あっ、と気づく。

2年前のちょうどこの日

近くのキャンプ場で小学一年生の女の子が、行方不明になっていたのだ。

おそらく老人は、その家族か関係者なのだろう。

少女の笑顔がプリントされたチラシを手渡しながら

それでも笑顔で、何事かを語りかけている。

一瞬、チラシを受け取り、何か声を掛けようかと思ったが

どんな慰めも励ましも、しょせん口先だけでしかない。

・・と、自分自身に卑怯な言い訳を繕い、黙ったまま通り過ぎていった。

 

気持ちを切り替え、何かめぼしいものはないかと、建物の中へ。

ところがの農産物直売所には、カラの棚ばかりが並んでおり

弁当はもちろん、おにぎりやサンドイッチなどの軽食もすべてが売り切れていた。

お昼時を過ぎていたとはいえ、あまり見たことのない完売状態だった。

ま、そのくらい、昼飯目当てのライダー(とドライバー)が多く訪れたということか。

諦めて、僅かに残った菓子パンを購入。

なにか飲み物でも買って、車の中で食べようか・・と、外に出たところで

右手の並びにたなびく「食堂」の旗に気づく。

「パンだけじゃ味気ないから、なにか食べて行こうか」

相方の言葉に、食事スペースを見渡すと

ちょうど半野外のテラスになった眺めのいいテーブルが空いていた。

「そうだね。いい場所が空いてるから、あそこに座って食べよう」

メニューよりも、景観が決め手となった。

 

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           "テラス席"から道志川を展望する

 

道志川にかかわる吊橋を眺めながら

別荘感覚で、各自ざるそばと山菜そばをいただいた。

食事のためマスクを外すと、瑞々しい空気が鼻腔に飛び込んでくる。

1年半以上、外出時のマスク着用を励行している身にとって

森と川のエッセンスが詰まったこの空気こそ、最大のご馳走と言えるだろう。

美味しい空気ごと、素朴なそばを堪能。

「あーおいし。やっぱり、ここで食べて良かったね」

と、相方もご機嫌。

目にも耳にも鼻にも、そして舌にも嬉しいランチタイムだった。

 

さあ、目指す山中湖まで、残すところ20キロ足らず。

宿にチェックインできる15時には、まだ充分に余裕がある。

予報だと明日は雲が拡がるらしい。

天気のよい今日のうちに、どこかに立ち寄ることにしよう。

 

食堂の片隅に、他の観光パンフレットに並べて置いてあった

あの少女の捜索願いチラシを一枚、手に取る。

行方不明 心当たりの方は下記までご連絡下さい。

小倉美咲ちゃんを捜しています!! 当時 小学1年生、7歳

二つ折りにして、ショルダーバッグの中にしまった。

この顔を、覚えていよう。

 

ではでは、またね。