板子一枚下は"地獄" 『シリア 隠された傭兵たち』(NHK-BS1.6/13O.A.)『混迷ミャンマー 軍弾圧の闇に迫る』(Nスぺ8/22O.A.) Make-Makeの遠吠え

オリンピックと大谷関連に時間を取られ

HDレコーダーいっぱいに溜まっていた録画済み番組を

ようやくまとめて視聴できる環境になってきた。

その過程で、今回続けてチェックしたのが、表題に挙げた2つの番組と

5/23OAのBS1スペシャル『市民たちの不服従 北角裕樹が見たミャンマー』だった。

脳天をハンマーでぶっ叩かれるような衝撃とともに

ひとつの言葉が、じわじわと浮かび上がる。

 

――板子一枚下は地獄

 

もともとは、小さな漁船に乗って大海原に繰り出す漁師たちの

"命知らずぶり"を、ひとことで言い表した言葉だが

最近は、身近に迫る危険に気付こうともせず

能天気に浮かれ騒ぐアホを揶揄する表現にも使われるようになった。

もちろん、その"アホ"とは、うたた(俺)に他ならない。

 

ここしばらく、読み終えた本の読後感でブログを埋めてきたが

海外旅行に出かけられない不満感から、旅関係の書籍を複数ピックアップ。

牧場の片隅でのんびりと反芻する牛のように

過去の体験を吐き戻しては、記された文章と混ぜ合わせ

モグモグと"回想の旅"を繰り返していた。

・・・自分にとって都合のよい(楽しい)項目だけを、無意識のうちに選り分けて。

 

たとえば『東南アジア 全鉄道制覇の旅 タイ・ミャンマー迷走編』(下川裕治)。

満足な時刻表もないローカル鉄道を、何時間もかけて苦労しながら旅する著者の姿に

かつて自分が味わった〈アジア鉄道の旅〉をオーバーラップさせつつも

"確かに不便で大変だけど、日本では味わえない体験ができる。

 早く珍道中の二人旅を再開させたいなぁ~~~"

なんて、のほほんと個人的な欲望を垂れ流すだけだった。

 

現実の世界において

ミャンマーでは、かつてない軍の圧政が勃発し

民主主義を訴える数千人の市民が、同じ国の軍隊に殺され続けている、というのに。

さらに、首都ヤンゴンにほど近い交通の要所バゴーの町では

軍による市民への無差別攻撃が決行され、今なお犠牲者数すら判明していない

などという事実も、今回観た『混迷ミャンマー』で初めて知らされた。

 

いっぽう、10年前の「アラブの春」に始まる「自由への訴え」を武力で制圧。

表向きは停戦状態へと引き戻した、アサド政権下の国・シリア。

徹底した言論と行動への弾圧によって、暮らしの術を失った若者たちは

家族や仲間の空腹を満たすため、"出稼ぎ感覚"で傭兵稼業へと参入。

リビアアゼルバイジャンなどの紛争地に送り込まれ

銃器を手に対立する最前線の両側に配置され、同国・同郷人同士で殺し合う。

あたかも使い捨て可能な消耗品のように扱われ、若い命を散らし続ける。

 

そんな〈シリア人同士の殺し合い〉の片棒を担いでいる国が、トルコだ。

でもって、つい2年ほど前、のほほんとトルコを旅して

やれ「ナッツが美味い!」「モスクが凄い!」などとはしゃいでいたのが

他でもない、われらである。

 

思えば、シリア内戦が激化する何年何十年も前から

クルド人弾圧に代表される周辺諸国に対するトルコの強硬姿勢は

ロシアや中国同様、余りに露骨で身勝手なシロモノだった。

けれど、こうした社会情勢から、ちょっと目を逸らし

〈魅力的な海外旅行先のひとつ〉というフィルターごしに眺めると

それら"不都合な事実"は、見事なまでにシャットアウト。

旅行中、中東やアフリカ諸国からの難民らしき人々の姿を見かけても

無意識の選択操作が発動し、視界からも記憶からも削除されてしまうのだ。

 

だからといって、どうか勘違いしないでほしい。

世界に満ちる悲劇から目を逸らし、のほほんと海外旅行なんか楽しむんじゃねーよ!

なんて正義漢ぶって訴えたいわけじゃない。

実際、こうしたデタラメな事実を知ったからといっても

コロナ禍が落ち着けば、待ってましたとばかり海外に飛んでいくことは

おそらく間違いないからね。

 

じゃいったい何を言いたいのかというと・・。

"知らない"よりは、"知って"いたい。

"無知"を理由に、"不快な事実"を切り捨てたくはない。

より具体的にいえば――

"板子一枚下は地獄という世界の実態"を常に心の片隅に抱えたい――ってこと。

 

家族や友人、なにより自分自身が

「いつどんなときに死んでも不思議ではない存在だ」という

数少ない絶対的事実を決して忘れないのと同じ強さで。

"一枚下は地獄の板子"の上で暮らしていることを、意識していたいのだ。

 

例えば、みんなコロナコロナと騒ぎながら

次の首相は誰だ?とか、ワールドカップは大丈夫か?とか、忙しくしてるけど。

明日未明、突然中国軍が台湾に侵攻することだって、有り得るんだから。

そうなったら、コロナも首相もワールドカップも、全部吹っ飛ぶ。

――板子一枚下は地獄、って、そういうこと。

 

ついでに補足しとくけど

べつにロシアや中国を目の敵にしてるわけじゃないよ。

自宅でも収集可能な〈不都合な事実〉は

ロシア・中国・トルコ・ミャンマーなどの"情報統制国家"に限らず

いわゆる「民主主義国家」もまた、同じ穴のムジナだから。

やはり、NHK-BS1のドキュメンタリー番組で放送されていたが

かの「イラク戦争」(フセインVSアメリカ)勃発前

アメリカは一人の少女を証言台に立たせた。

彼女は、自分が見た実体験だと言って

イラク兵士が病院の新生児を壁に叩きつけて殺した」と、涙ながらに訴えた。

だがそれは、完全なでっち上げ。

アメリカは、自国の世論を開戦へと向けさせるため

駐米クウェート大使?の娘に、涙の熱演を強いたのだった。

 

それでも20年かそこいらで「ウソ」が暴露されるだけ、まだマシか。

スターリンの大虐殺も、毛沢東の自国民数千万人餓死政策も

当事者(独裁者)が死んだずーっと後にならなきゃ、明かされなかったもんな。

今回の「新型コロナ中国起源説」は言うまでもなく

天安門事件」の〈真相〉が判明するのも、まだまだ先の話だろう。

ま、命の限り、待ち続けるつもりだけどさ。

 

ではでは、またね。