日本語の「先入観」よりも
英語で"prejudice"と言い換えたほうが
ストレートに意味が伝わるだろう。
上記の単語を分解すると
プレ・ビューやブレ・オリンピックの「pre」と
判断や判定のジャッジ「judge≒judice」の2語になるからだ。
直訳すると、"先に決めつけてしまう"。
つまり「偏見」ってヤツだね。
どうしていきなり
こんなウンチクじみた英単語ネタを披露したかというと。
前回、3巻目まで刊行されていた『葬送のフリーレン』の読後感を書いたとき
《マンガ大賞受賞作》という評価に対する反発心から
"気にいらんところを見つけ出してやろう"という〈あら捜しモード〉が
無意識のうちに発動されていたからだ。
その結果、週刊連載という超ハードスケジュールから目を逸らし
「動きの感じられない絵柄」「雑な細部と絵文字のようなミニキャラ」など
無い物ねだりに等しいイチャモンを並べ
あまつさえ、「コロナ禍で誰もが内省的になったこの時期だから大賞に輝けた」と
本作の価値を貶めるような結論で締めくくってみせた。
しかし、それから半年(ぐらいだったはず)。
さらに2巻を入手し、前回の先入観=pre-judiceに囚われず
改めて最初から読み返してみたら・・
恥ずかしながら、印象は一変してしまった。
「細部に至るまでの描き込みが足りない」との印象は
何倍もの作業時間が確保できる月刊(隔月)連載と比較した
極めて薄っぺらな評価でしかなく。
「動きの感じられない"止め絵"ばかり」と断じた絵柄も
ひとコマひとコマに〈それぞれの時〉を込めた
いわば"紙芝居的な映像表現"だということに気づき
控えめに添えられたセリフやモノローグと併せ、じっくりと噛み締めることで
《描かれなかった情景》までが、頭のなかに浮かび上がってくる。
こうなると、"描き込み過ぎない"登場人物たちの姿や表情が
別の意味を持ち始める。
以前は、ときにシンプル、ときに絵文字のような素っ気なさしか感じなかった
ルーズショットの繰り返しの背後から
重厚な《時の物語》が、こんこんと湧き出てくるのだ。
もしかしたら、本作は
読者ひとりひとりが、ありったけの想像力で補うことによって
初めて本当の魅力を放ってくれる。
そうした、〈読み手の積極的協力〉なしには完成しえない
思いのほか"へそ曲がり"な作品なのかもしれない。
・・ま、寝言のような能書きはさておいて。
熱血バトル漫画の感覚でスピーディーに視線を走らせことなく
ひとコマひとコマに視線を留めて、「絵」と「文字(セリフ)」を読み砕き
"語られなかった物語"に、想いを馳せていただきたい。
必ずや、こんこんと湧き出る泉のような〈それ〉に出逢えるはずだから。
う~~ん、今回も具体性に欠けるなぁ。
ともあれ、先入観に囚われると、見えるものも見えなくなる。
自戒の念を込め、「くたばれprejudice!」――とだけは、宣言しておこう。
ではでは、またね。