"エロ"にして極上の教育漫画 『こどものじかん』私屋カヲル(全13巻+1) 周回遅れのマンガRock

小学3年生の新たな担任となった若き男性教師・青木大介。

ところが、女子生徒の一人・九重りんは

前任教師を攻撃し続け辞職に追い込み

青木の前でこっそりパンツを脱いでみせたりする

とんでもない"エロガキ"だった――

 

書道の授業で「中出し希望」と書いて見せる"誘惑少女"・りんに加え

早熟すぎる体の美々、毒舌ゴスロリの黒など、クラスの"問題児トリオ"に四苦八苦。

職員室サイドでは、同僚の巨乳先生にアプローチされたり

お局様風の先輩インテリ女教師(アラサー処女)にマゾっぽく罵倒されたりと

ロリ&アダルト両面でHシーン満載の「王道エロエロマンガ

・・・かと思いきや、なんだか、ソレだけじゃないみたいなんだよね。

無神経な教師の言葉が、どれほど子供の心を傷つけてしまうのか。

教師(小学校)の、余りに厳しい現実(研修漬けと授業の予習復習で休日なし)

授業についてこれない子には寝る時間を削ってフォローするしかない、とか。

性徴の早い子の悩み(ブラや生理の問題)にどう対応するか

さらに、りんの境遇(母子家庭で母親は2年前に死去、従兄弟の若者と同居中)など

生徒の事情を知るにつれ、教師としてどこまで関わればいいのか?

といった、教師と生徒の距離感などなど

小学校の現場に身を置かないと見えてこない切実な問題が

次から次へと主人公(新任小学校教師)の身に降りかかってくるのだ。

 

その間も、"エロイベント"は途切れることなく続くわけで

冷静に考えれば、現実にはまずありえないシチュエーションなのだが

ギリギリのところで破綻を免れている、絶妙なバランス感覚も心憎いばかり。

 

ともあれ、そんな「エロ」と「教育問題」の両輪を軽やかに回転させつつ

本作は、小学3年から4年へ、さらに5年から最終学年へと

ヒロイン・九重りんたちの成長&性徴と、主人公の変化&成長を丁寧にたどる。

 

同時に教師仲間、特に〈アラサー処女教師〉白井の過去にも問題は波及。

彼女自身が、子供時代に受けたトラウマを引きずり続けている事実に気づいていく。

 

「多かれ少なかれ親というのは 無意識のうちに子供を洗脳しているものよ

言ってみれば躾(しつけ)もそうね

幼い子にとって親は絶対的存在だから 愛されるために親の価値観に従おうとする

しかし もともと別な人間なんだから 成長と共に親とはズレていくわけ」

「それってつまり『反抗期』ですよねー (オレは親とはちがうんだ!っていう)

5年生でもチラホラ始まりましたよ」

※白井先生のモノローグ

 そうか‥私にはハッキリとした反抗期がなかった

 それで この歳になってまだもがいているのか?

 「大人になってかかるはしかは重症」ね。       〔第7巻 172ページ〕

 

"自分を縛っていた親の呪縛"を初めて自覚した白井は

30過ぎにして、ついに〈大人への第一歩〉を踏み出してゆく。

 

そう。本質の特質すべきところは

子供たち(小学生)だけでなく

大人(教師や保護者世代)の"育ち直し物語"としても充分楽しめる

読みどころ満載の、隠れた名作漫画なのである。

 

かくして、オナニーや初潮など

年々"性"に目覚めてゆく少女・りんを中心に物語は徐々にスピードアップ。

同時に、教師・青木の言葉にも"ターボ"がかかってゆく。

 

以前の九重は 彼の思い通りに生きるしかないと諦めていた

反抗をするのはこれが初めてだ

2人の共依存関係をぶち壊せるかもしれない   (第9巻 41ページ)

 

越権行為? 職権乱用? かまうもんか!

 どうせ叩きたい奴らは 問題が起きたら『なぜもっと踏み込まなかった」って

 文句つけるんだ

 嫌ならまた学校でも教育委員会でもチクればいい

 てめえでちゃんと監督できるならな!!」       (同 55ページ)

 

「子供子供って‥ 何だよ童貞のくせに!

 じゃあ大人って何なんだよ!?」

「‥‥『大人』とは 『与える側にまわる者』だ」   (同 177ページ)

 

果たして(元)新米教師・青木大介は

ロリッ子小学生・九重りんの一途な想いに応えるのか?

それとも、巨乳同僚女教師の肉弾アプローチに陥落するのか?

彼と彼女を巡る〈オトナになれない大人たち〉の悪戦苦闘ともども

しっかりじっくり、"受け取って"いただこう。

 

・・あ、なんか理屈っぽいとこばかりピックアップしたけど

この作品、基本は『ドタバタエロ✖ラブコメ』だから。

いわゆる〈教科書マンガ〉とは、全然別なので安心しておくれ。

 

おしまいに、単なる自己満足だけど。

数ある名言のなかから、短いやつだけ紹介してみたい。

すでに読む気になった方は、見ない方がいいかも。

 

「もっと苦しめばいい 

 痛みを知る者だけが その人を救うことができるわ」 〔第11巻 105-6P〕

 

「あのねぇ どんなにカッコ良くて お金持ちで強くて有名でも

 自分ばかり大事にする人なんて誰も愛さないわ」       〔同 181P〕

 

文字だけ読むと、こっ恥ずかしいほど青臭く感じるが

絵と一緒になったとたん、なぜか心が揺さぶられてしまう。

やっぱり〈マンガの発信力〉って、ハンパない。

 

 

ではでは、またね。