一回目より面白い! "うろ覚え再読"のススメ 『機龍警察』『機龍警察 自爆条項㊤㊦』〔ともに完全版〕月村了衛 周回遅れの文庫Rock 

先日サイコロを振って決めた"次に読む本"に従うと

同シリーズの続編『暗黒市場』と短編集『火宅』の順番だったが

数年前に読了したはずの一・二作目の内容が

ほとんど記憶に残っていないことに気づき、愕然とした。

かろうじて「三体の最新鋭機〈機龍〉を擁する警察の特殊セクション・特捜部」と

いずれもまともではない三人の搭乗者。

それらが国際テロリストと死力を尽くして戦った・・ようなこと以外

ただ単に「とにかく面白かった!」という、読後感ぐらいしか思い出せないのだ。

 

このていたらくでは、

"シリーズものならではの楽しみ"が台無しになってしまう。

と、切実な危機感を覚えたゆえ

ここ数年間ですっかり定番となった対処法

〈最初から読み直す〉を、今回も素直に実行することにした。

 

すると、どこでどんな回路がつながったのか

新たな人物が登場するたびに、彼(彼女)にまつわるエピソードが

鮮やかに炙り出されてくるのだった!

――なんてことは、これっぽっちも起こらなかった。

 

さすがに、姿・ユーリ・ライザの機龍三人衆や

トップの沖津純一郎、技術主任の鈴石緑あたりの記憶はぼんやり蘇ってきたが

(宮近理事官も濃いキャラなので思い出した)

その他の皆さんは、初対面と五十歩百歩。

しばらく読み進めるうちに、ようやく

・・そういや、この話は前に読んだ気がするぞ。

遅ればせながら蘇る"デジャブ感”に、ちょっとホッとするレベルだった。

 

とはいえ、物語が佳境に入るにつれ

この"デジャブ感"が、少しずつ増えていく。

それも、印象的(ショッキング)な場面になるほど

まるでPTSDのフラッシュバックのように(いやな例えだな)

決定的シーンの導入部に到達した瞬間

「・・!そうだ、この後、大変なことになるんだった!!」

都合のいいことに、具体的な内容ではなく

前回その箇所を読んだに受けた衝撃(=感情)だけが

鮮やかに蘇ってくるのだった。

 

おかげで、『機龍警察』クライマックスシーンでは

敵のアジトに突入する三体の機龍に向かって

"ユーリ、だめだ。それはワナだぞ!"

と、一瞬先に訪れる危機を

まるですべてをモニターしている神の視点で、未来予知してしまったり。

『自爆条項』で、敵テロリストの親玉を逮捕した後

同じ警察署にしょっぴかれてきた東洋人の万引き犯が登場したところで

"夏川、そいつを入れるな! いますぐ背中の荷物を調べろ!!"

なんて、歓喜から急転する運命を前に、決して届かぬ心の声を放ってしまうのだ。

 

ヤバイ。

これは、クセになる。

ちょうど〈いい塩梅〉に、記憶力が衰えている。

「物忘れ」がこのレベルを維持している、いまこのときこそ

《再読の絶好機》だということを、知ってしまった。

ここしばらくの間は、「前に読んだからもういいや」と既読作をスキップせず

むしろ積極的に読み直すよう、心掛けていこう。

 

・・だけど、そう考えなおすと

まっさらな新刊を読む時間が、ますます減ってしまうなあ。

ただでさえ"残り時間"が潤沢にあるわけじゃないのに

またしても、贅沢な悩みが増えてしまった。

 

ともあれ、いまは機龍警察シリーズの続きを読もう。

改めて仲良くなった「みんな」の、"その後"を見届けなければ。

 

ではでは、またね。