最初の1冊で読むのをやめてしまったら
きっと後悔すると思う。
それくらい、「芸能界転生モノ」とでも呼べばいいのか
"なんでもあり"な第1巻と
2巻以降の内容が大きく異なっている。
※以下ネタバレになるが、どうかご勘弁を。
プロローグは、とにかく派手&荒唐無稽だ。
謎の人物に殺された医師(男性)と
不治の病で若くして亡くなった患者(女の子)
共に熱狂的なファンである超人気アイドルの隠し子(双子)として転生。
その後、不慮の死を遂げるアイドル(母)の"真犯人"を探るべく
双子(特に男性)は、幼くして芸能界に乗り込んでゆく。
ここまでは、よく見かける〈異世界転生モノ〉と同様
チート(万能)感いっぱいの主人公が縦横無尽に大活躍する
〈ドタバタ復讐劇〉が始まる!・・のかな?
なんて、正直ゲンナリしながら2巻目を手に取ったのだが
見事にこちらの予想を裏切ってくれた。
双子はともに、前世の記憶を保持している転生者。
幼少時から思考も会話も「オトナ並み」というメリットを持っていた。
だが2巻目は、その利点が薄れる14歳時からスタートする。
なので、12歳で病没した女の子はもちろん
20代で死んだ男のほうも、「妙に大人びたガキ」程度に過ぎない。
でもって、純粋にアイドルを目指す女の子(瑠美衣-るびい)も
「母の復習をする!」と心の中で誓った男(愛久愛海-あくあまりん)も
常識はずれなチート能力をカケラも発揮しないまま
やたらリアリティの高い"イマドキの芸能界"を
持てる力を振り絞って、一歩一歩、よじ登ってゆくのだ。
しかも、そんな彼ら彼女らの周りには
この手の作品にありがちな〈軽薄な業界人〉が、ほとんど登場しない。
同年代のライバルたちは、それぞれが夢と現実の狭間でもがき、闘っている。
ディレクターやプロデューサーなどの〈裏方〉も
極めてリアルな価値観を持ち、"大人の言動"を披露してくれる。
おそらく原作者は、相当緻密な取材を重ねたうえで
本作品に落とし込んでいるのだろう。
マスコミ関係者から見ても
驚くほどリアルで破綻のない〈芸能界の裏表〉を描き出している。
それどころか、「恋愛リアリティショー」「ネットアイドル」などなど
今だからこその"ニューカマー"を次々お膳立てしてくれるのだから。
いい歳をした業界人としては、待ってましたの〈最新内幕モノ〉なのである。
どうか、この"濃厚な内容"と"ウソのようなリアリティ"を維持したまま
この先も走り続けていただきたい、と願う次第。
間違っても、"どうせ転生モノだし何が起きてもOKだよね!"
ーーみたいな「手抜き」だけは、勘弁してほしい。
ちなみに、8月発売予定の第5章(巻)は「2.5次元舞台編」とのこと。
首を長~く伸ばして、待ってるぞ!
ではでは、またね。