最終第4巻。
表紙の見返しに記されたひと言に、まずは"ひと唸り"。
魔法みたいな17年でした。
そう。本作は、まるごとひと世代ぶんという歳月をかけて
ようやく完結した物語なのである。
これはあくまでも、主観的な印象だが・・
クライマックスの前に、いったん筆が止まった作品の場合。
後日、なんとか完結までこぎつけたとしても
単に起承転結の「結」だけを無理矢理つなげたような
え?なに?・・それで、おしまい!?
的な〈ガッカリ感〉に襲われることが少なくない。
けれども、幸い本作は、その予断を裏切ってくれた。
17年待たされただけの価値は、十二分にあったのだから。
大ベストセラー作家・西尾維新が怒涛の連作シリーズの勢いそのまま
自らの血液をもって時間を操る魔法少女・水倉りすか(10歳)。
"みんなを幸せにする"使命感に駆られ、
その目的に近づくためには一切の手段を選ばない天才少年・供犠創貴(10歳)。
全身512カ所の口であらゆるものを消化吸収してしまう
元人間の魔法使い・ツナギ(推定2000歳)。
以上3人が、それぞれの知恵と力を振り絞り
世界の変革を企む"6人の魔法使い"との、壮絶な戦いに乗り込んでゆく。
・・昔の「忍者漫画(伊賀vs甲賀)」っぽい超絶バトル小説の体裁で始まった本作だが
当初から「17年」というワードは、繰り返し登場していた。
なにせ、ヒロイン・りすかの〈最終奥義〉こそ
自らの死⇒大量出血をきっかけにして、27歳=17年後の自分に変身。
成長とともに無敵状態となった魔法力を使って敵を殲滅する。
――というものなのだから。
しかし、まさかまさか
実際の執筆生活においても"同じシバリ"を適用し
「17年」という歳月を、ものの見事に〈活かしきった〉その腕前には
ただただ、脱帽するしかない。
本書のタイトルやイラストを前にしたとき
少なからぬ方の胸に湧き上がってくる
"どーせ、山ほど出てる異世界転生モノと大差ないんだろ"
みたいな〈食わず嫌い的〉判断は、ひとまず封印。
ひとつここはーー騙されたと思って
ぜひとも、チャレンジしていただきたい。
"気鋭の戯言遣い"が全力でかっ飛ばす、1~3巻。
"円熟のモノガタリスト"が、ものの見事に〈風呂敷を畳む〉最終4巻。
17年の歳月をかけ、小説家・西尾維新が七転八倒の果てに掴み取った
揺るぎない《成果》が、たったの4冊で体験できるのだ。
ではでは、またね。