「読書の森」を逍遥する"同志"の書 『少年になり、本を買うのだ 桜庭一樹読書日記』桜庭一樹 周回遅れの文庫Rock

いまから15年前の「読書日記」だが

何よりも、著者のジャンルに囚われない"乱読傾向"に

勝手に強い共感を抱いてしまった。

当初は、「日記」の中で紹介する本の多さに

"どうしてそんなに早く読めるんだ!?"と、驚いていたが

半分近くは以前読んだものの〈思い出〉だと気づき

ちょっとだけ安心した。

とはいえ、毎月購入する本の数は

書名が記載されものだけで、だいたい15冊以上。

当然、「すべての購入記録」ではないので、実際には倍の30冊以上を

毎月購入⇒読破していると推測できる。

本業の執筆をこなしながら、このペースなのだから

やっぱハンバない速読レディだ。

 

ひるがえって、当方の場合は

毎日がほぼ自由時間だといのうに、毎月20冊がせいいっぱい。

(再読を含めた漫画を加えれば2~3倍)

おかげで、『文庫Rock』も停滞気味。

 

そんなことより、本書で一番嬉しかったのは

案外〈好みのタイプ(作家)〉が重なっていたことだ。

むろん、ミステリー傾向が強い著者ほどミステリーに親しんでるわけではないが

(他のジャンルの本が多すぎで、なかなか順番が回って来ない)

のっけから『砂漠』(伊坂幸太郎)の感想が書いてあるものだから

思わず"おお、同志よ!"なんて、胸の内で叫んでしまった。

 

もうひとつ、"そうそう、そうなんだよ!!"

と、激しく共感したのは

著者が、本や映画を選ぶ際に心掛けていることだ。

わたしは普段、本や映画を選ぶときに、人が薦めるものをなるべく入れるようにしている。自分の選択だけだとどうしてもかたよって、その場所がせばまっていってしまう。せばまり続けると小さくなって完結して、そうなったら、死ぬ。  (184ページ)

 

自分とまるっきり同じ考えだったので、喜ぶ前に驚いてしまった。

ちなみにうたたにとって最大の「人」は、毎月届く『本の雑誌』である。

大学時代の創刊以来、〈新しい世界〉を紹介してくれる"ガイドブック"だ。

ここの「新刊めったくたガイド」で、声を大にして推薦された作品をチェックし

文庫など求めやすい価格になった時点でゲットするのが、いつものパターン。

従って、最初から文庫だった作品以外は、必然的に"周回遅れ"となる。

もともと、いわゆる「ベストセラー」に飛びつくタチではない。

適度なクールダウン期間を経たほうが、正面から作品に向き合えると信じている。

 

2番目の「人」は、『本の雑誌』以前から追いかけていた作家と

それ以降、特に好きになった作家たち。

彼ら、彼女らがエッセイなど自著の中で推薦する本を、これまたチェックし

我が『未読書リスト』に記録してゆく。

購入すれば「リスト」からは消去されるが

新規の〈リストアップ〉は、それよりもペースが速い。

おかげで、3か月ごとに更新する『未読書リスト』の厚みを減らすため

本の購入ペースは年々上昇。

読み切れない〈順番待ち〉が、どんどん自宅を圧迫していくという悪循環なのだ。

 

けれども、新たな世界への扉を開いてくれる本たちに囲まれている。

ただそれだけで、ホカホカと心が温かくなってくるのだから、しょうがない。

間違いなく、人生の終わりまで読み切れない本の壁を眺めながら

ひとり不気味にほくそ笑んだりしている。

 

※この「積読山脈」をなるべく偏らずに制覇するべく考え出したのが

 本ブログ(2020.8.22-23)で書いた、『サイコロシステム(仮)』である。

 その後、いくつかの改良を加えたので、機会があればまた紹介したい。

 

最後に、とってつけたように、本書の話題へと戻ろう。

実は、著者・桜庭一樹も、全く同じ想いを抱いていたのだった。

この世に傑作は存在するが、知らずにその書棚の前をなんども、なんども、なんども、フンフン鼻歌を歌いながら通り過ぎてしまうのだ。ばか。俺のばか。いつもの書店の棚にも、それらはまだ埋もれているのかもしれない、と思うと、たまらない気持ちになる。出合わないって、おそろしいことだ。怖いので、布団を被って寝た。(189P)

 

さあ・・次の〈出合い〉を目指して、どんどこどんと読んでいくぞ!!!

 

ではでは、またね。