2018年12月2日(日) ハノイ市内
暴走族? いやいや、これが"ベトナム式祝勝パレード"。
すっかり暗くなったロンビエン・バスターミナルに、戻ってきた。
それまでピタリと止まっていた鼻水が、待ってましたとばかりに流れ出す。
これはもう、大気汚染(PM2.5)のアレルギー症状で決まりだ。
仕方ない。ハノイ滞在中は必ずマスクをつけ、呼吸も浅めを心がけて凌いでいこう。
色とりどりの明かりが灯る旧市街を、北から南へとぶらぶら歩いて行く。
昼間の熱気が去り、散策にはうってつけの陽気だった。
途中、喉が渇いたので、地元の人で賑わうチェー(ベトナム風ぜんざい?)の店
チェー・ボンムアに入り、甘さ控えめの素朴なチェーを味わう。
チェー・ボンムア店内。イスの低さがベトナム・スタイル。
さらに進路を南に進み、ホアンキエム湖西岸近くのスーパーマーケット
「インティメックス」に立ち寄る。
これまでハノイを訪れるたび、何軒もスーパーを見て回ったが
お土産品に適した商品の品揃えは最も充実しており、価格も低めなので
ハノイに来たときは、必ずここで買い物するようになった。
定番となった、相方お気に入りの「3in 1 インスタントコーヒー」をまとめ買い。
これまた恒例の、チリパウダーや胡椒などのスパイスも数本ずつカートにぶち込む。
消費ベースが異様に早いポケットティッシュも見つけたが
日本に比べて、値段は倍くらい。もちろんタダで配るわけもない。
どこの国に行っても、文房具や日用品は日本が一番安くて質も上等だ。
それでも、万一手持ちの紙を使い切ってしまったら
あとはハンカチで代用するしかないので、泣く泣く購入した。
(5袋入りのセットだ、各パッケージにプリントされた動物のイラストが妙に可愛く、結局ほとんど使わぬまま、いまも自宅の"お土産コーナー"に並んでいる)
スーパーの大人買いで一気に増えた荷物を背中&両手に
もう少し西に入った、ハノイ大聖堂周辺を目指す。
このあたりに、ちょっとオシャレな小物を扱う店が何軒もあることも
すでにインプット済みだった。
そのうちの一軒で、ネコをモチーフにしたバチャン焼きの箸置きを
6個ばかりまとめ買いする。
昼間バチャンを訪ねた時に見つけていれば、もうちょい安かったかもしれないけど
そこらへんは〈縁〉ってヤツだから、仕方ない。
夜のハノイ大聖堂。このときは、気づいてなかったが・・
サッカーの勝利後、若者たちが続々と集まってくる。
十種類以上あったデザインのなかから、気に入ったものを相方が選び
若い店員(男)に会計を頼もうと声をかける。
ところが、当の兄ちゃんは、なぜか下を向いたまま返事もしない。
手元のスマホに夢中で見入っているようだった。
と・・次の瞬間、突然彼は顔を上げ、興奮の面持ちで隣の女性店員に声をかけた。
数秒と置かず、店に面していた大聖堂前の広場で、オオオオッという
地響きのような大歓声が沸き上がった。
なんだなんだ、何が起きたんだ!?
カタコト英語で「どうしたの?」と尋ねると
兄ちゃんは、聞き取れるようにひと言ずつ区切って答えてくれた。
たぶん、こんな感じだったと思う。
「俺たちの代表チームが、勝ったんだ!」
ヒアリング力が未熟なため、相手の国名までは聞き取れなかったが
東南アジア地域の国を相手取ったサッカーの試合で
ベトナム代表チームが勝利を収めた、ということは理解できた。
それにしても、ローカルな国際試合に勝っただけなのに、すごい盛り上がりぶり。
気がつけば、大聖堂前広場に集う若者たちの中から、歌声が生まれていた。
この国のサッカー人気が、こんなに熱くなっていたとは・・・。
若い男女が爆発させる笑顔に、なんだかこっちまで嬉しくなってきた。
歌声と熱気の冷めやらぬ大聖堂前を後に、ふたたび西へ向かって歩き出す。
ここから十分ほどのところに、お気に入りのレストランがあり
今夜の夕食はそこで摂ろうと決めていたのだ。
ベトナム屋台の味が楽しめる、Quan An Ngon(クアンアン・ゴン)。
外国人にも人気の店で、ハノイ市内に数軒の支店を持つ、その本店だった。
店は広く、シンガポールのホーカーのように、中央にテーブル席が並んでおり
その周りを様々な料理を作る屋台がぐるっと囲むかたちになっている。
4~5年前、当時大学生の次女とふたりでハノイに来たとき、初めて入店。
(ハノイ湾の1泊2日ツアーに参加)
次に相方とふたり灼熱のハノイを訪れたときは、旧市街の北にある支店に通ったのだ。
(まだマイナーだったチャンアンのボートツアーに参加)
さて、3度目の正直は、いかに!?
半野外風の屋台村っぽい雰囲気は、相変わらずいい感じだったけど
なんだか、サービスが雑になったような・・
ビールより先に料理ばかりテーブルに並んだり、店員が呼び止められなかったり
肝心の味のほうも、よく言えば食べやすく、悪く言えば平凡。
残念ながら、前回や前々回のような「感動」は、ひとつもなかった。
これもやっぱり、ラオスの後だったから?
前の2回と違って、さほど暑くなかったのでビールが美味しく感じられなかった?
なにかしらの理由はあるだろうが
「ハノイに来たらここで食べよう!」という気持ちは、一気に萎んでしまった。
期待が大きかっただけに、どこか物足りない気分を抱えたまま店を出る。
散歩がてら、ホアンキエム湖でもぐるっと回って帰ろうか・・と
足取り重く大通りを歩き出した、そのとき。
突然、左手後方で轟音が鳴り響き
3車線ほどの広い道いっばいに、数百台のバイクが踊り出してきた。
ベトナム国旗をはじめ、様々なデザインを旗を振り回したり、背中に括りつけたり。
かつて日本の路上で猛威を振るった暴走族そっくりの爆音と走りっぷりだった。
もしかして、ベトナムでも「族」が暴れ回っているのか!?
一瞬そう思ったが、暴走族ではありえない光景も目に入ってきた。
なんと、歩道にも人々の姿があり
目の前を走り過ぎるバイクの大軍に負けじと、ベトナム国旗を振っているではないか。
突然出現した、バイクの大集団
その正体は・・祝勝パレード!
・・ああ、きっとこれは、『戦勝パレード』だ。
さきほど行なわれたサッカー試合の勝利を、国を挙げて祝っているに違いない。
立ち止まって、走り過ぎるバイク軍団を眺めていると
ちょっと前に見たのと同じグルーブが、1~2分後に、またやってきた。
なるほど、同じ道をグルグル回っているんだ。
さらに、旗を振る人々の間に、数十本のベトナム国旗を束ねて持つ女性の姿が。
ああ、"振るための国旗"を売る人がいる。しっかり商売してるなぁ。
国旗売りのお姉さん、只今商売中
それにしても、この大騒ぎ。いつまで続くんだろう?
明らかに交通法違反だと思うけど、誰も取り締まっていないぞ。
こんなんでいいのか、ベトナム。
だけど、これこそが〈ベトナムらしさ〉とも言えるか。
いやいや、真相はそんなキレイゴトじゃなくて
こうした「ガス抜き」を黙認することで、政府への不平不満を逸らしているのかも。
・・などなど、やくたいもない思いを巡らしつつも
実際のところは、全身でこのハプニングを楽しんでいた。
いっこうに終わる気配のない「パレード見物」を30分ほどで切り上げ
レストランを出た後とはうって変わったウキウキ気分で、宿への家路をたどった。
その途中も、あちらこちらから歓声が沸き上がる。
広場ごとに若者が集まり、ベトナムの勝利を祝っていたのだ。
どうやら〈お祭り騒ぎ〉は、ひと晩中続きそうだった。
そういう我らも、そのまま帰るのが惜しくなり
旧市街で夜遅くまでやっているチェーの店、ホア・ベオーに立ち寄ることに。
スア・チュア・ミット(牛乳プリン、ヨーグルト、ジャックフルーツ入りのチェー)
をお腹に収めて、浮き立つ心を冷ましたのだった。
ではでは、またね。
ゲストハウス前。深夜集まる若者たちも、昨夜以上にハジけていた・・